第5回映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~
スペシャルエディション アルノー・デプレシャンとともに

2023. 09. 12 update

最新のフランス映画を特集上映する「第5回映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~ スペシャルエディション アルノー・デプレシャンとともに」が、9月8日(金)から9月29日(金)まで東京日仏学院で開催される。

本特集上映では、ノエミ・メルランとの共演が楽しみなルイ・ガレルの監督最新作『イノセント』や、『ベネデッタ』等、快進撃が続くヴィルジニー・エフィラを主演に迎えたアリス・ウィンクール監督の『パリの記憶』といった注目作品の上映もさることながら、新作映画『私の嫌いな弟へ  ブラザー&シスター』の公開(9月15日(金))に合わせて来日するアルノー・デプレシャン監督のほぼ全作を網羅するレトロスペクティブ上映が予定されている。

デプレシャン監督の登壇や特集上映は、東京日仏学院の他にも、国立映画アーカイブにて開催中の「第45回 ぴあフィルムフェスティヴァル2023 アルノー・デプレシャン監督特集」などでも予定されており、この9月はデプレシャン祭りの様相を呈しつつある。1991年に『二十歳の死』でデビューして以来30年間以上に亘って、映画作家として第一線で歩みを続けてきたアルノー・デプレシャン監督が、2023年現在、斜陽にあるこの国を訪れて、何を思い、何を語るのか、注目したい。

映画、気象のアート

2023. 07. 13 update

人類の活動が地球環境に影響を及ぼす”人進世”という言葉や、人類が持続可能な生活を継続するために、2030年までに達成すべき目標を掲げたSDGsといった活動が広く知られるようになってから久しいが、コロナ禍において、人類が活動を自粛したほんの数年間は、多くの地域で環境の改善が見られたものの、今現在、夏の暑さは耐え難いものとなり、豪雨や洪水、竜巻、山火事といった異常気象の頻発は減る気配もなく、危機的状況は現在進行形で継続しているように思える。

本特集上映は、そうした危機的状況下において、そもそも、人工物の最たるものである「映画」が、人間にとって他者である”自然”とどのように向き合ってきたのかを考察する機会を与えてくれる。ラインナップには、今年日本でも(監督自身の弁によると、"動物愛護の精神を訴えた")『EO』(2022)が公開されたイエジー・スコリモフスキ監督が、キートンの作品は全て好きだと公言する中でも、生涯の10本の中でもナンバー1に挙げた『キートンの蒸気船』(1928)も含まれており、あの家の崩壊をもたらした大暴風がどのように描かれていたか、改めて偉大な映画作家たちが”自然”とどのように対峙してきたのかを危機の時代ならではの視点で見直すことも、”現実”という強固なフィクションに対抗する目を鍛えるためにも必要なことなのかもしれない。

オタール・イオセリアーニ映画祭 〜ジョージア、そしてパリ〜

2023. 02. 15 update

『月曜日に乾杯!』『皆さま、ごきげんよう』などで知られる名匠オタール・イオセリアーニの劇場初公開作品を含む21作品がデジタル・リマスター版にて、2023年2月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シアター・イメージフォーラムにて特集上映される。
大国ロシアの隣国として過酷な運命に晒されてきたジョージアの首都トビリシに生まれたイオセリアーニ監督は、数多の困難を乗り越え母国ジョージアとパリで映画を撮り続けてきた、筋金入りの知識人、芸術家であると同時に、屈指のエンテーティナーである。
イオセリアーニ監督は「ジョージアの人々は陽気でのんきです」と、ことある毎に語ってきたが、今回の特集上映で上映される、ジョージアの歴史・文化・政治を語り尽くす4時間に及ぶ傑作ドキュメンタリー『唯一、ゲオルギア』を見ると、この過酷な歴史に苛まれてきた人々が一体どのようにして”陽気でのんき”で居続けることが出来たのか、理解に苦しむと同時に、妙に納得させられてしまうのである。『唯一、ゲオルギア』はまた、イオセリアーニ監督作品に頻出する”謎”を解読する鍵となる必見の作品でもある。”帝国主義の亡霊”が甦り、不穏な空気が世界を覆う今、見逃せない特集上映が始まろうとしている。

第4回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~

2022. 09. 14 update

最新のフランス映画を特集上映する「第4回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~」が、仏雑誌「レザンロキュプティーブル」編集長ジャン=マルク・ラランヌ氏をキュレーターに迎え、1年半振りに開催されようとしている。
2020年から2022年にかけてフランスで配給された注目すべき最新フランス映画をジャン=マルク・ラランヌ氏が選んだ「2020/2022ベスト」では、ブリュノ・デュモン『フランス』、シャルリーヌ・ブルジョワ=タケ『恋するアナイス』、ヴァンサン・ル・ポール『ブリュノ・レダル、ある殺人者の告白』といった世界の映画祭で話題になった作品群から、90歳を超えた巨匠ポール・ヴェッキアリの『愛の疑問』まで、”激動の世界を照らす燈台”(「レザンロキュプティーブル」)としての<映画>がラインナップされている。”燈台”としての<映画>はまた、現代の最新作に限定され得るはずもなく、新しいフェミニズムの到来を迎えている現在に相応しい企画「デルフィーヌ・セイリグ特集」の上映も予定されている。
ジャン=リュック・ゴーダルという巨大な燈台を喪った、今まさに私たちが生きている暗い時代においても、<映画>によって、新しい未来を創造しようと挑戦している者たちがいることに勇気付けられる、そんな特集上映を体験出来るような気がしている。

第3回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~

2021. 03. 08 update

フランスの映画媒体、批評家、専門家、プログラマーと連携し、日本劇場未公開の最新フランス映画を紹介する第3回「映画批評月間」がアンスティチュ・フランセ東京で開催される。今回の特集上映は、新たに生まれ変わったフランスの映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」の新編集長マルコス・ウザル氏と共に行われたセレクションであることに注目したい。
初日に行われた特別オープニングイベントでは、アルノー・デプレシャン監督の新作『ルーベ、嘆きの光』を上映、フランスのデプレシャン監督と日本の青山真治監督をオンラインで繋いだトークイベントも行われ、早くも活況を呈している。新世代の映画作家としては、独創的なコメディ作品を生み出し、注目されているソフィー・ルトゥルヌールとエマニュエル・ムレのふたりが選ばれている。発見すべき知られざる映画作家としては、ヌーヴェルヴァーグの監督たちの助監督、俳優を務め、「フランスのイーストウッド」(デプレシャン)とも評されるジャン=フランソワ・ステヴナンの監督作品が特集上映される。
また「カイエ・デュ・シネマ」が今年70周年を迎えるのを記念し、同誌で編集長を務め、1992年に他界した後も、映画を作る・思考する者たちに圧倒的な影響を与え続けているセルジュ・ダネーを巡る上映、トークの開催が予定されている。毎年、春の訪れと共に始まる「映画批評月間」、今年はどんな発見があるのか、会場に足を運んで新しい映画の潮流を体感したい。

特集上映「映像作家・小森はるか作品集2011―2020」

2021. 03. 05 update

すでに劇場公開され、高い評価をえている『息の跡』(2016年)、『空に聞く』(2018年)に加えて、小森と瀬尾が陸前高田市で瓦礫撤去のボランティアに参加した際に出会った、りんご農家を営むご夫婦との記録『米崎町りんご農家の記録』(2013年)、仙台在住の美術家・青野文昭さんの制作分風景を追ったドキュメンタリー『かげを拾う』(2021年)など、劇場初上映作品を含む全9作品〈7プログラム〉が、ポレポレ東中野にて一挙上映される。映像作家小森はるかの10年間の歩みをまとまった形で見ることのできる初の特集上映、必見である。

<再開!>第2回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~

2020. 07. 07 update

東京都の緊急事態宣言を受け、新型コロナ感染拡大防止のため中断していた「第二回映画批評月間」がアンスティチュ・フランセ東京で再開されようとしている。
中断前の内容を引き継いで開催される、オリヴィエ・ペール氏セレクションによる「第二回映画批評月間」では、現代フランス映画の中でも多彩なフィルモグラフィーで異彩を放つセルジュ・ボゾン監督の作品群、2019年8月に惜しくもこの世を去ったカルト的映画作家ジャン=ピエール・モッキーの追悼特集が予定されている。『ジャン・ドゥーシェ、ある映画批評家の肖像』上映後に予定されているトークショーも、その顔ぶれに期待が膨らむ。
腐敗した政治権力とコロナ禍の生活で深い霧に覆われたような日々を過ごしているように感じる今の東京でも、光りを探る術はまだ残されているはずだ。現実と虚構の世界が互いに影響しあうさまを見事に描いたスピルバーグの傑作『レディー・プレイヤー1』にならって、貧しい現実に活力を取り戻すべく、還ってきた映画館の暗闇に今再び沈み込みたいと思う。

第2回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~

2020. 03. 05 update

フランスの映画媒体、批評家、プログラマーらと協業し、最新のフランス映画を紹介する「映画批評月間」の第2回がアンスティチュ・フランセで開催される。ジュリアン・ジェステール(映画批評家)がセレクションを手掛けた第1回目に続く今回は、世界中の主要な映画作家たちの製作を支援してきたアルテ・フランス・シネマのディレクター、オリヴィエ・ペールがセレクションを手掛けている。本特集上映では、それらの作品の上映とともに、日本の映画批評家、監督たちとのディスカッション、そして、セレクションの一本『マダム・ハイド』のセルジュ・ボゾン監督の登壇も予定されている。
さらに、長編だけでも67本の監督作品を持つ、カルト的人気を誇る映画監督ジャン=ピエール・モッキーの特集上映も同時開催される。奇しくも、ジャン=ピエール・モッキー監督が2019年8月に86歳で逝去した数ヶ月後に、90歳で他界した映画批評家ジャン・ドゥーシェの人物像を描いたドキュメンタリー映画『ジャン・ドゥーシェ、ある映画批評家の肖像』の追悼上映も行われる予定だ。
本特集上映に臨む前に、パリのシネマテーク・フランセーズで開かれたジャン・ドゥーシェ追悼の場でアルノー・デプレシャン監督が読み上げた追悼文を坂本安美氏が翻訳した記事「アルノー・デプレシャンによるジャン・ドゥーシェ追悼」を未読の方は、この機会に一読されることを強くお薦めする。

フレディ・M・ムーラー特集<マウンテン・トリロジー>

2020. 02. 18 update

ダニエル・シュミット、アラン・タネールらと並んで、"ヌーヴォー・シネマ・スイス"の旗手と称されるフレディ・M・ムーラーの代表作『山の焚火』(1985)、そして、10年後に『山の焚火』へと連なることになるドキュメンタリー映画『我ら山人たち』(1974)、放射性廃棄物処理場の賛否に揺れるアルプス山間の住人たちを追った『緑の山』(1990)の3作品が"山映画3部作"<マウンテン・トリロジー>として特集上映される。
若き日のムーラーは、多くの実験映画を作ることで映画作家としてのアイデンティティを模索する中、20歳の時にロバート・フラハティの『極北のナヌーク』(1922)と『アラン』(1934)と出会い、自らの出自である山岳地帯に住まう山人たちについての映画を撮ろうと思い立つ。「映画」と同様に、民俗学にも興味を抱いていたムーラーは、様々なリサーチに勤しみ、山人たちと1年間の寝食を共にする日々を経て記録映画『我ら山人たち』を撮り上げた。
『我ら山人たち』を撮り上げることで得た民俗学的知見の蓄積は、そのまま『山の焚火』の製作に活かされた。ムーラーはまず最初に小説を書き上げる。小説の舞台はアイスランドになっていたが、映画の舞台設定は非現実的な場所にしたいと考え、新藤兼人『裸の島』(1960)や勅使河原宏『砂の女』(1964)の舞台となったような匿名性の高いロケーションを探したのだという。紆余曲折の挙げ句、ムーラーは原点回帰し、『山の焚火』は彼の生まれ故郷である山岳地帯でロケーション撮影されることになるが、そもそも当初『我ら山人たち』を記録映画にするつもりはなく、怪談や地方の民話を基にしたフィクションにしようと思っていたというムーラーの思いは、巡り巡って『山の焚火』に結実することになる。
『山の焚火』は1985年に完成し、ロカルノ国際映画祭で初上映され、金豹賞(グランプリ)を受賞、世界にムーラーの名を轟かせた。スイス国内でも25万人を動員、スイス映画アカデミーよりスイス映画史上最高の一作に選定されている。その『山の焚火』が、今、35年の歳月を経て、デジタルリマスターでスクリーンに蘇ろうとしている。『山の焚火』の5年後に撮られた『緑の山』は放射性廃棄物処理場の賛否を巡る作品であり、<マウンテン・トリロジー>は極めて現代的アクチュアリティの高い特集上映であるといって良いだろう。この機会に、柳田國男を通して山人について思考した柄谷行人の『遊動論』『世界史の実験』といった論考に触れてみるのもまた一興である。

オリヴィエ・アサイヤス特集2019 -世界への逃走線に導かれて- 『冬時間のパリ』公開記念イベント

2019. 11. 19 update

今年(2019年)の東京国際映画祭で、革命キューバへの大胆不敵な一大オマージュ映画『WASP ネットワーク』(2019)が上映されたばかりのオリヴィエ・アサイヤスの日本における劇場公開最新作『冬時間のパリ』(2018)(去年の東京国際映画祭で『ノン・フィクション』というタイトルで上映)の公開を祝して回顧上映「オリヴィエ・アサイヤス特集2019 -世界への逃走線に導かれて-」がアンスティチュ・フランセ東京で行われる。
軽快なテンポで笑いと涙を誘う恋愛ドラマが展開する驚きのコメディ『冬時間のパリ』で描かれる"デジタル社会の功罪"は、その着眼点の源流を『デーモンラヴァー』(2002)に遡って見ることができるであろうし、『WASP ネットワーク』で描かれた反カストロのテロ行為を阻止するスパイ"キューバン5"の活躍や、5時間超えの3部作『カルロス』(2010)で描かれた活劇趣味の原型を、かつての"ミューズ"マギー・チャンがスーパークールな女盗賊を演じた『イルマ・ヴェップ』(1996)に認めることもできるだろう。
アサイヤスが映画を作り続ける中で引き寄せられてきた"世界が提示する多様な逃走線"を、約15年間のタイムスパンの中で可視化する素晴らしい特集上映である。『8月の終わり、9月の初め』(1998)上映後のティーチイン、『冬時間のパリ』上映後の樋口泰人氏との対談、さらには東京フィルメックスでの『HHH : 侯孝賢』(1997)と『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(1998)のデジタルリマスター版特別上映と、現代映画の最前線を走り続けるオリヴィエ・アサイヤス監督を東京に迎えるに相応しい、万全の体制が整っている。

映画/批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~

2019. 03. 01 update

約20年に亘って「カイエ・デュ・シネマ」誌と共同で企画されてきた「カイエ・デュ・シネマ週間」が、今年から新たに「映画/批評月刊~フランス映画の現在をめぐって~」として生まれ変わり、カイエ誌を含む、より多様な組織・人材とのコラボレーションによって、最新のフランス映画を紹介する特集上映へと進化を遂げた。初陣を飾る今回は、フランス日刊紙「リベラシオン」の映画批評家であり、同紙文化部のチーフ、ジュリアン・ジェステールを迎えた最新フランス映画の上映<ベスト・オブ 2017-2018>、新作『ハイ・ライフ』が2019年4月に日本公開予定のクレール・ドゥニ監督の作品群、<見出された映画作家>ギィ・ジルの作品群の上映が予定されている。また、瞠目すべきクレール・ドゥニ×黒沢清対談をはじめとして、ジュリアン・ジェステール氏のレクチャー、映画と批評の可能性を探るトークセッションも行われる。絶えずアップデートし続ける<映画史>の最新版が、今まさに、ここで生成されようとしている。

交差する視点ー日仏インディペンデント映画特集

2018. 10. 30 update

あのオリヴィエ・アサイヤスのサポートのもとに誕生したのだという「ボルドー国際インディペンデント映画祭」が見出した作品群、広島国際映画祭関連企画として行われる、68年5月の影響下で結成されたグループ「ザンジバル」を巡る作品群、そして、内外の映画祭で活躍している映画作家たちの作品群の上映とディスカッションを通じて、インディペンデント映画の最先端を更新する試み「交差する視点 日仏インディペンデント映画特集」がアンスティチュ・フランセにて行われる。フランスからは、つい先日、東京国際映画祭で最新作『アマンダ』が上映され、現在形のヌーヴェル・ヴァーグを示してくれたミカエル・アース、「ザンジバル」に参加し、インディペンデントな映画作りを様々な立場から支えてきたジャッキー・レイナル、映画批評家フィリップ・アズーリら、日本からは、新作の記憶も新しい濱口竜介と三宅唱ら、まさに本テーマを語るにうってつけの面々の登壇が予定されている。横浜会場で行われるベルトラン・マンディコ×鈴木卓爾、ユベール・ヴィエル×清原惟&諏訪敦彦の対談も見逃せない。

ゴーモン映画~映画誕生と共に歩んできた歴史~

2018. 06. 14 update

映画の誕生から120年以上に渡り、フランスの名だたる映画監督たちの作品を手掛け、映画史を塗り替えてきたゴーモン(Gaumont)の歴史を辿るべく、映画黎明期から現在に至るまで、日本未公開作を含む、ゴーモン映画の傑作群がラインナップされた特集上映「ゴーモン映画~映画誕生と共に歩んできた歴史~」がアンスティチュ・フランセ東京と横浜シネマ・ジャック&ベティで開催される。東京会場では映画監督の青山真治、濱口竜介、映画研究者の岡田秀則、映画批評家のクリス・フジワラ、須藤健太郎を迎えたトークショー、横浜会場では柳下美恵によるサイレント作品のピアノ伴奏も予定されている。

第21回 カイエ・デュ・シネマ週間

2018. 03. 29 update

昨年の「アラン・ギロディ特集」、一昨年の「シャンタル・アケルマン追悼特集」、一昨々年の「ブリュノ・デュモン」&「ジャン・エプシュタイン」特集と、毎年、その時節に応じたフランス映画の注目作品、重要作品を映画史に照らし合わせながら紹介してくれる唯一無二の特集上映「カイエ・デュ・シネマ週間」が今年もアンスティチュ・フランセで行われる。第21回を迎える今回は、"自伝的要素から離れ、いまを生きる若者たち、とくに女性たちを描いている"フィリップ・ガレルの「現代の恋愛についての3部作」を始めてとして、ダミアン・マニヴェル セレクション、第70回カンヌ国際映画祭で新人賞を受賞したレオノール・セライユ『若い女』(17)、サフディ兄弟『グッド・タイム』(17)、ケリー・ライヒャルトの『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』(16)といった"若者たち、女性たち"に特にフォーカスした作品群がラインナップされている。「シャンタル・アケルマン追悼特集」以来の再登場となるカイエ誌のNY特派員ニコラ・エリオットのレクチャー、骨太な傑作『勝手にふるえてろ』(17)で名を馳せた大九明子監督のトークショーも見逃せない。

ジャンヌ・モロー追悼特集 不滅のスター

2018. 01. 17 update

美しく、力強い眼差しと一度聞けば決して忘れることのできない声の持ち主、女優ジャンヌ・モロー。ヌーヴェルヴァーグからブニュエル、オーソン・ウェルズ、アントニオーニ、ファスビンダー、オリヴェイラまで、70年もの間、現代映画を牽引した監督たちのミューズであり続けたモローの道程は他に例を見ない類い稀なものでした。2017年7月31日に89歳に他界した20世紀の映画の記憶そのものといえるジャンヌ・モローの代表作を上映し、その不滅の魅力、重要性を確認し、追悼いたします。

広島国際映画祭 特別アンコール上映
シネマテーク・フランセーズ共同企画
「世界のすべての記憶」特集

2017. 12. 28 update

2017年の広島国際映画祭(HIFF)で大好評を博したシネマテーク・フランセーズ特集「世界のすべての記憶」が、アンスティチュ・フランセ東京でアンコール上映される。ジャン・ヴィゴ『アタランタ号』に10年先駆けた傑作"河の映画"と絶賛されるアンドレ・アントワーヌ『ツバメ号とシジュウカラ号』を皮切りに、"視覚的ポリフォニー"を試みたアベル・ガンスの3画面映画『マジラマ/戦争と平和』、ゴダールとダネーが「映画史」についてひたすら語る続ける『セルジュ・ダネーとジャン=リュック・ゴダールの対話』、サイレント時代のルネ・クレールの傑作喜劇『イタリア麦の帽子』、権威ある"ルイ・デリュック賞"に名を残す、フランス印象主義を代表するルイ・デリュックの監督作品『洪水』『エルノアへの道』まで、広島に馳せ参じることが出来なかった者にとって見逃せない特集上映である。新年早々幸先の良い映画初めになりそうだ。

フランス・ドキュメンタリー映画 その遺産と現在

2017. 08. 30 update

2017年10月5日(木)から12日(木)に開催される、2年に一度の国際映画祭<山形国際ドキュメンタリー映画祭>に歩調を合わせて、アンスティチュ・フランセ東京では、フランスのドキュメンタリー映画の代表的作品から新作までを選りすぐった「フランス・ドキュメンタリー映画 その遺産と現在」が開催される。今年生誕百年を迎える「シネマ・ヴェリテ」の偉大な監督ジャン・ルーシュの特集、シンポジウムの開催を皮切りに、写真家集団マグナムの一員でもあるドキュメンタリー映画監督レイモン・ドゥパルドンやティエリー・ミシェル監督を迎えたティーチインと特集上映、モーリス・ピアラの処女中編作品やベルトラン・タヴェルニエの長尺ドキュメンタリー映画など、注目作品の上映が目白押しだ。権力者たちが自らの権益のために恣意的に振る舞い、浅はかな意図を持った映像や情報が巷を賑わす現代日本において、「シネマ・ヴェリテ」が標榜した<真実>をスクリーンに映し出す試みはどのように響くのか、上映に駆けつけてその振動をしかと受けとめたい。

フランス映画祭2017

2017. 06. 23 update

今年で第25回を迎えるフランス映画祭、6月22日木曜日に有楽町TOHOシネマズ日劇で行われたオープニングセレモニーでは、節目の年のイベントを飾るに相応しい豪華ゲストが多数登壇し、セレモニーを華々しく彩った。

第20回 カイエ・デュ・シネマ週間

2017. 03. 30 update

現代映画と映画批評の最前線を疾走する『カイエ・デュ・シネマ週間』が、今年もアンスティチュ・フランセで開催される。第20回を迎える今回は、『湖の見知らぬ男』がカイエ・デュ・シネマ誌年間ベストテン第1位に選ばれるなど、批評家やジャン=リュック・ゴダールを初めとした多くの映画作家たちからも賞賛を浴びているアラン・ギロディをゲストに迎えて行われる特集上映とティーチイン、注目の若手作家アントナン・ペレジャトコの新作『ジャングルの掟』上映と批評家ジャン=フィリップ・テセを迎えて行われるシンポジウム、そしてこの20年間を振り返る特集上映に加えて、極めつけは、上映時間が12時間30分に及ぶジャック・リヴェット『アウト・ワン 我に触れるな』の記念碑的上映まで、映画史がリアルタイムで生起する、唯一無二のこの機会を是非、劇場で体験されたい。

永遠のオリヴェイラ マノエル・ド・オリヴェイラ監督追悼特集 東京最終上映

2017. 03. 03 update

2016年の1月から2月にかけて開催された「永遠のオリヴェイラ マノエル・ド・オリヴェイラ監督追悼特集 PART1」、2016年7月に開催された、オリヴェイラ監督の片腕ヴァレリー・ロワズルー氏を迎えての『フランシスカ』特別上映と、"世界最大の映画作家"の作品を改めてスクリーンで見る貴重な機会を提供してくれた追悼特集が、今回の「東京最終上映」を以て一区切りを迎える。本来であれば、PART1の後に、PART2を立ち上げる予定だったとのことだが、権利交渉が難航し、今回の「東京最終上映」という形になったという。本ページ末尾に掲載しているオリヴェイラ監督のフィルモグラフィーを見れば明らかだが、未だ日本で上映、公開されていないオリヴェイラ作品の数は多い。今後、更なる未知のオリヴェイラ作品がスクリーンに投影される未来に思いを馳せながら、まずは、当時22歳だったオリヴェイラが撮った初監督作品『ドウロ河』(31)のニュープリント版、そして、久々のスクリーン登場となる『永遠の語らい』(03)も上映されるアテネ・フランセの「東京最終上映」に、満を持して駆けつけたい。

伝説の映画製作会社、ディアゴナル特集

2016. 11. 17 update

1970年代以降のポスト・ヌーヴェル・ヴァーグ(ジャン・ユスターシュ、フィリップ・ガレル、ジャック・ドワイヨン、モーリス・ピアラら)のオルタナティブ、ヌーヴェル・ヴァーグが生み出した"自由"の真の後継者として21世紀に入り再評価が進んだ「ディアゴナル」とは一体何なのか?2016年の今、広島国際映画祭での上映に続いて、アンスティチュ・フランセ東京では、中心人物であるポール・ヴェッキアリ監督と、『ママと娼婦』(73)で映画史にその名を刻んだ女優、監督でもあるフランソワーズ・ルブランの登壇が予定されている「ディアゴナル」の特集上映が組まれ、そのエッセンスが明かされようとしている。フランス映画史研究者、新田孝行氏によるテクストを読んだ上で通いたい、貴重な機会の到来である。

第17回東京フィルメックス

2016. 11. 15 update

今年も「フィルメックス」の季節が巡ってきた。アジアの新進映画作家の作品、10作品が上映される【コンペティション】、ワン・ビン、アミール・ナデリ、リティ・パン、キム・ギドク、モフセン・マフマルバフら名匠の新作、そして、エドワード・ヤン『タイペイ・ストーリー』やキン・フー 『俠女』のデジタル修復版、加藤泰『ざ・鬼太鼓座』のデジタルリマスター版が上映される【特別招待作品】、日本初公開の新作イスラエル映画が上映される【特集上映 イスラエル映画の現在】、どれも見逃せない作品で構成されたプログラムばかり。デジタル革命による映画の民主化に伴って、年々増殖してゆく(アジアの)映画群の中から確かな目で選りすぐった作品を毎年決まった時期に届け、人的交流も促してくれる「フィルメックス」は、もはや、日本の映画文化にとって必要不可欠なインフラだ。

TIFF 第29回東京国際映画祭【アジアの未来/日本映画スプラッシュ/ユース】

2016. 10. 14 update

今年で第29回を迎える東京国際映画祭(TIFF)が、六本木ヒルズ、EXシアター六本木他にて開催される。注目すべきは、ワールドプレミア6作品を含む16作品が賞を競う【コンペティション】、ホン・サンスやベルトラン・ボネロ、ラヴ・ディアスなど、海外の有名映画祭で話題になった名匠の新作の数々、エドワード・ヤン『牯嶺街少年殺人事件』やキアロスタミ監督最後の短編作品も上映される【ワールド・フォーカス】、名門UCLAの映画テレビアーカイブが復元したサイレント映画からジョン・セイルズの『メイトワン1920』まで、アメリカの古典映画が上映される【UCLA映画テレビアーカイブ 復元映画コレクション】、アジアの新鋭監督が競い合うコンペティション【アジアの未来】、日本インディペンデント映画の俊英の新作が上映される【日本映画スプラッシュ】、現代の若者を新鮮な視点で捉えた作品が上映される【ユース】といった日本未公開映画を中心としたプログラム群だが、一般公開に先駆けて上映されるニコラス・ウィンディング・レフンの『ザ・ネオン・デーモン』や、ケント・ジョーンズ、黒沢清両監督の登壇が予定されている『ヒッチコック/トリュフォー』の上映にも心惹かれる。フレッシュな才能、世界の名匠の映画との出会い、驚きと発見に満ちた10日間を体験すべく、まずは準備を整えたい。

TIFF 第29回東京国際映画祭【UCLA 映画テレビアーカイブ 復元コレクション】

2016. 10. 14 update

今年で第29回を迎える東京国際映画祭(TIFF)が、六本木ヒルズ、EXシアター六本木他にて開催される。注目すべきは、ワールドプレミア6作品を含む16作品が賞を競う【コンペティション】、ホン・サンスやベルトラン・ボネロ、ラヴ・ディアスなど、海外の有名映画祭で話題になった名匠の新作の数々、エドワード・ヤン『牯嶺街少年殺人事件』やキアロスタミ監督最後の短編作品も上映される【ワールド・フォーカス】、名門UCLAの映画テレビアーカイブが復元したサイレント映画からジョン・セイルズの『メイトワン1920』まで、アメリカの古典映画が上映される【UCLA映画テレビアーカイブ 復元映画コレクション】、アジアの新鋭監督が競い合うコンペティション【アジアの未来】、日本インディペンデント映画の俊英の新作が上映される【日本映画スプラッシュ】、現代の若者を新鮮な視点で捉えた作品が上映される【ユース】といった日本未公開映画を中心としたプログラム群だが、一般公開に先駆けて上映されるニコラス・ウィンディング・レフンの『ザ・ネオン・デーモン』や、ケント・ジョーンズ、黒沢清両監督の登壇が予定されている『ヒッチコック/トリュフォー』の上映にも心惹かれる。フレッシュな才能、世界の名匠の映画との出会い、驚きと発見に満ちた10日間を体験すべく、まずは準備を整えたい。

TIFF 第29回東京国際映画祭【ワールド・フォーカス】

2016. 10. 14 update

今年で第29回を迎える東京国際映画祭(TIFF)が、六本木ヒルズ、EXシアター六本木他にて開催される。注目すべきは、ワールドプレミア6作品を含む16作品が賞を競う【コンペティション】、ホン・サンスやベルトラン・ボネロ、ラヴ・ディアスなど、海外の有名映画祭で話題になった名匠の新作の数々、エドワード・ヤン『牯嶺街少年殺人事件』やキアロスタミ監督最後の短編作品も上映される【ワールド・フォーカス】、名門UCLAの映画テレビアーカイブが復元したサイレント映画からジョン・セイルズの『メイトワン1920』まで、アメリカの古典映画が上映される【UCLA映画テレビアーカイブ 復元映画コレクション】、アジアの新鋭監督が競い合うコンペティション【アジアの未来】、日本インディペンデント映画の俊英の新作が上映される【日本映画スプラッシュ】、現代の若者を新鮮な視点で捉えた作品が上映される【ユース】といった日本未公開映画を中心としたプログラム群だが、一般公開に先駆けて上映されるニコラス・ウィンディング・レフンの『ザ・ネオン・デーモン』や、ケント・ジョーンズ、黒沢清両監督の登壇が予定されている『ヒッチコック/トリュフォー』の上映にも心惹かれる。フレッシュな才能、世界の名匠の映画との出会い、驚きと発見に満ちた10日間を体験すべく、まずは準備を整えたい。

TIFF 第29回東京国際映画祭

2016. 10. 14 update

今年で第29回を迎える東京国際映画祭(TIFF)が、六本木ヒルズ、EXシアター六本木他にて開催される。注目すべきは、ワールドプレミア6作品を含む16作品が賞を競う【コンペティション】、ホン・サンスやベルトラン・ボネロ、ラヴ・ディアスなど、海外の有名映画祭で話題になった名匠の新作の数々、エドワード・ヤン『牯嶺街少年殺人事件』やキアロスタミ監督最後の短編作品も上映される【ワールド・フォーカス】、名門UCLAの映画テレビアーカイブが復元したサイレント映画からジョン・セイルズの『メイトワン1920』まで、アメリカの古典映画が上映される【UCLA映画テレビアーカイブ 復元映画コレクション】、アジアの新鋭監督が競い合うコンペティション【アジアの未来】、日本インディペンデント映画の俊英の新作が上映される【日本映画スプラッシュ】、現代の若者を新鮮な視点で捉えた作品が上映される【ユース】といった日本未公開映画を中心としたプログラム群だが、一般公開に先駆けて上映されるニコラス・ウィンディング・レフンの『ザ・ネオン・デーモン』や、ケント・ジョーンズ、黒沢清両監督の登壇が予定されている『ヒッチコック/トリュフォー』の上映にも心惹かれる。フレッシュな才能、世界の名匠の映画との出会い、驚きと発見に満ちた10日間を体験すべく、まずは準備を整えたい。

フランス幻想怪奇映画特集 『ダゲレオタイプの女』公開記念
ヒッチコックからはじまる映画史 『ヒッチコック/トリュフォー』公開記念

2016. 09. 23 update

黒沢清監督初の海外進出作品『ダゲレオタイプの女』の公開を祝して、映画史の"未知の鉱脈"を探る知的冒険「フランス幻想怪奇映画特集」が開催される。黒沢監督自らがセレクトした作品の上映とトークショーに加えて、映画批評家クリス・フジワラ、ステファン・デュ・メスニルドによるレクチャー(「フランス幻想映画史」)、フランスの俊英ベルトラン・マンディコ監督を迎えてのティーチインも予定されている。さらに、もうひとつの特集プログラム「ヒッチコックから始まる映画史」では、来る12月に待望の一般公開を迎える『ヒッチコック/トリュフォー』の監督、ニューヨーク映画祭のディレクター、批評家、脚本家としても知られるケント・ジョーンズ氏のティーチインも開催される。国境を超えて世界の第一線を走り続けるシネアストたちと共に、映画史が現在進行形で作られて行く、その瞬間に立ち会う希有な機会を逃す手はない。

『フランシスカ』日本語字幕版劇場初上映
オリヴェイラ・シンポジウム~オリヴェイラの随伴者ヴァレリー・ロワズルーを迎えて

2016. 07. 08 update

今年初頭に行われた「永遠のオリヴェイラ マノエル・ド・オリヴェイラ監督追悼特集 PART1」に続いて、7月13日(水)草月ホールにて、1日限りの"永遠のオリヴェイラ"特別企画が開催される。当イベントでは、オリヴェイラ監督がパウロ・ブランコと初めて組んだ大作『フランシスカ』(81)の日本語字幕付35ミリフィルム日本初上映に加えて、1991年の『神曲』以降、『レステロの老人』(14)に至るまで、ほとんどすべてのオリヴェイラ作品の編集を手がけてきたヴァレリー・ロワズルーさんを迎えてのシンポジウムが行われる。聞き手として、山形国際ドキュメンタリー映画祭の秀逸なプログラム「Double Shadows/二重の影――映画が映画を映すとき」の記憶も新しい土田環氏、筒井武文監督の登壇も予定されている。この顔ぶれで、面白くならないはずがない。映画ならではの奇妙なマジックと、僥倖という他ない奇跡的な瞬間に満ちたオリヴェイラ監督の映画が、まさに編み上げられて行くその瞬間に立ち会ったロワズルーさんの口から一体どのような言葉が発せられるのか、その貴重な証言を見届けるためにも、万難を排して会場に駆けつけたい。

恋愛のディスクール 映画と愛をめぐる断章

2016. 04. 13 update

かつて、淀川長治は、「映画には正直にその国の体質まで感じ取れる」と語った。「かんたんに決めつけるのはいけないが」と一息つきつつも、「日本映画は人生。アメリカ映画は生活。イタリア映画は人間臭。イギリス映画は風刺、皮肉。」、そして、もちろんのこと「フランス映画は恋。」であると。アンスティチュ・フランセ東京で開催される「恋愛のディスクール 映画と愛をめぐる断章」は、誰もが納得するに違いないの淀川長治の洞察を、映画史の豊穣を通じて、大胆かつ緻密に証明するのみならず、「愛の自由、自由な愛」(ドミニク・パイーニ)の善き効能を、スクリーンを超えてわたしたちの日常にまで行き渡らせてくれる、そんな予兆に満ちた特集上映である。ドミニク・パイーニ氏、三浦哲哉氏のレクチャー、ジャンヌ・バリバールとラリユー兄弟のゲスト登壇も大いに楽しみだが、「イタリア映画祭」や「フランス映画祭」とも被らず、3ヶ月の長期に亘ってほぼ毎週末上映される開催日程も配慮が行き届いて映画ファンには嬉しい。ロラン・バルトの『恋愛のディスクール』を片手に、「世界を変える」ためというより、「心の中にあるもの」を奮い立たせるべく通いたい特集上映である。

第19回 カイエ・デュ・シネマ週間「シャンタル・アケルマン追悼特集」

2016. 01. 28 update

「イマージュと、それを見つめる者の間は、つねに平等であってほしい」シャンタル・アケルマン

1975年、シャンタル・アケルマンは傑作『ブリュッセル1080、コメル23番街、ジャンヌ・ディエルマン』を撮り、映画に革命を起こしました。その後も、短編、長編、フィクション、ドキュメンタリー、実験的映画、文学の脚色など、様々なジャンルで新しい映画の形態を探求し続けました。アケルマンは現代映画の可能性を率先して見出し、ジム・ジャームッシュ、ガス・ヴァン・サント、トッド・ヘインズ、アピチャッポン・ウィーラセクタン、ミヒャエル・ハネケらも彼女から影響を受けています。
2015年10月に惜しくもこの世を去ったシャンタル・アケルマンを追悼すべく、「第19回カイエ・デュ・シネマ週間」にて特集を行います。また第8回恵比寿映像祭では新作の『No Home Movie』が日本プレミア上映されます。「カイエ・デュ・シネマ」ニューヨーク特派員で、シャンタル・アケルマンの映画をこれまでも紹介してきたニコラ・エリオットの講演会も予定しています。

アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016

2016. 01. 08 update

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の最新作『光りの墓』が3月に公開されようとしている。この21世紀的現代映画の傑作の公開に先駆けて、今まで日本劇場未公開だった『世紀の光』(06)の一般公開と同時に、特集上映<アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016>がシアター・イメージフォーラムにて開催される。
アピチャッポン監督の初長編作品『真昼の不思議な物体』(00)、カンヌ国際映画祭ある視点賞受賞『ブリスフリー・ユアーズ』(02)、同審査員賞受賞『トロピカル・マラディ』(04)、パルムドールに輝いた『ブンミおじさんの森』(10)の長編4作品に加えて、『ナブアの亡霊』など、2005年以降に世界各地の美術館等で発表されてきた中編・短編のなかから7作品を一つにまとめたアートプログラムも組まれており、アピチャッポン監督の全容に触れることのできる絶好の機会になる。
1月9日から2月5日の本特集上映を皮切りに、3月の『光りの墓』公開、アートの分野では、福岡、青森、横浜での展覧会やワークショップ、「さいたまトリエンナーレ2016」への参加、さらには、東京都写真美術館での個展も予定されており、2016年の日本はまさに<アピチャッポン・イヤー>の様相を呈している。政治、経済、社会、私たちを取り巻く既存の枠組みが大きく揺らぐ21世紀の今、アピチャッポン監督の作品は、私たちの進むべき道に対して大いなる示唆を与えてくれているように思う。"必見"というより、是非とも"体験"しておきたい特集上映の到来である。

永遠のオリヴェイラ マノエル・ド・オリヴェイラ監督追悼特集 PART1

2015. 12. 17 update

"世界最大の映画作家"(蓮實重彦)マノエル・ド・オリヴェイラが逝去したのは、2015年4月2日のことだった。それ以降、10月の山形国際ドキュメンタリー映画祭で『訪問、あるいは記憶、そして告白』と『ニース ジャン・ヴィゴについて』が上映され、12月には『アンジェリカの微笑み』がロードショー公開された。監督の生前と変わらず、オリヴェイラ作品を劇場で見ることは、観客にとって常に"特別な瞬間"であり続けている。そして、本格的な追悼特集上映が、2016年1月23日渋谷ユーロスペースを皮切りに始まろうとしている。

追悼特集上映PART1では、『アニキ・ボボ』(42)から『階段通りの人々』(94)まで、8作品のすべてが35ミリフィルムで上映され、そこには、日本初公開となる短編作品『レステロの老人』(14)も含まれる。
2016年夏以降に予定されている追悼特集上映PART2では、『フランシスカ』(81)など、ファン待望の日本未公開作品を含む、1990年代後半から2000年代における代表作の数々が上映されるという。本特集上映は、その後、全国での巡回上映も予定されている。

"映画とは何か"を問い続けた巨匠、マノエル・ド・オリヴェイラ監督の冒険の旅路をともに辿ることは、決して過去への郷愁に浸るものではなく、私たちの未来を照射する希望の"灯り"を発見/再発見するものとなるに違いない。

フレンチタッチ・コメディ!
~30年から現在までのフランス映画のコメディ特集~

2015. 12. 02 update

『ぼくの伯父さん』(58)のポスターデザインを初めとして、ジャック・タチの創作活動に大きな貢献を果たし、トリュフォー、カウリスマキ、ウディ・アレンら多くの映画人がリスペクトする喜劇映画の名優にして名匠、ピエール・エテックスの長短編作品を始めとして、フランスの怪物的名優ミシェル・シモンが主役を演じるルノワール作品とサッシャ・ギトリ作品、マチュー・アマルリック、ヴァンサン・マケーニュ、アラン・ギロディら、現代フレンチ悲喜劇まで、まさに"30年から現在までのフレンチコメディ"の粋を、映画史を踏まえた上で、楽しむことが出来る絶好の機会の到来である。"フレンチタッチ"という軽やかな言葉の下に脈々と息づく、偶像破壊的側面を持つ強靭なユーモアの精神、人生のままならなさへの深い洞察に満ちた問い掛けの数々に、人は些か仰け反りながらも、いつもよりほんの少し、軽やかな足取りで師走の帰路に着くことになるに違いない。

第16回東京フィルメックス

2015. 11. 18 update

アジアの新進映画作家の作品、10作品が上映される【コンペティション】部門、東京フィルメックスが注目し続けている気鋭の映画作家たちの作品、9作品が上映される【特別招待作品】、ジャック・タチの創作活動に大きな貢献を果たし、トリュフォー、カウリスマキ、ウディ・アレンら多くの映画人がリスペクトする喜劇映画の名匠ピエール・エテックスと二人のアジアの巨匠、ホウ・シャオシェンとツァイ・ミンリャンの【特集上映】が予定されている今年のフィルメックス。今年も、新旧問わず、選りすぐりのアジアの新しい映画群が、有楽町の街に鮮烈な空気を運んでくれることを期待したい。 また、アンスティチュ・フランセ東京で開催される連動企画「フレンチタッチ・コメディ!~30年から現在までのフランス映画のコメディ特集~」は、映画史を踏まえた上で、フレンチコメディの現在を楽しむことができる、絶好の機会になることは間違いない。

第2回広島国際映画祭 HIFF2015

2015. 11. 13 update

カンヌ国際映画祭で話題を呼んだ、日本初上映となるミゲル・ゴメスの6時間越えの大作『アラビアン・ナイト』や、長編処女作にしてロカルノ国際映画祭で特別大賞を受賞したダミアン・マニヴェルの『若き詩人』らが上映される【特別招待作品部門】、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を獲得した濱口竜介監督の記念碑的傑作『ハッピーアワー』を始めとして、染谷将太、安川有果、草野なつか等、日仏新進気鋭の映画作家の作品がセレクトされた【若手監督特集】、ジャン=マリー・ストローブの新作短編『水槽と国民』がラインアップされ、審査委員長を吉田喜重監督、特別審査員を女優岡田茉莉子が務める【コンペティション】、シネマテーク・フランセーズの創設者にして、ヌーヴェルヴァーグの生みの親、誰もフィルムを保存することなど考えもしなかった時代に、フィルムの保存、修復の重要性を訴え、上映されることによってフィルムは生き続けることを証明したフィルム・アーカイブの先駆者アンリ・ラングロワの功績を讃える【アンリ・ラングロワ特集】、まさに映画の起源から現在までを、「広島/HIROSHIMA/ヒロシマ」に立ち上らせようという画期的な映画祭、「第2回広島国際映画祭」が開催されようとしている。本映画祭には、ミゲル・ゴメス監督、ダミアン・マニヴェル監督、濱口竜介監督の他にも、批評家のジャン=フランソワ・ロジェ氏も招かれており、日本各地でのイベントも予定されているという。前身となった「ダマー映画祭 in ヒロシマ」が新人の発掘や育成を目的としていた、その遺伝子を受け継ぎつつ、国内外への"発信型"の映画祭を目指す、野心的かつ、ハードコアなまでに正統派な試みの行方に注目したい。今回、広島の地において、現在進行形で刻まれてようとしている"映画史"の1コマに立ち会えるものは幸運である。

YIDFF 山形国際ドキュメンタリー映画祭2015

2015. 10. 01 update

自らの死後に公開するようにと託けてシネマテークに預けられていた、マノエル・ド・オリヴェイラ監督が自らの人生を振り返る『訪問、あるいは記憶、そして告白』(82)がオープニング作品として上映される今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭は、今まさに、国民主権の政治意識の高まりを経験しつつある私たちにとって、"政治"や"国家"に関して様々な視座を与えてくれる絶好の機会になりそうだ。 そうした意味で目につくのが、「インターナショナル・コンペティション」部門の、リスボンを舞台に老移民がかつて経験したカーネーション革命とその後の曲折を浮かび上がらせる『ホース・マネー』(14)、日本の尖閣諸島"占領"に怒る愛国青年が、"世界"に触れていくに従って"愛国心"の微妙な変化を経験する『青年★趙(チャオ)』(15)、「ラテンアメリカ――人々とその時間:記憶、情熱、労働と人生」部門の、社会変革への挑戦を映画で試みた「第三の映画/サード・シネマ」、及び、現代の映画群、そして、「アジア千波万波」部門の特別招待作品、香港と台湾の民主化運動を捉えた『革命まで』(15)、『太陽花(ひまわり)占拠』(14)といった作品群だ。 また、もうひとつのオリヴェイラ作品『ニース ― ジャン・ヴィゴについて』(83)、『消えた画 クメール・ルージュの真実』が記憶に新しいリティ・パンの『フランスは我が祖国』(14)、(アンスティチュ・フランセにおけるエミリー・コキー女史の講演でも語られた)アンドレ・S・ラバルトの『我等の時代の映画作家シリーズ ― ジョン・カサヴェテス』といった、現代映画へと連なるアクチュアルな映画史に触れる機会を与えてくる「Double Shadows/二重の影――映画が映画を映すとき」部門の上映も見流せない。 加えて、大充実のイベントの数々については、公式サイトのイベントページを参照されたい。

フランス映画祭2015

2015. 06. 11 update

今年のフランス映画祭の目玉は、何と言っても、オリヴィエ・アサイヤスの新作『アクトレス ~女たちの舞台~』(原題:シルス・マリア)とミア・ハンセン=ラブの新作『EDEN エデン』の上映だろう。現代フランス映画の先頭を走り続ける監督カップルのフレッシュな新作が、フランス映画祭の観客にどのように受け止められるのか、その反響が楽しみだ。加えて、年々洗練の度合いを高め、ヒューマンドラマの器を拡張し続けているフランソワ・オゾン監督の新作『彼は秘密の女ともだち』、今回、"団長"を務めるエマニュエル・ドゥヴォスが圧巻の存在感を見せる『ヴィオレット(原題)』(マルタン・プロヴォスト監督)、現実と虚構の区別がつかない文学マニアの覗き見視線を通じて、周囲の人々の悲喜劇を軽妙な語り口で描く、アンヌ・フォンテーヌの新作『ボヴァリー夫人とパン屋』と珠玉の作品がラインナップされている。フランス映画祭特別関連企画として、エヴァーグリーンな魅力を放射しながら既に走り始めている企画上映「彼らの時代のすべての少年、少女たち フランス映画、日本映画の思春期の若者たち」とともに、フランス映画の、"シネマ"の最前線ど真ん中を体験できる4日間が到来する。

フランス映画祭特別関連企画
彼らの時代のすべての少年、少女たち フランス映画、日本映画の思春期の若者たち

2015. 05. 12 update

メルヴィル・プポーの母、シャンタルが、フランスの若手監督たちに自らの青春時代をテーマに映画を撮らせた、テレビ局アルテ向けの企画タイトルから拝借したという、本特集上映のタイトルが実に素晴らしい。フランス映画祭2015の特別関連企画として行われる、フランスと日本の"思春期映画"を選りすぐった本特集上映は、かつてそこにあったヌーヴェルヴァーグの輝きをスクリーンに甦らせるだけではなく、その煌めきと揺らぎをこの極東の地で受容した映画監督たちによる思春期映画と、注目若手監督による新しいフランス映画(『ラヴ・アット・ファースト・ファイト』)を並置することで、今尚、時空を超えて放射し続けるエヴァーグリーンな運動体としての"映画"の像を私たちの脳裏に映し出すことだろう。 そこで私たちは、かつてのヌーヴェルヴァーグがそうであったように、"彼らの時代のすべての少年、少女たち"のうちの、ごく一部の"少年、少女たち"だけが、"彼らの時代"を表象し得ることの特権性をも目撃するに違いない。オリヴィエ・アサイヤスと樋口泰人の対談には、デジタル技術とSNSが一般化し、ヴァーチャルな浮遊感が世界を覆う21世紀の現代においてなお、人々がどのようにして映画の夢を見続けることが出来るのか、そのヒントを探しに足を運びたいと思っている。

イタリア映画祭2015

2015. 04. 10 update

GW恒例の「イタリア映画祭」が今年も開催される。57歳の若さで逝去したマッツァクラーティ監督の遺作『幸せの椅子』(撮影監督ルカ・ビガッツィ)、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞最優秀作品賞を受賞したミステリー映画『人間の値打ち』、イタリア・ゴールデングローブ賞最優秀コメディー賞を受賞した、新鋭シビリア監督の『いつだってやめられる』、ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品、イタリア・ゴールデングローブ賞グランプリを受賞した『神の恩寵』、『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』のジョヴァンナ・メッゾジョルノが出演している家族ドラマ『われらの子供』、ヴェネチア国際映画祭コンペ部門出品、南イタリアを舞台にした犯罪ドラマ『黒い魂』、19世紀の詩人ジャコモ・レオパルディを演じたエリオ・ジェルマーノの演技が高く評価され、イタリアで大ヒットを遂げた『レオパルディ』(撮影レナート・ベルタ)、『人生、ここにあり!』のジュリオ・マンフレドニア監督の新作『僕たちの大地』、『木靴の樹』『ポー川のひかり』の巨匠エルマンノ・オルミ(!)の新作『緑はよみがえる』、国際映画祭サーキットで上映された、新鋭ランベルト・サンフェリーチェの『スイミング・プールの少女』、菊地凛子主演、吉本ばななが脚本に協力したという『ラスト・サマー』、そして、一般公開が決まっているアリーチェ・ロルヴァケルの傑作、カンヌ映画祭審査員グランプリ受賞作品『ザ・ワンダーズ(仮題)』まで、ずらり注目作品が居並ぶ。マッツァクラーティ監督追悼、フィクション作品からの引退が伝えられていた巨匠オルミの新作に加えて、配給が決まっていない『神の恩寵』、『黒い魂』、『レオパルディ』、『スイミング・プールの少女』は是非この機会に見ておきたいところ。

第18回カイエ・デュ・シネマ週間

2015. 01. 30 update

レオス・カラックスが来日し、『ホーリー・モーターズ』を巡る特集プログラムが組まれた2013年、そして、ヴァンサン・マケーニュが来日し、あの素晴らしい『湖の見知らぬ男』と『ソルフェリーノの戦い』が上映され、「ジャン・グレミヨン特集」が併催された2014年、フランス映画の、シネマの、最先端を体験することのできる特集上映「カイエ・デュ・シネマ週間」が、今年もフランスのカイエ・デュ・シネマ誌と連携のもと、アンスティチュ・フランセで開催される。
第18回を迎える今年の「カイエ・デュ・シネマ週間」は、カイエ・デュ・シネマ誌の2014年トップテンで1位に選出された『プティ・カンカン』のブリュノ・デュモン監督を迎えるティーチインが予定されている。デュモン監督の特集上映に加えて、監督が敬愛する1920年代アヴァン・ギャルド映画の中心的存在であるジャン・エプシュテインの作品も上映される。
また、カンヌ国際映画祭の中でも、「監督週間」や「批評家週間」よりも、新しい才能を発見できるとも言われる「ラシッド/L'ACID(独立系映画配給組合)」の特集プログラムが組まれており、カイエ・デュ・シネマ誌の編集者、ライターでもあるジャン=セバスティアン・ショヴァン氏が自らの監督作品を携えて来日し、作品紹介や対談に登壇する。
長年、情熱と暴力の間で善悪の河岸と対峙してきたブリュノ・デュモン監督作品を、監督と共に見る希有な機会であると同時に、日本の若い観客や映画作家たち、映画人たちを強く刺激する機会になるに違いない「ラシッド特集」が開催される本特集上映は、今、最もアクチュアルな映画プログラムであることは間違いない。1991年に180人の映画監督が署名した「抵抗」のマニフェストとともに誕生した「ラシッド」が示したフランス的"連帯"に、日本の映画人も学ぶことが、きっとあるはずだ。

アルノー・デプレシャン特集
『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』をめぐって

2015. 01. 19 update

あまりに多くの事象が脈絡を欠いたまま縮小再生産される21世紀という時代にあって、たったひとりの映画作家のひとつの新作映画を巡って、(レトロスペクティブとしてではなく)6本の映画がスクリーンで上映され、トークイベントまで開催されるという寛大な催しは、もはや"異例"のものとなりつつある。その6作品の内、3作品は、フランスの映画作家アルノー・デプレシャンの新作『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』が撮影された地で撮られたアメリカ映画であり、その内の1本は、ポール・トーマス・アンダーソンの傑作『ザ・マスター』に着想を与えた、ジョン・ヒューストンの『光あれ』であるという。アメリカ合衆国という国のアンダーカレントを流れる黒い潮流との対話から、より善き世界を探り当てようとするアメリカとフランスの映画作家たちの試みについて冷静に考えることは、暴力の連鎖が拡散しつつある今、殊更重要なことのように思える。

第5回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル

2015. 01. 14 update

今年で5回目を迎えるオンライン映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(myFFF)」は、2014年セザール賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞した『僕が数学を嫌いな理由(わけ)』、女優メラニー・ロランの長編2作目『呼吸-友情と破壊』、ミア・ハンセン=ラヴ監督作などの出演を控えるヴァンサン・ラコスト主演『ヒポクラテスの子供達』といった注目作も目白押しながら、まずは無料配信されるコンペティション部門の短編作品に注目してみてほしい。中でも、"完璧な短編映画"と呼びたくなる『アイッサの検査』、パリ郊外、移民2世の少年の生活と夢が瑞々しく息づく『パリまでの道』、そして、コンペティション外(有料)の短編だが、カサヴェテス『フェイシズ』(68)を想起させる、登場人物たちが激しくぶつかり合うエネルギーの奔流を、レトロ感が新鮮なルックと独特な編集のリズムで描いたモニア・ショクリの『みんな誰かの特別な人』、この3作品は是非お見逃しなきよう。そして、前回のmyFFFでヴァンサン・マケーニュ主演の短編『靄の向こうに』が配信され、新作を楽しみにしていたヴァンサン・マリエットの長編『悲哀クラブ』を見ることが出来るのも嬉しい。

第15回東京フィルメックス【特集上映(2)1960 -破壊と創造のとき-】

2014. 11. 18 update

アジアの新進映画作家の作品、9作品が上映される【コンペティション】部門、東京フィルメックスが注目し続けている気鋭の映画作家たちの作品、10作品がラインナップされている【特別招待作品】、クローネンバーグの学生時代の自主製作映画2作品、1960年という時代の変わり目の年に作られ、21世紀の今、デジタル修復されてスクリーンに甦る松竹映画3作品、今年もまた、新旧問わず、新しい映画との出会いを期待して有楽町に通いたい。

第15回東京フィルメックス【特集上映(1)デヴィッド・クローネンバーグ】

2014. 11. 18 update

アジアの新進映画作家の作品、9作品が上映される【コンペティション】部門、東京フィルメックスが注目し続けている気鋭の映画作家たちの作品、10作品がラインナップされている【特別招待作品】、クローネンバーグの学生時代の自主製作映画2作品、1960年という時代の変わり目の年に作られ、21世紀の今、デジタル修復されてスクリーンに甦る松竹映画3作品、今年もまた、新旧問わず、新しい映画との出会いを期待して有楽町に通いたい。

第15回東京フィルメックス【特別招待作品】

2014. 11. 18 update

アジアの新進映画作家の作品、9作品が上映される【コンペティション】部門、東京フィルメックスが注目し続けている気鋭の映画作家たちの作品、10作品がラインナップされている【特別招待作品】、クローネンバーグの学生時代の自主製作映画2作品、1960年という時代の変わり目の年に作られ、21世紀の今、デジタル修復されてスクリーンに甦る松竹映画3作品、今年もまた、新旧問わず、新しい映画との出会いを期待して有楽町に通いたい。

第15回東京フィルメックス

2014. 11. 18 update

アジアの新進映画作家の作品、9作品が上映される【コンペティション】部門、東京フィルメックスが注目し続けている気鋭の映画作家たちの作品、10作品がラインナップされている【特別招待作品】、クローネンバーグの学生時代の自主製作映画2作品、1960年という時代の変わり目の年に作られ、21世紀の今、デジタル修復されてスクリーンに甦る松竹映画3作品、今年もまた、新旧問わず、新しい映画との出会いを期待して有楽町に通いたい。

2014年第19回釜山国際映画祭レポート<後編>

2014. 10. 23 update

10月2日~11日まで行われた、2014年第19回釜山国際映画祭のレポートを掲載。成田から飛行機で2時間で行けるアジア最大級の映画祭。来年は行くか?と企んでいるそこのあなた、どうぞ参考になさってください!

2014年第19回釜山国際映画祭レポート<前編>

2014. 10. 23 update

10月2日~11日まで行われた、2014年第19回釜山国際映画祭のレポートを掲載。成田から飛行機で2時間で行けるアジア最大級の映画祭。来年は行くか?と企んでいるそこのあなた、どうぞ参考になさってください!

第27回東京国際映画祭<特別提携企画>
MoMA ニューヨーク近代美術館映画コレクション

2014. 10. 21 update

映画評論家アイリス・バリーの活動によって1935年に誕生し、今では22,000作品を超えるまでに発展した世界最大級のコレクションと、野心的かつ洗練された上映プログラムで世界のフィルム・アーカイブ活動をリードする「MoMA ニューヨーク近代美術館」のスクリーニングを知らないニューヨーカーは滅多にいない。そのコレクションの一部が、今回、「MoMA ニューヨーク近代美術館映画コレクション」として上映されるというのだから、駆けつけない手はない。グリフィスの短編、フォード、ホークス、ウォルシュの初期名作から、スコセッシが自らの家族を撮ったドキュメンタリー『イタリアン・アメリカン』、Blacula(ブラック&ドラキュラ)アートフィルム『ガンジャ&ヘス』、ウォーホルの『ヴェルット・アンダーグラウンド&ニコ』まで、古典から前衛までを横断するハイブリッドな上映ラインナップに気分が上がる!

没後30年 フランソワ・トリュフォー映画祭

2014. 10. 09 update

没後30年、今なおエヴァーグリーンの輝きを放ち続け、世界の映画人に多大な影響を与えているフランソワ・トリュフォーの回顧上映が行われる。短編デヴュー作『あこがれ』(57)から遺作『日曜日が待ち遠しい』(83)まで全23作品が上映される本映画祭の初日には、トリュフォー監督の"分身"ともいわれるフランスの名優ジャン=ピエール・レオー氏の舞台挨拶も予定されており、釜山(釜山国際映画祭)とニューヨーク(ニューヨーク映画祭)に舞い降りていた"映画の神様"を東京にも召還すべく、静かな熱気が映画ファンを包み込みつつある。山田宏一・蓮實重彦著の「トリュフォー最後のインタヴュー」が、この期に合わせてついに刊行される!というシネフィル的興奮も抑え難いが、"映画"だけが持ちうる、女優たちの美と官能、映画と女性に向けられた狂おしいほどの愛、ひとりの人間の人生全てが詰まった希有な作品群を、トリュフォーの名前さえ知らない若い世代の人たちが発見して、その豊かさに触れてほしいと願わずにはいられない。

フィリップ・ガレル、重なり合うときの中で
最新作『ジェラシー』公開記念特集

2014. 09. 25 update

ヌーヴェルヴァーグ以降のフランスの映画作家で最も重要な映画作家のひとり、フィリップ・ガレルの新作『ジェラシー』の公開を記念して、日本未公開作品も含め、彼の作品を時代、愛した人々を軸に、その魅力の源泉に触れることができる貴重な特集上映が行われる。しかも、「没後30年フランソワ・トリュフォー映画祭」のためにトリュフォー、ゴダール、ガレルの映画=人生を生きた唯一無二の俳優ジャン=ピエール・レオーが来日して、ルー・カステルとレオーが共演した『愛の誕生』上映前に舞台挨拶をするという。その時、ジャン=ピエール・レオーはどんな言葉を発してくれるのか、今からざわつく気持ちを抑えきれない。

ジャック・ドゥミ、映画の夢

2014. 09. 12 update

ファッション&音楽好きで、ジャック・ドゥミという監督名はとにかく、『シェルブールの雨傘』(63)と『ロシュフォールの恋人たち』(66)における、ドヌーヴ、ドルレアック姉妹のカラフルなルックと多幸感溢れるミッシェル・ルグランの音楽を知らないものはいないだろう。60年代フランス映画の輝きを永遠にフィルムに焼き付けた、独創性溢れる名匠ジャック・ドゥミの、今まであまり上映される機会のなかった80年代の作品を含む6作品が、アンスティチュ・フランセ東京で一挙に上映される。東京国立美術館フィルム・センターで同時開催されている展覧会「ジャック・ドゥミ 映画/音楽の魅惑」のコミッショナー、映画評論家マチュー・オルレアン氏によるレクチャーも予定されている。まさに"映画の夢"そのものの魅惑を放つ60年代の傑作群、そして(個人的には)まだ見ぬ80年代の作品群、どちらもスクリーンで見て、目と心に焼き付けたい!という強い欲望をそそる特集上映の到来である。

旅する映像詩人 ヴィンセント・ムーンの世界

2014. 09. 09 update

南米、ブラジル、ヨーロッパ、アジア、地中海・アフリカからウクライナ・クリミア・コーカサス、そして、ロックフェスティバルAll Tomorrow's Partiesのドキュメント"ATP"、ミュージシャンをステージとは異なる場所に連れ出して演奏を記録するミュージックビデオ"Take Away Shows"まで、"旅する映像詩人"ヴィンセント・ムーンの代表作を網羅した「ヴィンセント・ムーンの世界」が下高井戸シネマで再上映される。ミア・ハンセン=ラブの『グッバイ・ファーストラブ』で使われた名曲「ウォーター」が記憶に新しいジョニー・フリンをフィーチャーしたパリのMUMFORD & SONSら無数の有名無名ミュージシャンが奏でるストリートミュージックから、壮麗で美しいチェチェンの女性聖歌隊NUR-ZHOVKHARら人類の記憶の古層から甦る伝統的チャントの数々、ヴェルナー・ヘルツォークの『カスパー・ハウザーの謎』に主演したブルーノ・Sの亡くなる数日前の歌声を捉えた映像まで、通りすがりの通行人にも躊躇なく心を奪われてカメラで追って行くヴィンセント・ムーンの視線は、あたかも柳田國男の民俗学と共鳴するかのように"小さきもの"へと注がれ、現代の片隅に追いやられ忘れ去られてしまうにはあまりにも惜しい、美しく官能的で、生命力に満ちたもうひとつの"世界"を私たちの眼前に解き放ってくれる。

イエジー・スコリモフスキ〜「亡命」作家43年の軌跡〜

2014. 08. 12 update

2009年に17年ぶりの復活作『アンナと過ごした4日間』が熱狂的な反応を生んで以来、『身分証明書』(64)、『不戦勝』(65)、『バリエラ』(66)、『手を挙げろ!』(67)といった最初期の作品が「イエジー・スコリモフスキ'60年代傑作選」として上映された2010年、『エッセンシャル・キリング』(11)が公開された2011年、息子のミハルと共に来日を遂げた2012年のポーランド映画祭、現在公開中の『イーダ』(13)を積極的に支援した2013年のポーランド映画祭、日本のシネフィルは、スコリモフスキ監督とスクリーンの内外で親密な関係を続ける幸甚を享受している。そして、今、スコリモフスキの"亡命時代"の始まりを告げた"ベルギー製ヌーヴェル・ヴァーグ"『出発』(67)、イギリス時代の2作品『シャウト』(78)、『ムーンライティング』(82)、そして、『アンナと過ごした4日間』(08)がスクリーンに甦る。現在、ワルシャワで撮影中であるという新作も心待ちにしながら通いたい特集上映だ。

三大映画祭週間2014

2014. 08. 12 update

2011年、2012年と好評を博した「三大映画祭週間」が1年のブランクを経て復活した。感情的な力強さとブラックユーモア、知的サスペンスの要素を備えた研究者父子の家族ドラマ『フットノート』、アボリジニ少年少女の過酷な生の営みを描いた血の匂いのする青春映画『サムソンとデリラ』、注目映画作家ドゥニ・コテがロマーヌ・ボーランジェを迎え、元囚人女性同士の悲劇的な関係を独自のノワール感覚で描く『ヴィクとフロ 熊に会う』といったここ数年の映画祭サーキットで注目された5作品に加えて、侯孝賢『恋恋風塵』、ヒッチコック『海外特派員』、クルーゾー『犯人は21番に住む』、そしてなんと、ブニュエルの『この庭に死す』が上映されるレトロスペクティブ・シリーズの登場が嬉しい。(上映はすべてHDリマスター版)

ダニエル・シュミット映画祭

2014. 07. 25 update

ダニエル・シュミットの回顧上映が行われている。シュミットの作品が日本で初めて紹介されたのは1980年代であったというから、既に30年余の月日が過ぎている。マリア・カラス主演、ルキーノ・ヴィスコンティ演出のオペラ「椿姫」を少年時代に見るという決定的体験の持ち主であるシュミットの作品と、21世紀のいま、混迷の時代を生きる私たちとの距離は、80年代バブル期における日本の観客と比べても、ますます遠のいているとしか思えない。その分、私たちと"映画"との関わりは、憧憬ばかりを強めていくしかないのだろうか?2010年に作られた傑作ドキュメンタリー『ダニエル・シュミット 思考する猫』を見ると、そうしたノスタルジーに浸ってばかりもいられないということに気づかされる。シュミットの陶薫を受けたとされる若きパスカル・ホフマンは、蓮實重彦とルー・リードの歌をひとつの映画に同居させるという21世紀的奇跡を起こしただけではなく、2013~14年に日本のスクリーンを色めき立たせた『グランド・ブダペスト・ホテル』(13)、『ポケットの中の握り拳』(65)、『高原の情熱』(43)、『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』(13)といった傑作群に共通する映画における"垂直性"という主題と、シュミットという映画作家の本質を表す"山から降りてきた男"という蓮實重彦の言葉が、見事に共鳴するさまを捉えた作品を撮り上げてしまっているからだ。黒沢清が中村登の映画を、"急転直下のメロドラマ"と呼び、廣瀬純が『ポケットの中の握り拳』を"タナトスの垂直落下であり、その宙づりであった"と記すとき、映画における"垂直性"が、先の見えない現代にあってなお、いかにアクチュアルかつ本質な主題足り得ているかは余りにも明白だ。映画が必ずしも"時代"と関係しなければいけないということではないが、いまシュミットの作品を見ることは、"映画"と何らかの関係を持ってしまったものにとって不可避な事のように思える。

マルコ・ベロッキオ特集

2014. 07. 02 update

ブルジョア一家の次男坊"怒れる若者"ルー・カステルが、一家を崩壊に導くさまを圧倒的熱量で描き切る、処女作らしい瑞々しさと、処女作らしからぬスケール感が同居する名作『ポケットの中の握り拳』、イタリアファシズム時代の暗黒の歴史に埋もれていたムッソリーニのかつての愛人、イーダ・ダルセルの人生に光を充てた圧倒的な傑作『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』、"奇跡"を妄信するイタリア社会の狂気に抵抗する"個人"の静謐な闘いを、一瞬のアクションが登場人物たちの人生に亀裂を生じさせる決定的瞬間の現前と共に描く、静かな怒りに満ちた傑作『眠れる美女』、いずれも映画史に残る傑作ばかりが並ぶ「マルコ・ベロッキオ特集」、必見!

女優たちのフランス映画史

2014. 06. 24 update

「女優たちのフランス映画史」というタイトルで、極めて自然な佇まいで、フランス映画祭2014の特別関連企画に収まりきっているこの特集上映は、実はそれほど"安全"な企画ではないはずだ。しかし、カトリーヌ・ドヌーヴというひとりの女優がフランスに生まれたこと、その彼女が、「クリスト・オノレはまさに俳優の映画作家だと思ったのです。たしかに、彼は物語を語りたいと思っているわけですが、彼にとってそれは身体によって、彼が何かを共有したいと思う人たちと共に語られるのです。他の多くの監督の場合は、俳優が映画作家のヴィジョンに合わせなければなりません。」といった優れた映画論を堂々と述べ、映画の多様な可能性を自ら体現していることが、まさに「女優たちのフランス映画史」といったラディカルなプログラムを可能たらしめているように思えてならない。全く以て"It's a Man's Man's Man's World"であり続けてきた(複数の)"映画史"を書き換える、新しいパースペクティブを持った、華麗なる冒険の数々が、未来の観客によって待ち望まれている。

フランス映画祭2014

2014. 06. 19 update

まさしく"団長"と呼ぶに相応しい風格のトニー・ガトリフ(『ジェロニモ ― 愛と灼熱のリズム』)、『すべて彼女のために』(08)、『この愛のために撃て』(10)のフレッド・カヴァイエ(『友よ、さらばと言おう』)、『パパの木』(10)のジュリー・ベルトゥチェリ(『バベルの学校』)ら、日本でも既に公開作品のある監督たちの新作に加えて、注目の新鋭カテル・キレヴェレ(『スザンヌ』)とセバスチャン・ベベデール(『2つの秋、3つの冬』)の新作が見逃せない今年のフランス映画祭2014。10月開催予定の「没後30年 フランソワ・トリュフォー映画祭」に先駆けて上映される『暗くなるまでこの恋を』は、確かに、トリュフォー作品の中でも有名な"愛すべき失敗作"であるには違いないが、CGで作られた大量の動物たちの登場も何の映画的感興を与えてくれはしない『ノア 約束の船』などを見るより、余程豊かな映画の時間を味あわせてくれるだろう。珠玉の作品が厳選されている、アンスティチュ・フランセ東京開催「特集上映:女優たちの映画史」と併せて、女優たちが齎してくれる映画の豊かな時間に触れて夏を乗り切る英気を養いたい。

アラン・レネ追悼特集

2014. 05. 08 update

2014年3月1日に91歳でその生涯の幕を閉じた映画監督アラン・レネの追悼上映が、『慎み深い革命家、アラン・レネの方法論』の上映で始まり、"革命の不可能性"の下、革命について思考する思想家/映画批評家廣瀬純氏のレクチャーで幕を閉じるかたちでプログラムされていることの意味を考えずにいることは難しい。21世紀の現代においてアラン・レネの多種多様なフィルモグラフィに思いを馳せる時、「常にイノベイティブで新しい境地を開拓」してきたレネの映画=人生と向き合う姿勢に"革命的であること"を読み取らずにいることはほとんど不可能に近いと思われるからだ。自らの作家性などというものよりも、<映画>というアートフォーム、そのものが纏っている革命性に対して誠実であり続けたに違いないひとりの映画作家の追悼特集として、これ以上根源的で希望に満ちた切り口があるだろうか?21世紀の観客がレネを発見し続ける旅が、新緑の季節の訪れと共に今始まろうとしている。

イメージフォーラム・フェスティバル2014

2014. 04. 25 update

今年も映像の祭典、イメージフォーラム・フェスティバルが、東京、横浜、京都、名古屋、福岡の5都市で開催される。ホセ・ルイス・ゲリンらが審査員を務める一般公募部部門<ジャパン・トゥモロウ>、日本の個人映画、実験映画の新作を紹介する<ニューフィルム・ジャパン>、ゲリンの新作が上映される<ニューフィルム・インターナショナル>、アレクセイ・ゲルマンの新作(!)やジャック・スミスの特集が組まれている<特集:ユートピア 夢想の発火点>の4部門で全体が構成され、アート・フィルムの起源に触れつつ、実験映画、個人映画の現在に触れる絶好の機会となるだろう。以下に、特に気になる作品をピックアップしています。

THE LAST BAUS〜さよならバウスシアター、最後の宴〜/第7回爆音映画祭

2014. 04. 22 update

1984年4月、文化の薫りが色濃く漂う街<吉祥寺>に開館したバウスシアターが、2014年5月末をもって、30年に亘る歴史を閉じようとしている。boid主宰の樋口泰人氏が始めた「爆音上映」は、今や日本全国各地で行われるようになったが、「ああ、ここから爆音が始まったのだ、この音はほかのどこでも出せない」という樋口氏の言葉が、吉祥寺バウスシアターがその聖地として唯一無二の存在であり続けていたことを痛いほど伝えている。映画において、"音響"が作品の中に占める位置は、ゴダールの「ソニマージュ(SON + IMAGE)」以来、決定的に大きくなった。そうした変化に極めて自然に対応するように、映画の現在と最先端を並走してきた"爆音上映"の聖地が、今終焉を迎えようとしている。その終焉の先には、まだ何も見えていない。バウスシアターで映画を見てきた私たちに出来ることは、この"最後の宴"を思う存分楽しんで見せることだ。マーク・リボーやホドロフスキーが来日するから、スコリモフスキとゴダールをバウスの爆音で見る最後の機会だから、ということに殊更限定することもない。どのプログラムでもいい、ひとつでも多くの"爆音"を全身で受け止め、自らの体に記憶させることは、映画の現在を全身で受け止めることに他ならない。最強で、"最後の宴"の幕が今、切って落とされようとしている。

ジャック・タチ映画祭

2014. 04. 09 update

フランス初のカラー撮影映画である、長編処女作『のんき大将 脱線の巻』(49)の17分の未公開シーンが追加された【完全版】(上映は白黒)、アカデミー外国語映画賞に輝いた『ぼくの伯父さん』(58)、ジャック・タチ版『天国の門』(80)であり『ポンヌフの恋人』(91)であるような破格の制作規模と興行的失敗がタチを破産に追い込んだ、グローバリズムの現代を予見する究極の野心作『プレイタイム』(67)、66歳のタチが4台のビデオカメラを駆使してわずか3日間で撮り上げた遺作『パラード』等々、フランスを代表する喜劇役者/映画監督ジャック・タチの長編監督作品(6作品)が、最先端の技術に敏感だったジャック・タチの意匠に相応しい大規模なデジタル復元によって、21世紀の今、鮮やかにスクリーンに甦る!喜劇役者タチを堪能できる日本劇場初公開となる短編作品が併映されるところも素晴らしい。

ビートニク映画祭

2014. 03. 18 update

昨年の『オン・ザ・ロード』劇場公開に続く、朗報である。『ジャック・ケルアック/キング・オブ・ザ・ビート』(85)は、意外にもと言っては失礼だが、大変素晴らしい掘り出し物だ。今回が日本では初の劇場公開となる『ジャック・ケルアック/キング・オブ・ザ・ビート』は、"ビート"とは何か、ケルアックとはどのような人物だったのか、ということを知る上で、最高の映像作品であると言って良い。80年代中頃にフィルムで撮影された当時の再現映像は、50年代アメリカ(主に)東海岸の寒々しく、荒涼とした空気を捉えており、そこに対照的な躍動感を齎した"ビートニク"のリズムが際立って可視化されている。ウォルター・サレスの『オン・ザ・ロード』はロードムービーの佳作だが、"戦勝国アメリカ"の戦後、50年代の荒涼とした"路上"のリアリティを描き、現代に繋がるアクチュアリティを獲得しているのは、ポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』(12)であり、コーエン兄弟の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)であるだろう。『ジャック・ケルアック/キング・オブ・ザ・ビート』は、『ザ・マスター』と『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』が21世紀になって描くことになる"戦勝国アメリカ"のブルースを、一人の卓越した男の半生を通じて活き活きと浮かび上がらせる、詩情豊かな秀作である。併せてこの機会に、伝説的ミュージシャンたちが出演する、コンラッド・ルークスの『チャパクア』(66)とロバート・フランクの『キャンディ・マウンテン』(87)、ディランのイギリスツアーを追った傑作ドキュメンタリー『ドント・ルック・バック』、60年代後半イギリスのカウンター・カルチャー・シーンを捉えた『スウィンギング・ロンドン1&2』も見ておきたい。

イタリア映画祭2014

2014. 03. 13 update

米アカデミー外国語映画賞を受賞したばかりのパオロ・ソレンティーノ『グレート・ビューティー/追憶のローマ』を始めとして、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した、イタロ・カルヴィーノの著書『見えない都市』にインスパイアされたドキュメンタリー『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』、カンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリを受賞した『サルヴォ』、『やがて来たる者へ』が記憶に新しいジョルジョ・ディリッティ監督の新作『いつか行くべき時が来る』、"トニ・セルヴィッロ主演の政治ドラマ"と聞けば見逃すわけにはいかない『自由に乾杯』、『恋愛マニュアル』シリーズが人気を博すヴェロネージ監督の新作『無用のエルネスト』、巨匠エットレ・スコーラよるフェデリコ・フェリーニの肖像『フェデリコという不思議な存在』等々、今年のイタリア映画祭、正直言って全作品見たい!

日本の若手映画作家のカンヌ進出を支援する好企画!
『C2C - Challenge to Cannes 2014』企画募集受付開始

2014. 02. 19 update

日本の若手映画作家の海外進出を支援する新しいプロジェクト「Gateway for Directors Japan」の第一弾として、才能ある若い映画監督達を2014年第67回カンヌ国際映画祭「シネマ・デュ・モンド」パビリオンに招待し、自身の映画企画のプレゼンテーションや、国際的なプロデューサーとのビジネスマッチング、パビリオン内のパーティへ参加できる権利を与える、長編映画企画コンペティション「C2C ‒ Challenge to Cannes 2014」が実施される。対象は「日本国内で2週間以上の劇場公開の経験がある、日本国籍のプロの映画監督+プロデューサー」とのこと。「プロの映画監督」の"プロ"の線引きが難しい気がするが、若手の映画作家を刺激する、好企画となることを期待したい!

<キノトライブ2014>
『映画はどこにある―インディペンデント映画の新しい波』刊行記念企画

2014. 01. 23 update

日本のインディペンデント映画の現在を取材した『映画はどこにある―インディペンデント映画の新しい波』(フィルムアート社)の刊行記念企画として、インディペンデント映画祭<キノトライブ2014>が開催される。日本インディペンデント映画の金字塔、空族の『サウダーヂ』と三宅唱の『Playback』、そして濱口竜介と柴田剛のほぼ新作、さらには加藤直輝と真利子哲也のピカピカの新作が、一同に会して上映される。個々の名は、既にその界隈では知られているが、彼らの作品が同時に上映される機会は未だかつてなかったのではないか。そもそも、ここに会している顔ぶれは全く一様ではない。商業映画へ進む前段階として"インディペンド映画"を捉えているものもいるだろうし、"インディペンド"で撮り続けること自体に自由を見出しているものもいるだろう。大島渚はかつて、「高いところへ行こうとする者もいるが、自分は最前線でやり続けた」、その"最前線"とは「弾がバンバン飛んでくる」ところのことだと語った。しかし、21世紀の日本に、もはやそのように明白な"最前線"は存在しない。大島渚の逝去とともにそうした"最前線"も消え去り、今ここには、それぞれの"最前線"があるだけだ。ある者は自らの"最前線"を求めてアジアの奥深く潜行し、ある者は津波の被害に遭った東北へ足を運ぶ、またある者は「喧嘩の神髄」を求めた地でアイドル志望の女子たちの姿に自らの"最前線"を発見する。そうしたそれぞれの"最前線"が、スクリーン越しに繋がることで見えてくる、新しい風景があるのかもしれない。

第4回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル

2014. 01. 16 update

今年で4回目を迎えるオンライン映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(myFFF)」が、1月17日〜2月17日の1ヶ月間に渡って開催される。いずれも日本未公開のフランス若手監督の作品が選出されており、女優サンドリーヌ・ボネールの監督第2作目や、『あの夏の子どもたち』が記憶に新しい俳優ルイ=ドー・ド・ランクザンの初監督作品、「カイエ・デュ・シネマ週間」で来日が予定されている俳優ヴァンサン・マケーニュの主演作品(『7月14日の娘』、『靄の向こうに』)といった話題作もラインナップされている。会期後には、マルコ・ベロッキオ、ジャン=ピエール・ジュネ、リン・ラムジーら著名な映画監督が審査員をつとめる審査員賞、及び観客賞が発表される。12月21日に行われた短編映画の先行無料配信は、昨年の約2倍の視聴を記録、エディット・スコブ出演の『粘土』、パリの"黄金時代"を現代に息づかせるアニメーション『モンパルナスのキキ』、郊外の若者の閉塞感を描いた『7つ目の空』が、視聴回数トップ3を記録したという。同時期にアンスティチュ・フランセ東京で開催される「第17回カイエ・デュ・シネマ週間」と共に楽しみたい好企画だ。作品の視聴は、myFFFの公式サイトのほか、iTunesでも行うことができる。

第17回カイエ・デュ・シネマ週間

2014. 01. 14 update

第17回目を迎える「カイエ・デュ・シネマ週間」は、ギヨーム・ブラック監督の『女っ気なし』、『遭難者』が公開され、今回来日も決定しているヴァンサン・マケーニュの出演作品や監督作品、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で上映され注目を集めたアラン・ギロディーの『湖の見知らぬ男』といった、フランス映画新世代の息吹を伝える作品群をまとめてスクリーンで見ることが出来る絶好の機会だ。 2013年の「第16回カイエ・デュ・シネマ週間」における『混血児ダイナ』(31)の上映を端緒に、東京フィルメックスでの上映を経て、今回いよいよ開催される「ジャン・グレミヨン特集上映」では、フランス映画史研究家新田孝行氏とカイエ・デュ・シネマ編集長ステファン・ドゥロルム氏によるレクチャーも予定されており、再発見されるべき「呪われた映画作家ジャン・グレミヨン」の作品群と最新のフランス映画を、映画史を踏まえたパースペクティヴの下に捉えることの出来る稀有な機会となっている。新しい試み、"スニーク・プレヴュー"は一体何が上映されるのか、観客の反応も含めて楽しみだ。

第14回東京フィルメックス【特集上映(2)『ジャン・グレミヨン特集』】

2013. 11. 01 update

アジアの新進作家による、2012~2013年に製作された作品の中から選ばれた10作品が上映される【コンペティション】、映画の最先端を切り拓く映画作家たちの10作品が上映される【特別招待作品 】、名匠中村登の生誕100年を記念して行なわれる特集上映【生誕100年 中村登】、2014年に行なわれる予定の「カイエ・デュ・シネマ週間/ジャン・グレミヨン特集」との共催企画【ジャン・グレミヨン特集】、洗練されたプログラムを通じて映画と世界の現在が見えてくる、「東京フィルメックス」の季節が今年もやってきた。

第14回東京フィルメックス【特集上映(1)『生誕100年 中村登』】

2013. 11. 01 update

アジアの新進作家による、2012~2013年に製作された作品の中から選ばれた10作品が上映される【コンペティション】、映画の最先端を切り拓く映画作家たちの10作品が上映される【特別招待作品 】、名匠中村登の生誕100年を記念して行なわれる特集上映【生誕100年 中村登】、2014年に行なわれる予定の「カイエ・デュ・シネマ週間/ジャン・グレミヨン特集」との共催企画【ジャン・グレミヨン特集】、洗練されたプログラムを通じて映画と世界の現在が見えてくる、「東京フィルメックス」の季節が今年もやってきた。

第14回東京フィルメックス【特別招待作品】

2013. 11. 01 update

アジアの新進作家による、2012~2013年に製作された作品の中から選ばれた10作品が上映される【コンペティション】、映画の最先端を切り拓く映画作家たちの10作品が上映される【特別招待作品 】、名匠中村登の生誕100年を記念して行なわれる特集上映【生誕100年 中村登】、2014年に行なわれる予定の「カイエ・デュ・シネマ週間/ジャン・グレミヨン特集」との共催企画【ジャン・グレミヨン特集】、洗練されたプログラムを通じて映画と世界の現在が見えてくる、「東京フィルメックス」の季節が今年もやってきた。

第14回東京フィルメックス

2013. 11. 01 update

アジアの新進作家による、2012~2013年に製作された作品の中から選ばれた10作品が上映される【コンペティション】、映画の最先端を切り拓く映画作家たちの10作品が上映される【特別招待作品 】、名匠中村登の生誕100年を記念して行なわれる特集上映【生誕100年 中村登】、2014年に行なわれる予定の「カイエ・デュ・シネマ週間/ジャン・グレミヨン特集」との共催企画【ジャン・グレミヨン特集】、洗練されたプログラムを通じて映画と世界の現在が見えてくる、「東京フィルメックス」の季節が今年もやってきた。

フランス映画の知られざる巨匠 モーリス・ピアラ

2013. 10. 15 update

モーリス・ピアラ監督の没後10年を迎えた今年、2013年の2月、パリ・シネマテーク・フランセーズでは「モーリス・ピアラ 画家にして映画作家」と題される大規模な回顧展が行なわれた。そして今、日本では、モーリス・ピアラ監督の後期代表作4作品が上映される特集上映が行なわれようとしている。ヌーヴェル・ヴァーグの映画作家たちが敬愛し、オリヴィエ・アサイヤスやアルノー・デプレシャン、クレール・ドゥニといった現代フランス映画を代表する映画作家たちが賞賛を惜しまないモーリス・ピアラとはどのような映画作家なのか?長編処女作『裸の幼年時代』がジャン・ヴィゴ賞を受賞した後、『Nous ne vieillirons pas ensemble』(72)や『Loulou (ルル)』(80)、『愛の記念に』(83)、『ポリス』(85)といった一連の作品が本国で大ヒットを遂げながら、『ポリス』で主演女優を務めたソフィー・マルソーと揉め、87年の『悪魔の陽の下に』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した時には、賛否両論の嵐が吹き荒れる中、大ブーイングを受け、それに応戦するといった有名なエピソードを残すなど、気難し屋の一面もまことしやかに伝えられる巨匠だが、まずは、劇場に駆けつけ、ジャン=リュック・ゴダールが"ほんとうに驚嘆に値する"と呼んだ作品の数々と静かに向き合いたいと思う。

TIFF 第26回東京国際映画祭【日本映画・スプラッシュ】

2013. 10. 08 update

「TIFF 第26回東京国際映画祭」が、10月17日(木)から25日(金)まで9日間に渡って開催される。2013年1月以降に完成した長編作品を対象に、93の国と地域の1463本の応募作品から選ばれた15本の作品が上映される「コンペティション」、長編映画2本目までのアジアの新鋭監督の作品が上映される新設コンペティション部門「アジアの未来」、日本公開未定の映画祭受賞作や話題作、有名監督の新作が上映される「ワールド・フォーカス」、海外進出を狙う日本のインディペンデント映画を紹介する「日本映画・スプラッシュ」、以上4部門について全作品の作品情報を掲載、日本公開前の新作が上映される「特別招待作品」については、ここでの掲載は見送っています。事前に情報を精査して、実り多い9日間にしたいところだが、"上映スケジュールの発表が遅くて予定が立たない"など、コアな映画ファンの悲鳴も聞こえてきており、出来るものなら次回は改善を期待したい。

TIFF 第26回東京国際映画祭【ワールド・フォーカス】

2013. 10. 08 update

「TIFF 第26回東京国際映画祭」が、10月17日(木)から25日(金)まで9日間に渡って開催される。2013年1月以降に完成した長編作品を対象に、93の国と地域の1463本の応募作品から選ばれた15本の作品が上映される「コンペティション」、長編映画2本目までのアジアの新鋭監督の作品が上映される新設コンペティション部門「アジアの未来」、日本公開未定の映画祭受賞作や話題作、有名監督の新作が上映される「ワールド・フォーカス」、海外進出を狙う日本のインディペンデント映画を紹介する「日本映画・スプラッシュ」、以上4部門について全作品の作品情報を掲載、日本公開前の新作が上映される「特別招待作品」については、ここでの掲載は見送っています。事前に情報を精査して、実り多い9日間にしたいところだが、"上映スケジュールの発表が遅くて予定が立たない"など、コアな映画ファンの悲鳴も聞こえてきており、出来るものなら次回は改善を期待したい。

TIFF 第26回東京国際映画祭【アジアの未来】

2013. 10. 08 update

「TIFF 第26回東京国際映画祭」が、10月17日(木)から25日(金)まで9日間に渡って開催される。2013年1月以降に完成した長編作品を対象に、93の国と地域の1463本の応募作品から選ばれた15本の作品が上映される「コンペティション」、長編映画2本目までのアジアの新鋭監督の作品が上映される新設コンペティション部門「アジアの未来」、日本公開未定の映画祭受賞作や話題作、有名監督の新作が上映される「ワールド・フォーカス」、海外進出を狙う日本のインディペンデント映画を紹介する「日本映画・スプラッシュ」、以上4部門について全作品の作品情報を掲載、日本公開前の新作が上映される「特別招待作品」については、ここでの掲載は見送っています。事前に情報を精査して、実り多い9日間にしたいところだが、"上映スケジュールの発表が遅くて予定が立たない"など、コアな映画ファンの悲鳴も聞こえてきており、出来るものなら次回は改善を期待したい。

TIFF 第26回東京国際映画祭

2013. 10. 08 update

「TIFF 第26回東京国際映画祭」が、10月17日(木)から25日(金)まで9日間に渡って開催される。2013年1月以降に完成した長編作品を対象に、93の国と地域の1463本の応募作品から選ばれた15本の作品が上映される「コンペティション」、長編映画2本目までのアジアの新鋭監督の作品が上映される新設コンペティション部門「アジアの未来」、日本公開未定の映画祭受賞作や話題作、有名監督の新作が上映される「ワールド・フォーカス」、海外進出を狙う日本のインディペンデント映画を紹介する「日本映画・スプラッシュ」、以上4部門について全作品の作品情報を掲載、日本公開前の新作が上映される「特別招待作品」については、ここでの掲載は見送っています。事前に情報を精査して、実り多い9日間にしたいところだが、"上映スケジュールの発表が遅くて予定が立たない"など、コアな映画ファンの悲鳴も聞こえてきており、出来るものなら次回は改善を期待したい。

YIDFF 山形国際ドキュメンタリー映画祭2013

2013. 10. 04 update

1965年にインドネシアで大量虐殺(数百万人が殺されたといわれる)を行なった殺人者たちが、監督の要請に応じて、どのように人々を殺したのかを再演するという異様なドキュメンタリー映画(ヴェルナー・ヘルツォークとエロール・モリスが製作に参加)『殺人という行為』、『テイク・ディス・ワルツ』(11)が記憶に新しいサラ・ポーリーが自らの家族にキャメラを向けた『物語る私たち』、東日本大震災の津波被災地でストーリーテラーたちにキャメラを向けた東北記録映画三部作の一作『なみのこえ(YIDFF特別版)』(酒井耕・濱口竜介監督)、その他にもイスラエルのアヴィ・モグラビ監督の新作といった注目作が目白押しの「インターナショナル・コンペティション」、この映画を完成させて欲しいという遺書を残し自殺したという、監督の友人が主人公の映画『わたしたちに許された特別な時間の終り』(太田信吾監督)が上映される「アジア千波万波」、昨年、91才で逝去した先駆的な映画作家クリス・マルケルの45作品が上映される「未来の記憶のために――クリス・マルケルの旅と闘い」、何とか都合をつけて駆けつけたいプログラムが並ぶ今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭。過酷な現実から目を逸らさず、キャメラを武器に視界を拓いて行く映画作家たちの眼差しは、見るものに多くの勇気を与えてくれるに違いない。

地中海映画祭 2013

2013. 08. 26 update

映画が物質的、文化的な"豊かさ"をその起源に持っていたことは、映画の誕生を告げた『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1897/ルイ・リュミエール)が、裕福なリュミエール家が邸宅を構える、地中海にほど近いその地で撮影されたこととも無関係とは思われない、デジタル技術の登場によって映画の民主化が進む21世紀の今も、忘れるわけにはいかない重要な事実である。ゴダールのメランコリーが、今尚、意味も持ち得うる所以だろう。映画史を飾る最初期の作品から、ボリス・カウフマンによって撮影された、南仏リゾートの光と影を描くジャン・ヴィゴの処女作『ニースについて』(30)、ルノワール、ヌーヴェル・ヴァーグの瑞々しい諸作品、ゴダール『ソシアリスム』(09)で数多く引用されたポレの『地中海』(63)、イスラエル、エジプト、トルコといった歴史的、地理的に地中海的複雑さそのものであるような国々で作られた作品の数々、映画の"豊かさ"を語る上で欠かせない二人の名匠の作品、そして、未だ記憶に新しい、第66回カンヌ国際映画祭で見事パルム・ドールを受賞したアブデラティフ・ケシシュ監督作品まで、「提起するすべての問題が例外的なほど人間的に豊かな(ブローデル)」"地中海"を巡る、バラエティに富んだ作品群がスクリーンを飾る。この夏の酷暑を何とか乗り切った私たちへの、ご褒美のような特集上映がいよいよ始まる。

レフ・クレショフ傑作選

2013. 08. 13 update

1917年11月にロシア革命が成功すると、ソビエト政権の指導者レーニンは、1919年8月に映画産業を国有化し、9月には世界で最初の国立映画学校を開設する。そこでソビエト映画人養成の任務を授かったのが、帝政ロシア時代から美術監督として活躍していたレフ・クレショフだった。"金は出すが口を出さなかった"といわれるレーニン時代のソビエト国営映画は、エイゼンシュテイン『戦艦ポチョムキン』(25)、プドフキン『母』(26)、ドヴジェンコ『大地』(30)と言った数々の名作映画を世に輩出し、映画史にソビエト映画の黄金時代の記憶を克明に刻むことになる。 その礎を築き、ソビエト映画の"父"とも言わる、「モンタージュ」理論の提唱者レフ・クレショフの代表作『ボリシェヴィキの国におけるウェスト氏の異常な冒険』(24)を実際にスクリーンで見る機会が到来する。もちろん、「モンタージュ」が極当たり前の映画表現として定着している今、クレショフの映画を見たからといって、そこに殊更新奇な映画表現が写っているわけではないだろう。 むしろ、今、私たちを驚かせるのは、「文学と演劇の豊かな伝統を持ったロシア/ソビエト映画人が、演劇の伝統の希薄さ故に演劇的伝統に依拠せず、いち早くスラプスティックコメディと冒険活劇によって映画独自の演出や演技を発展させたと言われる"アメリカ映画"を最も情熱的に吸収、研究した(※の一部を要約)」最良の例に、現代の多くの映画が失っている"自由闊達さ"や"映画のリズム"を瑞々しく感じ取れることに違いない。それにしても、革命政府が、自らの国体を相対化して笑うコメディを全面的に支援するという、この大らかさ!どこかの国でも是非やってみるといいと思うのが、果たして、、。

アメリカを撃つ 孤高の映画作家ロバート・クレイマー

2013. 08. 07 update

60年代、70年代、動乱期のアメリカを見つめた『アイス』(69)と『マイルストーンズ』(75)が、40年の歳月を経てオリジナル16ミリニュープリントで劇場初公開される。東京日仏学院で行われた2011年の「鉛の時代 映画のテロリズム」、2012年の「カプリッチ・フィルムズ ベスト・セレクション 先鋭的であること:映画批評の現在とは」で上映されたものの、いずれも見逃してしまった(私のような)者にとって、ついに贖罪の機会が訪れる。アルドリッチの『合衆国最後の日』(77)を、そして、チミノの『天国の門』(80)をスクリーンで体験した21世紀の観客は、"いわゆる「68年」的なもの"(2013年9月号「群像」映画時評、蓮實重彦)の理念を頭で理解するために、ではなく、その時代を生きた人々の官能と息吹を感じるために、何よりも、ロバート・クレイマーという映画作家の作品をスクリーンで体験することのために、今回ばかりは、劇場に駆けつけなければならないと思う。

フランス映画祭2013 特別プログラム ナタリー・バイ特集

2013. 06. 12 update

フランス映画祭2013の特別プログラムとして、団長を務めるナタリー・バイの特集上映が行われる(2011年はクロード・シャブロル監督特集、2012年はメルヴィル・プポー特集)。ナタリー・バイといえば、70年代トリュフォーの『アメリカの夜』(73)や『恋愛日記』(77)、『緑色の部屋』(78)、80年代ゴダールの『勝手に逃げろ/人生』(79)や『ゴダールの探偵』(85)といった作品で知られる、カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペールと並ぶ現代フランス映画を代表する女優だが、ご本人の来日とティーチインも予定されている今回の特集上映では、『アメリカの夜』の翌年に出演したモーリス・ピアラ監督の『開いた口』(74)といった最初期の作品から、(こちらはフランス映画祭での上映だが)才気あふれる新鋭グザヴィエ・ドランの『わたしはロランス』(12) といった新作まで、彼女の幅広い出演作を見渡しながら、ヌーヴェルヴァーグ以降のフランス映画を概観できる絶好の機会となっている。

フランス映画祭2013

2013. 06. 10 update

今年のフランス映画祭は、団長を務めるナタリー・バイを筆頭に、フランソワ・オゾン(『In the House』)、ジャック&ルーのドワイヨン親子(『アナタの子供』 )、リュディヴィーヌ・サニエ(『恋のときめき乱気流』 )と、派手めの来日ゲストが揃い、会場を華やいだ空気が包んでくれそうな気配が漂っている。とはいえ、ロメールやロジエを引き合いに出され高い評価を得ている新人ギヨーム・ブラック監督の『遭難者』と『女っ気なし』、カトリーヌ・コルシニ監督のクライム・サスペンスの秀作『黒いスーツを着た男』 、ヴェルディ「椿姫」のバックステージを描いた素晴らしいドキュメンタリー『椿姫ができるまで』といったあまり知られていない作品にも注目して、フランス映画の現在を実感しておきたいところ。もちろん、同時期にアンスティチュ・フランセ東京でスタートする「ナタリー・バイ特集」も見逃せない!

第6回爆音映画祭

2013. 05. 16 update

boidが主宰する今年で第6回目を迎える「爆音映画祭」が凄いことになっている。何がそんなに凄いのか?はラインナップを見て頂ければ一目瞭然。去年のベネチアで、もの凄い若返りルックで私たちを驚かせたマイケル・チミノの、あらゆる意味で破格の映画『天国の門』デジタル修復完全版を<爆音>で観ることが出来るのだし、オフィシャルにアカデミーの音響賞を受賞(作品賞と監督賞の他に助演男優賞、編集賞も受賞)している『ディア・ハンター』が<爆音>&35mmフィルムでスクリーンに甦るのだ。ブレッソンの『ラルジャン』、今年急逝したアレクセイ・ゲルマンの『フルスタリョフ、車を!』、ムルナウ『吸血鬼 ノスフェラトゥ』の山本精一無声映画ライヴ、ニック・レイの『We can't go home again』、三宅唱の『Playback』と、ゴダール、コッポラ、デ・パルマを抜いて、ただタイトルを羅列するだけでも凄さが伝わるというラインナップである。<チェンソー特集>で、『悪魔のいけにえ2』、『ウィンターズ・ボーン』と並んで『先祖になる』が上映されるというユーモアのセンスも素晴らしい。<裏爆音映画祭>ともいわれるシアター2の上映ラインナップも、マーメイドフィルム傑作選から梅本洋一追悼のboidスペシャル、土居伸彰presents アニメーション傑作選まで、気になる企画がズラリと並んでいる。

イメージフォーラム・フェスティバル2013

2013. 04. 22 update

今年で27回目を迎える「イメージフォーラム・フェスティバル」の特集テーマは「創造するドキュメンタリー、無限の今年で27回目を迎える「イメージフォーラム・フェスティバル」の特集テーマは「創造するドキュメンタリー、無限の映画眼」、ジガ・ヴェルトフのDNAが、現代にどのように引き継がれているかを検証する試みは、『ホーリー・モーターズ』で見事に復活を遂げたカラックスもとても高く評価しているという『リヴァイアサン』やジョナス・メカスによる60年代ニューヨーク、アヴァンギャルド・シーンの壮大な記録『ウォールデン』といった、映画の境界を拡張する作品群と観客との間で実証されていくことになるだろう。ヴェルトフの『カメラを持った男』(29)も、関連企画として16mmフィルムで上映される(4/26@イメージフォーラム3F「寺山修司」)ので、未見の方は、まずこの上映を観ておくと特集テーマの見通しが良くなるに違いない。 一方、国内外の新作では、平林勇の新作アニメーション『NINJA & SOLDIER』やスペインの批評家が2012年ベスト20に選んだ『石と歌とペタ』といった日本の映画/映像作家による注目作品、エドワード・ホッパーの絵画を映画的に再現した『シャーリー』、エネルギー溢れる「中国実験映画事情2013」、そして、ドナルド・リチー追悼上映まで見逃せない作品の数々がラインナップされている。

YCAM10周年記念祭「架空の映画音楽の為の映像コンペティション」

2013. 04. 16 update

2013年11月に10周年を迎える山口情報芸術センターYCAMが、10周年記念祭のプログラムの一つとして、「架空の映画の為に作曲された映画音楽」と題された公募展示を行う。公募の募集テーマは「音楽から始まる映画/映像」。坂本龍一、樋口泰人、岡本美津子、真利子哲也、辻川幸一郎といった、興味深い顔ぶれの審査員たちの評価も気になる、祝祭的な気分で待ち望みたい公募展の登場である。

都市の映画、パリの映画史

2013. 04. 10 update

ルノワール自らが『どん底』(36)、『ゲームの規則』(39)と並ぶ初期の傑作と認める『ランジュ氏の犯罪』、アレクサンドル・トローネルが美術監督を務めた、第二次世界大戦中に南仏ニースに建てられたオープンセットで"パリの犯罪大通り"を再現するという光学的困難の中、セットの四分の三を逆光にして太陽にさからうかたちで撮影された『天井桟敷の人々』、60年代、70年代の剥き出しのパリが息づく『5時から7時までのクレオ』と『ママと娼婦』、そして、現在のパリの息吹を伝える恋愛映画の数々から浮かび上がる「パリの映画史」は、映画作家青山真治と建築家鈴木了二をトークショーのゲストに迎える「都市と映画 マテリアル・サスペンス セレクション」3作品と架け橋されることで、そこにどの様な立体的な像が結ばれ、どのような交通が新たに生まれるのか。特集上映「都市の映画、パリの映画史」は、「都市」「映画」というテーマをライフワークにし、多くの人、映画、都市を行き交い、架け橋を掛けた才人梅本洋一氏への追悼の意を込めた上映となるだろう。

シネマ☆インパクト第3弾

2013. 03. 26 update

まさに「選ばれた精鋭の監督たちが、限られた時間と予算の中で"映画作り"のしのぎを削る、映画の格闘場」(山本政志)であるに違いない"シネマ☆インパクト"の、第3弾が始まろうとしている。私が試写で観ることが出来たのは、『止まれない晴れ』『集まった人たち』『海辺の町で』『水の声を聞く-プロローグ-』の4作品だが、いずれも、金はないけど元気がある、やりたいことをやっている潔さを辺り一面に撒き散らしており、観るものの気分を高揚させてくれる。

フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ

2013. 03. 22 update

「フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ」と称して公開される、フランス女性監督の3作品を、仮にフランス国旗のトリコロールに喩えるなら、ミア・ハンセン=ラブの『グッバイ・ファーストラブ』は、監督が十代の頃に経験した初恋をモチーフにしていることと、主演のローラ・クレトンが着ているシャツの印象から、情熱と受難の"赤"、ジュリー・デルピーの『スカイラブ』は、ブルターニュの見事の自然光の輝きと、かつてキェシロフスキの『トリコロール/白の愛』(94)に主演したデルピー監督作品であるから、眩しく光輝く"白"、エリーズ・ジラールの『ベルヴィル・トーキョー』は、グレーなパリの街を舞台に展開する、哀しくもあり、可笑しくもある、勇気あるシネフィル女子の泣かせる物語だから、ブルースの"青"だろうか。3つの作品が、それぞれの輝き方をしている珠玉の3作品、是非とも劇場でお見逃しなきよう!

祝『ホーリー・モーターズ』公開記念、レオス・カラックス監督特集

2013. 03. 12 update

『ポーラX』(99)以来、13年振りの長編となるレオス・カラックスの新作『ホーリー・モーターズ』が、いよいよ4月6日から公開されようとしている。先だって、『ホーリー・モーターズ』へのオマージュとしてアンスティチュート・フランセで行われた、素晴らしい上映プログラム「フランス映画における詩的映画史の11の停留所(ステーション)」における覚醒した興奮と、完成披露に来日したカラックス監督を迎える映画ファンの熱狂は、未だ冷めやらない。そして今、かつてカラックスの映画に熱狂した大人たちと同様に、年輪を重ねたカラックスの帰還を祝して、レオス・カラックス監督特集上映が行われようとしている。それにしても今年は、カラックスの新作に加えて、W(ダブル)アンダーソン、ゼメキス、ベルトルッチの素晴らしい新作が公開され、黒沢清、青山真治両監督の新作が公開を控え、ゴダールは3Dで撮影している。そして、カンヌではスティーブン・スピルバーグが審査委員長を務めるのだという。2013年というこの一年が、映画ファンにとって特別な年になることはもはや間違いないだろう。

イタリア映画祭2013

2013. 03. 08 update

今年で13回目を迎える「イタリア映画祭」が、恒例のゴールデンウィークに東京と大阪で開催される。それに先立って3/9から開催されるイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の「初期傑作選」では60年代の傑作『ベルトルッチの分身』『殺し』『革命前夜』が上映され、待望の新作『孤独な天使たち』も4月下旬の公開が予定されている。GUCCI CINEMA VISIONARIESでは、フランチェスコ・ロージ監督の『黒い砂漠』(72)も上映されおり、この春はさながら、イタリア映画の季節!の様相を呈している。

祝!『あれから』公開、『おかえり』リバイバル上映

2013. 03. 07 update

篠崎誠監督が、映画美学校フィクション・コースとのコラボレーション作品として制作した新作『あれから』は、俳優が表現する繊細な感情のうつろいと、地震と電車の走行という自然と人工の振動を、研ぎ澄まされた聴覚と慎ましい眼差しによって、日常と非日常の境目が大きく揺らいだ瞬間が継続する時間の中に捉え直す試みであると言って良いのかもしれない。そうした瞬間瞬間を的確に捉える技術水準の高いショットの連なりが、映画全体を有機的に構成している『あれから』は、改めて日本映画の美学を感じさせてくれる希有な作品であると同時に、その美意識は幽玄に終わらず、未来に向けて歩み出す意思を確固として示している。『あれから』の公開を祝して、リバイバル上映されることになった篠崎監督の長編処女作『おかえり』も、是非この機会に観ておきたい。

ジョアン・ペドロ・ロドリゲス レトロスペクティヴ

2013. 03. 01 update

ペドロ・コスタ同様、アントニオ・レイス(『トラス・オス・モンテス』76)の元で映画を学び、長編処女作『ファンタズマ』(00)がヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門でプレミア上映、2作目『オデット』(05)は、カンヌ国際映画祭インディペンデント映画部門で特別賞を受賞、3作目『男として死ぬ』(09)は、2009年の「カイエ・デュ・シネマ」誌の年間ベストテンに選出された、ポルトガルの俊英ジョアン・ペドロ・ロドリゲスの作品が、ついに日本初上陸を果たす。真に先鋭的な世界の映画を日本の観客に向けて紹介していくという映画批評家大寺眞輔氏が主宰する<DotDash!>第一弾「ジョアン・ペドロ・ロドリゲス レトロスペクティヴ」、万難を排して駆けつけたい。

『ひかりのおと』緊急トークイベント開催!

2013. 02. 21 update

試写の案内を頂いていたにも関わらず、見逃してしまっていた『ひかりのおと』という映画がある。どうやらその映画は、おいそれと見逃してしまうのは惜しい映画であるのかもしれない。オーディトリウム渋谷での3週間限定上映の最後の1週間には、山下敦弘、三宅唱、濱口竜介、向井康介、木村文洋といった面々が日替わりに登壇し、山崎樹一郎監督と対談するトークイベントが行なわれるのだという。濱口竜介や三宅唱がツイッター上で熱い言葉を手向けているこの映画の、一体何がそうした鈍い感動を呼び寄せているのか、何とかして劇場に駆けつけて、この機会に観ておきたいと思っている。

ベルナルド・ベルトルッチ初期傑作選『ベルトルッチの分身』『殺し』『革命前夜』

2013. 02. 15 update

GWに『ドリーマーズ』(03)以来10年振りとなる待望の新作『孤独な天使たち』が公開される、イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督、初期の3作品(『ベルトルッチの分身』『殺し』『革命前夜』)が渋谷のシアター・イメージフォーラム で上映される。これらの作品は、ベルトルッチのフィルモグラフィの中では、自身の内面が色濃く反映された"モノローグの映画"であると言われる。中でも『ベルトルッチの分身』は、『パートナー』という邦題で数回上映されているだけで、DVDなどのソフト化もされておらず、日本における受容がほとんどなされていない作品と言って良い。1968年という"政治の季節"に撮られ、ゴーダルの影響が色濃く出ているといわれる『ベルトルッチの分身』が、21世紀の映画館でどのように響くのか、今から上映が待ち切れない。

大人の音楽映画祭 〜レジェンドたちの競宴〜

2013. 02. 05 update

「大人の音楽映画祭 ~レジェンドたちの競宴~」というだけあって、確かに、選ばれている作品の対象年齢は40歳以上なのだろう。しかし、『ラストキング・オブ・スコットランド』(06)や『第九軍団のワシ』(09)で知られ、『ブラック・セプテンバー/ミュンヘン・テロ事件の真実 』(99)や『運命を分けたザイル』(03)といった優れたドキュメンタリー作品も撮っている(祖父はエメリック・プレスバーガーで、ハワード・ホークスのテレビ・ドキュメンタリーも手掛けている)ケヴィン・マクドナルド監督の新作『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』やマーティン・スコセッシが監督・製作を務めた『ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』、ゴダールとストーンズのコラボレーション『ワン・プラス・ワン』を、40歳以上の観客に限定してしまうのは誠にもったいない。そして、ブラジル、シネマノーヴォの巨匠ネルソン・ペレイラ・ドス・サントスの新作『アントニオ・カルロス・ジョビン』(2/23(土)~3/8(金)2週間限定!)だけは、何があっても見逃すわけにはいかない。

第16回カイエ・デュ・シネマ週間

2012. 12. 25 update

フランスの映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」とアンスティチュ・フランセの坂本安美さんが、共にセレクトした最新フランス映画が「第16回カイエ・デュ・シネマ週間」としてアンスティチュ・フランセ東京で上映される。今年の目玉は何と言っても、13年ぶりの長編新作『ホーリー・モーターズ(仮)』が、2012年カンヌ国際映画祭で絶賛の嵐を巻き起こしたレオス・カラックスの来日だが、米フィルム・コメント誌でも年間ベスト50の第一位に選ばれ、カラックスの最高傑作との呼び声も高い『ホーリー・モーターズ』が上映され、カラックスが来日するという事態を前にして、冷静さを失ってばかりもいられない。 『ホーリー・モーターズ』がフランス映画史と結ぶ関係を探るべく企画された特集上映「フランス映画の詩的映画史の11の停留所(ステーション)」は、カラックスがリムジンで誘う115分間の体験を、今度は乗り物を換えて、別の視点で体験させてくれるものになるに違いない。ひとつの映画が生み出す映画プログラムの豊かさが映画史を新たに塗り替えて行く、その瞬間を私たちは目撃しようとしている。同時に私たちは、「生涯一度も映画を見たことがない人のように」(レオス・カラックス)この映画に向き合うことを要請されているのだ!

DotDash企画第一弾!「ジョアン・ペドロ・ロドリゲス・レトロスペクティブ」開催にあたって

2012. 11. 28 update

<DotDash>は、「ジョアン・ペドロ・ロドリゲス・レトロスペクティブ」開催にあたって、クラウドファンディングを活用した活動支援を呼び掛けています。締め切り間近!

ペドロ・コスタ&ルイ・シャフェスのカルト・ブランシュ

2012. 11. 26 update

小津安二郎監督に敬意を表し、MU[無]と名付けられた、映画と彫刻が交錯する展覧会を原美術館で行う映画作家ペドロ・コスタと彫刻家ルイ・シャフェスが「白紙委任状」を受けて選んだ、彼らの血となり肉となった9本(+ペドロ・コスタの2作品)の映画が、全て35mmフィルムで上映される。それだけでも充分素晴らしいのだが、その上、大充実のトークショーも!

ポーランド映画祭2012

2012. 11. 21 update

短編小説「菖蒲」を元にした物語、撮影現場ドキュメント、主演女優クリスティナ・ヤンダの独白による三重構造の、現実と虚構が織り成す、詩情豊かな傑作『菖蒲』が公開中のアンジェイ・ワイダ監督による50~60年代の名作群、その「菖蒲」の原作者でもある、ポーランドを代表する小説家・詩人として知られるヤロスワフ・イヴァシュキェヴィチ原作の『尼層ヨアンナ』、40歳の若さで急逝したアンジェイ・ムンク監督全5作品の内の4作品、そして、現在進行形で映画の最先端を疾走するスコリモフスキ監督とポランスキー監督の初期の名作が上映される「ポーランド映画祭2012」がイメージ・フォーラムで開催される。本映画祭の作品選定の監修を務めたイエジー・スコリモフスキ監督が、2011年5月以来約1年半ぶりに、息子さんの監督作品を携えて来日するというのだから、是が非でも会場に駆けつけずにはいられない。

第13回東京フィルメックス【特集上映『木下惠介生誕100年祭』】

2012. 11. 15 update

フィルメックス招待作品のラインナップが凄いことになっている。ホン・サンス、バフマン・ゴバディ、アモス・ギタイ、モフセン・マフマルバフ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、キム・ギドク、ワン・ビンの新作に加え、ペドロ・コスタ、マノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセが参加したオムニバス映画が上映される、素晴らしいラインナップに興奮を隠せない。ホン・サンス、アピチャッポン・ウィーラセタクン、バフマン・ゴバディ、ペドロ・コスタらの登壇が予定されている上映後のQ&Aも楽しみだ。

第13回東京フィルメックス【特集上映 日本イスラエル60周年『イスラエル映画傑作選』、Focus on Japan、サミュエル・フラー生誕百年記念上映】

2012. 11. 15 update

フィルメックス招待作品のラインナップが凄いことになっている。ホン・サンス、バフマン・ゴバディ、アモス・ギタイ、モフセン・マフマルバフ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、キム・ギドク、ワン・ビンの新作に加え、ペドロ・コスタ、マノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセが参加したオムニバス映画が上映される、素晴らしいラインナップに興奮を隠せない。ホン・サンス、アピチャッポン・ウィーラセタクン、バフマン・ゴバディ、ペドロ・コスタらの登壇が予定されている上映後のQ&Aも楽しみだ。

第13回東京フィルメックス【特別招待作品】

2012. 11. 15 update

フィルメックス招待作品のラインナップが凄いことになっている。ホン・サンス、バフマン・ゴバディ、アモス・ギタイ、モフセン・マフマルバフ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、キム・ギドク、ワン・ビンの新作に加え、ペドロ・コスタ、マノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセが参加したオムニバス映画が上映される、素晴らしいラインナップに興奮を隠せない。ホン・サンス、アピチャッポン・ウィーラセタクン、バフマン・ゴバディ、ペドロ・コスタらの登壇が予定されている上映後のQ&Aも楽しみだ。

第13回東京フィルメックス

2012. 11. 15 update

フィルメックス招待作品のラインナップが凄いことになっている。ホン・サンス、バフマン・ゴバディ、アモス・ギタイ、モフセン・マフマルバフ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、キム・ギドク、ワン・ビンの新作に加え、ペドロ・コスタ、マノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセが参加したオムニバス映画が上映される、素晴らしいラインナップに興奮を隠せない。ホン・サンス、アピチャッポン・ウィーラセタクン、バフマン・ゴバディ、ペドロ・コスタらの登壇が予定されている上映後のQ&Aも楽しみだ。

ホン・サンス/恋愛についての4つの考察

2012. 11. 09 update

カサヴェテス以来の素晴らしい口説きの極意を見せてくれる『次の朝は他人』、言い寄る男どもの単純(純粋?)な男性心理を操る女性心理に寄り添う『教授とわたし、そして映画』、二転三転する恋愛の残酷な真実を描く、肩の力が抜けたホン・サンス的傑作『ハハハ』、いずれの作品もエピソードをコント仕立てで平坦にぽんぽん繰り出しておいて、映画半ばくらいでぐわっと仕掛けを可視化させる語りの形式が秀逸な恋愛喜劇の名匠サン・ホンス監督の7作品が、「ホン・サンス/恋愛についての4つの考察」と題して特集上映される。今年のフィルメックス(TOKYO FILMeX 2012 / 第13回東京フィルメックス)のオープニング作品として上映される『3人のアンヌ』に備える上でも、この好機に映画ならではの"人生かくあるべし"が詰まったホン・サンス的小さな傑作群を楽しんでおきたい。

祝!ロバート・アルドリッチ『カリフォルニア・ドールズ』『合衆国最後の日』同時公開

2012. 11. 01 update

2012年12月2日(日)をもって、7年間の幕を閉じてしまうことになった渋谷シアターNで、アクション映画の巨匠ロバート・アルドリッチ監督の遺作『カリフォルニア・ドールズ』(81)が、なんと30年振りにニュープリントでスクリーンに甦る。同時公開される『合衆国最後の日』(77)は、"核の抑止力"という壮大な妄想のからくりを暴き、"核の時代"における政治指導者の矜持を問うと同時に、それを許容している私たち一人一人に覚醒を促す"物語"が、35年という時間を超えて勝利してしまった素晴らしい政治サスペンス。"核"と"政治"の関係がより一層明白になった昨今、この映画の切実さは残念ながら増している。本当は、こんな荒唐無稽な話はありえねー!と笑えるような世の中になっていれば良かったのだが。併せて刊行される「ロバート・アルドリッチ読本 Vol.1(仮)」(遠山純生編、製作・販売boid)と「ロバート・アルドリッチ大全」(アラン・シルヴァー&ジェイムズ・ウルシー著/宮本高晴訳、国書刊行会)にも期待が膨らむ。

ストローブ=ユイレの軌跡 1962-2012

2012. 10. 31 update

2009年以来、2年ぶりに行われる「ストローブ=ユイレの軌跡 1962-2012」では、最新作『母』(上掲写真)を含む36作品の上映に加え、「映画の前衛とは何か」の著者ニコル・ブルネーズ氏のレクチャーも予定されている。同氏は、明治学院大学で行われる「第17回日本映画シンポジウム」にも出席予定。気狂いじみた天候の夏が去り、ようやく落ち着いて物思いに耽ることができる、遅い秋がやって来た。

TIFF 第25回東京国際映画祭
【特別招待作品】【日本映画・ある視点】【natural TIFF】【TIFF in 日本橋】

2012. 10. 15 update

「コンペティション」と「ワールドシネマ」は全作品情報を掲載。その他の部門は、気になる作品を独断で抜粋して掲載しています。

TIFF 第25回東京国際映画祭
【アジアの風--中東パノラマ】【インドネシア・エクスプレス】【ディスカバー亜州電影】

2012. 10. 15 update

「コンペティション」と「ワールドシネマ」は全作品情報を掲載。その他の部門は、気になる作品を独断で抜粋して掲載しています。

TIFF 第25回東京国際映画祭【WORLD CINEMA】

2012. 10. 15 update

「コンペティション」と「ワールドシネマ」は全作品情報を掲載。その他の部門は、気になる作品を独断で抜粋して掲載しています。

TIFF 第25回東京国際映画祭

2012. 10. 15 update

「コンペティション」と「ワールドシネマ」は全作品情報を掲載。その他の部門は、気になる作品を独断で抜粋して掲載しています。

リム・カーワイ監督特集 シネマ・ドリフターの無国籍三部作

2012. 10. 12 update

"秘すれば花"(世阿弥)という東アジアに顕著な"沈黙の美学"を培った精神的風土は、一方では、"沈黙"が支配する"共同監視社会"を形成する上で予想以上の成果を発揮してしまうのかもしれない、という悪夢めいた連想を呼び寄せながらも、ソニック・ユース的ノイズミュージックが疾走するエンディングが、"全ての悪事を白日のもとに晒す"べく、恩讐の果てに復讐に舞い戻る"恐るべき子どもたち"の到来を予告する『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』(09)で、戦慄すべき長編映画デヴューを遂げたリン・カーワイ監督の特集上映、<シネマ・ドリフターの無国籍三部作>が行われる。この特集上映では、『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』に加え、ルー・リードの傑作アルバムからタイトルを拝借した『マジック&ロス』(10)、新作『新世界の夜明け』(11)が上映され、連日ディープな人選のトークショーが予定されている。注目の特集上映。

映画とシャンソン

2012. 10. 02 update

これは楽しい!フランスのカルチャー・マガジン「レ・ザンロキュプティーブル」編集長ジャン=マルク・ラランヌ、セレクトによる"シャンソン"が印象的に使われているフランス映画特集「映画とシャンソン」が、アンスティチュ・フランセ東京(旧東京日仏学院) で行なわれる。ジャン=マルク・ラランヌのレクチャーや対談、オノレ作品『パリの中で』『ラヴ・ソング』『愛のあしあと』のサントラを手掛けるアレックス・ボーパンのライブもあり!

アジア映画の森

2012. 09. 24 update

デジタルの出現によって映画の多様化が進む現代において、どの特定の分野であろうと、その全貌を掴むのはほぼ不可能となりつつある。そうして全てが液状化しカオスのようにしか見えない現状に対して、"アジア映画"という仮の枠組みを設定して、世界の映画のあまりの野放図さに途方に暮れかけている観客に対して手を差し伸べてくれる特集上映がある。毎日開かれるトークショーは、この特集上映の観客に向けて開かれた姿勢の一端を示しているかもしれない。先だって発売された「アジア映画の森ー新世紀の映画地図」を片手に通い詰めたい特集上映だ。

祝!オリヴィエ・アサイヤス『カルロス』公開!

2012. 08. 27 update

2009年6月、私たちは『クリーン』の日本公開を機にオリヴィエ・アサイヤスへのインタヴューを行った。その時アサイヤスは新作の撮影中で、インタヴューの半分はこの"規格外"の新作について語ることに費やされた。ベネズエラ出身のテロリスト"カルロス"(本名イリイッチ・ラミレス・サンチェス)の半生を描いたその新作映画は、、、

ラウル・ルイス特集 フィクションの実験室

2012. 08. 13 update

先だって東京日仏学院にて行われたメルヴィル・プポーの特集上映で、初期や中期の日本未公開重要作品、そして、後期の傑作(『夢の中の愛の闘い』)も上映され、一気にその知られざる全貌への関心が高まった感のあるラウル・ルイス監督の特集上映が、晩年の大傑作『ミステリーズ 運命のリスボン』がこの秋に公開されるという絶好のタイミングで行われる。前回の上映の評判から、再上映希望の声も多かった『犯罪の系譜』と『夢の中の愛の闘い』、若干9歳にして『海賊の町』でスクリーンでヴューを飾ったメルヴィル・プポー少年、12歳の時の出演作『宝島』、そして、ラウル・ルイスが巨匠として認知されるようになった『見出された時~「失われた時を求めて」より~』以降の、遺作『向かいにある夜』を含む作品群が上映される。予てから、アテネ・フランセ文化センターでのシネクラブ「New Century New Cinema」などでラウル・ルイスの作品を紹介してきた赤坂太輔氏のレクチャーも予定されている。

ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク ドイツ三部作

2012. 08. 09 update

ニュー・ジャーマン・シネマの一翼を担いながら、日本では今までほとんど紹介されることがなかったハンス・ユルゲン・ジーバーベルクの名前がまことしやかに囁かれるようになったのは、(渋谷哲也、荒井泰、五所純子、各氏出演のUSTREAM番組「ハンス・ユルゲン・ジーバーベルクを語る」によると)ドゥルーズの「シネマ」の結論部分でデュラスの『インディア・ソング』(75)と彼の作品が現代映画の代表格として並び賞されたお陰であるらしいのだが、黒沢清監督を「作者の痛快な自信過剰に目の玉が飛び出るほど仰天」させ、相矛盾する二つの思想であるはずの「ブレヒトの叙事演劇とヴァーグナーの音楽美学の映画的結合」(ジーバーベルク)を試みた作品群とは一体どのようなものなのか? ルキーノ・ヴィスコンティの『ルードヴィッヒ』(72)に対抗して作られたという『ルートヴィヒII世のためのレクイエム』(72)、ヒトラーが愛読していたドイツの冒険小説家カール・マイの半生を描いた『カール・マイ』(74)、スーザン・ソンタグが「20世紀最高の芸術作品かつ史上最高の映画」と激賞した約7時間の『ヒトラー、あるいはドイツ映画』(77)という、壮大な"虚構"をモチーフとしたドイツ三部作が、日本語字幕付きで上映される。自分の作品は観るものに開かれた作品であるとジーバーベルク自身が語っている(荒井泰)とのことだから、現在御年77歳のご本人が、日本の観客の反応を一番楽しみにしているに違いない。

タルコフスキー生誕80周年記念映画祭

2012. 08. 07 update

前回、日本でタルコフスキーの回顧上映が行なわれたのは「アンドレイ・タルコフスキー映画祭2010」でのことだったと記憶している。日本で2010年と2012年の間に起きたあまりにも大きな事象は、タルコフスキーの遺作にして、核の時代の「黙示録」的作品『サクリファイス』を観る目を永遠に変えてしまっただろうか? タルコフスキーの没後26年を経た今なお、オタール・イオセリアーニやタル・ベーラといった名匠の口から『アンドレイ・ルブリョフ』という映画タイトルが発話される機会に触れるにつけ、タルコフスキー作品への渇望は高まるばかりだったのだが、今再び、その渇きが癒される機会が到来した。

三大映画祭週間2012

2012. 07. 31 update

世界の三大映画祭といわれるカンヌ、ベルリン、ヴェネチアで上映され好評を博した作品ばかりを選りすぐって上映する「三大映画祭週間」が、昨年の第1回に続いて今年も開催される。ショーン・ペン主演『きっと ここが帰る場所』が評判のパオロ・ソレンティーノの前作『イル・ディーヴォ-魔王と呼ばれた男-』を筆頭に、少年院から脱走を図ろうとする少年たちを描き、ベルリンで審査員特別賞に輝いた『俺の笛を聞け』や、去年のTIFFワールドシネマで上映され評判を得た『ミヒャエル』、フランソワ・オゾンの日本未公開作品『ムースの隠遁』など、注目作品がずらりと並ぶ。開催期間が三週間あるというのも嬉しい。

濱口竜介レトロスペクティヴ

2012. 07. 20 update

2008年の『PASSION』が国内外の映画祭で高い評価を得て、その後も日韓共同製作『THE DEPTHS』(10)、東日本大震災の被災者へのインタビューから成る『なみのおと』(11/共同監督:酒井耕)、4時間越えの長編『親密さ』(12)を発表、精力的に新作を撮り続けている映画作家・濱口竜介のレトロスペクティブがオーディトリウム渋谷で行なわれる。本企画では、濱口監督が敬愛するエリック・ロメールの『三重スパイ』35mmフィルム特別上映、同年代で注目される、加藤直輝、瀬田なつき両監督作品の併映や、アミール・ナデリ、三宅唱、瀬田なつき、黒沢清ら監督陣、そして映画批評家梅本洋一との豪華(!)トークショーも予定されている。

池田千尋監督特集上映

2012. 07. 05 update

若手発掘地域プロジェクトの限界や、劇場公開が叶わないことなどから一念発起し、「作品を観客に届ける責任は監督の自分にある」との思いから、池田千尋監督自らが企画・配給し本特集上映の実現に奔走した、という裏話を知らずとも、2002年に16mmで撮られた『人コロシの穴』で世界(カンヌ国際映画祭)にその存在を知らしめてから10年経た今尚、女性たちが時に息を潜め、時に感情を爆発させる<暗闇>が、2011年の『重なり連なる』まで貫かれていることに、観客は、確固たるオリジナリティを持ったひとりの映画作家の姿を見いだし、彼女が創り上げるフィクションと現実の狭間に照らし出される世界を目撃する喜びと、そして、畏れに浸ることになるだろう。

映画の國名作選VI ホセ・ルイス・ゲリン映画祭

2012. 06. 20 update

世界初!となるホセ・ルイス・ゲリン監督の本格的な特集上映「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」が、4週間に渡って渋谷イメージフォーラムで行なわれる。この映画祭のために、「観客と映画との関係はとても神聖なものだから、自分自身の映画について語るのは好きじゃない」と語るゲリン監督が、「喋らないと日本に呼んでくれないので喋ります」ということで、2年振りの来日を果たす。しかも、あろうことか、(喋り過ぎた?と後悔しているのかも知れない『シルビアのいる街で』を除く)7作品について上映後に解説をしてくれるのだという。こと"映画"に関しては、世界的にまずまず恵まれた環境にあるというべき日本の観客も、今回ばかりは驚かされたといってよい。 「現代の映画というものは常に対話だと思っています。映画の作家、つまり監督が映画を通して観客と対話ができると。それにはいつもオープンでありたいし、そこに関係が出来なければ映画としては成立しないと思っている」とは、2年前のインタヴューで監督が私たちに語ってくれた言葉だが、この考えにいまだブレはないようである。

メルヴィル・プポー特集 誘惑者の日記

2012. 06. 14 update

エリック・ロメールの『夏物語』でその存在を鮮烈に印象づけ、以来、フランソワ・オゾンやアルノー・デプレシャン、ゾエ・カサヴェテスらの作品を通じて、観客にとって気になる存在であり続けてきた俳優メルヴィル・プポーが、フランス映画祭、及び特集上映「メルヴィル・プポー特集 誘惑者の日記」を機に来日する。特集上映では、メルヴィルが9歳の時にスクリーンデヴューを飾った作品『海賊の町』も上映され、以降、彼と多くの現場をともにした、チリ出身の巨匠ラウル・ルイス監督の追悼特集上映の趣きも強い。実際のところ、メルヴィル・プポーの俳優以外の活動(ミュージシャン、監督)や、全150作品もあるという巨匠ラウル・ルイス監督作品が日本で広く知られているわけではなく、今回の特集上映は、日本の観客にとって、またひとつ、世界の映画への扉が開かれる素晴らしい機会となるだろう。2011年に逝去したラウル・ルイス監督、4時間半の大作『ミステリー・オブ・リスボン』にも出演し、今や、フランス映画を代表する俳優のひとりというべきメルヴィル・プポーが、表現者として、アーティストとして、"映画の息子<シネ=フィス>"として、何を語ってくれるのかとても楽しみだ。

モーリス・エンゲル=ルース・オーキン特集

2012. 06. 06 update

トリュフォーやカサヴェテスなど後の映画人に広く影響を与えた、アメリカン・インディペンデントのパイオニア、モーリス・エンゲル=ルース・オーキンの全三作品がアテネ・フランセで上映される。写真家集団フォト・リーグ(1951年、赤狩りの影響で解散)に所属するプロのキャメラマンであったモーリス・エンゲルとルース・オーキン夫妻が、カサヴェテスの16mmで撮影された『アメリカの影』(59)に先んじて(エンゲルが独自に作った軽量の)35mmキャメラを街に持ち出し、1950年代ニューヨークの等身大の人々とその日常を捉えた『小さな逃亡者』(53)、『恋人たちとキャンディ』(56)、『結婚式と赤ちゃん』(58)を今、再発見することは、彼らを普遍的な映画作家として再評価するだけではなく、"映画"とは何よりもまず"PICTURE=写真"(の連続)であるということを再認識させてくれるだろう。デジタルビデオで誰もが身軽に"映画"を撮れてしまう時代にあって、見直されるべき映画作家であると思う。

クリス・マルケル--交差する視線

2012. 05. 30 update

「オール・ピスト的(枠にとらわれない)」表現に挑むアーティストを紹介するアート・フェスティバル「オール・ピスト東京」(会期:6月2日~10日) 。そのシリーズ第1回目として、映画、美術、文学と多様なジャンルの作品を発表しつづけているフランスの映画作家、クリス・マルケルの特集が行われる。日本と独自の関係を築いてきた巨匠の世界に、上映、レクチャー、インスタレーション、パフォーマンスを通して様々な角度から迫る試みになるという。

映画の授業 Cinema Lesson グルジア映画篇

2012. 05. 23 update

セルゲイ・パラジャーノフ初期の傑作『火の馬』(64)から、ラナ・ゴゴベリーゼの現代的な"女性映画"『転回』(86)まで、12本のグルジア映画が、「映画の授業 Cinema Lesson グルジア映画篇」としてアテネ・フランセ文化センターで上映される。グルジアを代表する映画人一家を出自に持つゲオルギー・シェンゲラーヤ、ソビエト女性映画の代表格ラナ・ゴゴベリーゼ、後にペレストロイカの象徴となる作品『懺悔』(84)を撮ることになる巨匠テンギス・アブラーゼ、そして、我らがイオセリアーニ御大!全て必見と言うべき見逃せない作品ばかりが上映される1週間の到来である。

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー没後30周年
特別講義「ファスビンダーと現代」

2012. 05. 08 update

ファスビンダー没後30年を迎え、ミニマルな技法で撮影され映画的強度に満ちた『マルタ』(73-74)と、『マリア・ブラウンの結婚』(79)『ベロニカ・フォスの憧れ』(82)と並ぶ、戦後ドイツ史三部作の一作『ローラ』(81)がアテネ・フランセ文化センターで上映される。『マルタ』における"結婚"、『ローラ』において三角関係に投影される"政治"、この"結婚"と"政治"という、2つのテーマを通じて、21世紀の今、見えてくるものは何か?ファスビンダー作品に、"現代において見失われているポジティヴさ"を読み取ろうという、ドイツ映画研究者渋谷哲也氏のレクチャーも予定されている。

イメージフォーラム・フェスティバル2012

2012. 04. 24 update

水江未来『MODERN No.2』、和田淳『グレート・ラビット』、平林勇『663114』といった、海外の名だたる映画祭で高評価を得た日本の映像作家たちによる作品、映画の本質とは何かという根源的な問いを投げかけるペーター・クーベルカのフィルム作品、独自の美学を獲得しているジェームス・ベニングのデジタル・シネマ、人気のアーティスト、ミランダ・ジュライの新作、筋金入りの活動家でもあるアイ・ウェイウェイがまたも「やってくれた」ドキュメンタリー作品、果ては、オーストリアのアヴァンギャルド映画、スイスはローザンヌのアンダーグラウンド・フィルム(『女体拷問人グレタ』!)まで、圧倒的な質と量で、映像表現の"今"と知られざる過去の"秘蹟"を提示する「イメージフォーラム・フェスティバル2012」がGW開催(@東京)!

映画の國 名作選V フランス映画未公開傑作選

2012. 04. 17 update

シャブロル、ミレール、ロメールというフランス映画の名匠、晩年の傑作『刑事ベラミー』『ある秘密』『三重スパイ』が「映画の國 名作選V フランス映画未公開傑作選」としてロードショー公開される。重要な未公開作品の公開を喜びながら、ヌーヴェルヴァーグの作品ばかり上映している映画館があっても良いのになあ!との思いも強まる。

ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ

2012. 04. 09 update

カサベテスの命日である2月3日に盟友ベン・ギャザラが亡くなり、ありえない結束の固さを見せたカサヴェテス・ファミリー、そんな一味にスクリーンで再会できる時が、20年振りにやってきた。"アメリカン・インディーズの父"といわれるカサヴェテスが、"アメリカ"や"インディーズ"に限定されない世界中の映画作家たちに多大な影響を与え続けているのは何故なのか、その創造の源泉に触れることができるこの機会を、ゆめゆめお見逃しなきよう!

イタリア映画祭2012

2012. 03. 15 update

今年もGW恒例の「イタリア映画祭」が開催される。東京では、4月28日(土)~ 5月4日(金・祝)の7日間、大阪では5月12日(土)、13日(日)の2日間に渡り、イタリアの最新注目映画が上映される。東京会場の特別上映では、ナンニ・モレッティ監督の『ローマ法王の休日』や『輝ける青春』のスタッフが再結集した6時間超えの大作『そこにとどまるもの(仮題)』らの上映も予定されている。

桃まつり presents すき

2012. 03. 14 update

日仏学院で行なわれている特集上映「フランス女性監督特集」は、ここ15年におけるフランスの女性映画作家たちの目覚ましい活躍を伝え、フレッシュな映画を渇望する観客に喜びを与えてくれた。その「フランス女性監督特集」にゲストとして登壇したプロデューサーの大野敦子は、フランスにおける女性監督たちの活躍を横目で見ながら、「あと、5年、いや10年かな?くらいでフランスに追いつきます!」と宣言していた。そんなことも心に留めがら、今年で5回目を迎えるという「桃まつり」に、新しい才能を発掘すべく、貪欲な観客のひとりとして向き合いたい。

フランス女性監督特集

2012. 03. 01 update

ミア・ハンセン=ラヴ監督の長編三作品を始め、女優としての活躍が既に知られているヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、イジルド・ル・ベスコ、ジュリー・デルピー、ヴァレリー・ドンゼッリらの瑞々しい秀作の数々、女優並みに美しいレベッカ・ズロトヴスキ監督のデビュー作など、いずれも、カンヌやロカルノといった国際映画祭で高い評価を受けた作品がズラリと並ぶ、必見の特集上映!ミア・ハンセン=ラヴのトークショーも見逃せない!

特集:映画作家マルグリット・デュラス

2012. 02. 14 update

現代フランス文学を代表する作家にして映画作家でもあるマルグリット・デュラスの、1972年から1981年までの10年間に作られた9作品が、アテネ・フランセ文化センターで特集上映される。トークショーのゲストとして、諏訪敦彦監督、岡村民夫氏(人文学研究者)、吉田広明氏(映画批評家)の登壇が予定されている。人知れず通って、デュラスが羽ばたかせる想像の翼に静かに寄り添いたい。

トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2012

2012. 02. 06 update

昨年、『アンチクライスト』や『100,000年後の安全』といった話題作をいち早く上映した北欧映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル」が、今年は2月11日(土)〜17日(金)の7日間、渋谷ユーロスペース他で開催される。トマス・ヴィンターベアの『セレブレーション』、トリアーの『エレメント・オブ・クライム』らが上映される「The Origin - 北欧映画作家たちの原点 -」やフリドリクソン監督特集も注目だが、何と言っても1921年のサイレント映画『魔女』(12日の回は柳下美恵さんのピアノ伴奏付き!)はどうしても観ておきたい。

オタール・イオセリアーニ映画祭2012

2012. 02. 02 update

名匠オタール・イオセリアーニ監督最新作『汽車はふたたび故郷へ』の公開を記念して、デビュー作『四月』から『ここに幸あり』まで7作品を特集上映する「オタール・イオセリアーニ映画祭2012」がオーディトリウム渋谷で開催される。すでに日本での権利切れとなった『素敵な歌と舟はゆく』が特別上映されるほか、『月曜日に乾杯!』も日本最終上映になる。昨年映画美学校で行われたマスタークラスの忘れ難い夜、ノンシャランに、浪々と唄うように語り続けた御大のお姿を思い出しながら、この貴重な特集上映に足を運びたい。

カプリッチ・フィルムズ ベスト・セレクション
先鋭的であること:映画批評の現在とは

2012. 01. 27 update

東京日仏学院、今年一発目の特集上映「カプリッチ・フィルムズ ベスト・セレクション」がいよいよ始まろうとしている。フランスで最も先鋭的な作品の製作・配給・出版を手掛けるレーベルとして注目されている"カプリッチ・フィルムズ"の傑作群が一挙上映され、『猫、聖職者、奴隷』の木下香監督、boidの樋口泰人氏、カプリッチ・フィルムズのティエリー・ルナス氏らが登壇するトークショーも予定されている。もはや自明のものではなくなった"映画批評"は、現代において未だ有効なのか?という疑問符を頭の片隅に抱きつつも、ロバート・クレイマー、ジャン=クロード・ルソー、ストローブ=ユイレ、アルベルト・セラら、その作品自体がラディカルな映画批評そのものである傑作群に触れ、トークショーの熱に絆されるうちに、そんな疑問符はどこかに消し飛んでいるに違いない。

映画祭1968

2012. 01. 23 update

『マイ・バック・ページ』を見て、学生運動のことを初めて知ったという現役日藝生による企画上映「映画祭1968」が1週間限定でオーディトリウム渋谷で行なわれる。日大を舞台とした記録映画『日大闘争』『続日大闘争』『死者よ来たりて我が退路を断て』、日本の"1968年"を考える上で外すわけにいかない『圧殺の森 --高崎経済大学闘争の記録--』と『パルチザン前史』といったセレクションに加えて、村上龍の爆笑原作小説の映画化作品『69 sixty nine』がラインナップされているところに、21世紀的なバランス感覚を感じる。しかも、ゴダール『東風』上映のトークゲストに上野千鶴子登場とは!

祝『NINIFUNI』公開&『イエローキッド』特別上映!

2012. 01. 18 update

2011年ロカルノ国際映画祭で中編映画としては異例の招待作品に選ばれ、青山真治監督の『東京公園』、富田克也監督の『サウダーヂ』と共にロカルノを湧かした真利子哲也監督の最新作『NINIFUNI』(宮﨑将、ももいろクローバー共演)が2月4日(土)より渋谷ユーロスペースを皮切りに全国公開される。『NINIFUNI』の公開を祝して長編デビュー作『イエローキッド』も1週間限定で特別上映される。未見の方は是非この機会に!

ボリス・バルネット傑作選

2011. 12. 28 update

サイレントからトーキーの時代を跨ぎ、ラブロマンス、サスペンス、悲劇、コメディとあらゆるジャンル映画を、ハリウッド古典映画の言語を駆使して作り上げた、ソビエト娯楽映画の天才ボリス・バルネットの傑作選が渋谷ユーロスペースで開催される。2月9日(木)『帽子箱を持った少女』は、柳下美恵さんピアノ生伴奏付き!

祝!『サウダーヂ』凱旋全国ロードショー!

2011. 12. 28 update

ナント三大陸映画祭コンペでグランプリ「金の気球賞」を受賞した富田克也監督『サウダーヂ』(空族制作)関連の上映企画が相次いで決定、2011年12月末時点での上映情報を掲載する。『ダウダーヂ』に寄せられた賞賛は単なる"雰囲気"などではなく、マスメディアを飛び交うセンセーショリズムとはほど遠い地点から、日本の(ひいてはそれが世界へと繋がる)現状を炙りだす"余白"が映画に残されていること、つまりは観客の知性を信頼しているところに、その成功の一因があるように思える。観る度に新たな映画体験を呼び起こす『サウダーヂ』を巡る賞賛はまだ暫く止みそうにない。

『歴史は女で作られる』デジタル・リマスター完全復元版

2011. 12. 09 update

マックス・オフュルスの"呪われた映画"『歴史は女で作られる』のデジタル・リマスター完全復元版が、3週間限定でロードショー公開される。ジャン・ドーボンヌの絢爛豪華な美術、妖婦ローラ・モンテスを演じるマルティーヌ・キャロル、『赤い靴』デジタル・リマスター版で大スクリーンに蘇ったばかりのアントン・ウォルブルックといった映画史の豊穣に触れる喜びに浸かりながらも、2000年に山田宏一が「何が映画を走らせるのか?」の最後の最後に、本作を参照して記した言葉にも思いを馳せながら、煌めくスクリーンに向き合いたい。

『-×-』(マイナス・カケル・マイナス)トークイベント

2011. 12. 02 update

「NO NAME FILMS」の『トビラを開くのは誰?』で、巧みな映画空間にメランコリックな詩情を滲ませ、観るものにその名を印象づけた伊月肇監督の長編デビュー作『-×-』(マイナス・カケル・マイナス)が2週間限定でレイトショー上映され、諏訪敦彦監督、山本政志監督、そして、空族(富田克也、相澤虎之助)等々が伊月監督と対談するトークショーが行なわれる。「NO NAME FILMS」に続いて、若手監督が夜のユーロスペースをジャックする!

鉛の時代 映画のテロリズム

2011. 11. 25 update

60年代後半から80年代にかけて、極左テロリズムがヨーロッパ、そして日本で多発した"鉛の時代"を描いた映画の特集上映が東京日仏学院で行なわれる。カンヌ映画祭で話題となり、米フィルム・コメント誌で年間1位に選ばれるなど、高い評価を得ているオリヴィエ・アサイヤスの傑作『カルロス』、国際テロリストばかりを擁護したフランス人弁護士の半生をスリラー仕立てで描いた『テロルの弁護士』といった作品の上映やフィリップ・アズーリのレクチャー、さらにはアサイヤスの来日も予定されており、またもや、見逃せない特集上映となっている。

NO NAME FILMS

2011. 11. 17 update

「無名」というわりには、諏訪敦彦、塩田明彦、柴田剛といった名だたる監督陣がトークショーに登壇し、柄本佑、麿赤兒、利重剛、鈴木卓爾といったスクリーンで慣れ親しんだ俳優陣も出演する短編映画プログラム「NO NAME FILMS」の監督陣は、海外や日本の映画祭で受賞経験を持つ俊英が揃う。「NO NAME FILMS」に続いてレイトショー公開される伊月肇監督の『-×-』(マイナス・カケル・マイナス)も、諏訪監督が絶賛する等、何やらとても前評判が良い。

ミニシアター巡礼

2011. 11. 15 update

タイトルが、蓮實重彦の名著『映画巡礼』を想い出させないでもない本著『ミニシアター巡礼』は、21世紀のミニシアターの観客に、20世紀的にハイ・カルチャーの豊穣で読者を魅了した『映画巡礼』とは異次元の切実さで"あの暗闇"の必要性を迫る。 映画ファンに広く読んで頂きたい好著。

第12回東京フィルメックス【特集上映『ニコラス・レイ生誕百年記念上映』】

2011. 11. 10 update

11/19(土)から9日間に渡って開催される第12回東京フィルメックス、アジアの新進作家による10作品が上映される「コンペティション」、映画の最先端を切り拓く「特別招待作品」、3人の映画作家の特集上映『限定!川島パラダイス♪』『相米慎二のすべて -1980-2001全作品上映-』 『ニコラス・レイ生誕百年記念上映』 の全上映作品のリリース情報を掲載。

第12回東京フィルメックス【特集上映『相米慎二のすべて -1980-2001全作品上映-』】

2011. 11. 10 update

11/19(土)から9日間に渡って開催される第12回東京フィルメックス、アジアの新進作家による10作品が上映される「コンペティション」、映画の最先端を切り拓く「特別招待作品」、3人の映画作家の特集上映『限定!川島パラダイス♪』『相米慎二のすべて -1980-2001全作品上映-』 『ニコラス・レイ生誕百年記念上映』 の全上映作品のリリース情報を掲載。

第12回東京フィルメックス【特集上映『限定!川島パラダイス♪』】

2011. 11. 10 update

11/19(土)から9日間に渡って開催される第12回東京フィルメックス、アジアの新進作家による10作品が上映される「コンペティション」、映画の最先端を切り拓く「特別招待作品」、3人の映画作家の特集上映『限定!川島パラダイス♪』『相米慎二のすべて -1980-2001全作品上映-』 『ニコラス・レイ生誕百年記念上映』 の全上映作品のリリース情報を掲載。

第12回東京フィルメックス【特別招待作品】

2011. 11. 10 update

11/19(土)から9日間に渡って開催される第12回東京フィルメックス、アジアの新進作家による10作品が上映される「コンペティション」、映画の最先端を切り拓く「特別招待作品」、3人の映画作家の特集上映『限定!川島パラダイス♪』『相米慎二のすべて -1980-2001全作品上映-』 『ニコラス・レイ生誕百年記念上映』 の全上映作品のリリース情報を掲載。

第12回東京フィルメックス

2011. 11. 10 update

11/19(土)から9日間に渡って開催される第12回東京フィルメックス、アジアの新進作家による10作品が上映される「コンペティション」、映画の最先端を切り拓く「特別招待作品」、3人の映画作家の特集上映『限定!川島パラダイス♪』『相米慎二のすべて -1980-2001全作品上映-』 『ニコラス・レイ生誕百年記念上映』 の全上映作品のリリース情報を掲載。

ビバ! ナデリ

2011. 11. 07 update

第12回東京フィルメックスの審査員長を務めるアミール・ナデリ監督の2作品、『サウンド・バリア』(05)『べガス』(08)をスクリーンで観ることのできる二日間限定の特集上映「ビバ!ナデリ」が、オーディトリウム渋谷で行われる。103の名作映画を引用し、"映画"への激し過ぎる愛を迸らせる、日本で撮影された最新作『CUT』のフィルメックス上映(11/23)とロードショー公開(12/17〜)を前に、ナデリ監督の近作に触れるレアな機会が到来!

ワン・ビン(王兵)特集上映 part 2

2011. 11. 02 update

この10年に登場した最も重要な映画監督の1人、とも言われるワン・ビンのレトロスペクティブ part 2 がいよいよ始まる。この機会に part 1 で見逃した作品を観て12/17公開の『無言歌』に備えたい、などと言うは易し行なうは難しなのがワン・ビン作品の困ったところ。『原油』の7時間×2 と『鉄西区』9時間は難しいとしても、この赤い服を身に纏った老女の記憶こそが"映画"だ!と叫びたくなる『鳳鳴--中国の記憶』、ワン・ビン、ペドロ・コスタ、シャンタル・アケルマン、アイーシャ・アブラハム、ヴィセンテ・フェラス、アピチャッポン・ウィーラセタクン、6人の映画作家がそれぞれの視点で「世界」を描くオムニバス『世界の現状』くらいは観ておきたいところ。

フレデリック・ワイズマンのすべて

2011. 10. 27 update

日本での公開が決まった新作『クレイジー・ホース(仮)』がTIFFで上映され、御大ご本人も来日もする特集上映「フレデリック・ワイズマンのすべて」がいよいよ開催される。『ボクシング・ジム』(10)など、日本初公開となる8作品を含む、現在上映可能な36作品一挙上映!はほとんど快挙と言っていいだろう。この機会にあの分厚いご本、「全貌フレデリック・ワイズマン―アメリカ合衆国を記録する」(土本典昭+鈴木一誌編)もGETし、準備万端で向き合う、なんて事をできる強者がこの世知辛い今の日本に何人いるだろうか?という疑問はさておき、この素晴らしい特集上映の実現を祝福したい。

TIFF 第24回東京国際映画祭【香川京子と巨匠たち】

2011. 10. 17 update

TIFF自主企画全作品のリリース情報を掲載します。コンペティション作品に関しては、一言コメントも掲載。観た作品に関しては、5段階評価や簡単なレビューを掲載していきます。監督インタビューも予定しています。

TIFF 第24回東京国際映画祭【natural TIFF】

2011. 10. 17 update

TIFF自主企画全作品のリリース情報を掲載します。コンペティション作品に関しては、一言コメントも掲載。観た作品に関しては、5段階評価や簡単なレビューを掲載していきます。監督インタビューも予定しています。

TIFF 第24回東京国際映画祭
【日本映画・ある視点】【巨匠へのオマージュ】【震災を超えて】【日中友好】【映画人の視点】

2011. 10. 17 update

TIFF自主企画全作品のリリース情報を掲載します。コンペティション作品に関しては、一言コメントも掲載。観た作品に関しては、5段階評価や簡単なレビューを掲載していきます。監督インタビューも予定しています。

TIFF 第24回東京国際映画祭【アジアの風】

2011. 10. 14 update

TIFF自主企画全作品のリリース情報を掲載します。コンペティション作品に関しては、一言コメントも掲載。観た作品に関しては、5段階評価や簡単なレビューを掲載していきます。監督インタビューも予定しています。

TIFF 第24回東京国際映画祭【アジアの風 アジア中東パノラマ】

2011. 10. 14 update

TIFF自主企画全作品のリリース情報を掲載します。コンペティション作品に関しては、一言コメントも掲載。観た作品に関しては、5段階評価や簡単なレビューを掲載していきます。監督インタビューも予定しています。

TIFF 第24回東京国際映画祭【WORLD CINEMA】

2011. 10. 14 update

TIFF自主企画全作品のリリース情報を掲載します。コンペティション作品に関しては、一言コメントも掲載。観た作品に関しては、5段階評価や簡単なレビューを掲載していきます。監督インタビューも予定しています。

TIFF 第24回東京国際映画祭【特別招待作品】

2011. 10. 14 update

TIFF自主企画全作品のリリース情報を掲載します。コンペティション作品に関しては、一言コメントも掲載。観た作品に関しては、5段階評価や簡単なレビューを掲載していきます。監督インタビューも予定しています。

空族特集上映<選べ失え行け!2011>

2011. 10. 13 update

映画業界関係者や一部シネフィルの間で<空族>の名前が囁かれるようになったのは、映画美学校映画祭でスカラシップを獲得した2004年頃からだろうか。鬼才といわれる真利子哲也をして「現在の日本で最強の自主映画制作集団」といわしめる、<空族>の現時点での全貌が、ロカルノを熱狂させた『サウダーヂ』公開を目前に控えた今、渋谷オーディトリウムで行なわれる特集上映<選べ失え行け!2011>でいよいよ明らかになろうとしている。

TIFF 第24回東京国際映画祭

2011. 10. 12 update

OUTSIDE IN TOKYOが気になる作品をピックアップ、各作品のリリース情報を掲載します。観た作品に関しては、簡単なレビューを掲載、監督インタビューも予定しています。

『ベニスに死す』ニュープリント上映

2011. 09. 30 update

ルキーノ・ヴィスコンティ、不朽の名作『ベニスに死す』が、ニュープリントでスクリーンに甦る。 必要以上の字幕を削ぎ落とし、より映像と音を堪能出来るよう手を加えられたというニュープリント版が上映されるこの機会に、同じマーラー「交響曲第5番」を使った園子温の21世紀的傑作『恋の罪』(11月12日公開)と比較して観るのもまた一興。

Cinema de Nomad「漂流する映画館」『5windows』瀬田なつき × 蓮沼執太

2011. 09. 30 update

瀬田なつきの新作が意外な形で上映される。暗闇で観るものが「映画」であるという定型枠を超えて、瀬田なつきの映画自体が常に獲得しようとしている"軽さ"を、形式上でも獲得しようという試みなのだろうか?この野心的な試みが、希有な体験として人々の心に残るものになるのか、横浜黄金町の夜の帳に霧散していってしまうのか、"映像"の責任だけでは負いきれない、開かれた空間の中で共謀者たちとどのような策略が巡らされているのか?などと訝りながらも、軽いフットワークで足を運びたい魅力的な試み。

ひきずる映画 ―ポスト・カタストロフ時代の想像力―

2011. 09. 09 update

フィルムアート社から刊行された「能動的に映画を体得し、現代を取り巻く問題系にまなざしを向け、知識ではなく知恵(sophia)として点在するものを繋げていく」新シリーズ<CineSophia>の第一弾「ひきずる映画 ポスト・カタストロフ時代の想像力」の書評を掲載。

ジャンヌ・バリバール+ペドロ・コスタ監督特集2011

2011. 08. 25 update

東京の夜を、"映画"への愛と"現状"に対する怒り、親密であると同時に不穏な空気で満たしたペドロ・コスタ監督と女優ジャンヌ・バリバールが来日して一年を経た今、『何も変えてはならない』のDVD発売 と(待望の!)『溶岩の家』スクラップブック刊行を記念した特集上映が行なわれる。ペドロ・コスタ監督作品とジャンヌ・バリバールのライブ映像、そして、ダニエル・ユイレ亡き後のジャン=マリー・ストローブ単独名義の3作品を上映、静寂が支配する空間に耳を澄まし、暗闇が支配する映像に目を凝らし、スクリーンに映されるコスタ作品に埋没したい。いろいろあり過ぎる世間の喧噪からしばし離脱して、沈思黙考に浸りたい、そんな気分にぴったりな特集上映である。

第15回カイエ・デュ・シネマ週間
モーリス・ガレル追悼上映|カンヌ映画祭批評家週間50周年

2011. 08. 23 update

東京日仏学院の映画プログラムディレクター坂本安美さんが、「カイエ・デュ・シネマ」の編集委員たちとともに選りすぐった最新のフランス映画を紹介する「カイエ・デュ・シネマ週間」、第15回を迎える今回は、カンヌ映画祭批評家週間のディレクターを務める映画批評家シャルル・テッソン氏のレクチャーが予定されている。また、過去の批評家週間で選ばれた作品の上映に加えて、今年6月に享年88歳でその生涯を閉じた俳優モーリス・ガレルの追悼上映も予定されている。去年のTIFFで新作『ハンズ・アップ!』が賞賛されたロマン・グーピル監督の伝説的処女作『三十歳の死』も見逃せない。

ジャック・ロジエのヴァカンス

2011. 08. 11 update

昨年の1月、ちょっとした"事件"としてその開催が祝福された特集上映「ジャック・ロジエのヴァカンス」の堂々たる凱旋上映が、お盆休みシーズンの今、アテネ・フランセで行なわれる。映画批評家のクリス・フジワラ、葛生賢によるレクチャーも予定されており、ヌーヴェル・ヴァーグの至宝ジャック・ロジエの瑞々しい傑作群を今再びスクリーンに迎える準備が万端整った。

Ziggy Films 70's vol.2『ナッシュビル』『天国の日々』

2011. 08. 05 update

昨年、『バード★シット』『ハロルドとモード』をスクリーンに甦らせてくれたZiggy Films 70'sが、今年もやってくれる。去年の『バード★シット』に続いて、日本ではDVD化もされておらず中々見る機会のないアルトマンの大傑作のひとつ『ナッシュビル』が8/6から、カンヌでパルム・ドールを受賞し世間を賑わした『トゥリー・オブ・ライフ』の公開を間近に控えたテレンス・マリック監督1978年の代表作『天国の日々』が8/27から上映される。どちらも見逃せない!

吉増剛造映像作品2006-2011「予告する光 gozoCiné」

2011. 07. 27 update

ジョナス・メカスやアレクサンドル・ソクーロフとの交友でも知られる、日本を代表する詩人吉増剛造が、5年間にわたって自ら撮影・録音・編集を手掛け創り上げた「gozoCiné」と名付けられた全作品(52篇)が、一挙レイトショー上映される。併せて予定されている、ホンマタカシ、今福龍太、朝吹真理子らとの対談も楽しみ。

ポルトガル映画祭 マノエル・ド・オリヴェイラとポルトガル映画の巨匠たち【最終上映】

2011. 07. 26 update

去年の9月にフィルムセンターで開催された「ポルトガル映画祭 マノエル・ド・オリヴェイラとポルトガル映画の巨匠たち」が、その後全国9会場を巡回して、今、アテネ・フランセ文化センターで最終上映される。映画批評家赤坂太輔氏による講演会「ポルトガル映画と上演の映画」(8/6土曜14:00)も聞き逃せない。

クロード・シャブロル特集 映画監督とその亡霊たち

2011. 06. 20 update

『引き裂かれた女』『甘い罠』『最後の賭け』『悪の華』で観客をシャブ中に陥れたクロード・シャブロル監督特集、その第2幕がいよいよ上がろうとしている。傑作選的な前半のユーロスペース、再び三たび、シャブ中として作品群に埋没し共鳴し合う符号を堪能したい、後半の東京日仏学院、1ヶ月の間、18日間に及ぶ映画ファン殺しの特集上映が行われる。シャブロル映画の"亡霊たち"と共に暗闇にまみれる東京の蒸し暑い夜がやってきた。

カンヌ国際映画祭2011:セレクティッド・レビュー

2011. 06. 08 update

フランス国内ではIMFストロスカーン専務理事のニューヨークにおける逮捕劇に霞み、ラース・フォン・トリアーの舌禍問題ばかりが目立った感のある今年のカンヌ国際映画祭だが、全体的な傾向として、テクノロジーの進化を競う傾向から、精神性重視の人間らしさが前面に出た作品に回帰する兆しが顕著にみられる、まずまず充実した映画祭だったとの声も聞こえている。OUTSIDE IN TOKYOは、そうした作品群の中から、日本でも公開が待望されているラース・フォン・トリアーの『メランコリア』、ダルデンヌ兄弟の『少年と自転車』、そして、今年の上映作品の中でも最高傑作との呼び声も高いアキ・カウリスマキ『ル・アーヴル』のレビューを掲載する。

反権力のポジション―キャメラマン 大津幸四郎

2011. 06. 02 update

日本のドキュメンタリー映画を支えてきたキャメラマン大津幸四郎の仕事を一気に紹介する特集上映が、オーディトリウム渋谷で行なわれる。大津幸四郎さんご本人と14名のゲストが予定されているトークイベントも注目だが、併せて上映される『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』は、二人の映画人の"映画"に対する全人格的な真摯な振る舞いと言葉が観るものの襟を正す、必見のドキュメンタリー作品である。『マイ・バック・ページ』を観て、あの時代に興味を抱いた若い世代の観客に是非とも足を運んでほしい特集上映。

没後30年 グラウベル・ローシャ ベストセレクション

2011. 05. 26 update

ブラジル、シネマ・ノーヴォの中心人物グラウベル・ローシャの特集上映が行なわれる。カエターノ・ヴェローゾが「トロピカリア」のすべてはこの映画を見た瞬間に僕の中で形成されたと語る『狂乱の大地』、代表作『アントニオ・ダス・モルテス』、アントニオーニが絶賛した遺作『大地の時代』ら、代表作5本が特集上映される。

ゲンスブールと女たち

2011. 05. 20 update

クロード・シャブロル監督のキャメオ出演が衝撃的な『ゲンスブールと女たち』がいよいよ公開!「女たち」だけではなく、ゲンスブールの内面性が独特の絵作りでポートレイトされた魅力的な作品『ゲンスブールと女たち』の公開を記念して、bunkamuraでは写真展が同時開催され、併せて、ゲンスブールの生涯を貴重な写真と本人の発言を織り交ぜながら振り返るクロニクル・ブック「馬鹿者たちのレクイエム」も発売される。

ソビエト映画アーカイヴス スペシャル

2011. 04. 14 update

昨年の秋アテネ・フランセで行われたソビエト映画特集、好評につき新たなラインナップ(『白い汽船』『がんばれかめさん』『炎628』は昨年も上映)の名作、重要作20作品が「ソビエト映画アーカイヴス スペシャル」として一挙上映される。3月にアップリンクで行なわれた「100年のロシア」に続いて、見応え充分の北の大国の並外れた映画群に触れ、厳しい現実を乗り越える想像力を養いたい。

クロード・シャブロル監督特集

2011. 04. 06 update

2010年9月12日、惜しくもこの世を去ったクロード・シャブロル監督の特集上映が相次いで行なわれる。film comment誌に「海面上の"波"を作りだすことよりも、海底を深く暗く流れる"潮流"を見つめることにより魅せられた」と評されるその生涯を通じて、シャブロルはどのような映画を遺したのか、『引き裂かれた女』の公開に続いて、見逃すわけにはいかない特集上映が、今、正に様々な価値観が根底から揺らぎ、大きな地殻変動が起きつつある街、東京を舞台に始まろうとしている。

100年のロシア

2011. 03. 18 update

奇しくも同時期に行われる「ロシアからソビエトへ ソビエトからロシア」というサブタイトルを持つロシア映画の特集上映『100年のロシア』は、ソビエト連邦の誕生から崩壊、再びロシアへと変遷する100年を映画を通じて見つめる。ソクーロフ、カネフスキーのみならず、アレクセイ・ゲルマン、アレクサンドル・プトゥシコ、ヤーコフ・プロタザーノフのサイレント映画まで、壮大なスケールのロシア映画100年に触れることのできる素晴らしい機会。

松竹グループより:「東北関東大震災義援金」募金活動のお知らせ

2011. 03. 17 update

松竹グループが被災された方々への募金活動を3/19(土)より、各地の映画館などで始める。映画に行く余裕のある環境にある方々は、是非映画館へ!

映画美学校、渋谷で再始動!
作り手と観客の開かれた関係を模索する、映画の家「キノハウス」

2011. 03. 05 update

「映画美学校」が渋谷へ移転。ユーロスペース、シネマヴェーラ、新設のオーディトリウム渋谷と共に、作り手と観客の開かれた交流の場を模索する「キノハウス」が誕生した。3/3に行なわれた「キノハウス」内覧会の簡単なレポートと今後のイベント、上映予定などを掲載。映画だけではなく、ライブや演劇、落語にも間口を拡げていく多角的な試みと作り手と観客の21世紀的な関係の模索に乗り出した映画美学校の新たな試みに注目していきたい。

筒井武文監督特集

2011. 03. 02 update

諏訪敦彦監督が「私は未だに追いつけていない」と語る、映画作家筒井武文の全貌が明らかになる特集上映がアテネ・フランセ文化センターで行なわれる。フィクションからドキュメンタリー、サイレント映画から3D映画まで、広汎なフィールドにわたるその創作活動に触れる絶好の機会。諏訪敦彦、松本俊夫、瀬田なつき等、トークショーゲストも大充実!

ボックスオフィスの彼方に ~興行の縁で映画を考える~

2011. 02. 22 update

相次ぐミニシアターの閉館は私たちが観ることができる映画の多様性を奪っていくのか?配給と封切りという映画の商業サイクルの周縁で活動を続け、日本における映画環境の多様性を創出してきたパイオニアたちが集う、映画の未来に向けた刺激的な上映&トークイベントが行なわれる。登壇するゲストは、アテネ・フランセ文化センター松本正道、東京日仏学院坂本安美、boid主宰樋口泰人、ユーロスペース創設者堀越謙三、プロデューサー松田広子、昨年の「未来の巨匠たち」が好評を博した北仲スクール主催。予約不要&無料の必見イベント!!

トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2011

2011. 02. 01 update

ついにそのヴェールを脱ぐ衝撃作ラース・フォン・トリアーの『アンチクライスト』、10万年後まで放射性廃棄物を封印するという世界初の永久地層処理場建設の合理性を問うドキュメンタリー『100,000年後の安全』、捕鯨禁止で失業した一家が大虐殺を繰り広げる、裕木奈江主演の北欧ホラー『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』のプレミア上映、ラース・フォン・トリアー監督とルーカス・ムーディソン監督の特集上映、スチルを見るからに如何にも興味深い女性アニメーション監督特集、スサンネ・ビアやロイ・アンダーソンの作品を含む傑作選、これら全てが一週間に凝縮された『トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2011』、ちょっと凄すぎます。

製作20周年記念リバイバル公開『ポンヌフの恋人』

2011. 01. 21 update

レオス・カラックス監督、『ボーイ・ミーツ・ガール』『汚れた血』に続く<アレックス青春3部作>の完結編『ポンヌフの恋人』が、製作20周年を記念してニュープリントでリバイバル公開される。当時カラックスの恋人であったジュリエット・ビノシュと、カラックスの化身と言われていたドニ・ラヴァンが、映画史に残る恋人たちを演じ、38億円という巨額の総製作費とフランス映画史上最大のオープンセット、2度の撮影中断に相つぐ破産など、伝説に満ちたカラックスの最高傑作が今、スクリーンに蘇る。

<阪神・淡路大震災15年特別企画> 映画『その街のこども 劇場版』公開記念ライブ

2011. 01. 05 update

阪神淡路大震災から15年の節目として作られた映画『その街のこども 劇場版』は、震災の余波、つまり、震災が人々の心に残した傷を描くという作品本来の使命だけではなく、実際に震災を体験した二人の優れた俳優(森山未來と佐藤江梨子)のユーモアとリアリティに満ちたリズミカルな掛け合いと、神戸の夜を捉えたロードムーヴィー的なロケーション撮影、そして、サウンドトラックを手掛けた大友良英のバンドアンサンブルが素晴らしい、必見の映画である。この映画の公開を記念して、大友良英サウンドトラックスと、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のエンディングで強い印象を残し、本作の主題歌を手掛けた阿部芙蓉美もゲスト出演するライブイベントが行われる。

マチュー・アマルリック特集

2010. 12. 24 update

フランスの人気俳優マチュー・アマルリックの監督としての仕事が広く評価され始めている。今回の特集上映では、第63回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『オン・ツアー(仮)』や『舞台は夢 イリュージョン・コミック』などの新作に加え、過去の監督作品を一挙上映、マチュー自らがセレクトした他監督の作品として、ジャック・ロジエの初監督短編作品『新学期』や、『メーヌ・オセアン』から15年ぶりにメガフォンを撮った作品『フィフィ・マルタンガル』といったレアな作品も上映される!

アモス・ギタイ監督特集 越えて行く映画:第3部

2010. 12. 22 update

フィルメックスでの<亡命三部作>『エステル』『ベルリン・エルサレム』『ゴーレム、さまよえる魂』、最新作『幻の薔薇』の上映、東京日仏学院での<イスラエル現代三大都市三部作><ユートピア崩壊三部作><21世紀におけるエグザイル三部作>の上映、そして来日した監督本人による、精力的なQ&Aやティーチインを通して、その作品の全貌が明らかになり、いよいよ日本でもその重要性が認識されつつある、イスラエルの映画作家アモス・ギタイ監督のドキュメンタリー作品、インスタレーション作品がアテネ・フランセ文化センターで一挙上映される。暗闇の中にあった、かの地の歴史や状況が、彼の作品に触れることで、次第に目が慣れてきて、すこしづつ見えるようになってきたと感じている我々にとって、もはや見逃すことのできない特集上映。

映画の國 名作選Ιイタリア編:『暗殺の森』『フェリー二の道化師』『ロベレ将軍』

2010. 12. 17 update

スコリモフスキ、ゲリンと日本における映画環境の豊かさを支えてきた"紀伊國屋書店&マーメイドフィルム"がまたもやってくれました。映画の國名作選Ⅰ <イタリア編>として、ベルトルッチの最高傑作『暗殺の森』、ロッセリーニの隠れた名作『ロベレ将軍』、フェリーニの哀愁に満ちたサーカスへのオマージュ『フェリーニの道化師』が今、スクリーンに鮮やかに蘇る!

シネマ・ノーヴォ特集

2010. 11. 29 update

一昨年の「ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督特集」、今年5月の「ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督特集2010」(共にアテネ・フランセ文化センター)で着火したシネマ・ノーヴォ再評価の火がまだメラメラと燃え盛っている。まさに"怪作"というべき『マクナイーマ』も面白いが、ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の名作『リオ40度』は、シネマ・ノーヴォの発火点とされる最重要作品、日本初公開となるクラウベル・ローシャ監督『切られた首』も併せて、是非この機会にお見逃し無く!

白いリボン公開記念映画祭 ミヒャエル・ハネケの軌跡

2010. 11. 26 update

正に"不浄の傑作"(イブニング・スタンダード紙)という言葉が相応しい、ミヒャエル・ハネケ監督のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『白いリボン』の日本公開(12月4日)を記念して、ハネケ監督の全貌を振り返る映画祭が開催される。ドイツ時代の「感情の氷河化」三部作、フランスへ進出し、ジュリエット・ビノシュやイザベル・ユペールを主演に迎えた数々の問題作が、今またスクリーンを暗闇の中で震わせる。ユペール、ベアトリス・ダル競演の『タイム・オブ・ザ・ウルフ』はスクリーン初上映!

アモス・ギタイ監督特集 越えて行く映画:第1部・第2部

2010. 11. 22 update

昨年のフィルメックスでの、パレスチナ史と自らの家族の歴史を織り込んだ傑作『カルメル』が未だ記憶に新しい、イスラエルの映画作家アモス・ギタイ監督の特集上映が行なわれる。東京フィルメックス映画祭、東京日仏学院、アテネ・フランセ文化センターの3者共催で開催される本特集上映には、初期のドキュメンタリー作品から、(クリストフ・オノレ作品で私たちを魅了した)レア・セドゥ!が主演した最新作まで魅惑的なラインナップが並ぶ。監督ご本人が登壇するトークショーも多く予定されている。

『ゴダール・ソシアリスム』公開記念 『ゴダール映画祭2010』

2010. 11. 22 update

ついに!ついに公開されるジャン=リュック・ゴダールの新作『ゴダール・ソシアリスム』。ゴダールの新作の公開という事件は、いつでも先行して目にすることになるチラシビジュアルや場面写真から伝わってくる圧倒的な"新しさ"から始まるが、今回のこのスチルの圧倒的な美しさは一体何ということか!!新作公開を記念して行なわれる特集上映に通いつつ、またもや映像美学における人類未踏の領域を拡張する、予感に満ちたゴダールの新作公開を心して待つ。

アンヌ・ヴィアゼムスキー特集上映

2010. 11. 08 update

ロベール・ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』の主演女優に大抜擢され、"日記を続けるのは素晴らしいことだ。ブレッソンが何かおかしな事をしたら、後で復讐できるからな!"という祖父フランソワ・モーリアックの不穏な冗談を汚らわしいと感じたという、繊細な少女時代を平明な文体で回想したアンヌ・ヴィアゼムスキーの小説『少女』の出版を記念して、東京日仏学院で彼女の出演作品の特集上映が行なわれる。ご本人のトークショーも予定されている必見の特集上映!

ストローブ=ユイレの軌跡 1962-2009

2010. 11. 02 update

映画による抵抗運動を継続するジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレ(ストローブ=ユイレ)。その32作品を時系列に一挙上映し、47年間の軌跡を辿る特集上映が行われる。ペドロ・コスタをはじめとした映画の最前線で闘う世界中の映画作家たちにその精神が継承されているストローブ=ユイレの作品群が放つ孤高の輝きは時を経ると共に増すばかりだ。

アラン・ドロン生誕75周年記念映画祭

2010. 10. 19 update

アラン・ドロンの生誕75周年を記念して、国内ではおよそ46年ぶりの公開となる『黒いチューリップ』、共演のマリアンヌ・フェイスフルも魅力炸裂の『あの胸にもういちど』、ヴィスコンティの永遠の名作『若者のすべて』など、1960年代の出演作5本を一挙上映。ドロンのファン向けの様々な企画も予定されている。

TIFF 第23回東京国際映画祭【WORLD CINEMA】

2010. 10. 18 update

OUTSIDE IN TOKYOが気になる作品をピックアップ、各作品のリリース情報を掲載します。「WORLD CINEMA」部門に関しては、11作品から独自に10作品をピックアップ。

TIFF 第23回東京国際映画祭【日本映画・ある視点】【natural TIFF】

2010. 10. 18 update

OUTSIDE IN TOKYOが気になる作品をピックアップ、各作品のリリース情報を掲載します。「日本映画・ある視点」部門に関しては、8作品から独自に2作品をピックアップ、「natural TIFF」部門に関しては、10作品から独自に5作品をピックアップ。

TIFF 第23回東京国際映画祭【アジアの風】

2010. 10. 15 update

OUTSIDE IN TOKYOが気になる作品をピックアップ、各作品のリリース情報を掲載します。「アジアの風」部門に関しては、38作品から独自に20作品をピックアップ。

TIFF 第23回東京国際映画祭【特別招待作品】

2010. 10. 15 update

OUTSIDE IN TOKYOが気になる作品をピックアップ、各作品のリリース情報を掲載します。「特別招待作品」部門に関しては、21作品から独自に9作品をピックアップ。

TIFF 第23回東京国際映画祭【コンペティション】

2010. 10. 15 update

OUTSIDE IN TOKYOが気になる作品をピックアップ、各作品のリリース情報を掲載します。映画祭の"華"である「コンペティション」部門に関しては、全作品を掲載。観た作品に関しては、簡単なレビューを掲載、監督インタビューも予定しています。

ソビエト映画アーカイヴス

2010. 10. 04 update

ベルリンの壁崩壊の年に公開された、セルゲイ・ポドロフ監督(『モスクワ・天使のいない夜』)の出世作『自由はパラダイス』 、通常の<ソビエト映画>の概念を超える多彩さで世界を驚かせた1970年代の"キルギスの奇跡"の代表作『白い汽船』(ボロトベク・シャムシエフ) 、ナチス・ドイツ軍の侵攻を受けたベラルーシの村の悲劇を描いた、史上最悪のエンディングの映画とも言われる衝撃作『炎628』(エレム・クリモフ 監督)など、この機会にスクリーンで観ておきたいソビエト映画の重要作品が並ぶ。

第14回カイエ・デュ・シネマ週間

2010. 09. 29 update

クレール・ドゥニの新作『ホワイト・マテリアル』!クリストフ・オノレの新作『娘よ、どうか踊りに行かないで』!!"若く美しい娘に心惹かれるテレパシー能力を持った殺人タイヤの冒険"!!!という奇天烈な内容のB級テイストがカンヌで大受けしたという『タイヤ』がついに秘密のヴェールを脱ぐ!

第7回 ラテンビート映画祭

2010. 09. 03 update

今回で7回目を迎えるラテンビート映画祭。「インディペンデンス(独立)」と「レボリューション(革命)」というキーワードをテーマに選定された今年の上映作品には、2010年カンヌで物議を醸した問題作『猟奇的な家族』、2009年ベルリンで新人賞を獲得したコメディ『大男の秘め事』、コロンビアの麻薬王である父を実の息子が追った衝撃のドキュメンタリー『わが父の大罪 -麻薬王パブロ・エスコバル-』といった注目作・話題作から、「メキシコ革命」をテーマに10人の監督がそれぞれの視点から"革命"を見つめ直したオムニバス映画『レボリューション』、オリバー・ストーンがベネズエラのチャベス大統領らを追った政治ドキュメンタリー『国境の南』、ヴィンセント・ギャロが主演を果たしたフランシス・フォード・コッポラの新作『テトロ』まで、本邦初公開の新作18作品がずらりと並ぶ。観たい映画が多過ぎて、映画ファンを贅沢な悩みで困らせる9月がやってきた!

ポルトガル映画祭2010 マノエル・ド・オリヴェイラとポルトガル映画の巨匠たち

2010. 08. 25 update

7月26日にアテネ・フランセで行われたプレイベント「ペドロ・コスタ×ポルトガル映画史」では、オリヴェイラ監督の長編第一作『アニキ・ボボ』が上映され、その後、ペドロ・コスタによるポルトガル映画史のレクチャーが行われた。当日は、立ち見客まで出る盛況で、満席の会場は暑い熱気に包まれた。
2000年の「パウロ・ブランコと90年代ポルトガル映画」以来、10年振りとなる今回のポルトガル映画祭2010では、ペドロ・コスタがポルトガル映画史上4人の最重要人物として挙げた内の、3人の作品をスクリーンで観ることができる。その3人とは、(もちろん)オリヴェイラ、そして、ジョン・セザール・モンテイロ、アントニオ・レイスなのだが、残るもうひとりは「ポルトガルにおける蓮實先生的存在」とペドロが語る映画評論家ジョアン・ベナール・ダ・コスタ。ペドロの言う通り、彼の著作は残念な事にほとんど日本語に翻訳されていないのが現状だが、僅かに訳出されている「マノエル・ド・オリヴェイラと現代ポルトガル映画」(エスクァイア マガジン ジャパン)のオリヴェイラ論には目を通して、大充実の映画祭に臨みたいところ。

ブリジット・バルドー生誕祭

2010. 08. 10 update

つい先日、久々にゴダールの『軽蔑』を観て衝撃を受けたばかりなのだが(何度観ても衝撃を受ける映画だ!)、彼らに同行して『パパラッツィ』と『バルドー/ゴダール』という短篇をものにしたジャック・ロジェも居合わせたに違いない、カプリ島のマラパルテ邸の屋上で、地中海の紺碧の空に惜しげもなくお尻を晒していたブリジット・バルドーの、何かの機会を祝うというよりは、彼女の存在自体を唐突に祝おうという大胆な特集上映が行われる。中でもロジェ・ヴァディム監督『素直な悪女』は、未見の方は必見!バルドーのワイルドな魅力が炸裂し、音楽やファッションにも南仏の官能が漲る、多くの女性に観て頂きたい傑作映画。そして、オムニバス映画『世にも怪奇な物語』は、ヴァディムがジェーン・フォンダを、ルイ・マルがアラン・ドロンとバルドーを耽美的かつエレガントに撮った、炎と血が妖しく輝くロマン(!)と頽廃の物語。フェディリコ・フェリーニの一遍『悪魔の首飾り』は、マジで怖いホラー~!

特集 ジガ・ヴェルトフとロシア・アヴァンギャルド映画

2010. 07. 15 update

今では"悪名高い"というべきかもしれない、ジャン=リュック・ゴダールとジャン=ピエール・ゴランらによって政治の季節に結成された「ジガ・ヴェルトフ集団」(1968~72年)のインスピレーションとなった映画作家ジガ・ヴェルトフと、共に活動をした撮影監督ミハイル・カウフマン、そして、ジャン・ヴィゴの『新学期・操行ゼロ』『アタラント号』に参加し、エリア・カザンの『波止場』で撮影監督を務めたボリス・カウフマンが、3兄弟であったことは有名な事実だが、このロシア革命を機に離散した兄弟が映画史に残した足跡はあまりにも大きい。アテネ・フランセで行なわれる本特集上映では、ロシア革命後もロシアに残り、映画の視覚表現の果敢な実験を試みたジガ・ヴェルトフ監督作品を中心に、ロシア・アヴァンギャルド映画を代表する11作品が特集上映される。この蒸し暑い東京の夏、極北の地のアヴァンギャルド映画に刺激を受けるのも悪くない。

ペドロ・コスタ監督特集2010 ~『何も変えてはならない』公開記念~

2010. 07. 08 update

現代フランス映画のミューズ、ジャンヌ・バリバールの音楽活動を類い稀なる美しい映像に捉えた新作『何も変えてはならない』のロードショー公開(7月31日)を記念して、ペドロ・コスタ監督作品の特集上映が行なわれる。東京における"コスタ祭り"は、つい先日行なわれた官能的な夜のライブ・パフォーマンスも記憶に新しい「ジャンヌ・バリバール特集」にして既に佳境に入った感するあるが、関連トークイベントも数多く予定されているこれから、更にクールにヒートアップしていくことだろう。そして、何よりも、スクリーンで見てこそ、その得難い体験を自分のものにできるペドロ・コスタ作品に流れる豊かな瞑想的な時間を、神話的世界への探求の旅を、臆面もない映画への愛を、是非ともこの機会に味わってほしい。

ジャンヌ・バリバール特集 ~現代フランス映画のミューズとともに~

2010. 06. 16 update

現代フランス映画界のミューズ、ジャンヌ・バルバールのレトロスペクティブが東京日仏学院で開催される。本邦初公開と思われる『歌う悦び』(キム&サーストン共演)やマチュー監督作品『ウインブルドン・スタジアム』など、まだ見ぬ期待作から、リヴェット、デプレシャン、アサイヤス、ブノワ・ジャコらの名作まで、上映が楽しみな作品がズラリと並ぶ。6月26日@スーパーデラックスでのライブも見逃せない!

第三回爆音映画祭

2010. 05. 28 update

今年も"爆音映画祭"が行われる。なぜ今年は、"爆音映画祭2010"ではなく、"第三回爆音映画祭"という呼び方なのかよくわからないが、今年のラインナップも素晴らしい!!

イエジー・スコリモフスキ'60年代傑作選

2010. 05. 21 update

17ぶりの新作『アンナと過ごした4日間』の公開と観客の熱狂的な反応、東京国際映画祭TIFFでの「60年代傑作選」の上映、そして2度に渡る監督の来日は、2009年をスコリモフスキYEARとして映画ファンに強烈に印象づけた。 そして、今年、昨年のTIFFでチケットが即刻完売となり、スクリーンで見ることの難しかった「60年代傑作選」が2週間限定で再びスクリーンに甦る。

ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督作品特集2010

2010. 05. 13 update

シネマ・ノーヴォ以来現在に至るまでブラジル映画を牽引してきた、現役最重要映画作家ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督の特集上映がアテネ・フランセ文化センターで行われる。「ブラジル映画祭2000―ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス特集」以来10年ぶりの日本での特集上映となる今回も、ドス・サントス監督御大が再来日、「ニュー・ブラジリアン・シネマ」の監修・監訳を務めた鈴木茂氏とのトークショーも予定されている。

スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド

2010. 04. 21 update

ラカン派精神分析家スラヴォイ・ジジェクの、俎上に挙げられた数々の映画に対する分析に納得出来るかどうかということよりも、精神分析の対象である"映画"そのもののフィクションの世界に、文字通り映像的な試みで、ジジュク自らが没入していく、その対象を溺愛する精神科医を自らを演じる姿があまりにも倒錯的で面白い快作!

岩波ホールセレクション Vol.2 マノエル・ド・オリヴェイラ
『ノン、あるいは支配の空しい栄光』『コロンブス 永遠の海』

2010. 04. 15 update

御年102歳を迎えた世界最高齢の映画作家マノエル・ド・オリヴェイラ監督の2007年製作作品『コロンブス 永遠の海』の公開を記念して、日本劇場未公開だった監督の代表作品『ノン、あるいは支配の空しい栄光』が、2週間限定上映される。「我々は難解なものを避け、単純明快であるべきだ。単純化は思考をより深めるのだから」と語る100歳を超える大作家の単純化へのあくなき探求はいまなお続いている。

イタリア映画祭 2010

2010. 04. 05 update

2001年の「日本におけるイタリア年」をきっかけに始まったイタリア映画祭は、毎年1万人を超える観客が訪れるゴールデンウィーク恒例の映画祭に成長し、今回で10年目という節目の年を迎える。巨匠マルコ・ベロッキオ監督の最新作『勝利を』と2002年度作品『母の微笑み』をスクリーンで観ることができる実に貴重な機会となるだろう。

アラン・レネ全作上映 ~フランス映画祭2010関連企画~

2010. 03. 18 update

ヌーヴェル・ヴァーグ左岸派として知られ、1948年のデビュー以来、88歳の現在に到るまで精力的な活動を続けるアラン・レネの全作品(!)が、フランス映画祭2010関連企画として、東京日仏学院とユーロスペースで上映される。この春、東京は見るべきフランス映画で溢れかえっている!

ローラン・カンテ特集

2010. 03. 16 update

2008年カンヌでパルム・ドールを獲得した『パリ20区、僕たちのクラス』が6月に岩波ホールで公開される。この公開を記念し、フランスの重要な若手監督のひとりと評されるローラン・カンテ監督の過去の3作品が東京日仏学院で上映される。併せて、ローラン・カンテ監督とスペシャル・ゲストとの対談が予定されている。

第60回ベルリン国際映画祭:レポート(後編)

2010. 03. 10 update

第60回ベルリン国際映画祭のレポート。後編は、今年特に顕著だったイスラム世界に題を取った作品の充実ぶりを中心に、映画と政治、人々の実生活の問題(イデオロギーではなく)が複雑に交差する場としても存在している映画祭の姿をレポートする。

フランス映画祭2010

2010. 03. 08 update

「フランス映画祭」が、今年も六本木ヒルズで開催される。上映ラインナップは、『クリスマス・ストーリー』、『オーケストラ!』『あの夏の子供たち』など、秀作揃い。団長のジェーン・バーキンをはじめ、アルノー・デプレシャン、セシル・ド・フランス、ミア・ハンセン=ラブ、ローラン・カンテら来日代表団もフレッシュな顔ぶれが揃っている。

第60回ベルリン国際映画祭:レポート(前編)

2010. 03. 02 update

寺島しのぶの最優秀主演女優賞受賞に湧いた第60回ベルリン国際映画祭の模様をレポート。前編は、ベルリン国際映画祭の概要と日本の映画作家たちの活躍を中心にお届けする。

アラン・フレシェールとル・フレノワ国立現代アート・スタジオの軌跡

2010. 02. 19 update

映画作家、小説家、写真家として多彩な分野で活躍するアラン・フレシェールの作品と彼がディレクターを務めるラ・フレノワの若いクリエーターたちの作品、及び、ゴダール、ストローブ=ユイレ、ペドロ・コスタ、シャンタル・アケルマンら著名な映画作家たちの作品が上映される企画イベントが東京日仏学院で行なわれる。フレシェールとドミニク・パイーニを迎えての講演会と対談も予定されている、必見のイベント!!

アンドレイ・タルコフスキー映画祭2010

2010. 02. 09 update

ソ連当局から弾圧を受け、亡命先のパリで客死したタルコフスキーの苦悩の半生を知らなくとも、スクリーンでこそ見ておきたい美しい映像詩に彩られた名作の数々、大学時代の習作『殺し屋』から21世紀への予兆に満ちた遺作『サクリファイス』まで、タルコフスキー全作品を見ることができる"自由"を、今この機会に満喫すべき!

「未来の巨匠たち」瀬田なつき特集上映:イベントレポート

2010. 01. 25 update

1月23日(土)@シネマ・ジャック&ベティ

未来の巨匠たち

2010. 01. 12 update

日本の若き映画作家の俊英を一堂に会して、彼、彼女らの作品を一挙上映する新春に相応しいフレッシュな企画上映"未来の巨匠たち"が横浜のシネマ・ジャック&ベティで行なわれる。"未来の巨匠"たちが"この一本"として選んだホークスやフリッツ・ラング、クレール・デゥニの作品も上映され、トークショーも連日開催される。"未来の巨匠"を横浜の地から生み出すのだという熱い志が伝わって来る試み。

ジャック・ロジエのヴァカンス

2010. 01. 08 update

2010年度最初の"事件"発生!ヌーヴェル・ヴァーグの最も呪われたシネアスト、ジャック・ロジエの伝説の6作品『アデュー・フィリピーヌ』『オルエットの方へ』『メーヌ・オセアン』『ブルー・ジーンズ』『バルドー/ ゴダール』『パパラッツィ』が一挙上映される。これは、イーストウッドの新作『インヴィクタス』が2月5日に公開されるという"事件"に先んじて起こる今年最初の"事件"といっても大袈裟ではない。

アヴァンギャルド映画の女神、マヤ・デレン特集上映

2009. 12. 28 update

ジャン・コクトー、ルイス・ブニュエルと並び称される「アヴァンギャルド映画の女神」マヤ・デレン。彼女の数々の神話に包まれた人生を紐解く傑作ドキュメンタリー『鏡の中のマヤ・デレン』が公開される。同時に彼女の幻の映画作品全6作も同時上映!

爆音ソクーロフVol.1 ~亡霊たちの声

2009. 12. 07 update

優れた映画作家が、"音"に対して極めて意識的であるのは、ことロシアに関して言えば、エイゼンシュタイン以来の創造的な伝統のひとつであると言って良いだろう。現代ロシアにおいて、エイゼンシュタインの最も正当な後継者と目されているのがアレクサンドル・ソクーロフ。緻密な音響設計で知られるソクーロフの映画の霧の向こうから一体どのような"音"のモンタージュが"爆音"で浮かび上がってくるのか、ぜひ体験しておきたい。

伊藤高志映画回顧展

2009. 11. 20 update

実験映画作家、伊藤高志の回顧展が行なわれ、主要な20作品が一挙上映される。CGの特殊効果を使わずに、驚異的なコマ撮りやバルブ撮影といった、映画のアナログな特殊撮影技術にこだわった伊藤高志の80年代、90年代の映像には、その時代の空気が図らずもドキュメントされているように見える。アヴァンギャルド映画作家の巨匠松本俊夫や若手アーティスト「トーチカ」と伊藤高志のトークイベントも開催される。

ジャン=ピエール・メルヴィル特集 ~コードネームはメルヴィル~

2009. 11. 13 update

独自の審美眼から生み出された一連のフィルム・ノワール作品で知られるジャンーピエール・メルヴィルは、ヌーヴェル・ヴァーグの映画作家たちの精神的支柱であっただけでなく、現在に至るまで、タランティーノ、ジョニー・トー、北野武ら、世界中の映画作家たちに多大なる影響を与え続け、リメイク作品も後を絶たない。そんなメルヴィル作品の日本初の本格的特集上映が、東京フィルメックスと東京日仏学院の共催で行われる。

ヴィターリー・カネフスキー特集上映

2009. 11. 05 update

あのカネフスキーの荒々しい伝説の映画『動くな、死ね、蘇れ!』が、今、後続の二作品とともに三部作として、15年ぶりにスクリーンに蘇る。『動くな、死ね、蘇れ!』というタイトルの意味も、監督の「僕は、自分の子ども時代を蘇らすため現在というときの流れを止めた。そして止めることは死を物語る。さらにそれをフィルムの中に起こすため、僕はもう一度蘇ったんだ。」という言葉を知らなければ、映画を見ただけでは意味がわからない。そんな映画作家の作家性と分ちがたく結びついた荒ぶる魂の三部作を、今スクリーンで一気に体験するチャンスを逃してはいけない!

<Node of Cinema vol.1>「オルタナティブ・シネマ宣言」~ゲリラ映画時代をいかに生きぬくか~

2009. 10. 22 update

『行旅死亡人』(井土紀州)、『TOCHKA』(松村浩行)、『谷中暮色』(舩橋淳)という、製作から配給宣伝までを自らおこなう話題作・意欲作が、相次いで劇場一般公開される。これら「オルタナティブ・シネマ」をめぐって、映画作家の対話と、初期作品上映を通して、来るべき映画の未来像を探る試みが秘かに行われる。日本のインディペンデント映画の最先端を走る映画作家たちによる刺激的な「宣言=マニフェスト」に注目したい。

映画に(反)対して ギー・ドゥボール特集

2009. 10. 06 update

ジャン=ポール・サルトルに学び、68年5月革命を予見した書物『スペクタクルの社会』を著した、フランスの映画作家・革命思想家ギー・ドゥボールの映画全6作品が日本で初めて特集上映される。スペクタクル(見せ物)的な社会に成り果てた消費社会の批判を基に、革新的な国際同盟(シチュアシオニスト・インターナショナル)を組織し、書物、映画、コラージュ作品、そして路上で思考を展開したドゥボールの思想は、21世紀という不透明な現代に生きる私たちにとって、ますます共感しやすいものになってきている。

エル・ジャポン創刊20周年特別企画 ELLE LOVES CINEMA『映画で歩くパリ』

2009. 10. 02 update

エル・ジャポン創刊20周年を記念して、エルがセレクトしたパリを舞台にした名作10本が『映画で歩くパリ』と題され特別上映される。同名の鈴木布美子さんの著書との関係はいざ知らず、"フランス映画好き"を自認するものとしては、観ていませんとは言い辛いラインナップがずらりと並ぶが、実はDVDでしか観ていない人も多いのでは?ルノワールの『フレンチ・カンカン』、ゴダールの『女は女である』をはじめ、未だ瑞々しい名作の数々をぜひこの機会にスクリーンで観ておきたい!

アヴィ・モグラビ監督特集

2009. 09. 28 update

イスラエルの映画作家アヴィ・モグラビの最新作『Z32』が山形国際ドキュメンタリー映画祭のコンペ部門に選ばれたのを記念し、東京日仏学院で特集上映が行われる。近日公開されるイスラエル映画『戦場でワルツを』は確かに創造性豊かな素晴らしい映画だが、監督のアリ・フォルマン自らが語っている通り、『戦場でワルツを』は侵略者である元イスラエル兵士の視点から描かれた映画であり、アラブ人の視点は一切描かれない。その点について疑問を抱く観客も多いと思う。恐らく、モグラビ作品の場合は、イスラエル社会の"捩じれ"と真っ向から対話を試みた映画の新しい実験とも言うべきもので、アリ・フォルマンの映画に接する態度とは明白に異なる批評性で、イスラエルのリアリティを伝えてくれるものに違いない。

アニエス・ヴァルダ特集『アニエス・ヴァルダの世界』

2009. 08. 28 update

最新作『アニエスの浜辺』の公開に合わせて、アニエス・ヴァルダの特集上映が東京日仏学院と岩波ホールで開催される。日本未公開の処女作品『ポワント・クールト』から、代表作『5時から7時までのクレオ』、『幸福~しあわせ~』、近年の『落穂拾い』まで18作品が一挙上映される。併せて、彼女の生涯のパートナー、ジャック・ドゥミとカトリーヌ・ドヌーヴの代表作3作品も上映、ぜひこの機会にフランス映画の至宝をスクリーンで体験しておきたい。

爆音映画祭2009

2009. 05. 20 update

boidの樋口泰人氏が主催する「爆音映画祭2009」が吉祥寺バウスシアターで開催される。『アイム・ノット・ゼア』、ゴダールの『映画史』、『地獄の黙示録』などのラインナップが並び、黒沢清と青山真治の対談も予定されている。鼓膜が破れるほどではないので、この機会にぜひ"爆音上映"を体感してほしい。

オリヴィエ・アサイヤス特集

2009. 05. 07 update

最新作『夏時間の庭』が大ヒット公開中のオリヴィエ・アサイヤス監督、5月には日仏学院とboidによる特集上映が行なわれ、6月には『レディ・アサシン』『デーモンラヴァー』『冷たい水』が爆音上映された。7月には『NOISE』、8月には『クリーン』といった日本未公開作品も続々と公開され、現代フランスを代表する映画作家の全貌が今ようやく明らかになりつつある。

カンヌ映画祭 「監督週間」の40年をふりかえって

2009. 04. 13 update

現在、東京日仏学院では「カンヌ映画祭「監督週間」の40年をふりかえって」と銘打って、カンヌの「監督週間」40周年を記念した特集上映を行なっている。日本では中々スクリーンで目にすることができないレアな傑作が目白押し。映画リテラシー向上のための絶好の機会!

フランス映画祭2009

2009. 02. 02 update

「OUTSIDE IN TOKYO」は、フランス映画祭のために来日した、コスタ・ガヴラス監督『西のエデン』、クリストフ・オノレ監督『美しい人』、ピエール・ショレール監督『ベルサイユの子』、ジャン=ステファン・ソヴェール監督『ジョニー・マッド・ドッグ』のインタヴューを敢行。

アレクサンドル・ソクーロフ監督作品『チェチェンへ アレクサンドラの旅』公開記念スペシャルイベント дорога ダローガ -- 道 --

2008. 11. 25 update

映画の舞台となっている「チェチェン」の問題や「現代の戦争」について、ジャーナリスティックな視点から読み解く。ソクーロフ監督の反"戦争映画"『チェチェンへ アレクサンドラの旅』をより深く理解し、感応するための絶好の機会。ゲストには重信メイ、若木康輔らが参加。

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