ジャック・タチ映画祭



フランス初のカラー撮影映画である、長編処女作『のんき大将 脱線の巻』(49)の17分の未公開シーンが追加された【完全版】(上映は白黒)、アカデミー外国語映画賞に輝いた『ぼくの伯父さん』(58)、ジャック・タチ版『天国の門』(80)であり『ポンヌフの恋人』(91)であるような破格の制作規模と興行的失敗がタチを破産に追い込んだ、グローバリズムの現代を予見する究極の野心作『プレイタイム』(67)、66歳のタチが4台のビデオカメラを駆使してわずか3日間で撮り上げた遺作『パラード』等々、フランスを代表する喜劇役者/映画監督ジャック・タチの長編監督作品(6作品)が、最先端の技術に敏感だったジャック・タチの意匠に相応しい大規模なデジタル復元によって、21世紀の今、鮮やかにスクリーンに甦る!喜劇役者タチを堪能できる日本劇場初公開となる短編作品が併映されるところも素晴らしい。
(上原輝樹)
2014.4.9 update
4月12日(土)~5月9日(金) 4週間限定 シアター・イメージフォーラムにて公開
会場:シアター・イメージフォーラム 
料金:一般 1,800円/学生・シニア 1,200円/小・中・高・会員 1,000円
特別鑑賞券1回券 1,300円(B3ポスター付き)
3回券 3,300円(特製シール付き)
完全入替制、整理券制 

公式サイト:http://www.jacquestati.net
上映スケジュール
4月12日(土)〜18日(金)
11:00
プログラム1
プレイタイム
(124分)




13:30
プログラム4
乱暴者を求む
(25分)
パラード
(90分) 




16:00
プログラム3
陽気な日曜日
(22分)
トラフィック
(97分)


18:30
プログラム2
家族の味見
(14分)
ぼくの伯父さん
(116分)




4月19日(土)〜25日(金)
11:00
プログラム2
家族の味見
(14分)
ぼくの伯父さん
(116分)


13:30
プログラム1
プレイタイム
(124分)






16:00
プログラム6
左側に気をつけろ
(14分)
ぼくの伯父さんの授業
(29分)
ぼくの伯父さんの休暇
(89分)
18:30
プログラム3
陽気な日曜日
(22分)
トラフィック
(97分)




4月26日(土)〜5月2日(金)
11:00
プログラム6
左側に気をつけろ
(14分)
ぼくの伯父さんの授業
(29分)
ぼくの伯父さんの休暇
(89分)
13:30
プログラム2
家族の味見
(14分)
ぼくの伯父さん
(116分)




16:00
プログラム1
プレイタイム
(124分)




18:30
プログラム5
フォルツァ・バスティア'78/祝祭の島
(28分)
郵便配達の学校
(16分)
のんき大将 脱線の巻
【完全版】

(87分)
5月3日(土)〜9日(金)
11:00
プログラム4
乱暴者を求む
(25分)
パラード
(90分) 


13:30
プログラム5
フォルツァ・バスティア'78/祝祭の島
(28分)
郵便配達の学校
(16分)
のんき大将 脱線の巻
【完全版】

(87分)
16:00
プログラム2
家族の味見
(14分)
ぼくの伯父さん
(116分)


18:30
プログラム1
プレイタイム
(124分)






上映プログラム

プログラム1
フランス映画史上 屈指の超大作!

『プレイタイム』(Playtime)
※02年「新世紀修復版」を基に修復
パリ映画アカデミー大賞受賞、モスクワ映画祭銀賞受賞、ウィーン映画祭大賞受賞
1967年/カラー/124分/ビスタサイズ/日本語字幕:寺尾次郎
出演:ジャック・タチ、バルバラ・デネック、ジョルジュ・モンタンほか 

撮影日数345日、総制作費は15億フラン (当時の為替レートに換算して約1,093億円!)、資金不足での中断は6回、全編70mm撮影という超大作であり、タチを破産に追い込んだ究極の野心作。半年以上もの歳月を費やし、パリ東部に建設した「タチ・ヴィル(タチの都市)」と呼ばれる近未来的都市の中で、アメリカ人観光客の娘・バーバラと、タチ自身が演じる「ユロ伯父さん」の邂逅をユーモアたっぷりに描く。公開当時、一部の観客からは熱狂的支持を得たものの、興行的には大失敗。しかし、カンヌ国際映画祭で上映されるなど、近年、急速に再評価が進み、監督ひいては映画芸術の"頂点"と言われている大傑作。
プログラム2
"伯父さん"の大活躍!

『ぼくの伯父さん』(Mon Oncle)
アカデミー賞(R)最優秀外国語映画賞受賞、カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞、ニューヨーク映画批評家協会年間ベストテン選出、フランス映画批評家協会メリエス賞受賞
1958年/カラー/116分/日本語字幕:柴田香代子
出演:ジャック・タチ、ジャン=ピエール・ゾラ、アドリエンヌ・セルヴァンティーほか 

プラスチック工場を経営するアルペル氏の邸宅は、至る所が自動化された超モダン住宅。そこにはユロ氏の姉である夫人と息子のジェラールが暮らしている。ジェラール少年は堅苦しい自宅にいるよりユロ伯父さんと遊ぶのが大好き。だが、夫妻は下町暮らしで無職のユロ氏が心配で仕方がない。就職やお見合いを世話しようとするが...。「ユロ伯父さん」の日常を描いた長編第3作目。大胆な色彩設計にもとづく大掛かりなセットを建設しカラー撮影を敢行した。米国流の効率や成長重視の姿勢に対する批評的な視線も鋭く、世界的な監督としての地位を確立した記念碑的作品。興行的にも大成功を収め、タチ=ユロ伯父さんのイメージを決定づけた。
『家族の味見』(Degustation maison)(短編)
※日本劇場初公開
1976年/カラー/14分/監督:ソフィー・タチシェフ/日本語字幕:岩辺いずみ 

とある小さい村のパティスリーは、村の男たちに大人気。この店にはおしゃべりしたり、カードゲームに興じたり、隠れた欲求を満たしに訪れる常連客でいつもいっぱい。何故なら、ここのレシピはちょっと特別で...。『プレイタイム』などの編集にも参加したタチの実娘ソフィーの監督作。愛する父の日常における優れた観察眼と、市井の人々へ向ける愛情を受け継いだ可愛らしい小品。
プログラム3
クラシックカーが続々登場!"交通コメディ"

『トラフィック』(Trafic)
※コマ落ちしたフィルム4分を復活させた完全版
ニューヨーク映画批評家協会年間ベストテン選出、イタリア国民賞受賞、ロンドン映画祭年間最優秀作品選出、フィンランド・クンニアキルヤ賞受賞
1971年/カラー/97分
出演:ジャック・タチ、マリア・キンバリー、マルセル・フラヴァルほか 

パリの自動車会社の設計技師であるユロ氏は、アムステルダムで開催されるモーターショーに、自慢の新型キャンピングカーを届ける任務を負う。広報の若いアメリカ人女性マリアとトラックの運転手と共に現地に向かうものの、パンク・渋滞・交通事故など、数々のトラブルが一行にふりかかる...。長編第5作目にあたる本作は、タチ最後のフィルム作品。「田舎と都会」「機械と人間」「車と動物」といったタチ的主題の集大成といえる後期の円熟作。ラストシーンではタチ映画史上で唯一の雨が降り、ユロ氏の蝙蝠傘が開くシーンは必見!
『陽気な日曜日』(Gai dimanche)(短編)
※日本劇場初公開
1935年/白黒/22分/日本語字幕:岩辺いずみ
監督:ジャック・ベール/脚本・出演:ジャック・タチ、道化師ロム 

パリ近郊を訪れる観光客を相手に一儲けを企む、文無しの2人組は、ツアー客を言葉巧みに誘い、自分達のバスに乗せることに成功。しかし、お客は代金を旅行会社に前払済み。お金もなく車の故障にも襲われた一行は徒歩で帰ることに...。タチが出演した2作目の短篇。
プログラム4
コメディアンのタチの魅力がいっぱい

『パラード』(Parade)
※日本劇場初公開
フランス映画大賞受賞、モスクワ映画祭金賞受賞、ロンドン映画祭年間優秀作品選出
1974年/カラー/90分/日本語字幕:関美冬
出演:ジャック・タチ、カール・コスメイヤー&雌ラバ、ウィリアムズ一家ほか 

家族連れで賑わうサーカスで、タチ演じるロワイヤル氏が率いる一座の出し物がはじまる。手品や曲芸が披露される中、やがて観客も演目に参加し、いつしか客席と舞台の熱気は一つに溶け合っていく...。スウェーデンのテレビ局の招きでTV用として製作された長編6作目にして最後の作品。この時タチはすでに66歳ながら、4台のビデオカメラを駆使し、わずか3日で撮り上げた。フランスでビデオからフィルムに変換して公開された最初の作品でもある。タチがミュージック・ホール出身の芸人であることを改めて思い出させるパントマイム芸を堪能できる貴重な作品。
『乱暴者を求む』(On demande une brute)(短篇)
※日本劇場初公開
1934年/白黒/25分/日本語字幕:岩辺いずみ
監督:シャルル・バロワ/脚本・台詞:ジャック・タチ/出演:ジャック・タチ、エレーヌ・プペ、道化師ロム、ジャン・クレルヴァルほか 

俳優を夢見る男が、雇ってくれるはずだった劇団に約束を破られてしまう。そんな中持ち上がった儲け話に、男は内容もよく理解しないまま飛びついて契約する。その内容とはレスリングの無敵チャンピオン「タタール人のグロソフ」と実際に闘うというものだった...。タチの記念すべき初出演作品。
プログラム5
"郵便配達人フランソワ"のドタバタな日常

『のんき大将 脱線の巻【完全版】』(Jour de fête)
※未公開シーン17分を含む完全版
ヴェネチア映画祭最優秀脚本賞受賞、フランス映画大賞受賞
1949年/白黒/87分/日本語字幕:寺尾次郎
出演:ジャック・タチ、ギィ・ドゥコンブル、ポール・フランクール、サンタ・レッリほか 

夏のある日、フランスの小さな村に毎年恒例の祭りの時期がやってきた。のんきでお人好しの郵便配達人フランソワは、テント小屋で上映されているアメリカの郵便配達の記録映画を見て、ヘリコプターや飛行機に乗り神業のような早さで配達をする様子にショックを受ける。その後、彼は一念発起して自分もスピード重視の配達を実践するが、次第にやりすぎて「脱線」していく...。長編監督デビュー作。映画界に忽然と現れた本格的ドタバタ喜劇に、一躍タチの名前は世界に轟くことになる。
『郵便配達の学校』(L'École des facteurs)(短篇)
1946年/白黒/16分/日本語字幕:寺尾次郎
出演:ジャック・タチほか 

タチ演じる郵便配達の学校で訓練を受けたフランソワが、所定の時刻に配達を行う為に、スピード配達を実行することから生じるドタバタ模様を描く。タチの監督デビュー作。ハリウッドの無声喜劇を彷彿とさせるセンスが、フランスの観客や批評家からも強い支持を受けた。タチ夫人のミシュリーヌ・ウィンテールもカフェのダンス・シーンで出演している。
『フォルツァ・バスティア'78/祝祭の島』(Forza Bastia 78 ou L'ile en fete)
(短篇)
※日本劇場初公開
1978年-2000年/カラー/28分/日本語字幕:松岡葉子
監督:ソフィー・タチシェフ、ジャック・タチ 

1978年春、フランスのチーム「SECバスティア」はオランダのチーム「PSVアイントホーフェン」とUEFAカップの優勝をかけて対決した。フランスチーム初の優勝への期待が高まる中、タチはクラブ会長ジルベール・トリガノの依頼でコルシカ島とサポーターたちを撮影。タチの死後、実娘のソフィーが実家の物置でラッシュを発見。00年に再編集して完成させた短編
プログラム6
みんな大好き!ユロ伯父さん

『ぼくの伯父さんの休暇』(Les Vacances de Monsieur Hulot)
※78年版を基に2009年に修復
ルイ・デリュック賞受賞、アカデミー賞最優秀脚本賞ノミネート
1953年/白黒/89分/日本語字幕:柴田香代子
出演:ジャック・タチ、ナタリー・パスコー、ルイ・ペローほか 

とある海辺のリゾートホテル。バカンス客たちは海水浴に、テニス、乗馬、ピクニックを楽しんでいる。そこにボロ車でやってきたユロ氏(タチ)。なぜだか彼の行くところ全てで騒動が巻き起こり...。長編第2作目。「世界に通じる表現」を求めてタチが生み出した「ユロ氏」の記念すべきデビュー作。チロル帽にパイプ、個性的な歩き方、モゴモゴとしか話さないユロ氏。本作で観る人次第で無数の筋立てと結末があるという独自の喜劇世界を創出した。
『左側に気をつけろ』(Soigne ton gauche)(短篇)
1936年/白黒/14分/日本語字幕:寺尾次郎
監督:ルネ・クレマン/脚本:ジャック・タチ
出演:ジャック・タチほか 

農場の作男ロジェ(タチ)は、ボクサーの公開練習を見物しているうちにリングに引きずり出されて対戦するはめに陥る。ボクシングを知らないロジェは、フェンシングやニワトリのまねをして対抗するが...。後にジャン=リュック・ゴダール監督が『右側に気をつけろ』(86)という作品でオマージュを捧げたことでも有名。
『ぼくの伯父さんの授業』(Cours du soir)(短篇)
1967年/カラー/29分/日本語字幕:柴田香代子
監督:ニコラス・リボウスキー
出演:ジャック・タチ、マルク・モンジューほか 

超近代的なビルの一室で、ユロ氏が黒いスーツのビジネスマンらしき生徒たちに奇妙な授業をする。その内容は、タバコの吸い方、馬の乗り方、階段でのつまづき方といったナンセンスなものだった...。資金切れによる『プレイタイム』撮影中断時にセットと役者をそのまま流用して撮られた短篇。
ジャック・タチ
1907年10月9日にパリ生まれ。兵役を終えラグビーの名門RCF(フランス・レーシング・クラブ)に加入。この時、ミシェル劇場で無声喜劇に出演し「ジャック・タチ」の名を使い始め、その後、ヨーロッパ中のミュージックホールで活躍。映画へと活躍の場を移し、短篇「乱暴者を求む」(34)、「陽気な日曜日」(35)、「左側に気をつけろ」(36)に出演・製作する。

46年に短篇『郵便配達の学校』を初監督し、 "郵便配達人フランソワ"というキャラクターの原型を生み、熱狂的な支持を受け49年に『のんき大将 脱線の巻』を監督。『ぼくの伯父さんの休暇』(53)でタチの代名詞となる「ユロ氏」のキャラクターを確立し、続く『ぼくの伯父さん』(58)はアカデミー賞の外国語映画賞を受賞。興行的にも最大の成功をもたらし、世界中で名が知られることとなる。

67年『プレイタイム』では破格の予算を使い、製作会社の経営を圧迫し興行的にも惨敗する。自身の作品の権利も手放すことになったタチは失意のなか、いくつかのコマーシャルフィルムや国際共同製作で『トラフィック』(71)、遺作となった『パラード』(74)を撮りあげる。77年にはその功績を讃えられセザール賞を受賞。82年11月4日に肺炎で死去。ジャック・ラグランジュと共同で『Confusion』や『イリュージョニスト』の脚本を残し、後者はシルヴァン・ショメの監督で2010年に映画化された。


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