(上原輝樹) |
2012.7.20 update |
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上映プログラム |
『親密さ』★オールナイト上映 2012年/255分(途中休憩あり)/HD(Blu-ray上映)/カラー 製作:ENBUゼミナール / 監督・脚本:濱口竜介 / 撮影:北川喜雄 / 編集:鈴木宏 / 整音:黄永昌 / 助監督:佐々木亮介 / 制作:工藤渉 / 劇中歌:岡本英之 出演:平野鈴、佐藤亮、伊藤綾子、田山幹雄 ほか 4時間を越える大作だが、ENBUゼミナールの演技コースの修了作品としてスタートした企画である。映画と映画内の舞台劇の関係においてだけでなく、それぞれの中でも、現実と虚構が複雑、微妙に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。美し過ぎるラストが、岡本英之の音楽とともに脳裡に焼き付く。 |
『なみのおと』 2011年/142分/HD(Blu-ray上映)/カラー 製作:東京藝術大学大学院映像研究科 / 監督:濱口竜介、酒井耕 / 撮影:北川喜雄 / 整音:黄永昌 酒井耕との共同監督作品で、東日本大震災についてのドキュメンタリー。濱口と酒井は、震災の爪痕を撮影したり、地震発生時の記録映像を引用したりはせずに、被災者の証言を記録することに集中する。その際二人は、ドキュメンタリーでは掟破りともされかねないある方法を用いるが、これは被災者の表情により迫るための真摯な試みだ。 |
『親密さ (short version)』 2011年/136分/HD(Blu-ray上映)/カラー 製作:ENBUゼミナール / 監督・脚本:濱口竜介 / 撮影監督:北川喜雄 / 編集:鈴木宏 / 舞台撮影:飯岡幸子、加藤直輝、長谷部大輔 / 助監督:佐々木亮介 / 制作:工藤渉 / 劇中歌:岡本英之 出演:佐藤亮、伊藤綾子、手塚加奈子、新井徹、菅井義久、香取あき ほか 短縮版ではなく、完全版の中の舞台劇『親密さ』を抜き出し独立させたもの(ただし完成はこちらが先)。『何食わぬ顔(short version)』の場合のような映画内映画ではなく、映画内の舞台劇、それも映画内の演出家役平野鈴に演出を託した舞台劇が、完全な映画として成立している。これもやはり奇跡だ、と言っても決して誇張ではないだろう。 |
『THE DEPTHS』※英語字幕付き 2010年/121分/HD(Blu-ray上映)/カラー 製作:東京藝術大学大学院映像研究科・韓国国立フィルムアカデミー / プロデューサー:原尭志、シム・ユンボ / 監督:濱口竜介 / 脚本:濱口竜介、大浦光太 / 撮影監督:ヤン・グニョン / 照明:後閑健太 / 整音:金地宏晃 / 美術:田中浩二 / 編集:山崎梓 / 助監督:菊地健雄 出演:キム・ミンジュン、石田法嗣、パク・ソヒ、米村亮太朗、村上淳 ほか 東京芸術大学と韓国国立映画アカデミーの共同製作。キャストだけでなくスタッフも混成チームという容易ならざる状況を、濱口は作品そのものの危うい魅力へと転化し、韓国/日本、ホモセクシャル/バイセクシャル/ヘテロセクシャル、大人/子供、金持ち/貧乏人、堅気/ヤクザといった境界線の上で登場人物達を漂流させる。 |
『永遠に君を愛す』 2009年/58分/HD(Blu-ray上映)/カラー 製作:竹澤平八郎 / 監督:濱口竜介 / 脚本:渡辺裕子 / 撮影:青木穣 / 照明:後閑健太 / 録音:金地宏明 / 美術:原尚子 / 編集:山崎梓 / 助監督:佐々木亮介 / 音楽:岡本英之 出演:河井青葉、杉山彦々、岡部尚、菅野莉央、天光眞弓、小田豊 ほか 秀れた監督でもある渡辺裕子の脚本は、普通に映画にすればこの上なくウェルメイドなスクリューボール・コメデイーとなったはずだ。しかし濱口は普通ではない。生まれ落ちたのは、凍りついた笑いと不思議な解放感が共存する怪作である。ヒッチコックの『スミス夫妻』に匹敵するこの異常事態を、あなたは見ずにいられるのか? |
『PASSION』 2008年/115分/HD(Blu-ray上映)/カラー 製作:東京藝術大学大学院映像研究科 / プロデューサー:藤井智 / 監督・脚本:濱口竜介 / 撮影:湯澤祐一 / 照明:佐々木靖之 / 録音:草刈悠子 / 美術:安宅紀史、岩本浩典 / 編集:山本良子 / 助監督:野原位 出演:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、岡部尚、渋川清彦 ほか 濱口竜介の名を世界に知らしめた記念碑的作品。5人の男女の恋愛感情が複雑・微妙にもつれ合い、ほんのわずかのきっかけで激しく変化する様が、緻密に構成された脚本と周到でねばり強い演出の下に、繊細に、かつエモーショナルに描かれる。そして緻密さと周到さに支えられ、偶然を超えた次元で、今や伝説となった映画の奇跡が訪れる。 |
『記憶の香り』 2006年 / 27分 / 16mm(DVCAM上映)/ カラー 製作:東京藝術大学大学院映像研究科 / プロデューサー:東條真努香 / 監督:濱口竜介 / 脚本:小林美香 / 撮影:佐々木靖之 / 録音:草刈悠子 / 美術:田中浩二 / 編集:筒井武文 / 音楽:和田春 出演:藤川俊生、河井青葉 ほか 濱口が他人の脚本で撮った初の作品。現時点で唯一の16ミリ作品でもある。小林美香の徹底的に壊れた脚本を徹底的に壊れたものとして撮ることで、壊れゆく精神が即物的なレベルで呈示される。師黒沢清のある危険な一面を拡大しているとも考えられるか。 河井青葉が『PASSION』とは全く異なる魔性を見せるのにも注目。 |
『Friend of the Night』 2005年 / 4 4分 / DVCAM / カラー 製作:岡本英之 / 監督・脚本・編集:濱口竜介 / 撮影:濱口竜介、松本浩志 / 録音:佐々木亮介 / 助監督:野原位 出演:鈴木里美、岡本英之、大平恵、梶尾翔平、櫻木麻衣羅 ほか 最初期の『何食わぬ顔』から現時点での最新作『親密さ』まで、濱口とのコラボを継続しているミュージシャン岡本英之の依頼により、ライブでの上映のために製作された中篇。怖い映画をという要望に応えて、血も流れず、手や足も千切れないのに、本当に恐ろしい作品となっている。岡本の何食わぬ顔、そして少女が体験する悪夢! |
『はじまり』 2005年/13分/DVCAM/カラー 製作・監督・脚本・編集:濱口竜介 / プロデューサー:遠藤薫 / 撮影:松本浩志 / 録音:井上和士 / 助監督:野原位、笹嶋俊 / 音楽:川村岬、望月晃 出演:梅田つかさ、花澤拓巳、馬場省吾 冒頭での長回しの少女の独り言から一気に引き込まれる。こんな長回しができ、こんな独特の長ゼリフが書けて、こんな風に少女の表情・口調・歩き方を演出できる監督は、おそらく濱口竜介だけではないか。卒業間近の中学生の男女三人の、その年頃に特有の微妙な「三角関係」が見事に描かれる。濱口の才能に技術が初めて追い付いた画期的作品。 |
『何食わぬ顔 (short version) 』 2003年/43分/8mm(DVCAM上映)/カラー 製作・監督・脚本・編集:濱口竜介 / 撮影:渡辺淳、濱口竜介、東辻賢治郎 / 録音:井上和士 / 音楽:ROMAN 出演:松井智、濱口竜介、岡本英之、遠藤郁子、石井理絵 ほか このshort versionはlong versionの短縮版ではなく、映画内映画の部分のみを取り出したものだ。それが独立した中篇作品として、long versionの中とは全く異なる顔を見せる。このversion自体が、コンテクストを抜きにして、多義性へと開かれているからである。『親密さ』の二つのversionと同じ事態が既に生じているのだ。 |
『何食わぬ顔 (long version ) 』 2003年/98分/8mm(DVCAM上映)/カラー 製作・監督・脚本・編集:濱口竜介 / 撮影:渡辺淳、濱口竜介、東辻賢治郎 / 録音:井上和士 / 音楽:David Nude、ROMAN 出演:松井智、濱口竜介、岡本英之、遠藤郁子、石井理絵 ほか 技術的な諸々の難点を除けば(これは大学の映研で撮られた8ミリ映画なのだ)、濱口竜介が既に濱口竜介であることが驚異的だ。的確な演出とショット割り。映画と映画内映画の関係を複雑かつ緻密に構成した脚本。しかもここには、若さと仲間との親密さから来る瑞々しさが溢れている。約10年振りに観られる幻のバージョン。 |
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特別上映作品 |
『三重スパイ Triple agent』 2003年 / フランス / 115分 / 35mm / カラー 監督・脚本:エリック・ロメール 出演:カテリーナ・ディダスカル、セルジュ・レンコ 濱口の敬愛するエリック・ロメール監督が1930年代のパリを舞台として、陰謀と誘惑の行き着く先を描いた傑作サスペンス。実際の事件を基にロメール独自の解釈をほどこした緻密なシナリオ、当時のニュース・フィルムと男女の会話のみで構成した大胆な作劇術は脱帽の一語。本プログラムでは35ミリフィルムでの特別上映! 協力:(社)コミュニティシネマセンター |
『とどまるか なくなるか』 2002年 / 36分 / DVCAM / カラー 製作:映画美学校 監督・脚本・編集:瀬田なつき / 撮影:松本岳大 出演:嶺野あいか、洞口依子、桐本琢也 1995年初夏。小川里佳は都内に住む中学生。兄が消え、父は転勤が決まり、母は入院。「家」からは家族の記憶が徐々に薄れていく......。「初めて見たとき静かな衝撃を受けました。今回、初期作品対決が挑めるのはとても誇らしい。意外と公の場では瀬田さんと2人きりでしゃべったことがないので、それも楽しみ」(濱口) |
『Nice View Second Edition』 2005/2010年 / 39分 / DVCAM / カラー 製作:東京藝術大学大学院映像研究科 / 監督・脚本:加藤直輝 / 脚本:田中幸子、佐藤美恵 / 撮影・照明:北川喜雄 / 美術:原尚子 / 編集:鈴木宏 / サウンドデザイン・音楽:森永泰弘 / 音楽断片:ムーグーモンゴ、増田圭祐 出演:砂田晋作、鈴木智恵、茂地田永生、広根孝明、増田圭祐 東京藝大にて黒沢清教授から出された"戦時下の日常"というテーマのもと撮られた実習作品。作品を象徴する"○ロチン"は本来なら製作費の3倍は掛かりそうなシロモノ。ロケ地は撮影当時未だ開発途上のみなとみらい。開けた殺風景にベースとギターの轟音が屹立する。「僕も初めて見る加藤作品。ずっと見たかった」(濱口) |
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