カンヌ国際映画祭2011:セレクティッド・レビュー
メインのコンペティション部門は粒揃い、いわゆる'ヴィンテージ年'であった。パルムドールやグランプリの受賞経験監督がどうしても注目されたが、初選出監督、また女性監督作品も健闘した。そんな中、開催前から大本命視されていたテレンス・マリック監督の最新作『ツリー・オブ・ライフ』が逃げ切ったような形でパルムドールを受賞。アメリカのもはや伝説的監督の待望の新作は、完成された映像美と宇宙の生成を想起させる精神性の高い作品、「映画」の範囲を超えた仕上がりとなっており賛否が分かれた。とはいえ、その出来は'パルムドールにふさわしい風格と完成度を備えた作品'という審査委員長・ロバート・デ・ニーロの言葉に集約されており、貫禄の最高賞受賞と言って良いだろう。コンペティション出品作20作品の中には家族間をはじめ、身近な世界での出来事を描いた作品が目立った。カンヌ映画祭プレジデント、ジル・ジャコブ氏によると「テクノロジーの進化を競うような傾向にあった映画界であるが、これからの映画は精神性重視の人間らしさが前面に出た作品に回帰するであろう」。今年のコンペティション部門からもその兆しは顕著にみられた、ということであろうか。以下、カンヌ映画祭・常連監督であるが、それぞれの最高傑作・新境地との評価を得たの3作品を紹介する。
↑
Comment(0)