イエジー・スコリモフスキ〜「亡命」作家43年の軌跡〜



2009年に17年ぶりの復活作『アンナと過ごした4日間』が熱狂的な反応を生んで以来、『身分証明書』(64)、『不戦勝』(65)、『バリエラ』(66)、『手を挙げろ!』(67)といった最初期の作品が「イエジー・スコリモフスキ'60年代傑作選」として上映された2010年、『エッセンシャル・キリング』(11)が公開された2011年、息子のミハルと共に来日を遂げた2012年のポーランド映画祭、現在公開中の『イーダ』(13)を積極的に支援した2013年のポーランド映画祭、日本のシネフィルは、スコリモフスキ監督とスクリーンの内外で親密な関係を続ける幸甚を享受している。そして、今、スコリモフスキの"亡命時代"の始まりを告げた"ベルギー製ヌーヴェル・ヴァーグ"『出発』(67)、イギリス時代の2作品『シャウト』(78)、『ムーンライティング』(82)、そして、『アンナと過ごした4日間』(08)がスクリーンに甦る。現在、ワルシャワで撮影中であるという新作も心待ちにしながら通いたい特集上映だ。
(上原輝樹)
2014.8.12 update
8月16日(土)~9月5日(金)
会場:シネマート新宿
料金:【当日券】一般 1,800円/大学・高校生 1,500円/中学生・小人 1,000円/シニア(60歳以上) 1,100円
【前売り券】3回券 3,900円(一作品あたり1,300円) 

公式サイト:http://skolimowski2014.com
上映スケジュール
 8月16日(土)~9月5日(金)
 上映スケジュールは、こちらの公式サイトをご覧ください。
作品ラインナップ

©BELFILM
『出発』(Le départ)
1967年/ベルギー/91分
脚本:イエジー・スコリモフスキ、アンジェイ・コステンコ
撮影:ウィリー・クラン
編集:ボブ・ウェイド
音楽:クシシュトフ・コメダ
出演:ジャン=ピエール・レオー、カトリーヌ=イザベル・デュポール、 ジャクリーヌ・ビル、ヨーン・ドブリニーネ 

ゴダール『男性・女性』(66)の主演俳優ジャン=ピ エール・レオーとカトリーヌ=イザベル・デュポール、同作の撮影監督ウィリー・クラントを迎えて製作された、ほろ苦く切ない青春映画。疾走するスポーツカーとクシシュトフ・コメダのメロディアスなジャズ、ブリュッセルの街並みと瑞々しくとらえた画面と若い男女の間に芽生える淡い恋心。ポーランド人監督の手になるベルギー製"ヌーヴェル・ヴァーグ"映画とでも呼ぶべき一編。
©1978 Carlton Film Distributors Limited. All Rights Reserved. Licensed by ITV Studios Global Entertainment Limited and Distributed by Park Circus Limited
『シャウト』(Tne Shout)
1978年/イギリス/86分
原作:ロバート・グレイヴズ
脚本:マイケル・オースティン、イエジー・スコリモフスキ
撮影:マイク・モロイ
編集:サイモン・ホランド
音楽:アンソニー・バンクス、マイケル・ラザーフォード、ルパート・ハイン
出演:アラン・ベイツ、スザンナ・ヨーク、ジョン・ハート、ティム・カリー 

オーストラリア先住民から人を叫び殺す呪術の能力を授けられた男が音楽家夫婦の日常に闖入し、彼らの平穏な生活をかき乱し始める......ロバート・グレイヴズの短編小説に基づいて作り上げられた幻想映 画の怪作。逸早くドルビーシステムが本格的に採用された映画の一本としても知られる。アラン・ベイツ、スザンナ・ヨーク、ジョン・ハートら英国実力派俳優の競演、編集のマジックを駆使して練り上げられた特異な叙述構造にも注目。
©1982 MICHAEL WHITE LTD.
『ムーンライティング』(Moonlighting)
1982年/イギリス/97分
脚本:イエジー・スコリモフスキ
撮影:トニー・ピアース・ロバーツ
編集:バリー・ヴィンス
音楽:スタンリー・マイヤーズ、ハンス・ジマー
出演:ジェレミー・アイアンズ、ユージーン・リビンスキ、 イジー・スタニスラフ、エウゲニウシュ・ハチュキェヴィチ 

独立自由労組"連帯"の勢力拡大を弾圧するべく、1981年12月にポーランド全土に戒厳令が敷かれた事件にインスパイアされ、急遽作り上げられたサスペンスフルな傑作。ロンドンに不法滞在しながらとあるフラットのリフォーム作業に明け暮れる四人のポーランド人を描いた物語には、当時ロンドンに本格的に移住したばかりだったスコリモフスキの実体験が色濃く投影されている。ジェレミー・アイアンズにとって最初期の映画主演作。
©Alfama Films, Skopia Films
『アンナと過ごした4日間』(Cztery noce z Anna)
2008年/フランス=ポーランド/87分
脚本:エヴァ・ビャスコフスカ、イエジー・スコリモフスキ
撮影:アダム・シコラ
編集:ツェザリ・グゼシュク
音楽:ミハウ・ロレンツ
出演:アルトゥル・ステランコ、キンガ・ブレイス、 イエジー・フェドロヴィチ、レドバト・クリンストラ、ヤクプ・スタノフスキ 

1991年以来約17年のブランクを経て久々に作り上 げられた監督作。偶然レイプの現場を目撃したばかりに加害者の嫌疑をかけられ収監された内向的な中年男レオンが、出所後に自宅の向かいに建つ看護婦寮の部屋を覗き始める。そこにはレイプの犠牲者アンナが住んでいた。やがてレオンの行動は徐々にエスカレートしてゆき......時系列を錯綜させる入り組んだ語り口を通じて浮かび上がる、なぜか観る者の胸を打つ奇妙奇天烈な「愛」の物語。
©Skopia Film, Cylinder Production, Element Pictures, Mythberg Films, Syrena Films, Canal+ Poland. All rights reserved.
『エッセンシャル・キリング』(Essential Killing)
2010年/ポーランド=ノルウェー=アイルランド=ハンガリー/83分
脚本:エヴァ・ピャスコフスカ、イエジー・スコリモフスキ
撮影:アダム・シコラ
編集:レーカ・レムヘニュイ
音楽:パヴェウ・ミキェティン
出演:ヴィンセント・ギャロ、エマニュエル・セニエ、ザック・コーエン 

三人の米兵を殺害したタリバン構成員が、米軍の追跡をかわしつつ必死の逃走を続ける姿をひたすら見つめることに徹したシンプル極まりない異色作。主演は、スコリモフスキと同じく自作自演映画の製作で知られるマルチアーティストのヴィンセント・ギャロ。共演は、監督の長年の友人ロマン・ポランスキーの夫人エマニュエル・セニエ。台詞をほぼ全面的に排除した大胆な作劇と、氷点下の雪原におけるギャロの捨て身のアクションは圧巻。


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