TIFF 第25回東京国際映画祭【WORLD CINEMA】

上映スケジュール
上映プログラム
【WORLD CINEMA】

© Cattleya
『眠れる美女』
110分/イタリア語、フランス語/Color/2012年/イタリア=フランス
監督/脚本:マルコ・ベロッキオ
プロデューサー:リッカルド・トッツィ  脚本:ヴェロニカ・ライモ  脚本:ステファノ・ルッリ  撮影監督:ダニエーレ・チプリ  編集:フランチェスカ・カルヴェリ  作曲:カルロ・クリヴェッリ
出演:イザベル・ユペール、 トニ・セルヴィッロ、 アルバ・ロルヴァケル、 ミケーレ・リオンディーノ、 マヤ・サンサ、 ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ
 

昏睡状態が続く少女の尊厳死がイタリア全土を巻き込む関心事となった2009年、ベロッキオ監督はマスコミやキリスト教会や政治家、そしてイタリア国民の反応に大いにショックを受けたという。しかし映画にするには早急であると判断し、2年の間を置き、視野を広げた上で、本作を完成させた。尊厳死を巡る3つの物語は、監督自らの経験や価値観を包含しているが、最終的な判断はあくまで観客に委ねられている。一部即興も取り入れられた撮影を支えた俳優陣は、イタリアを代表する俳優トニ・セルヴィッロや、精力的な国際活動を続けるイザベル・ユペールの名優たちに加え、アルバ・ロルヴァケル(10年『素数たちの孤独』)や、ミケーレ・リオンディーノ(09年『テン・ウィンターズ』)などの若手のホープにも注目である。さらに、リオンディーノの弟役のファブリツィオ・ファルコは本年のヴェネチア国際映画祭で最優秀新人賞を受賞している。 

10/25(木) 20:25 10/27(土) 14:10
© Aquí y Allí Films, All Rights Reserved
『ヒア・アンド・ゼア』
110分/スペイン語、ナワトル語/Color/2012年/スペイン=アメリカ=メキシコ
監督/脚本/製作:アントニオ・メンデス・エスパルサ
ユニット・マネジャー/アソシエイトプロデューサー:テレサ・ガルシア・ヘルナンデス  プロデューサー:オリ・ドフ・グラッチ  プロデューサー:ティム・ホッブズ  プロデューサー:ペドロ・ヘルナンデス・サントス   プロデューサー:ダイアナ・ウェイド  エグゼクティブ・プロデューサー:アルバロ・ポルタネット・ヘルナンデス  エグゼクティブ・プロデューサー:アマデオ・ヘルナンデス・ブエノ  撮影監督:バルブ・バラショユ  編集:フィリッポ・コンツ
出演:テレサ・ラミレス・アギレ、 ペドロ・デ・ロス・サントス・フアレス、 ロレナ・グアダルーペ・パンタレオン・バスケス、 ハイジ・ラウラ・ソラーノ・エスピノサ
 

数年間アメリカに出稼ぎに出かけていたペドロが久しぶりにメキシコの故郷の村に戻ってくる。ゆっくりと家族との距離を取り戻しつつも、アメリカの夢はいつもそこにある...。地元に密着して住民とともに映画を作り上げるスタイルが奏功し、カンヌ映画祭批評家週間作品賞受賞。
本作が長編第一作となるエスパルサ監督は、5年をかけて村人たちのコミュニティーと密接な関係を築き、フィクションとドキュメンタリーが融合した物語世界を完成させた。登場人物の多くは、実際の本人の役を演じている。重要な役割を果たす歌と歌詞は実際にペドロの手によるものであり、劇中の妻は実際の妻である。脚本は存在したものの、彼らとのコラボレーションによって映画はよりリアルなものへと変貌していった。移民生活から故郷に戻った安堵感や家族の暖かさ、そしてその裏にある喪失感をゆっくりと描き、リアルな手触り感のある秀作である。 

10/20(土) 20:35 10/26(金) 12:15
©2012 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
『インポッシブル』
107分/英語/Color/2012年/スペイン=アメリカ
監督:J・A・バヨナ
脚本:セルヒオ・G・サンチェス  製作:ベレン・アティエンザ  製作:アルバロ・アウグスティン  製作:エンリケ・ロペス・ラビニュ  製作:ギスラン・バロウ  エグゼクティブ・プロデューサー:サンドラ・ヘルミダ  エグゼクティブ・プロデューサー:ハビエル・ウガルテ  撮影監督:オスカル・ファウラ  プロダクション・デザイナー:エウヘニオ・カバイェーロ
出演:ユアン・マクレガー、 ナオミ・ワッツ、 トム・ホランド、 サミュエル・ジョスリン、 オークリー・プレンダーガスト 


2004年のクリスマスの翌日、スマトラ沖でマグニチュード9.1の地震が発生し、巨大津波が近隣諸国に甚大な被害をもたらした。本作は、津波に飲みこまれたスペイン人一家が経験した、まさに「インポッシブル」な実話を映画化したものである。スペイン人夫婦をナオミ・ワッツとユアン・マクレガーに置き換え、実際の出来事が克明に再現されている。10分間に及ぶ巨大津波のシーンの撮影には1年を要し、ワッツは1か月以上を水槽タンクの中で過ごして生死の狭間で格闘する母親を熱演している。本作が長編2本目となる監督のJ・A・バヨナは、処女長編の『永遠のこどもたち』(07)がカンヌで喝采された後にスペインで歴史的なヒットを記録し、一躍脚光を浴びた若手である。究極の状況下に置かれた家族の絆というテーマが、ホラーテイストに感動的な親子愛を融合させた前作に通じており、ダイナミックな映像と巧みなストーリーテリングを操る才能の今後が期待される。 

10/21(日) 16:50 10/24(水) 18:35
©Copyright Wild Bunch 2012
『レイモン・ドゥパルドンのフランス日記』
100分/フランス語/Color/2012年/フランス
監督/脚本/撮影:レイモン・ドゥパルドン  監督/脚本/製作:クローディーヌ・ヌーガレ
編集:フランソワ・ジェディジエ  編集:シモン・ジャケ
出演:レイモン・ドゥパルドン、 クローディーヌ・ヌーガレ 


本作は映画監督としてのドゥパルドンの新作であるが、彼の過去と現在を追っていくのは、共同監督であり、録音技師であり、製作者であり、妻であるC・ヌガレである。ヌガレが埋もれていたドゥパルドンの未発表の映像を発掘し、それが田舎を撮り続ける近年の仕事と組み合わさることで、ひとりの偉大な芸術家の足跡が浮かび上がってくる。アルジェリア戦争の従軍キャメラマンから始まり、プラハの春、フランス大統領選挙、精神病棟、アフリカ、法廷、農民、など、ドゥパルドンがキャメラを向けた対象は実に多岐にわたり、やがて見えてくるのは、報道者的なマクロの視点と、田舎の風景や市井の人間に向き合うミクロな感性を兼ね備えた稀有な芸術家の姿である。未だ日本ではその全貌がほとんど知られていないドキュメンタリーの巨匠による豊潤な芸術世界を発見されたい。 

10/25(木) 12:05 10/27(土) 19:40
©Liar's Films Ltd.
『ある嘘つきの物語 モンティ・パイソンのグレアム・チャップマン自伝』
85分/英語/Color/2012年/イギリス
監督/プロデューサー:ビル・ジョーンズ  監督/プロデューサー:ベン・ティムレット  監督/プロデユーサー:ジェフ・シンプソン
原作:グレアム・チャップマン  脚本:デヴィッド・シャーロック  脚本:ダグラス・アダムス  脚本:デヴィッド・ヤロップ  脚本:アレックス・マーティン
出演:グレアム・チャップマン、 ジョン・クリーズ、 テリー・ギリアム、 テリー・ジョーンズ、 マイケル・ペイリン、 キャロル・クリーヴランド、 キャメロン・ディアス
 

英国公共放送BBCで放映された番組「空飛ぶモンティ・パイソン」(69~74)で熱狂的な支持を集め、その後の世界のコメディ界に絶大なる影響を与えたモンティ・パイソン。その中心メンバーのひとりであり、パイソンズの常軌を逸したスピリッツを最も体現している存在と言われたグレアム・チャップマンが80年に書いた自伝の映画化である。TVシリーズでもアニメーションが効果的に使われていたが(当時の担当はテリー・ギリアム)、その伝統に沿うようにポップでブラック・ユーモア満載の、14名の異なるクリエイター(平均年齢28歳)による3Dアニメーションで全編が綴られる。ゲイであることを公言し、アル中であることは隠していたシャイで複雑な人物の内面が語られる内容であるが、89年に他界したチャップマンは生前に自伝の朗読を録音しており、本作は死後23年を経た新作でありながらナレーションに本人の声が用いられている。 

10/26(金) 21:00 10/27(土) 17:20
©NoDream Cinema, Mantarraya Producciones, Fondo para la Producción Cinematográfica de Calidad (Foprocine-Mexico), Le Pacte, Arte France Cinema
『闇の後の光』
120分/スペイン語/Color/2012年/メキシコ=フランス=ドイツ=オランダ
監督/脚本/プロデューサー:カルロス・レイガダス  プロデューサー:ハイメ・ロマンディア  撮影監督:アレクシス・サベ  編集:ナタリア・ロペス  音響:ジル・ローラン  美術:ノエミ・ゴンザレス
出演:アドルフォ・ヒメネス・カストロ、 ナタリア・アセベド、 ルートゥ・レイガダス、 エレアサル・レイガダス、 ウィレバルド・トーレス


ラテン・アメリカにおける、ゼロ年代以降のアート映画隆盛の流れを牽引するメキシコの鬼才、カルロス・レイガダスの長編4作目である。生と性、聖と俗を独自の映像美で語り、レイガダスはその鮮烈な作家性ゆえにカンヌ映画祭の常連監督の地位を築いている。人里離れた渓谷を舞台に老女の献身と犠牲を描いた処女作『ハポン』、都会の絶望と贖罪を描く『バトル・イン・ヘヴン』、そして静謐な美を極めた『静かな光』に続き、本作は自然の中における人間の生と性を、神(あるいは悪魔)の視点を介在させて描く意欲作である。一見脈略の無い場面が時空を超えて繋がり、形而上的な表現は難解さが増す一方で、レイガダスの美学に貫かれた映像の個性と美しさは一層研ぎ澄まされている。直接的なストーリー・テリングに興味を示さないレイガダスの本領の極みとも言える本作は、今年のカンヌ映画祭のコンペティション部門で上映され、主に新聞紙上に厳しい批評が躍った。しかし見事監督賞を受賞し、檀上でマスコミに感謝するコメントを発し、孤高の道を行くレイガダスの面目躍如となった。 

10/24(水) 15:30 10/27(土) 11:20
© Fandango - Archimede - Le Pacte Garance Capital
『リアリティー』
115分/イタリア語/Color/2012年/イタリア=フランス
監督:マッテオ・ガローネ
製作:ドメニコ・プロカッチ  撮影監督:マルコ・オノラート  作曲:アレクサンドル・デスプラ  プロダクション・デザイナー:パオロ・ボンフィーニ  衣装:マウリツィオ・ミレノッティ  音響:マリッチェッタ・ロンバルド
出演:アニエッロ・アレーナ、 ロレダーナ・シミオーリ、 ナンド・パオーネ、 グラツィエッラ・マリーナ、 ネッロ・イオリオ、 ヌンツィア・スキアーノ、 ロザリア・ドゥルソ 


お客を楽しませることで人気の魚売りルチャーノは、素人の若い男女が共同生活する模様を映すテレビの「リアリティー番組」のオーディションを受けるように家族からそそのかされる。その気になったルチャーノは、徐々に夢と現実の区別がつかなくなっていく...。マッテオ・ガローネ監督によれば、ルチャーノは現代のピノキオであり、イノセントでナイーヴな子供の心を持ち、空想の中の冒険を生きている人物である。前作『ゴモラ』でイタリアの過酷な現実をドライに活写したガローネは、一転してフェリーニを彷彿とさせるような寓話的なブラック・コメディを通じて、夢と現実の間の微妙なバランスを描いていくが、現代社会の病める側面をリアルに切り取る姿勢は貫かれている。本作はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、『ゴモラ』に続き2度目のグランプリをガローネにもたらした。 

10/21(日) 10:20 10/23(火) 15:15
©2012 Company Films, LLC
『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』
99分/英語/Color/2012年/アメリカ/配給:アップリンク
監督:クリス・ケニーリー
プロデューサー:キアヌ・リーブス  プロデューサー:ジャスティン・スラザ  撮影監督:クリス・キャシディ
出演:キアヌ・リーブス、 マーティン・スコセッシ、 ジョージ・ルーカス、 ジェームズ・キャメロン、 デヴィッド・フィンチャー、 デヴィッド・リンチ、 クリストファー・ノーラン、 スティーヴン・ソダーバーグ、 ラナ&アンディ・ウォシャウスキー、 ラース・フォン・トリアー、 ダニー・ボイル 


およそ100年間の映画史において、唯一の記録フォーマットはフィルムだった。だが、過去20年間のデジタルシネマの台頭により、今やフィルムは消えつつある。本作は、デジタルとアナログが並存する現在を概観しながら、映画におけるデジタル革命を検証していく。長年、俳優として表舞台に立つ一方、スクリーンの裏側でプロセスの変遷を見てきたキアヌ・リーブスが、自らホスト役となり、巨匠監督と映画関係者へのインタビューを通じて、映画史の過渡期である今を切り取る。マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、デヴィッド・リンチ、クリストファー・ノーラン、スティーヴン・ソダーバーグほか当代きってのハリウッドの大物監督たちと、撮影監督、編集技師、カラーリスト、特殊効果技師をはじめとする映画制作者たちの貴重な証言から、映画制作の未来を探るドキュメンタリー。 

10/26(金) 18:00
©2011 MK2 SA / France 3 Cinéma © Carole Bethuel
『5月の後』
117分/フランス語/Color/2012年/フランス
監督/脚本:オリヴィエ・アサイヤス
エクゼクティブ・プロデューサー:ヴィオラ・プレスティエーリ  プロデューサー:ナタナエル・カルミッツ  プロデユーサー:シャルル・ジリベール  撮影監督:エリック・ゴーティエ  プロダクション・デザイナー:フランソワ=ルノー・ラバルト  編集:リュック・バルニエ  編集:マチルド・ファン・デ・ムルテル  音響編集:ニコラ・カンタン
出演:ローラ・クレトン、 クレモン・メタイェル、 フェリックス・アルマン、 キャロル・コームス、 インディア・サルボア・メネズ 


学生運動がフランス全土で社会現象へと発展したのが68年の5月革命である。本作は、5月革命に間に合わなかった、70年代前半に政治活動に傾倒した世代の物語であり、それはすなわちアサイヤス監督の世代である。かねてより70年代を背景とした『冷たい水』(94)の延長線上にある作品の構想を抱いていたアサイヤスは、『カルロス』(10)で時代の再現に手応えを感じ、本作を製作するに至る。自伝的作品ではあるが、アサイヤスの記憶や体験は様々なキャラクターに託されている(本作の主役は『冷たい水』と同じ、ジルとクリスティーヌという役名を与えられている)。政治の季節の記憶であるとともに、普遍的な青春映画であり、映画への愛に富み、極上の音楽と撮影を備えたアサイヤス芸術の最高峰である。なお、自伝的著書「5月の後の青春 アリス・ドゥボールへの手紙、1968年とその後」(boidより翻訳本発売中)について、「同じ人物が同じ時代について語っているという意味では呼応しあっているが、それぞれ別の物語である」と監督は語っており、同書も是非参照されたい。 

10/24(水) 12:40 10/28(日) 19:50
© Muse Film - Radar Pictures
『スプリング・ブレイカーズ』
85分/英語/Color/2012年/アメリカ
監督:ハーモニー・コリン
編集:ダグラス・クリーズ  作曲:Skrillex  作曲:クリフ・マルティネス  製作:クリス・ハンレイ  製作:シャルル=マリー・アントニオーズ  製作:デヴィッド・ザンデル  製作:ジョーダン・ガートナー
出演:ジェームズ・フランコ、 セレーナ・ゴメス、 ヴァネッサ・ハジェンズ、 アシュリー・ベンソン、 レイチェル・コリン


銃を持ったビキニ女性のイメージがまず浮かんだとき、ハーモニー・コリンはそんな設定が通用するとしたら春休み(Spring Break)しかないと、自分でも笑いながら思い付いたという。アメリカの大学では、3月下旬に1週間ほどの春休みがあり、学生たちはフロリダなどのリゾート地で羽を伸ばして日焼けして戻ってくるのがお約束なのである。女子大生がバカ騒ぎの果てに裏社会に入っていくという痛快でダークな内容を持つ本作には、アイデア段階でジェームズ・フランコが参加を快諾し、強烈な外見とミステリアスな内面を持つドラッグ・ディーラーの怪演が実現する。コリンはアメリカの下層白人文化をアートの域に昇華して描くことのできる稀有な才能であり、本作でもポップ・カルチャーの華やかで魅力的な側面と、歪んで醜い側面を同等に提示する。描かれるのは、病めるアメリカの姿であると同時に、欲望への従属という人類に共通するダークサイドである。 

10/21(日) 21:35 10/24(水) 21:35
© Allison Anders and Kurt Voss
『ストラッター』
87分/英語/Black & White/2012年/アメリカ
監督/脚本/製作/撮影:カート・ヴォス  監督/脚本/製作:アリソン・アンダース
編集:クリス・フィグラー  編集:アーロン・ロッティングハウス  作曲:J・マスシス
出演:フラナリー・ランスフォード、 エリーズ・ホランダ、 ダンテ・ホワイト=アリアーノ、 クレイグ・スターク、 サラ・アシュレー、 テリー・グレアム、 ルアナ・アンダース、 ビクトリア・ウィリアムス、 アリエル・ピンク、 J・マスシス


失恋とバンド解散の危機に直面する青年ロッカーのユウウツを、ユーモラスに、スタイリッシュに、そして暖かくカッコ良く描くロック映画。『フォー・ルームス』(95)の1話目を監督し、そして『ガス・フード・ロジング』(92)『グレイス・オブ・マイ・ハート』(96)など、良質なアメリカン・インディ作品を手掛け、ロックをセンス良く映画に取り入れることで知られるアリソン・アンダース監督が、カート・ヴォス監督とコンビを組んだ新作である。ガレージ・ロックやカントリー、そしてジャーヴィス・コッカー風シンガーやグラム・パーソンズへのオマージュなど、ロック好きにはたまらない要素で溢れている。オリジナル・スコアをダイナソー・Jr.のJ・マスシスが担当しており、本人のカメオ出演にも注目したい。ビターでスイートな青春映画であり、風来坊の父親の魅力や、恋敵の男との奇妙な友情など、ツボを押さえた展開が上手いフィール・グッドな痛快作。 

10/23(火) 21:25 10/26(金) 15:20
CINESTACIÓN © 2012
『木曜から日曜まで』
96分/スペイン語/Color/2012年/チリ=オランダ
監督/脚本:ドミンガ・ソトマイヨール
プロデューサー:グレゴリオ・ゴンザレス  プロデューサー:ベンヤミン・ドメネク  撮影監督:バルバラ・アルバレス  プロダクション・デザイナー:エステファニア・ラライン  衣装:フアナ・ディアス  編集:ダニエル・フィリオス  編集:カタリーナ・マリン  音響編集:ロベルト・エスピノーザ  音楽:ディエゴ・フォンテシージャ  音楽:エリサ・アルテチェ
出演:サンティ・アウマダ、 エミリアーノ・フレイフェルド、 フランシスコ・ペレス=バネン、 パオラ・ジャンニーニ


4日間の家族旅行を娘の視点でみつめるロードムービー。子供たちは無邪気だがこれが最後の旅行であることを知らない...。旅行の雰囲気がゆっくりと変化していく様が繊細に描かれ、静かに胸を打つ。チリの新鋭監督によるロッテルダム映画祭Tiger Award(作品賞)受賞作。
木曜早朝。両親はせっせと荷物を運び、眠たげな子供たちは急かされながら車に乗り込む。4日間の長く楽しいドライブ旅行の始まりを、長廻しのワンショットで捉えるシーンから始まる本作は、全編がほとんど車中で展開する。ドミンガ・ソトマイヨール監督は、10歳の長女の視点に徹底的にこだわり、これがただの週末旅行でないかもしれないと気づいていく子供たちの心理を丁寧に描いていく。後部座席に座る子供たちにとっては、常に視界の一部が遮られており、それは起きている事態の全体像を把握させてもらえない彼らの状況とシンクロしているのである。子役に演技経験は無く、彼らが脚本の全体像を理解する過程と、役柄が両親の意図を理解する過程が重なり、映画にリアリティーとエモーションがもたらされている。押し寄せる寂しさを丁寧なカメラワークで表現する演出力も巧みで、鑑賞後に深く胸に刻まれる作品である。 

10/22(月) 20:45 10/23(火) 18:30


TIFF 第25回東京国際映画祭【WORLD CINEMA】について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





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