ボックスオフィスの彼方に ~興行の縁で映画を考える~

2011.2.22 update

2011年2月26日(土)、2月27日(日)、3月6日(日)、3月12日(土)、3月13日(日)
会場:東京藝術大学 横浜校地 馬車道校舎
神奈川県横浜市中区本町4-44 みなとみらい線「馬車道」駅 5番&7番出口よりすぐ
予約不要 参加費無料
特設ウェブサイト→http://beyond-bo.kitanaka-school.net/
twitterアカウント→BEYOND_BO

主催&お問い合わせ:北仲スクール(横浜文化創造都市スクール)
神奈川県横浜市中区北仲通5丁目57-2 北仲BRICK 2F
TEL 045-263-9075
MAIL info@kitanaka-school.net
HP http://kitanaka-school.net/
上映スケジュール
2月26日(土)
14:00
カナリア
(132分)

トーク開始16:30
松田広子

2月27日(日)
14:00
汚れた血
(125分)

トーク開始16:20
堀越謙三

3月6日(日)
14:00
June 12 1998―カオスの縁―
(65分)

トーク開始15:30
樋口泰人
3月12日(土)
14:00
Wanda
(103分)

トーク開始16:00
坂本安美

3月13日(日)
14:00
書かれた顔
(89分)

トーク開始15:45
松本正道

上映プログラム

『カナリア』
2004年/132分/35ミリ/カラー
監督・脚本:塩田明彦
音楽:大友良英
出演:石田法嗣、谷村美月、西島秀俊、甲田益也子、りょう 

カルト教団の施設から保護された少年が、祖父に引き取られた妹を取り返し、行方不明になっている教団幹部の母を探すために、児童相談所から脱走。途中、男に連れ去られそうになっている少女を偶然助けたことをきっかけに、ふたりで東京の祖父の家を目指す......。1995年の地下鉄サリン事件後のサティアンへの強制捜査に入った警察官が先頭に掲げていた籠の中の「カナリア」。事件から10年後につくられた本作は、現代の日本が生んだ魂の孤児たちが「今」を生きていく姿を追いかけた作品として注目を集めた。

「日本映画エンジェル大賞」*に応募したため「プロデューサー」としての覚悟を問われることになりました。思い出の多い大事な1本です。(松田広子)
*インディペンデント・フィルムメーカーを支援するために角川基金が創設した「企画開発を支援する賞」。2002年に開始され2007年に終了。

松田広子(まつだ・ひろこ)
雑誌編集者を経て、94年よりフリーランスとして映画のパンフレット、書籍などを編集。同年、篠崎誠監督『おかえり』にプロデューサーとして参加。98年開校の映画美学校を母体に、塩田明彦『どこまでもいこう』(99)、黒沢清『大いなる幻影』(99)、松岡錠司『アカシアの道』(00)、その後、オフィス・シロウズにて熊切和嘉『アンテナ』(03)、『フリージア』(06)、塩田明彦『カナリア』(04/第2回日本映画エンジェル大賞受賞企画)、大九明子『恋するマドリ』(07)などを手がける。現在、加藤直輝『アブラクサスの祭』(10/サンダンス映画祭2011コンペティション部門参加作品)が公開中。
『汚れた血』
1986年/125分/35ミリ/カラー
監督・脚本:レオス・カラックス
出演:ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ、ミシェル・ピコリ、ジュリー・デルピー 

20世紀末パリ。ハレー彗星が近づくその世界では、愛のないセックスで感染する病気「STBO」が蔓延している。天涯孤独の少年アレックスは、どこか別の場所で新しい人生を送りたいと思っており、ガールフレンドのリーズと過ごす愛のひとときさえも彼には無意味だ。やがてアレックスは、亡き父親の友人の中年男マルクと美少女アンナに誘われ、脱出の為の金欲しさに犯罪に手を貸す。そしていつしかアンナを愛するようになるのだった。日本で初めて公開されたカラックス映画であり、世界中に熱狂的なファンを生み出した作品。 

自分の映画との関わり方は、この作品およびこの監督との出会いが、決定づけたと言っていいでしょう。(堀越謙三)

堀越謙三(ほりこし・けんぞう)
1977年にシネクラブ活動と配給業務を開始。83年にミニシアター「ユーロスペース」を開館。ヴィム・ヴェンダース、張芸謀、デヴィッド・クローネンバーグ、ラース・フォン・トリアー、レオス・カラックス、アッバス・キアロスタミらを日本に初めて配給。海外の監督を中心に製作も手がけ、『スモーク』(95)『TOKYO EYES』(98)、『ルナ・パパ』(99)、『POLA X』(99)、『まぼろし』(01)など20余作品をプロデュース。97年にNPO法人「映画美学校」を設立して代表理事を務めるほか、2005年に東京藝術大学映像研究科の立ち上げとともに教授に就任。
『June 12 1998―カオスの縁―』
1998年/65分/DV/カラー
監督:青山真治
音楽:長嶌寛幸
出演:クリス・カトラー

ヘンリー・カウのドラマーとして活動を開始し、以後アヴァンギャルドの最前線をひた走る音楽家にして、レーベル主宰者、また音楽批評家(『ファイル・アンダー・ポピュラー~ポピュラー音楽を巡る文化研究』)でもあるイギリスのミュージシャン、クリス・カトラーのライヴ・ドキュメンタリー。1998年6月の来日の際の、カトラー初のソロ・ライヴの模様、リハーサル、およびインタビューで構成されている。 

私が自分のレーベルを作るきっかけとなった作品。この作品を作ったことによって、その後の10年が決まったと言っていい。(樋口泰人)

樋口泰人(ひぐち・やすひと)
1957年生まれ。映画/音楽批評、レーベルboid主宰。著書に『映画とロックンロールにおいてアメリカと合衆国はいかに闘ったか』、『映画は爆音でささやく99-09』。編著に『ロスト・イン・アメリカ』など。またboid主宰として、吉祥寺バウスシアターで毎年「爆音映画祭」(第4回は2011年6月末より開催)を企画。2010年にはシネマ・ジャック&ベティで「爆音映画祭@横浜」も企画した。boidの主な製作物に、書籍として『黒沢清、21世紀の映画を語る』、『中原昌也 作業日誌 2004→2007』。CDアルバムとしてHair Stylistics『Live:Album』、湯浅湾『浮波』など。boid HP→www.boid-s.com
『Wanda』
1971年/103分/35ミリ/カラー
監督・脚本:バーバラ・ローデン
出演:バーバラ・ローデン、マイケル・ヒギンズ、ミルトン・ギトルマン

夫に離別され、子供の親権もなく、職も失い、有り金もすられた女性ワンダが、偶然知り合った男といつの間にか犯罪に巻き込まれ、逃避行をつづける。エリア・カザンの妻で女優のバーバラ・ローデンの処女作にして遺作。本作に惚れこんだイザベル・ユペールが版権を買い取り、ニュープリントでこの幻の傑作を甦らせた。「『Wanda』には奇跡が存在していると思う。通常は、表象されたものと書かれたもの、テーマとアクションの間に距離がある。しかしここではその距離が完全に消滅し、ローデンとワンダの間にあるのは、直接的で決定的な一致なのだ」(マルグリット・デュラス)
*オリジナル英語版。日本語字幕なし。 

この作品は2009年に東京日仏学院で開催した特集「カンヌ映画祭 監督週間の40年間をふりかえって」で上映しました。ワンダ=ローデンの写真、そのスチールの中には切羽詰った、無視できない何かがありました。そして実際に目にし、心底驚き、揺さぶられました。映画史のこの「奇跡」をもう一度、そしてもっと多くの方と再び発見したいと思います。(坂本安美)

坂本安美(さかもと・あび)
東京日仏学院映画プログラム担当。東京出身。慶應義塾大学法学部卒業。『カイエ・デュ・シネマ・ジャポン』誌元編集委員。1996年より東京日仏学院にて映画上映の企画・運営を担当している。フランスから監督、俳優、映画批評家らを招聘し、日本では上映の機会があまりない作品を中心に紹介しながら、上映と批評との関係、国境を越えたアーティスト、書き手の交流についてつねに模索している。
『書かれた顔』
1995年/89分/35ミリ/カラー
監督・脚本:ダニエル・シュミット
出演:坂東玉三郎、武原はん、杉村春子、大野一雄 

日本=スイス合作。歌舞伎界で当代一の人気を誇る女形、坂東玉三郎に迫る虚構的ドキュメンタリー。玉三郎の「鷺娘」「積恋雪関扉」などの舞台のほか、彼が年増の芸者に扮した劇「黄昏芸者情話」が挿入される。女優の杉村春子、日本舞踊の武原はんの談話、舞踏家の大野一雄の舞い、101歳になる現役最高齢の芸者・蔦清小松朝じの三味線も登場。 

ユーロスペースが製作。1980年代シネクラブ活動の総決算としてアテネ・フランセ文化センターが全面協力した作品。大野一雄の晴海埠頭での舞踏をとらえたレナート・ベルタの撮影に注目。(松本正道)

松本正道(まつもと・まさみち)
1950年生まれ。1979年よりアテネ・フランセ文化センター主任(プログラムディレクター)。ダニエル・シュミット映画祭、淀川長治映画塾、ストローブ=ユイレ特集等を企画。2000年より映画美学校共同代表理事を兼任。コミュニティシネマセンターではシネマテーク・プロジェクトにたずさわる。


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