OUTSIDE IN TOKYO
INTERVIEW & TALK SHOW INDEX
2023.11.21 update
本作において、劇作家・演出家、松田正隆の同名戯曲のセリフを一言一句変えずに映画化することに挑戦した越川道夫監督は、主人公の女を演じる河野知美と夫を演じる梅田誠弘の演技、存在感の素晴らしさも相まって、演劇の一回性を生々しく捉えた、”映画”ならではの見事な呼吸が息づく作品を創り上げた。ここに、間違いなく代表作の一つになるであろう作品『水いらずの星』を撮り上げた、越川道夫監督のインタヴューをお届けする。
2023.11.17 update
『水いらずの星』は、劇作家・演出家、松田正隆の同名戯曲を越川道夫監督が大胆な映画化に成功した作品である。主人公の女を演じる河野知美の演技と夫を演じる梅田誠弘の存在感が素晴らしく、本作のプロデューサーでもある、河野知美の”顔”は、映画の主戦場と化していて、何人もの女性が憑依しているかのように幾通りにも変幻する。ここに、主演を務めると同時に、自らの挑戦的な作品をプロデュースし遂げつつある河野知美のインタヴューをお届けする。
2023.10.31 update
『パトリシア・ハイスミスに恋して』は、ハイスミスと親密な関係にあった人物と彼女の親類へのアプローチを経て、まさに“映画的”とも言える人生を送った彼女の創作と人生の秘密に迫った作品である。入念なリサーチによって、ハイスミスの新たな魅力を提示することに成功したエヴァ・ヴィティヤ監督のインタヴューを掲載する。
2023.10.6 update
『ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家シネアスト』は、”ゴダール神話”をなぞるのではなく、”人間”ジャン=リュック・ゴダールの肖像を描くことに挑戦した野心的作品であると同時に、ゴダールをまだ知らない、新しい未来の世代に対しても開かれた作品である。映画公開初日に急遽来日したシリル・ルティ監督のインタヴューをここに掲載する。
2023.9.28 update
(複雑な)"家族の群像劇"の名匠アルノー・デプレシャン監督が、『あの頃エッフェル塔の下で』(2015)以来8年ぶりの日本劇場公開作となる新作『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』の公開に合わせて、6年ぶりに来日を果たした。ここに、監督が発した名言「映画は人生を修復する」の真意にも触れた、来日記者会見の模様を掲載する。スクリーンでご覧になった映画の場面を思い起こしながら、是非、ご一読頂きたい。
2023.7.28 update
全編沖縄でロケーション撮影された『遠いところ』が沖縄で先行上映されてスマッシュヒットを放ったというニュースを聞いたのは、この映画を試写で見た直後のことだったが、誰よりもその事実にホッと胸をなでおろしたのは、本作の監督、工藤将亮、その人自身だったに違いない。京都で生まれ育ったという工藤監督が、なぜ、どのようにして、沖縄の過酷な現実を題材にしたこの映画を撮るに至ったのか、その経緯からお話を伺った。
2023.2.21 update
今年度(2022年度)のndjcで上映されるのは以下4監督の4作品、岡本昌也『うつぶせのまま踊りたい』、成瀬都香『ラ・マヒ』、藤本楓『サボテンと海底』、牧大我『デブリーズ』。OUTSIDE IN TOKYOは、中でも『サボテンと海底』を撮った藤本楓監督に注目し、ここに至るまでの経緯と『サボテンと海底』についてお話を伺う機会を得た。
2022.3.2 update
エリック・ロメールやジャック・ロジエが撮った”ヴァカンス映画”の後継者、ヌーヴェルヴァーグの後継者のひとりとして早くからその作品が注目されてきたフランスの俊英ギヨーム・ブラック監督、2018年の作品『宝島』は、監督がかつて子どもの頃に訪れた、パリ郊外にあるレジャー・アイランドで全編を撮影した”ドキュメンタリー映画”だが、そこには今までフィクションとドキュメンタリーの間を行き来してきた監督ならではの演出体験から生み出された、映画ならではのマジカルな瞬間が豊かに息づいている。『宝島』という稀有な映画は、一体どのように作られたのか?ギヨーム・ブラック監督の最新インタヴューをお届けする。
2022.2.24 update
今年度(2021年度)のndjcで上映されるのは以下4監督の4作品、竹中貞人『少年と戦車』、団塚唯我『遠くへいきたいわ』、藤田直哉『LONG-TERM COFFEE BREAK』、道本咲希『なっちゃんの家族』、OUTSIDE IN TOKYOは、中でも『なっちゃんの家族』を撮った道本咲希監督に注目し、ここに至るまでの経緯と『なっちゃんの家族』についてお話を伺う機会を得た。
2022.2.2 update
2011年に公開された『ニーチェの馬』を最後に、映画監督業を引退して後進の指導に力を注ぎたいと自らの口で述べたタル・ベーラ監督がまさしく有言実行の人であることは、彼に学んだ小田香監督や、残念ながら早逝してしまったフー・ボー監督の活躍、そして幾つものプロデュース作品を見れば明らかだ。そのタル・ベーラ監督の、今まで日本では劇場未公開だった初期3作品『ファミリー・ネスト』『アウトサイダー』『ダムネーション/天罰』が一挙劇場公開される。ここに「タル・ベーラ 伝説前夜」作品群の公開を祝して、監督の最新インタヴューをお届けする。
2021.12.10 update
スピリチュアルな映画、聖なる映画の作り手、シリアスな映画作家として世界の映画祭や批評家たちから高い評価を受けてきたブリュノ・デュモン監督が、コミカルな風味を取り入れたのは『プティ・カンカン』(2014)からだったが、以降、本作『ジャネット』(2017)と『ジャンヌ』(2019)のジャンヌ・ダルク2部作においても、その作風は継続している。戦士であると同時に聖女でもある、究極の矛盾を抱えた伝説的少女”ジャンヌ・ダルク”を、一貫して哲学的な問いを携えながら映画を作り続けてきた鬼才ブリュノ・デュモンはどのように描いたのか。ここにジャンヌ・ダルク2部作の日本公開に際して行った、ブリュノ・デュモン監督の最新インタヴューをお届けする。驚くべき新鮮さを湛える『ジャネット』と白熱の心理劇『ジャンヌ』を是非劇場でご覧になってから、ご一読頂ければ幸いである。
2021.11.12 update
今年、2021年から新しく生まれ変わった第34回東京国際映画祭コンペティション部門で見事にグランプリに輝いた『ヴェラは海の夢を見る』は、夫の突然の自殺の後、家がギャンブルの借金の抵当になっていたことを知らされた主人公のヴェラが、男性優位の環境に抵抗するさまを力強く描いた作品。本作が長編劇映画デビュー作となったコソボ出身のカルトリナ・クラスニチ監督は、脚本、撮影、美術といった映画製作の主なスタッフをすべて女性で固め、力強い一歩を踏み出している。ここに、『ヴェラは海の夢を見る』一般上映とQ&A終了直後に、Zoomにてカルトリナ・クラスニチ監督にお話を伺ったインタヴューを掲載する。
2021.10.29 update
佐藤泰志の同名短編小説の映画化『草の響き』は、函館の街を黙々と走り続ける男の生の輝きを、東出昌大、奈緒、大東駿介といった素晴らしい俳優陣による繊細な演技アンサンブルで描き出した、今年の日本映画における原作物映画化作品としては、濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』(2021)と並ぶ傑作である。斎藤久志監督に加えて、奥様であり本作の脚本家である加瀬仁美さんにもご同席頂いて、傑作『草の響き』についてお話を伺った。
2021.10.20 update
『Shari』は、写真家石川直樹によって、日本最北の世界自然遺産、知床・斜里(Shari)に招き寄せられた吉開が、斜里の人々と共に時間を過ごしながら、自らの獣的欲望に背かず<吉開菜央>を全面展開することで、如何にしてこの不自由な現代社会と拮抗するかの実験であると同時に、”音”がキラキラと輝く、圧倒的に新しい感触を備えた作品である。傑作!と呼ぶしかない新作を自らの身体を張って撮り上げた吉開菜央監督に約1年半ぶりにお話を伺った。
2021.8.6 update
『オキナワ サントス』は、第二次世界大戦の最中、1943年7月8日にヴァルガス独裁政権下のブラジルで起き、今や、歴史の闇の中に忘れ去られようとしている”日本人移民強制退去事件”に光を充て、かつて事件を体験した人々の記憶や、事件が起きることになった背景を改めて”記録”に留め直す試みである。『花と兵隊』(2009)、『相馬看花』(2011)と声なき声の主たちの声に耳を傾け続ける、栗林要樹監督に本作についてお話を伺った。
2021.5.14 update
”東ドイツのボブ・ディラン”と言われたシンガー・ソングライター、ゲアハルト・グンダーマンの半生を描いた伝記映画/音楽映画『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』は、一つの国家が消滅する前後の2つの時代を背景に、社会の変化に翻弄される人間の悲劇と同時に愛の”恢復”を描き、本国ドイツで大ヒットを遂げた映画である。自らが東ドイツに生まれ育ち、母国の消滅という事態を体験、10年の歳月を掛けてこの映画の実現に漕ぎ着けたアンドレアス・ドレーゼン監督のインタヴューをお届けする。
2021.4.6 update
舞台はアトラス山脈の人里離れた山間地帯、映画は、アマジグ族の数百年に及ぶ伝統的な暮らしと、迫り来る現代社会の変化との相克を、四季折々の美しい自然と調和した人々の暮らしの中に炙り出されていく。脚本家、監督、プロデューサーとして、世界の映画祭サーキットで作品が評価され、この美しき珠玉の作品を撮り上げた、タラ・ハディド監督のインタヴューを掲載する。2020東京オリンピックの幻となった「新国立競技場」のデザインで知られるザハ・ハディドは彼女の叔母にあたる。
2021.3.2 update
『二重のまち/交代地のうたを編む』は、瀬尾夏美が書いた『二重のまち』の物語をベースに、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田のまちで実現した「交代地プロジェクト」を可視化、映像化した作品である。そこには<語りの継承のはじまりの場>をつくるという作者の明確な意図が働いている。水戸芸術館で始まる新しい展覧会の準備に忙しい本作の作者、小森はるかと瀬尾夏美のお二人に、貴重な時間を割いて頂き、お話を伺った。
2021.2.12 update
中国伝統の山水画絵巻の世界観を大胆な”横スクロール”で展開し、21世紀現代の変わりゆく故郷の姿を壮大なスケール感で捉えた、驚くべき長編処女作『春江水暖〜しゅんこうすいだん』が公開中のグー・シャオガン監督のインタヴューを掲載。監督と、その仲間達であるクルーが、本作の制作にあたって”最も重要視したこと”とは何だったのか?映画史を踏まえながらも、そこから逸脱する勇気をも兼ね備えた挑戦的な姿勢が垣間見えるインタヴューです。
2020.12.18 update
当初4月に上映される予定だった「吉開菜央特集:Dancing Films」が、コロナ禍の上映延期を受け、12月12日から25日まで渋谷ユーロスペースで連日上映されることになった。是非、この機会に映画のフロンティアを<ダンス>によって変容せしめる吉開菜央の作品群に触れて、<言葉>以前の名状し難い感情の現れを体感してほしい。
2020.11.27 update
東日本大震災の後、三年半にわたって「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さんを親密かつ適切な距離感でキャメラに収め、震災後の地域の人々の記憶や想いに寄り添い、”空に耳を傾けた”、(『息の跡』に続くもうひとつの)傑作ドキュメンタリー映画『空に聞く』が、2020年11月、ついに全国劇場公開に漕ぎ着けた。ここに、『息の跡』以来、約2年半振りとなる小森はるか監督のインタヴューをお届けする。
2020.10.13 update
沖縄で撮影した長編処女作『KUICHISAN』(2011)、インドとアイスランドで撮影した長編第2作『TECHNOLOGY』(2016)についで、”プレ東京オリンピック・パラリンピック期”の東京を捉えた新作『TOKYO TELEPATH 2020』(2020)が、コロナ禍の公開延期を経て、ついに劇場公開される。サフディ兄弟らの作品で活躍する撮影監督ショーン・プライス・ウィリアムズ、音楽家の服部峻、音響のニコラス・ベッカーら、最強の制作チームを擁する遠藤麻衣子監督作品、このレアな上映機会を是非お見逃しなく!
2020.9.11 update
レイモンド・カーヴァーの短編小説『シェフの家』の夫婦の物語とケベック独立運動という大きな政治的・民族的主題が、白いキャンパス/スクリーンの上で融合し、1%の違いによって、希望と絶望の間を行き来する、儚い夢の世界のようでもあり、現実世界への真摯な問い掛けであるようなアートフィルム『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』は、アニメーションだからこそ表現し得る、独自のリアリティ領域の表現に成功している。ここに、フェリックス・デュフール=ランペリエール監督のインタヴューをお届けする。
2020.4.24 update
コロナウイルス禍で劇場公開が中断された『春を告げる町』が、今、<仮設の映画館>の第1弾上映作品として4月25日(土)からデジタル配信で上映されようとしている。2011年3月11日に起きた東日本大震災後、全町避難となった福島県双葉郡広野町の人々の帰還後の生活を約1年間に亘って追い、この町の人々と地域の肖像を歴史的視点を以て、見事に描きだした島田隆一監督のインタヴューをお届けする。
2020.2.28 update
2018年カンヌ国際映画祭で賞賛の嵐を巻き起こした、「映画」に新しい独自のリアリティをもたらす革新的な作品『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』、ビー・ガン監督のインタヴューをお届けする。今まで多くの映画監督にお話を伺ってきたが、ビー・ガン監督ほど、声の小さい監督はいなかったように思う。しかし、その声からは、「映画」という芸術が持ちうる精神性に対する監督の確固たる信念が伝わってきた。
2019.11.7 update
塀に囲まれたイランの少女更正施設には、強盗、殺人、薬物、売春といった罪で捕らえられた少女たちが収容されている。撮影許可を得るのに7年もの歳月をかけ、彼女たちの”失われた人生”に光を充てた、イランを代表するドキュメンタリー作家にして希代のストーリーテラー、メヘルダード・オスコウイのインタヴューをお届けする。
2019.9.26 update
アメリカ占領下の沖縄で米軍に抵抗した”カメジロー”こと瀬長亀次郎が大衆と共に民主主義を勝ち取るプロセスを描いた”カメジロー”1作目『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』(2017)の続編となる本作『米軍が最も恐れた男カメジロー 不屈の生涯』(2019)は、現在の”オール沖縄”の風景を、カメジローが活躍した時代の沖縄の熱に結びつけることから映画を始め、今に続く沖縄民主主義の原点を穿った男の人生を公私に亘って浮き彫りにするのみならず、現在の政治状況の貧しさについて考えるヒントを与えてくれる。本作の作り手、佐古忠彦監督にお話を伺った。
2019.8.21 update
リオの夜景を捉えたスタイリッシュな映像で始まる『ジョアン・ジルベルトを探して』(2018)は、”ボサノヴァの法王”ジョアン・ジルベルトの謎めいた伝説の数々と素晴らしい音楽に魅せられてきたファンにとっては、まったく以てその期待を裏切らない作品であり、美しく謎めきながら、見るものを思索へと誘うドキュメンタリー映画の秀作である。音楽好きで、暖かく、堅実な人柄が伝わってくるジョルジュ・ガショ監督へのインタヴューをお届けする。
2019.7.12 update
神奈川県大和のシェアハウスで暮らす3人組が、ネット通販で当たった海外旅行の旅先に決めたのは、国際金融都市として知られ、安全な観光地と言われるシンガポール。ウーバーとスマホを頼りにユルユルとマイペースの旅を始めたニーナ(遠藤新菜)とスー(SUMIRE)だが、市場ではぐれたことを切っ掛けに、緩み切った”観光”の時間に亀裂が走り、緊張感漂う”本物の旅”が始まる。『TOURISM』 を通じて、グローバリズムの中で生きることを余儀なくされている21世紀日本人の価値観の”更新”を今改めて問う、宮崎大祐監督のインタヴューを掲載する。
2019.6.27 update
2015年11月に起きたパリ同時多発テロ発生後のパリの日常を、ヌーヴェルヴァーグ直系の瑞々しい筆致で描いた『アマンダと僕』は、2018年の東京国際映画祭で上映され、東京グランプリと最優秀脚本賞を受賞、ミカエル・アース監督はその発表の瞬間には帰国しており東京にいなかったが、2019年6月、今年のフランス映画祭での上映と劇場公開に合わせて凱旋来日を果たした。ギヨーム・ブラック『7月の物語』と併せて見ておきたい、21世紀のヌーヴェルヴァーグを更新し続ける一作である。
2019.6.5 update
1970年代末ポーランドの田舎町を舞台に、12歳の少年ピョトレックが経験する通過儀礼<イニシエーション>の物語を、散文的かつ抑制的に描き、子供と大人の世界の間にある境界線、時の流れ、理解の及ばない他者の感情といった不可視のものを詩的な風情とともに浮かび上がらせていく、少年時代の煌めきと残酷さが表裏一体の緊張関係を成す青春譚『メモリーズ・オブ・サマー』の公開に合わせて来日した、映画大国ポーランドが生んだ新鋭アダム・グジンスキ監督のインタヴューをお届けする。
2019.5.30 update
映画『嵐電』は、京都市街を走る路面電車「嵐電」を舞台に、3つの恋愛譚が幻想的に交錯する、鈴木卓爾監督ならではのSF的恋愛映画にして、人間存在の儚さを浮き彫りにする傑作。井浦新、大西礼芳をはじめとして俳優陣が皆瑞々しく、プロの俳優と学生たちを遭遇させる試みは見事に成功している。京都の鈴木卓爾監督を訪ねて伺ったお話は、京都という特別な磁場、あがた森魚、宮沢賢治から<映画>の普遍と現在まで、多岐に亘るロング・インタヴューとなった。是非、作品をご覧になった後、改めて『嵐電』の小宇宙の広がりを体験して頂きたい。
2019.4.25 update
ギヨーム・セネズ監督は、21世紀の現代において、ダブルインカムで余裕があるように見えても、実際は、仕事と子育ての時間配分や経済状況、精神状態においても、ギリギリの生活を送っている共働きの労働者達の生活情景をリアルに描き出すことに成功している。この映画で描かれていることは、その後、フランスで黄色いベスト運動が起きたことを鑑みれば、予兆的ですらあるといえる。事態はそれほど変わらないはずの、この国、日本で、この映画がどのように受け止められることになるのか、注目したい。
2019.2.8 update
2017年9月に開催された第39回ぴあフィルムフェスティバルで上映されて観客賞を受賞した『あみこ』は、その後、2018年2月のベルリン国際映画祭で上映され、国内外の注目を浴び、ヨーロッパ、北米、南米、アジアの数多の映画祭で上映されることになる。反抗的な眼差しで初期衝動のエネルギーを爆発させる瑞々しい映画『あみこ』を世に放ち、ベルリン国際映画祭に世界最年少で招待された山中瑶子監督のインタヴューをお届けする。
2018.12.6 update
ベルリンのカフェで始まる男と男の出会い物語は、事故を契機に、ひとりの男とエルサレムに残された妻子の邂逅の物語へと変容していく。イスラエルの新鋭オフィル・ラウル・グレイツァ監督は、残された者たちの物語をユダヤの戒律が色濃く支配するエルサレムの地で展開し、繊細な演出によって、言葉にした瞬間に嘘くさく響く、映画でしか表現し得ない人間の感情を表現することに成功している。ここに、東京国際映画祭での上映にあたって来日を果たしたプロデューサー、イタイ・タミール氏のインタヴューを掲載する。
2018.9.14 update
佐藤泰志原作小説の映画化『きみの鳥はうたえる』は、俊英三宅唱監督の現時点における最高傑作であると言って差し支えないだろう。もちろん、三宅唱は、佐藤泰志の小説をそのまま映画に置き換えようとしたわけではなく、佐藤泰志の小説がモデルとした世界を映画という異なる表現手段を用いて描くことを試みている。そうして、柄本祐、石橋静香、染谷将太という最高の俳優陣とともに届けられたのは、青春映画の輝きを生々しく放つ、まるで生き物のような映画である。
2018.9.11 update
濱口竜介ほど、日本のシネフィルに支持され、愛されてきた映画作家も少ない。 その濱口竜介が『ハッピーアワー』(15)以降、快進撃を続け、柴崎友香の小説を原作とし日仏共同製作で作られた『寝ても覚めても』(18)は第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映、この9月、日本国内で劇場公開されヒットを記録しているという。3.11以降、日本列島各地で露わになった亀裂に、暖かい血流を注ぎ、分断ではなく、突き抜けるような”愛”を今一度呼び覚ます傑作を作り上げた、濱口竜介監督のインタヴューをここに掲載する。
2018.7.27 update
スペインの新鋭カルラ・シモン監督は、自伝的内容を扱うことで、まさに彼女にしか撮ることのできない、作家性の強い内容を主題として扱いながらも、見るものを見事に惹き込む映画的な語りの手法で、観客を虜にする術を心得ているようだ。長編処女作にして、これほどの傑作を創り上げたカルラ・シモン監督に、まずは、本作『悲しみに、こんにちは』に至るまでの足跡を尋ねてみた。
2018.7.20 update
沖縄三部作を通じて“沖縄の闘い”を伝え続ける三上智恵と新進気鋭の大矢英代、ふたりのジャーナリストが、長期に亘る取材から紡ぎ上げた『沖縄スパイ戦史』は、10代少年たちが動員された”少年ゲリラ兵部隊<護郷隊>”、マラリア禍の地に強制移住させられた波照間島民の悲劇、スパイリストに基づいて行われた“スパイ虐殺”、3つの知られざる沖縄戦史の探求を通じて、現在まで連綿と連なる、国体護持の為に住民に犠牲を強いる為政者たちの狂気の歴史を炙り出す。重要なのは、こうした為政者たちの狂気の命脈は今現在も生きているということだ。 ここに、沖縄の悲劇を通じて、“今ここにある”危機を炙り出す、若き俊英大矢英代監督のインタヴューをお届けする。
2018.6.5 update
ジャン=ピエール・レオーを主演に迎えた『ルイ14世の死』で、72年間もの永きに亘ってフランス国王として君臨した”太陽王”ルイ14世の最後の日々を瀟洒な映像美で描き、見るものに、まさに”ルイ14世の最後とはこのようなものだったに違いない”と信じ込ませる、大胆不敵かつ繊細な映画的現実を紡ぎ出す、スペイン・カタルーニャ出身の奇才アルベール・セラ監督のインタヴューを掲載する。
2018.5.31 update
『私はあなたのニグロではない』が、トランプ政権下のアメリカで異例のヒットを放ったラウル・ペック監督の新作『マルクス・エンゲルス』が日本でもヒットしているという。ここにそのヒットを記念して行われた、作家佐藤優氏のトークショーの採録を全文掲載する。ますます混迷の色を深める現代にあって、”国家というものに頼っていては、貧困の問題も格差の問題も人間の差別の問題も解決できない”というマルクスの思想は今改めて現実味を帯びており、”20世紀の亡霊”としてではなく、21世紀現在のリアリティとして再評価すべき時が訪れている。
2018.4.20 update
『心と体と』は、それそれの”障害”を抱えた男と女が出会い、同じ夢を見ることから恋愛関係へと発展していく、現実と夢が対等に存在し、閉じていた感性が新しく拓かれていく、新鮮な驚きに満ちた映画である。食肉処理場を舞台に据えることで、現代社会への透徹した批判の目を光らせながらも、独特なユーモアが漂う、瑞々しく官能的な愛の映画を携えて来日した、ハンガリーの名匠イルディコー・エニェディ監督のインタヴューをお届けする。
2018.4.11 update
『ベルベット・ゴールドマイン』『エデンより彼方に』『キャロル』のトッド・ヘインズ監督の新作『ワンダーストラック』は、耳の聞こえない少年少女がニューヨークの街を駆け回り、やがて50年の歳月を経て思わぬ形で邂逅を果たす、実験的手法に満ちた、”一風変わった”児童映画である。本作を携えて20年振りの来日を果たしたトッド・ヘインズ監督のインタヴューをお届けする。
2018.3.22 update
前作『ローマに消えた男』(13)に続いてイタリアの名優トニ・セルヴィッロを主演に迎え、グローバル金融が支配する現代社会における”資本による強奪”というリアルなテーマを、エレガントな映像の社会派ミステリーに仕上げた『修道士は沈黙する』が公開中のロベルト・アンドー監督(『そして、デブノーの森へ』(04)、『ローマに消えた男』)のインタヴューをお届けする。
2018.2.23 update
トランプ政権下の今、敢えてニクソン政権の腐敗に光を充てることで、現在進行形のアメリカ合衆国の危機をリアリティ豊かに浮き上がらせる作品『ザ・シークレットマン』の脚本・製作・監督を務めたピーター・ランデズマンのインタヴューを掲載。スピルバーグ渾身の報道の自由応援映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公開前に是非見ておきたい作品だ。
2018.1.26 update
前作『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』(14)同様、マルツェル・レーヴの移動撮影が冒頭から冴え渡り、見るものを一気に映画に惹き込む『ジュピターズ・ムーン』は、移民問題とテロリズムに揺れるヨーロッパ(ハンガリーのブタペスト)を舞台に、”信じること”を、今、改めて問いかける、内なる美しさを秘めたエンターテイメント作品である。脚本を手掛けたパートナーのカタ・ヴェーベルとともに来日したコーネル・ムンドルッツォ監督にお話を伺った。
2018.1.19 update
『ユキとニナ』(09)以来、約8年振りとなる諏訪敦彦監督の新作がフランスから届いた。ヌーヴェルヴァーグの”申し子”ジャン=ピエール・レオーが自らの役で出演し、生まれて初めて映画作りに手を染める子どもたちと破天荒な共演を果たしている。子どもたちとの映画作りの現場、伝説の俳優ジャン=ピエール・レオーとの共同作業、”民主的な映画製作”の探求といった様々な主題を通じて、硬直した制度的なものに揺さぶりをかける、諏訪監督のインタヴューをお届けする。
2017.11.29 update
『エル・トポ』(70)、『ホーリー・マウンテン』(73)、『サンタ・サングレ 聖なる血』(89)といった怪作群で映画史、ポップカルチャー史に名を残すアレハンドロ・ホドロフスキー監督の大傑作自叙伝シリーズ、『リアリティのダンス』(13)に次ぐ第2弾『エンドレス・ポエトリー』(16)で主演・音楽制作を務め、父から”自由”の遺伝子を受け継いだアダン・ホドロフスキーのインタヴューをお届けする。
2017.11.17 update
現代日本を代表する音楽家坂本龍一が、3.11東日本大震災とそれに伴って生じた東京電力福島第一原子力発電所の事故、さらには本人の病気という予期せぬ厄災を受け止めながら、傑作アルバム『async』を創り上げるに至るまでの5年間を撮り上げ、膨大なアーカイブ映像の中から選択した映像を的確に織り込み、アーティストの肖像を繊細に浮かび上がらせる『Ryuichi Sakamoto: CODA』、第30回東京国際映画際での特別招待上映に併せて来日したスティーブン・ノムラ・シブル監督にお話を伺った。
2017.10.18 update
イザベル・ユペールの娘ロリータ・シャマが主演、名匠レナート・ベルタが撮影監督を務めた、パリのカルチェ・ラタンを舞台に若い女性と古書店を経営する初老男性の出会いを描く『静かなふたり』は、映画作家のユニークな個性が繊細に織り込まれた奇妙で、愛すべきラブストーリーである。“現代版のヌーヴェルヴァーグ”というよりは、“ヌーヴェルヴァーグそのもの”というべき映画を撮り上げたエリーズ・ジラール監督にお話を伺った。
2017.10.6 update
ジム・ジャームッシュが製作総指揮を務め、世界最大の映画作家マノエル・ド・オリヴェイラの街でもある”ポルト”で撮影された、夢のような甘美な記憶についての映画『ポルト』を撮り上げたゲイブ・クリンガー監督は、雑誌に映画批評を執筆し、アメリカの大学では映画学の教鞭を振るう映画批評家でもある。筋金入りのシネフィルであるゲイブの話を聞いていると、”映画史”という過去の広大な領域をもっと探求しなければならないという思いに駆られる。未開の領域というのは、私たちの過去にこそ、広がっているのに違いない。
2017.8.1 update
『アイスバーグ!』、『ルンバ!』が熱い支持を受けたアベル&ゴードンの新作『ロスト・イン・パリ』は、カナダの田舎町から、アーティストである叔母が暮らす街パリを目指してやってきた主人公フォオナの珍道中を、スタイリッシュな映像美と道化師由来の見事な身体芸で楽しませてくれるバーレスク映画である。特筆すべきは、この撮影のために自らが住むアパートメントを提供したエマニュエル・リヴァの存在だ。是非劇場で、軽やかで若々しい彼女の勇姿を目に焼き付けて頂きたい。ここに、新作を携えて来日したアベル&ゴードンのインタヴューをお届けする。
2017.7.7 update
『ボンジュール、アン』は、フランシス・フォード・コッポラの妻であり、ソフィア・コッポラとローマン・コッポラの母、そして、『地獄の黙示録』(79)の舞台裏を捉えた秀逸なドキュメンタリー映画『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』(81)など、幾つかのドキュメンタリー映画の監督としても知られるエレノア・コッポラが、80歳にして初めて撮り上げた長編劇映画である。主演を務めたのは、コッポラ・ファミリーと長年の友情を育んできたダイアン・レイン。数十年間アメリカ映画の最もコアな部分で仕事をしてきたお二人を迎え、愛すべき作品『ボンジュール、アン』についてお話を伺った。
2017.5.26 update
両親が離婚をした自らの体験に基づいて、忘れ難い傑作『ブルー・バレンタイン』(10)を11年間の年月を費やして創り上げたデレク・シアンフランスの新作は、M.L.ステッドマンのベストセラー小説「海を照らす光」の映画化『光をくれた人』、その地に宿る魔力を物語の不可視なモーターとして駆動し、マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィキャンデルらが演じる登場人物を神話的な輝きで照らし、見るものを忘我の境地へと誘う感動作である。ここに監督のオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2017.5.19 update
あのヴィクトル・エリセ監督の名作『エル・スール』(83)で主人公の少女を演じたイシアル・ポジャインが監督、ケン・ローチ監督の盟友ポール・ラヴァーティが脚本を手掛けた『オリーブの樹は呼んでいる』は、主人公少女アルマ(アンナ・カスティーリョ)の無謀な旅の成長物語に、”抵抗の映画”の本性を巧みに忍ばせた、内面にマグマのように沸き立つ闘志を抱えたダイナミックな作品である。現代性とユーモア、見事な語りの技術を備えた二人の闘士、イシアル・ポジャインとポール・ラヴァーティによる作品が日本でももっと紹介されていくことを祈りつつ、イシアル・ポジャイン監督のインタヴューをお届けする。
2017.4.28 update
瀬田なつき監督が、橋本愛を主演に迎えて撮った、井の頭公園100周年記念映画『PARKS パークス』は、永野芽郁、染谷将太、石橋静河といった瑞々しいキャスティングが生んだオーガニックなノリと生命の輝きに満ちた映画であると同時に、素晴らしい音楽映画、瀬田監督らしい緻密な語りのメタフィクション映画として存分に楽しめる傑作である。この暗い時代にあって、瑞々しい生命の息吹と一陣の風の流れを感じさせてくれる『PARKS パークス』を劇場でご覧になって、インタヴューをご一読頂ければ幸いである。
2017.3.17 update
名匠に2度目のカンヌ国際映画祭パルムドールの栄誉をもたらした『わたしは、ダニエル・ブレイク』には、50年の長きに亘ってケン・ローチ監督が寄り添ってきた市井の人々を描くリアリズムが力強く息づいており、人々の生活を支えるはずの社会制度の機能不全と為政者の不作為(悪意)に怒りを滾らせ、見るものに生々しい感情を呼び起こす。今まさに、多くの”民主主義国家”で必要とされている映画である。 ここに、ケン・ローチ監督のオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2017.2.21 update
3.11で被災し全てを失ったが主人公が、自らの力で店を再建し、その被災体験を独学で学んだ外国語で世界に向けて情報発信していく、過酷な状況下においても、人並み外れた営為を続ける主人公”佐藤さん”の姿を約3年間に亘って撮影したドキュメンタリー映画『息の跡』は、主人公の朗々とした人柄も相まって、見る者の心を深く動かさずにはいない。どこか神話的な輝きすら帯びた、傑作ドキュメンタリー映画を完成させた、小森はるか監督のインタヴューをここにお届けする。
2017.2.7 update
二人のトランスジェンダーガールのマシンガントークが、スコセッシやタランティーノの映画ばりに炸裂して笑いを誘い、実在する社会の周縁の人々の困難な現実をポップな色彩と躍動感のあるリズムで描く、全編iPhoneで撮影された映画『タンジェリン』は、これから映画を作りたいと思っている未来の映画作家たちに是非見て欲しい作品だ。そして、どのようにして、生々しいリアリティとポップな表現を、ひとつのスクリーンに同居し得ることが出来たのか?監督のインタヴューを通じて探ってみて欲しい。
2017.1.25 update
『太陽の下で -真実の北朝鮮-』は、北朝鮮当局が見せたいと思っている映像と、本当の北朝鮮がせめぎ合い、”劇場国家”北朝鮮の姿を浮かび上がらせる秀逸なドキュメンタリー映画である。独裁政治が行き渡る国家に住む市井の人々への想いから母国ロシアの窮状、北朝鮮で体験した希有な体験まで率直に語ってくれたヴィタリー・マンスキー監督のインタヴューを掲載する。
2017.1.20 update
2017年1月16日、映画『沈黙 -サイレンス-』の完成以来、マーティン・スコセッシ監督が2度目の来日を果たした。過去の代表作との見事な円環を成す集大成を創り上げ、物質主義的社会における精神的思潮の重要性を問う、スコセッシ監督の偉業がひとりでも多くの観客の目に触れることを願って、記者会見の全文を掲載する。
2017.1.12 update
混迷の色を深める現代においても、一歩一歩力強く歩を進めたい2017年、新年の門出を飾るに相応しい、驚きに満ちた映画『ミューズ・アカデミー』と共に5年ぶりの来日を果たしたホセ・ルイス・ゲリン監督のインタヴューを掲載する。同時開催の特集上映「ミューズとゲリン」にも是非足を運びたい。
2016.11.25 update
『ミラノ、愛に生きる』(09)に続いて、ティルダ・スウィントンを主演に迎えたルカ・グァダニーノ監督の新作『胸騒ぎのシチリア』は、イタリアのパンテッレリーア島の瀟洒なヴィラを舞台に、4人の男女の欲望が渦巻くサスペンス仕立ての群像劇だ。ティルダが演じたロック・ミュージシャン、マリアンの役は、イングリッド・バーグマンへのオマージュでもあると明かしてくれた、グァダニーノ監督のインタヴューをお届けする。
2016.11.10 update
20世紀の映画遺産「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」を21世紀の今再評価する試み『ヒッチコック/トリュフォー』が、TIFF2016 第29回東京国際映画祭で上映され、ニューヨーク映画祭のディレクターとしても知られる批評家、脚本家、映画監督のケント・ジョーンズ氏と黒沢清監督の対談が行われた。21世紀における映画と批評の関係について、極めて真っ当なパースペクティブを打ち出した作品『ヒッチコック/トリュフォー』の公開(12月10日)を祝して、上映後に行われた対談の採録を掲載する。
2016.11.4 update
TIFF2016 第29回東京国際映画祭にて、2016年7月4日に逝去したアッバス・キアロスタミ監督を追悼して、ドキュメンタリー『キアロスタミとの76分15秒』とキアロスタミ監督の遺作となった短編『Take Me Home』の上映が行われた。その上映後に行われたセイフラー・サマディアン監督のQ&Aの模様をここに採録掲載する。
2016.10.21 update
『贖罪』(12)以降、『リアル~完全なる首長竜の日~』(13)、『Seventh Code』(14)、『岸辺の旅』(15)、『クリーピー 偽りの隣人』(16)と勢いが留まることを知らない黒沢清監督の海外初進出作品『ダゲレオタイプの女』が劇場公開されている。『ダゲレオタイプの女』は、現代のパリにおける”幽霊譚”であると同時に、古典と現代、過去と現在の狭間に、映画的虚構がスリリングに立ち上る作品だ。ここに、黒沢清監督が、その映画ならではのマジックの一端を明かしてくれたインタヴューを掲載する。
2016.9.2 update
イザベル・ユペール、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが出演、フランスから届いた団地映画『アスファルト』は、端正なフレーミングと感度の良い色彩&音響設計、卓越したユーモアで見る者を惹き付けながら、徐々に感動のうねりを生み出す語りが見事な逸品。今後の更なる活躍も楽しみなサミュエル・ベンシェトリ監督のオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2016.8.24 update
5年振りに届けられた新作『イレブン・ミニッツ』(15)は、『アンナと過ごした4日間』(08)や『エッセンシャル・キリング』(10)同様、他の誰の映画にも似ていない、見る者を驚かせずにはいない黙示録的傑作である。 不安な現代を生きる私たち観客に覚醒を促す、禍々しも若々しい作品と共に来日したイエジー・スコリモフスキ監督の最新インタヴューをお届けする。
2016.8.5 update
2004年アメリカ、ブッシュ陣営とケリー陣営が熾烈なキャンペーンを展開する大統領選の最中、「ブッシュの軍歴詐称疑惑」のスクープを報じたCBSの看板報道番組「60ミニッツⅡ」が、新証拠として挙げたひとつの文書が“偽造”であるとする批判に晒され、番組は敗走を余儀なくされていく。ケイト・ブランシェット、ロバート・レッドフォード競演で、アメリカのTVジャーナリズムの黄昏を描いた『ニュースの真相』、 ジェームズ・ヴァンダービルト監督のオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2016.7.29 update
長編処女作『冬の小鳥』(09)で、”捨てられたもの”の複雑な感情を繊細なタッチで紡ぎ上げ、鮮烈な監督デヴューを飾ったウニー・ルコント監督の二作目『めぐりあう日』は、主演にセリーヌ・サレットを迎え、名撮影監督キャロリーヌ・シャンプティエと組み、前作の抑制された感情の豊穣はそのまま、音楽性とナラティブが映画的な豊かさを伴ってスケールアップしている。自らの困難な体験を、人間性豊かなフィクションに昇華し続ける、ウニー・ルコント監督のインタヴューをお届けする。
2016.6.20 update
『ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区』(12)に収められた『スウィート・エクソシスト』を除けば、2009年の『何も変えてはならない』以来、ペドロ・コスタ監督、約5年振りの長編作品となる『ホース・マネー』は、去年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で大賞を受賞した。『コロッサル・ユース』で始まったヴェントゥーラとの共同作業が、ついにひとつの到達点を迎えた感のあるペドロ・コスタ監督に、数年振りにお話を伺う機会を得た。
2016.3.25 update
独自のナラティブによって、見るものの”想像力”を梃子にどこまでも映画を有機的に拡張してゆく、”優しさ”と豊かな官能性が漲る傑作『光りの墓』で、21世紀の新たなる映画史の扉を開いたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督のインタビューをお届けする。
2016.3.18 update
21世紀の不寛容な気配が濃厚に立ち込める現在において、”自由への遁走”を敢行する『ジョギング渡り鳥』は、曰く言い難い天使的な”優しさ”に満ち、”自由”への欲望を強かに伝染させる映画である。本作の起点となった3.11のことから、リアルな映画製作の現在、観客に開かれた有機的な映画の可能性まで、存分に語ってくれた鈴木卓爾監督のインタヴューをお届けする。
2016.3.15 update
余命僅かな愛娘の為に父親がコスチュームを買おうと奔走し、不穏な事態に巻き込まれていく『マジカル・ガール』は、運命の坂を転げ落ちてゆく人々を描きながらも、どこか”爽やか”な後味すら残す、希有な作品である。来日したカルロス・ベルムト監督に、物語ることへの強烈な欲望を感じさせる、この作品について、そして、監督の創造の源泉についてお話を伺う機会を得た。
2016.2.4 update
2016年1月22日、六本木ヒルズの巨大スクリーン、スクリーン7で行われた『キャロル』ジャパン・プレミアに、今、ハリウッドでも最も輝いている女優ケイト・ブランシェットが来日、日本からは、国際映画祭での受賞経歴を持つ女優寺島しのぶが応援に駆けつけ、舞台挨拶に華を添えた。 素晴らしい傑作『キャロル』の日本上陸を祝福するのに相応しい輝きを放った、一夜のイベントの模様を掲載する。
2016.1.29 update
マイケル・シャノン、アンドリュー・ガーフィールド、ローラ・ダーン共演、ポスト・リーマンショック時代の危機を迎えたアメリカ資本主義社会の“今”をリアリズムで描いた『ドリームホーム 99%を操る男たち』、アメリカで高い評価を受けているラミン・バーラニ監督に、「脚本」としてクレジットされているアミール・ナデリとの共同作業、監督のバックグラウンドについてお話を伺った。
2016.1.15 update
ジャン・ヴィゴ賞を受賞した、サスペンスフルな気配を漂わせる短編映画『犬を連れた女』とロカルノ国際映画祭で特別大賞を受賞した、瑞々しい青春映画『若き詩人』、2つの初々しい作品とともに来日し、1ヶ月半の滞在を通じて日本の映画作家たちとも交流を深め、国境を超えて、現代映画の柔らかく、新しい可能性を探求する”若き映画人”、ダミアン・マニヴェル監督のインタヴューをお届けする。
2015.12.28 update
2014年の東京国際映画祭のコンペティションでグランプリと最優秀監督賞をW受賞した『神様なんかくそくらえ』が、約1年を経た今、日本で劇場公開されている。『神様なんかくそくらえ』は、ニューヨークのストリートで生きる若者の姿を、独自の撮影スタイルで鮮烈に描いた、新鮮な驚きに満ちた作品である。ここに、ロバート・パティンソンが出演するという次作も楽しみなニューヨークの骨太な才能、ジョシュア・サフディのインタヴューをお届けする。
2015.12.21 update
文学的才能に恵まれながらも、「私生児」として生まれた出自と外見のコンプレックスに悩まされ続けたヴィオレットが、”書く”という行為によって光を見出していく姿を、叙情性、官能性豊かに描きだした傑作『ヴィオレット ある作家の肖像』。複雑な人物像を実に魅力的に演じきった女優エマニュエル・デゥヴォスと破格の物語を”自分の物語”として語りきったマルタン・プロヴォ監督のインタヴューをここに掲載する。
2015.12.14 update
イラン出身の名匠マフマルバフ監督の新作『独裁者と小さな孫』は、実にダイレクトに、世界が直面している“暴力の連鎖”への平和的な抵抗を試みる映画である。問われているのは、人々の“人間性”が試される時が、どの国においてもやってくる、その時、人はどのように振る舞うことができるのか?ということである。是非、この機会に故国を離れて映画を撮り続ける、名匠の言葉に耳を傾けてほしい。
2015.12.3 update
フランスの人気俳優ヴァンサン・マケーニュが主演した、都市生活者のメランコリックなコメディ『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』は、シネフィル的な実験に留まらず、メニルモンタンに住む”アドゥレサンス”の愛おしい日常を、繊細な秋と冬の光のもとに捉えた秀作である。ここに、2014年6月に行われたフランス映画際での上映のために来日した、セバスチャン・ベベデール監督のインタヴューをお届けする。
2015.11.17 update
『キャノンフィルムズ 爆走風雲録』を見ると、知らない内にいかに多くのキャノンフィルムズ作品を見ていたのかということに驚かされる。それらの作品群の中には、自分と映画との関わりを決定的に深めてくれた作品が幾つも含まれている。個人的にそんな恩義を感じながら、メナヘム・ゴーランという希代の映画人の光と影の物語を私たちに届けてくれたヒラ・メダリア監督にお話を伺った。
2015.11.2 update
”国家を、大海の未知なる怪物”リヴァイアサン”に喩え、人間対国家の悲劇を、壮大な”絶望”の交響曲として描いた『裁かれるは善人のみ』が公開中のロシアの鬼才、アンドレイ・ズビャギンツェフ監督のインタヴューを掲載。国家とは何か?権力とは何か?国家がその欲望を露にし始めた今の時代に見るべき、必見の映画です。
2015.10.23 update
オリヴィエ・アサイヤス監督の現時点における最高傑作『アクトレス 〜女たちの舞台〜』がいよいよ公開日を迎えた。ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツといった豪華女優陣を、スイスの絶景の地シルス・マリアに迎え、現実とフィクションの境界を、女優陣そのもののアイデンティティを揺さぶる、至高の瞬間を生み出したオリヴィエ・アサイヤス監督のインタヴューを掲載する。
2015.9.8 update
今年(2015年)の2月、3月にアンスティチュ・フランセで行われたジャン・エプシュタインの特集上映は、イーストウッドやアレクセイ・ゲルマンら、現代映画の怪作が幾つも封切りされる中でも、異彩を放つ特別な上映であり、その際に行われたエミリー・コキー女史によるジャン・エプシュタインについてのレクチャーは、未だ知られざる巨匠の”ギャラクシー”に観客を誘う、最良の”映画の授業”であった。ここに、その”映画の授業”の採録を、ふんだんな画像資料とともに掲載出来ることを喜ばしく思う。
2015.8.7 update
ルース・レンデルの短編「女ともだち」に材を得たフランソワ・オゾン監督の新作『彼は秘密の女ともだち』は、オゾン監督ならではの、捻りの効いた”女性性”賛美の映画でありながら、監督の人間的な円熟味すら感じさせるヒューマン・ミステリー、ヒューマン・ドラマに仕上がっている。 ここに、フランス映画祭2015のために初来日を果たし、聡明さを強く印象づけた主演女優アナイス・ドゥムースティエのインタヴューをお届けする。
2015.6.26 update
『ハッピーエンドが書けるまで』は、ジョシュ・ブーン監督(『きっと、星のせいじゃない』)の”夢”がぎっしり詰まった、愛すべき長編処女作品である。『あと1センチの恋』よりも、さらに溌剌として奔放な魅力を発揮しているリリー・コリンズ、小説家一家の父親役を演じたグレッグ・キニア、今、最も新作が楽しみな監督のひとり ジョシュ・ブーンと製作のジュディ・カイロ、4者のオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2015.5.29 update
1996年の『イゴールの約束』以降、着実に3年毎に新作を届けてくれる世界的巨匠ダルデンヌ兄弟の新作『サンドラの週末』が公開されている。ダルデンヌ映画の中では例外的に弱り切った主人公サンドラを、”あの”マリオン・コティヤールが演じる映画的マジック、ダルデンヌ・サーガとともに成長し、映画に深みを与えるてゆく”ダルデンヌ・マフィア”の面々について、3年振りの来日を果たした巨匠のお二人にお話を伺った。
2015.5.22 update
カンボジア出身英国在住のホン・カウ監督は、国際映画祭で上映された短編映画が注目され、本作『追憶と、踊りながら』で長編デヴューを飾った。人気俳優ベン・ウィショーと往年の”武侠映画の女王”チェン・ペイペイを主要キャストに迎えた本作は、本国英国で注目を浴びた他、サンダンス映画祭ではオープニング作品に選ばれ、撮影賞を受賞している。魅力的なルックを携えた長編処女作を創り上げた俊英ホン・カウ監督のインタヴューをここにお届けする。
2015.4.3 update
いわくつきの傑作『ラブバトル』が、ついに日本でも公開される。男と女が原初の欲望をぶつけあう姿を”音楽的”に追求した本作と共に2013年に来日したジャック・ドワイヨン監督のインタヴューをここに掲載する。”音楽的”とはどういうことか、執拗なまでの演出を経て初めて至る、俳優と監督が共に到達する演出的境地、何かを作り出す、表現することに於いて、極めて多くの示唆に富む名匠の言葉に、是非耳を傾けてほしい。
2014.11.28 update
寓話的なホラーであり、スリラーであり、ブラックコメディの要素も入ったジャンル映画である『オオカミは嘘をつく』が世界で高評価を得た、イスラエル出身の二人組監督、アハロン・ケシャレスとナヴォット・パプシャドのインタヴューをお届けする。大学で映画学を教えていた教師アハロンとその教え子ナヴォット、師弟関係が共同監督へと発展したレアアケースは、未来の監督像のひとつとなっていくのかもしれない。
2014.11.14 update
<1968年>を共に闘った同志の自死をきっかけに作られた伝説的な処女作『三十歳の死』(82)、移民問題に光を充てながら、友達を守るために団結する子供たちを活写した『ハンズ・アップ!』(10)と、政治性の強い、私的な映画を作り続けて、社会と対峙してきたロマン・グーピル監督の新作『来るべき日々』がTIFFのコンペティション部門で上映された。映画について、監督という人々について、家族について、率直に語ってくれたロマン・グーピル監督のインタヴューをお届けする。
2014.11.10 update
トリュフォーの『大人は判ってくれない』(59)を初めとするアントワーヌ・ドワネル五部作、ゴダールやヌーヴェルヴァーグ以降のヨーロッパの重要な映画作家たち(スコリモフスキ、ベルトルッチ、ユスターシュ、アサイヤス、ガレル、カウリスマキ)の作品に出演してきた、もはや伝説的存在というべき映画俳優ジャン=ピエール・レオー氏が、”フランソワ・トリュフォーのために”ついに来日を果たした。ここに、『愛の誕生』『大人は判ってくれない』『夜霧の恋人たち』の上映時、3回に亘って行われたジャン=ピエール・レオー氏による舞台挨拶の全文を掲載する。
2014.11.7 update
2014年第27回東京国際映画祭コンペティション部門で上映された『破裂するドリアンの河の記憶』は、十代の男女の初恋を描く”青春映画”であり、グローバリズムが世界を覆う21世紀の政治問題に正面から向き合った”政治映画”であり、記憶装置としての映画の歴史教育的側面を喚起する”映画についての映画”である。そうした複数のレイヤーを映画に織り込みながらも、あくまでパーソナルな親密さをスクリーンに行き渡らせる長編処女作を撮り上げたエドモンド・ヨウ監督インタヴューをお届けする。
2014.10.24 update
ジャック・ロジエ映画の常連ベルナール・メネズを主人公の父親役に起用し、ロメールやロジエの影響を認めつつも、そう決めつけられることには違和感を表明するギヨーム・ブラック監督は、本作『やさしい人』において、『女っ気なし』的に軽やかな前半から、後半に入ると急展開し、フィルム・ノワール的不穏さを画面に漂わせる。様々な作品で多彩な顔を見せる名優ヴァンサン・マケーニュ同様、ギヨーム・ブラックのロメール的、ロジエ的側面も、その作家性のほんの一面に過ぎないのだろう。今後ますます活躍が期待されるギヨーム・ブラック監督にお話を伺った。
2014.10.10 update
2013年、第26回東京国際映画祭で観客賞を受賞した『レッド・ファミリー』が、丁度1年後の今、劇場で公開されている。韓国に使命を帯びて潜入した北朝鮮のスパイ一家<レッド・ファミリー>が経験する綱渡りの日々から、私たちが日頃当たり前のものと思って享受している”日常”があまりにも愛おしいものとして浮かび上がってくる、『レッド・ファミリー』は、スリルとユーモアに満ちた傑作家族映画である。その脚本と演出において、確かな手腕を発揮した韓国の新鋭イ・ジュヒョン監督のインタヴューをお届けする。
2014.9.11 update
山本政志監督の新作『水の声を聞く』は、熊楠的世界観への回帰を感じさせながらも、猥雑な俗世の地に足をつけ、時代の閉塞状況と正面から向き合った映画作家の未来への意志と迫力を感じさせてくれる力作である。そして、主演女優玄里(ヒョンリ)が素晴らしい。ここに主演女優の玄里さんと山本政志監督のインタヴューをお届けする。インタヴューは、とても率直な発言が飛び交う、自由闊達なものになった。一部には過激な発言も散見されるかもしれないが、目くじらを立てずにお付き合い頂ければ幸いである。
2014.9.3 update
超小型カメラGO-PROを使って、怪物的映画『リヴァイアサン』を撮ったヴェレナ・パラヴェルとルーシァン・キャステーヌ=テイラー が本作のプロモーションのみならず、新作2作を日本で撮影するために来日した。ハーバード大学の感覚民族誌学研究所を指揮する彼らが語った、映画やアート、そして、人間と動物、自然、宇宙、非言語・プレ言語的なるものについての洞察は、様々な現実が行き詰まりを見せる現代において、未知なる可能性を感じさせてくれる刺激に満ちたものだった。今、真の前衛のひとつがここにある。
2014.7.18 update
カナダの俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴが、レバノンを壊滅させた内戦に想を得たワジディ・ムアワッド原作戯曲「incedcies」をもとに作られた傑作『灼熱の魂』(10)に続いて、原作として選んだのは、またもや一筋縄では行かない重厚な作品、ジョセ・サラマーゴによる長編小説「複製された男」だった。本作で意気投合したドゥニ・ヴィルヌーヴと主演を務めたジェイク・ギレンホールは、この後再びタッグを組み『プリズナーズ』(13)を製作することになる。今、最も注目すべき映画監督のひとり、ドゥニ・ヴィルヌーヴのオフィシャル・インタヴューをお届けする。
2014.7.10 update
「僕の話なんて必要ないでしょ?」という監督の挑発めいた一言から始まった、リティ・パニュ監督へのインタヴューは、大変皮肉なことに、私たちが行ったインタヴューの中でも、「映画とは何か?」ということをアクチュアルに考える上のみならず、人間が創造する行為とは何なのかを考える上でも、最も根源的で、示唆に富んだインタヴューのひとつとなった。是非、多くの皆さんに読んで頂きたい、そして、『消えた画 クメール・ルージュの真実』を未見の方は、劇場へ!
2014.6.26 update
ワン・ビン(王兵)監督、傑作『三姉妹~雲南の子』(12)に続く新作『収容病棟』がいよいよ公開される。本作の上映時間は前後編併せて237分という、いわゆる長尺の映画だが、ことワン・ビンの映画に限って言えば、実生活に流れる時間をさておけば、”時間的な長さ”などという概念は存在しない。なぜなら、スクリーンを凝視する内に、”時間”など溶けてなくなっていくのだから。まずは作品をご覧になってから、本インタヴューを読んで頂きたいと言うべきところだが、本作に限っては、その順番は逆でも良いだろう。『収容病棟』は、玉虫色をした傑作である。
2014.4.11 update
ブラジルの新鋭フランシスコ・ガルシアと日本の若手映画作家の代表格三宅唱との監督対談が実現した。来日してまず最初に『Playback』をユーロスペースの特設スクリーンで見たというフランシスコ・ガルシア監督は、『Playback』について沢山聞きたいことがある!と興奮気味に三宅監督との初対面を喜びながら、自作について大いに語ってくれた。それぞれの映画観から現代文明論にまで及んだ、骨太の監督対談をお楽しみ頂きたい。
2014.4.4 update
2013年のカンヌ国際映画祭で満場一致のパルムドール賞に輝いた傑作『アデル、ブルーは熱い色』がいよいよ劇場公開される。 ここに、去年の第26回東京国際映画祭で特別招待作品として上映された際に行われたアブデラティフ・ケシシュ監督の舞台挨拶と、その翌日、アンスティチュ・フランセで行ったケシシュ監督の単独インタヴューを掲載する。リクエストに応じて挙げてくれた、ケシシュ監督の暫定ベスト10もお見逃しなく!
2014.3.20 update
米アカデミー外国語映画賞ノミネート、ベルリン国際映画祭パノラマ部門観客賞受賞など、世界の映画祭でも高い評価を受けた、愛と喪失の物語『オーバー・ザ・ブルースカイ』は、何よりも、ブロークン・サークル・ブレイクダウン・バンドの面々によるブルーグラスの演奏が素晴らしい。本作の原作戯曲を手掛け、主役のバンジョー奏者を演じたヨハン・ヘルデンベルグのインタヴューをお届けする。
2014.1.6 update
アンスティチュ・フランセ東京で行なわれた『ヴァン・ゴッホ』公開を祝すアントワーヌ・ドゥ・ベック氏(「カイエ・デュ・シネマ」元編集長)と廣瀬純氏(映画批評・思想家)によるトークショーは、途方もない作品『ヴァン・ゴッホ』の核心を炙り出し、”知られざる巨匠”モーリス・ピアラの複雑さの中心に迫る素晴らしいものだった。ここにそのトークショーの採録を掲載する。
2013.12.26 update
中沢けいの原作小説の映画化『楽隊のうさぎ』は、類い稀なる”音楽映画”であると同時に、言葉本来の意味における”教育映画”でもある。成長することへの戸惑い、集団の中で自分を発見していくことの難しさと喜びといった、思春期特有の子供達の繊細な息づかいを、”生き生きとしたもの”を殺さずに、いかにして映画に映し込んで行くか、その濃密なプロセスについて語ってくれた鈴木卓爾監督のインタヴューをお届けする。
2013.11.12 update
マイケル・ウインターボトム監督の新作『いとしきエブリデイ』は、5年間に渡って、成長していく子どもたちの変化をキャメラで捉え、現実の”時間”をフィクションに取り込むことに成功している。”父の不在”という重いテーマを扱いながら、そこはかとなく”軽さ”が漂っているところが、ウインターボトム監督らしいところだろうか。今まで、ウインターボトム監督に幾度となくインタヴューを行って来た、江口研一によるオフィシャル・インタヴューをここに掲載する。
2013.9.20 update
本国台湾で社会現象を巻き起こすほどの大ヒットを遂げた、甘酸っぱい後味の青春映画『あの頃、君を追いかけた』は、思春期特有の繊細さと幼稚さを、下ネタ満載のコメディタッチで描きながらも、見るものの琴線に触れる映画ならではのマジカルな瞬間がある。映画作りに関しては素人であると言いながら、監督、脚本、原作、出資、そして物語の主人公のモデルの、1人5役をこなしたギデンズ・コー監督に映画作りの実際についてお話を伺った。
2013.9.10 update
フランス映画祭2013で上映され好評を博した『黒いスーツを着た男』が一般公開されている。監督は良質な”中間の映画”をコンスタントに作り続けているカトリーヌ・コルシニ(『彼女たちの時間』『旅立ち』)。彼女のように手堅く、社会意識が高い監督が順調に商業映画を撮り続けているところに、フランス映画の強さの一端を垣間見る思いがする。様々な社会階層の衝突をフィルム・ノワールのスタイルで描き、現代フランスが抱える社会問題に迫る本作は、コルシニ監督の現時点における最高傑作と言って良いだろう。
2013.9.6 update
日本を代表する映画作家、青山真治監督の新作『共喰い』がいよいよ公開される。小説家田中慎弥の芥川賞受賞作品「共喰い」の、荒井晴彦脚本による映画化である。原作のモンスター的父親を、人間的魅力すら放ちながら演じる光石研と”壊す女”を泰然としたたかに演じる田中裕子をはじめ、いずれも新鮮な存在感で官能的な匂いを放つ、菅田将暉、木下美咲、篠原友希子といった俳優陣の充実、映画ならではの”大きさ”にリクリエイションされた本作を、是非とも劇場でご覧になってから、インタヴューをご一読頂きたい。
2013.7.11 update
ついに発売された「溝口健二著作集」(装丁も素晴らしい!)、世界の巨匠溝口健二の肉声が響き渡る著作集である。必読という他ない。OUTSIDE IN TOKYO は、編者である溝口研究の第一人者、佐相勉さんにお話を伺う幸甚を得た。本インタヴューに触れて、「溝口健二著作集」を読んでみたい、溝口健二の映画を(もっと)観たい、という渇望に駆られる人が少しでも増えてくれれば幸いです。
2013.6.13 update
<ホン・サンス/恋愛についての4つの考察>と題して近年の4作品が上映された昨年、2012年は日本におけるちょっとしたホン・サンス・イヤーだった。そして、つい先日、その4本に加えて『女は男の未来だ』(04)、『浜辺の女』(06)、『アバンチュールはパリで』(08)とエリック・ロメールの『緑の光線』(86)があわせて上映され、今週末には『3人のアンヌ』(12)が劇場公開されるようとしている。今、最も重要かつ面白い映画作家のひとり、ホン・サンス監督が”映画”について語ってくれたことは、彼の映画同様、面白くて、その上、為になる。映画好きな私たちにこそ、大事な事を気付かせてくれる、名匠のインタヴューを是非ご一読あれ。
2013.6.3 update
韓国の名匠パク・チャヌク(『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』)のハリウッド進出作品『イノセント・ガーデン』は、今もっとも旬な女優と言うべきミア・ワシコウスカと円熟味と艶かしさを漂わせるニコール・キッドマンが共演する、実に美しくも妖しいスリラーに仕上がっている。来日を果たしたパク・チャヌク監督に、まずは、あの「プリズン・ブレイク」の俳優ウェントワース・ミラーが書いたという脚本に、どのように監督の息吹を吹き込んでいったのか、聞いてみた。
2013.5.30 update
ジュリー・ベルトゥチェリ監督の最新作、シャルロット・ゲンズブール主演『パパの木』は、オーストラリアを舞台に、豊かであると同時に脅威でもある”自然”と”不可知なもの”に対する感性を瑞々しく息づかせながら、最愛の”パパ”を失った子供たちと母親のその後の人生を描く秀作である。多くの巨匠たちの元で現場を学び、今は「巨匠たちから距離を置き、自分をより自由にさせたい」と語る、”自由であること”をどこまでも希求するベルトゥチェリ監督の力強いインタヴューをお届けする。
2013.5.23 update
中国最貧困と言われる雲南地方の農村で、働き手として期待される男性ではなく、女性として生を授かった”三姉妹”の過酷な日常をキャメラ2台で”観察”しただけの映画が、これほどまでに生命の豊かな活力に溢れ、少女の神々しいまでの表情を捉えた傑作に仕上がっているとは誰が想像しただろう。誰もがデジタルで撮影出来る時代にあって、本当に観るべき映画を作り続けている数少ない映画作家、ワン・ビン監督のインタヴューをお届けする。
2013.4.19 update
ダスティン・ホフマンが75歳にして人生初のメガホンを取った『カルテット!人生のオペラハウス』は、ダスティンらしいブラックユーモアを湛えた、人生における”勇気”について教えてくれる佳作に仕上がっている。来日したダスティンは、初監督作品を撮るにあたって妻に背中を押されたこと、老齢において映画作りに携わることの喜び、そして、何故、この作品が現実よりも美しく撮られねばならなかったか、この映画を観る上での素晴らしい見方を提示してくれている。
2013.4.5 update
ついに公開される!レオス・カラックス、13年振りの長編映画『ホーリー・モーターズ』、劇場に入り切らない観客が駆けつけたジャパン・プレミアの翌日に行なわれた、カラックス監督記者会見の全文を掲載する。これを読み返す度に、同じ箇所で涙が溢れそうになる。当日の会場でも、剥き出しの、裸のカラックスの発言に、胸が震えたことを今も思い出す。
2013.3.29 update
2012年3月東京日仏学院で行なわれた「フランス女性監督特集」のトークショーと、ミア・ハンセン=ラブの映画からエネルギーを受けて行なった、ミアへのインタヴューは、自然と熱の籠ったものになった。是非、この機会に『グッバイ・ファーストラブ』をスクリーンでご覧になり、自らの人生について誠実に語ってくれた、勇気ある映画作家のインタヴューをご一読頂きたい。
2013.3.28 update
『私たちの宣戦布告』に主演したヴァレリー・ドンゼッリとジェレミー・エルカイムのカップルが、その直前に主演した『ベルヴィル・トーキョー』は、パリの名画座で働くマリーと映画評論家ジュリアンのカップルが、かつて共に過ごした愛しい時間を感じさせながら、別れの予感をグレーのカラーパレットに滲ませ、人生の悲喜こもごもを絶妙な距離感で描く、愛すべき街パリが生んだ”作家の映画”である。来日したエリーズ・ジラール監督は、映画を撮るという行為、そのものが与えてくれる感動について、優しさに満ちた口調で語ってくれた。
2013.3.15 update
マッツ・ミケルセンに第65回カンヌ国際映画祭主演男優賞をもたらした『偽りなき者』は、無垢な子どもが発した言葉が、閉鎖的な村社会の中でウイルスのように"恐れ"を蔓延していく不条理と、その逆境の中で闘うヴィンターヴェア的主人公の魂の擁護を描いた、男気に溢れる映画であると同時に、『セレブレーション』で描いた児童虐待というテーマのコインの裏側の世界を描いた作品でもある。ここに、ロンドンのエージェントによって行なわれた、ヴィンターベア監督のオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2013.2.21 update
チェルノブイリ事故の当日と、故郷を追われた10年後の人々、失われた大地の様子を奇妙な美しさを湛える映像で描いた秀作『故郷よ』は、人々が経験した喪失に寄り添いながら、あくまでフィクションとしての距離を保つことで、観るものに問題の本質を問い掛ける。昨年の9月に来日したミハル・ボガニム監督は、本作と監督の出自の関連から、ロシア映画の影響、哲学者ポール・ヴィリリオへの言及まで、とても興味深いお話を聞かせてくれた。
2013.2.6 update
”持たざるもの”に冷たい社会システムの中で苦闘する主人公とその“家族”の形成を通じて、“反資本主義の夢”を描いた秀作『よりよき人生』を届けてくれたセドリック・カーン監督のインタヴューを掲載する。(本インタヴューは、2011年10月、第24回東京国際映画祭開催時に行ったものですが、今回の日本公開に合わせて初掲載するものです。)
2013.1.11 update
奔放に振る舞う主人公の女子高生、川島いづみ(池田愛)と二人の級友は、大金を拾ったことを契機に様々な出来事に巻き込まれながら、社会について、人々について学んで行く。そんな青春映画の定型をなぞりつつも、紋切り型の言葉では説明し切れない、新鮮な魅力を放つ『ももいろそらを』を世に送り出した40歳の新人監督、小林啓一監督のインタヴューをお届けする。
2012.12.14 update
第13回東京フィルメックスのコンペティション部門の審査員を務めた秦早穂子氏に、審査員としての作品鑑賞の忙しい合間を縫ってお時間を頂戴し、お話を伺う幸甚を得た。初対面の私たちに向かって発せられる秦さんの言葉は、広い見識に裏打ちされた率直さが切れ味鋭くも、映画の作り手と観客、双方の未来に思いを馳せる思慮深さと温かさに満ちていた。
2012.11.16 update
三宅唱監督の『Playback』は、村上淳、渋川清彦、三浦誠己、河井青葉、汐見ゆかり、菅田俊、渡辺真起子といった商業映画と自主映画を行き来してきた日本のインディーズ・オールスター総出演によって、山本政志以降の日本のインディーズ映画に一区切りをつけたような決定的な潔さが漂っている。空族・富田克也監督『サウダージ』以来の、圧倒的に自由な日本映画を撮り上げた三宅唱監督のインタヴューをお届けする。
2012.10.19 update
『ミステリーズ 運命のリスボン』は、開巻早々短いカットの連なりが映画の心地よいリズムを刻み、観るものを、息を飲むような映像美で描く19世紀前半のポルトガル、フランス、イタリアを舞台にした秀逸なミステリーにどんどん引き込んでいく、ラウル・ルイス監督最晩年の傑作である。12本ものラウル・ルイス監督作品に出演してきた俳優メルヴィル・プポーが、監督の演出や撮影時のエピソードなどを披露してくれた。
2012.10.18 update
『希望の国』は、福島原発事故を極めてストレートに扱った実録映画である。被災地の復興もままならぬ、放射能の影響が実際にどれだけあるのか判然としない現状で、この問題をテーマにしたフィクションを撮るのは時期早尚ではないかという意見が多い中、「作品以前の話で、とにかく作る必要があった」と語る園監督は、表現者としての根源的な欲求を隠さない。放射能や原発を巡る微妙な問題についても、極めてストレートに語った園子温監督のインタヴューを掲載する。
2012.10.12 update
物語的な説明を排することで、複数の<歌>を観客自身が紡ぎながら見る、新しい映画体験への可能性を開く『ひとつの歌』の杉田協士監督と本作の配給・宣伝を手掛けるboid樋口泰人さんにお話を伺う機会を得た。主に杉田監督には、いささか唐突ながらトニー・スコットについて、そして『ひとつの歌』についてお話を伺い、【PART1】として掲載、樋口泰人さんにはboid new cinemaについてお話を伺い、【PART2】として掲載しています。
2012.10.5 update
北野武監督の最新作『アウトレイジ ビヨンド』は、ナンセンスでバイオレントな爆笑ブラック・コメディだった前作『アウトレイジ』を伏線に緻密な脚本を練り上げ、前作で撒き散らした暴力の”おとしまえ”を監督自らが着けようとしたかのような、因果応報が巡る秀逸な人間ドラマに仕上がっている。映画監督北野武の黄金期は、いま始まったばかりなのではないだろうか?そんな勢いのすら感じさせる監督のインタヴューをお届けする。
2012.9.28 update
第二次世界大戦で敗戦したナチスドイツが実は月の裏側(ダークサイド・オブ・ザ・ムーン)に移住して第四帝国を構築、地球侵略を企みアメリカを中心とした地球防衛軍とスターウォーズを繰り広げる、ナチスの大時代的アナクロニズムを笑い、アメリカのやりたい放題を批判する壮大なSFブラック・コメディ『アイアン・スカイ』をひっさげ、フィンランド映画祭に来日したティモ・ブオレンソラ監督のインタヴューを掲載する。
2012.9.21 update
徳島県の上勝町で高齢の女性たちが中心を担って成功した”葉っぱビジネス”に材をとった女性映画『人生、いろどり』には、藤竜也と富士純子という、日本映画を代表するふたりの俳優が作り出す”映画”ならではの色気が立ち上がる瞬間がある。将来を嘱望される御法川修監督と藤竜也さんに、このシーンを中心にお話を伺った。御法川監督の企み、そして、全ては遊び、と語る藤竜也さんの飄々とした俳優論をお楽しみ頂ければ幸いである。
2012.9.14 update
2011年9月日仏学院で行なわれた「第15回カイエ・デュ・シネマ週間」で日本初上陸を果たし、今年のフランス映画祭で上映、いよいよ満を持して一般公開を迎える21世紀のヌーヴェルバーグ映画『わたしたちの宣戦布告』、その監督であり主演女優でもあるヴァレリー・ドンゼッリと共同脚本と主演を兼ねたジェレミー・エルカイムに話を伺う機会を得た。このふたりが漲らせる、『わたしたちの宣戦布告』という映画を走らせた”勇気”がみなさんにも伝わりますよう!
2012.9.14 update
ジャック・オディアール『預言者』の共同プロデューサー、監督のフレデリック・ジャルダン、カイエの批評家出身ニコラ・サーダというジャンル映画に精通する三人が集まり、イーストウッド組の名撮影監督トム・スターンが参加した『スリープレス・ナイト』、新たなる傑作ノワールを生んだ15年間の友情について、フレデリック・ジャルダンとニコラ・サーダが率直に語ってくれた。
2012.9.7 update
NYのMOMAやパリのポンピドゥーセンターなどからも注目される若手映像作家コンビ、ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンが監督、撮影を手掛けたブラック・コメディである本作の脚本家にして、首謀者でもあるアンドレス・ドゥプラットが急遽来日し、トークショーを行なった。ブラックユーモアに満ちた本作でその矛先を向けているのは、”中の上”の人々である”自分たち自身”であると語るアンドレス・ドゥプラットのトークショーの採録を掲載する。
2012.8.31 update
現代フランス映画を代表する俳優のひとり、メルヴィル・プポーの特集上映<誘惑者の日記>(6/22〜7/8)が行われてからまだ2ヶ月しか経ってないというのに、あの真直ぐに凛と伸びた佇まいの印象をそのままに、映画について、ラウル・ルイスについて誠実に語り、多くの観客を魅了したメルヴィル・プポーと短い時間を共にしたことが遥か昔のことのように感じられる。きっとそれは、映画俳優という”夢”のような仕事を職業に持つ男との時間であり、”夢”そのもののようなラウル・ルイスの映画が生み出した、虚構の世界だけが持つ、素晴らしい”軽さ”ゆえのことなのかもしれない。そして、今再び、ラウル・ルイスの作品群に出会うことのできる特集上映<ラウル・ルイス特集 フィクションの実験室>が始まろうとしている。ここに、ラウル・ルイス特集上映の予習とプポー特集上映の復習を兼ねて、6月25日の『犯罪の系譜』上映後に行われたメルヴィル・プポー トークショー(聞き手:坂本安美さん)の採録を掲載する。
2012.8.13 update
『桐島、部活やめるってよ』は、ミヒャエル・ハネケの映画すら想起させる”フィクションへの強い意志”を漲らせ、”映画”ならではの妄想を爆発させる終盤が、否が応でも観るものの感情を激しく揺さぶる注目作品である。CMディレクターとして高い評価を得た後、2007年に『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で長編映画デビュー、カンヌ国際映画祭の批評家週間でも評価され、独特の存在感を放つ、吉田八大監督のインタヴューをお届けする。
2012.8.10 update
新作『Virginia/ヴァージニア』プロモーションの電話取材の通訳を務めた江口研一が、ちょっとだけ都合できた合間の時間を利用して、『Virginia/ヴァージニア』を撮り終えた、今の心境についてフランシス・フォード・コッポラにインタヴューを試みた。『コッポラの胡蝶の夢』『テトロ 過去を殺した男』『Virginia/ヴァージニア』は、小さな作品の三部作だったと語り、まだまだ野心的な作品を撮りたいと旺盛な意欲を見せる巨匠のインタヴューをお届けする。(※新作『Virginia/ヴァージニア』についてほとんど触れていません。)
2012.8.6 update
ドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』で、北朝鮮へ渡った兄たち、彼らを送り出した家族の様子から、北朝鮮の現在を内側から映し出したヤン・ヨンヒは、姪っこソナの成長を追った『愛しきソナ』の頃に、北朝鮮への入国を禁止される。そこで彼女がとった次なるステップは、敢えて「誰にも絶対この話はしないと蓋をしているような話」をフィクションで描くことだった。家族が”北”にいるからということで色々なことを黙ってきたけれど、もうそういうのは終わりにしたいと語る”オフィシャル問題児”ヤン・ヨンヒ監督のインタヴューをお届けする。
2012.7.26 update
『プリピャチ』(99)、『いのちの食べかた』(05)といった、現代文明の最も危機的な側面を捉え、観るものの目を啓くドキュメンタリー映画を世に問うてきた映画作家ニコラス・ゲイハルターの新作『眠れぬ夜の仕事図鑑』は、ゴダールの『ソシアリズム』(10)と同じく、”ヨーロッパの終焉”を認識する映画である。本サイト独占掲載であるニコラス・ゲイハルター監督のオフォシャル・インタヴューをお届けする。
2012.7.18 update
ホセ・ルイス・ゲリン監督の全8作品が上映され、その内7作品について、監督自らのトークショーが行なわれた「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」も残すところあと1週間余り。OUTSIDE IN TOKYOは、来日を果たしたゲリン監督に、主に音と映像の関係を中心にお話を伺う機会を得た。「目と耳どちらかを優先する」というブレッソンの言葉に言及し、”音”によって”時空間”を変容させる、彼の映画作りの本質に触れることができたのではないかと思う。
2012.6.8 update
マルセイユの港町を舞台に、長年労働闘争に身を投じてきた主人公と、その家族、そして労働闘争の歴史を知らない若者との断絶が引き起こす事件を通じて、”本当の勇気”とは何か?混迷する現代において本当に必要なものとは何か?そんな難問に挑戦しながら、ユーモア豊かに人々の営みを描いた秀作『キリマンジェロの雪』のロベール・ゲディガン監督インタヴューをお届けする。カウリスマキの『ル・アーヴルの靴みがき』を気にいった人は必見の映画&インタヴューです。
2012.5.18 update
人は、ある日突然向き合うことになった人生の危機に対してどのように振る舞い、対処することができるのか。辛辣な現実描写の中に、えも言われぬユーモアと哀しみを滲ませながらも爽快な後味を残す、アレクサンダー・ペインならではの、洒脱な語り口が観るものを魅了する。7年振りの新作で再び現代最高の映画作家のひとりであることを証明したアレクサンダー・ペイン監督とハリウッドの良心とも言うべきジョージ・クルーニー、そして、聡明で魅力的な女優シャイリーン・ウッドリーのインタヴューから、傑作『ファミリー・ツリー』の魅力、ひいては、現代の“映画作り”にリアルに息づく”夢”の所在に触れて頂くことができれば幸いである。
2012.3.28 update
ダルデンヌ兄弟の作品では、社会的な弱者である若者や子どもといった存在に常に光があてられてきたが、本作においてその光は、実際の太陽の自然光として、あるいは、”慈愛に満ちた”女性から発せられる暖かい光として、作品を明るく輝かしている。今年の2月にプロモーションの為に来日したジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟も、持ち前のユーモアに溢れる暖かい光でその場を輝かせてくれた。
2012.3.16 update
長嶌寛幸の轟音サウンドトラックと共に、54分間を一気に駆け抜ける複合ジャンル映画の秀作『へんげ』は、むしろ手固い作りで観るものの”自主映画”への偏見を心地よく揺さぶってくれる。観客を楽しませるジャンル映画の監督として、これからの活躍が期待される大畑創監督のインタヴューをお届けする。
2012.3.8 update
かつて、ニュージャーマン・シネマの旗手として肩を並べたヴィム・ヴェンダースとヴェルナー・ヘルツォークが、奇しくも期を同じくして3Dのドキュメンタリー映画を撮った。これまで3D映画など撮ろうとも思わなかったというヘルツォークが撮ったのが『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』、子どもの頃に憧れた洞窟壁画の本の記憶に繋がるテーマだった。現在の拠点であるロサンゼルスから、トム・クルーズの敵役を役者として演じたばかりだという彼に電話で話を聞くことができた。
2012.3.2 update
『ニーチェの馬』公開記念、第三弾!タル・ベーラ監督は、”映画”は、今まで、惨めな環境に置かれている貧しい人々の尊厳を充分に見せて来なかったと、怒り込めて過去を振り返りながらも、世界は豊かでカラフルでパワフルなものなのだから、新しい人たちがやってきて、凄く新鮮で力を持った作品を作ってくれるだろうと未来への希望も真摯に語ってくれた。彼の映画同様、終始一貫してブレることのない硬質なモノクロームの輝きを放ち私たちを魅了する、タル・ベーラ監督のインタヴューをお届けする。
2012.2.21 update
いわゆる”映画史”とは無縁のところで、観客の心に訴える数多くの愛すべき映画が存在している。マイク・ミルズの『人生はビギナーズ』もそんな忘れ難い作品のひとつとして多くの人々の心に留まり続ける珠玉の一遍である。そんな素晴らしい作品を作り上げたマイク・ミルズの合同取材の通訳を江口研一が務めた縁から、今回、そのインタヴュー内容をOUTSIDE IN TOKYOに掲載させて頂く幸甚を得た。合同取材に参加された他媒体の皆様のご好意に感謝を申し上げます。
2012.2.17 update
「イオセリアーニ映画祭2012」で豊かな夢の時間を体験させてくれたオタール・イオセリアーニ監督の新作『汽車はふたたび故郷へ』がいよいよ公開される。昨年のフランス映画祭に来日した監督は、朝からコニャックを嗜みながら、多忙な日程をこなし、会う人会う人を動揺させると同時に魅了し、”映画”の現在を考える上で、非常に重要と思える数々の言葉を私たちの残してくれた。ここに掲載するテクスト自体が、一筋縄ではいかない新作『汽車はふたたび故郷へ』を鑑賞する助けになると共に、皆さんの”映画”との関わりをより一層触発するものとなれば幸いである。
2012.2.10 update
『ニーチェの馬』公開目前特集第2弾、第12回東京フィルメックス特別招待作品として11月24日に上映された後に行なわれた、タル・ベーラ監督と観客とのQ&Aを全文掲載します。圧倒的な傑作『ニーチェの馬』上映直後の、あの打ちのめされた雰囲気の中で果敢に質問をした観客の皆さんの勇気を讃えつつ、魔術のように特別な空間と時間を作り出し、私たちに異次元の感動を与えてくれたタル・ベーラ監督に感謝を捧げたい。
2012.2.9 update
いよいよ公開目前となった『ニーチェの馬』、これからはプロデューサーとして映画作家たちを守り、教えていくことを明言したタル・ベーラ監督は、若い世代に向けて”恐れずに飛び込め”と力強いメッセージを発した。ここに、第12回東京フィルメックスで来日し、ハンガリー大使館で行われた記者会見の採録を全文掲載する。
2012.1.12 update
ソフトバンクの「犬」シリーズなど、数々のヒットCMで知られる山内ケンジ監督の長編処女作『ミツコ感覚』は、初音映莉子と石橋けいの美人姉妹が次々と招かれざる事態に巻き込まれていき、映画は陰鬱な色合いで彩られていく、にも関わらず、笑わずにはいられない大人のブラック・コメディ。ブニュエルやベルイマンをこよなく愛するという山内監督のインタヴューを掲載する。
2012.1.11 update
”奇蹟”を求めて人々が集う世界最大の巡礼地ルルドを舞台に、”奇蹟”がその身に起きた女性と周囲の人々の振る舞いを、見目麗しいビジュアル・センスで描いた、”幸福の喪失”について思索を喚起する寓話、『ルルドの泉で』が公開中のジェシカ・ハウスナー監督のインタヴューをお届けする。それにしても、『ルルドの泉で』の人物構成の背景に『アルプスの少女ハイジ』があったとは!
2011.12.27 update
「反右派闘争」という現代中国の政治的な闇を真正面から扱い、インディペンデント映画史上最大のスケール感で、かつて実在した収容所をゴビ砂漠に再現し、禍々しい砂嵐が吹きすさぶ中、飢餓と病に倒れていった人々の凄惨な振る舞いをスクリーンに蘇らせることで、その地に果てていった魂の復権を謳う、傑作『無言歌』が公開されているワン・ビン監督のインタヴューを掲載。
2011.12.22 update
ワジディ・ムアワッドの原作戯曲「incedcies」にインスパイアされて作られた『灼熱の魂』は、文字通り、観る者の心を焼け焦がさずにはいない、恐るべき傑作である。映画が伝えるアクチュアルなメッセージはもとより、現在と過去、様々な地理が交錯する第一級のサスペンスとしてもとても見応えがある。是非、劇場で本作をご覧になり、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のインタヴューを一読頂ければ幸いである。
2011.12.19 update
ナチス占領下のフランスで起きた悲惨な史実を描いた原作小説タチアナ・ド・ロネの『サラの鍵』を、強力な主演女優クリスティン・スコット・トーマスの出演を得て、エンターテイメントの視点を欠くことなく絶妙のバランスで映画化することに成功した、ジル・パケ=ブレネール監督のインタヴューをお届けする。
2011.12.16 update
トム・クルーズが、ロシア刑務所脱獄を皮切りに、世界一の高さを誇る超高層ビル、ブルジュ・ハリファでの常識破りのノースタント壁面走行を経て、ドバイのサンドストームの中を全力疾走で駆け抜ける『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』は、巨大スクリーンに最適化された超弩級のアクション・エンターテイメントだ。プロモーションの為に来日を果たしたトム・クルーズ、ポーラ・パットン、ブレッド・バード監督の記者会見の全文を掲載する。
2011.12.15 update
『ノルウェイの森』のハツミ役が強く印象に残っている初音映莉子が、CMディレクター、舞台演出家、劇作家として活躍中の山内ケンジ監督の初長編映画『ミツコ感覚』で主役のミツコを演じた。独特の完成度を見せる”山内ワールド”炸裂のブラックコメディ『ミツコ感覚』は、トラン・アン・ユンとは別の方法で彼女を輝かせている。ストーカー男を惹き付けてやまない凛々しい魅力を発するミツコを生きた女優、初音映莉子のインタヴューをお届けする。
2011.12.14 update
西島秀俊が演じる主人公秀二の「映画はかつて真に娯楽であり、芸術であった!」という言葉が胸に刺さる”シネフィル”映画『CUT』は、黒澤明、小津安二郎、溝口健二といった日本映画の巨匠たちへのオマージュであると同時に、今や過酷なものとなった”ピュアシネマ”を作るための闘いを描いた物語映画でもある。過去の名作映画103作品を参照するその手捌きは、さながらアミール・ナデリ監督による”映画史”の様相も呈している。フィルメックスの審査委員長として来日し、その”映画熱”を惜しみなく周囲に拡散したアミール・ナデリ監督の”熱い”インタヴューをお届けする。
2011.11.9 update
ハリウッドを代表する女優ニコール・キッドマンが、同名戯曲に深い感銘を受け、自ら映画化に動いた『ラビット・ホール』(ジョン・キャメロン・ミッチェル監督)は、愛する子どもを失った夫婦の“喪の時間”を描いた珠玉の一品。本作のプロデューサーとして、そして、主演女優として、この難しいテーマに挑んだ勇敢な映画人、ニコール・キッドマンのオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2011.10.7 update
”日常を詩情化する男”と称されるアクタン・アリム・クバト監督、9年振りの新作『明りを灯す人』は、キルギスの美しく雄大な自然を背景に、変わりゆく世界の流れに翻弄されながらも、慎ましくも逞しく生きてゆく人々の姿を豊かな詩情を交えて描き、名もなき人々の単純ではない”人生”を明るく照らし出す。 キルギス在住の名匠クバト監督のインタヴューをお届けする。
2011.9.28 update
新作『サヴァイヴィング・ライフ –夢は第二の人生—』が公開中のチェコのアート・アニメーションの巨匠ヤン・シュヴァンクマイエルが来日した。「夢と現実を織り交ぜることによって人生は出来る、それがなければ人生ではない」と言い切る、御年77歳のシュルレアリストの最新インタヴューをお届けする。
2011.8.5 update
『バスキア』『夜になるまえに』『潜水服は蝶の夢を見る』『ルー・リード/ベルリン』とマイペースで秀作を作り続けているジュリアン・シュナーベル監督の最新作『ミラル』は、ユダヤ系アメリカ人の映画作家が、パレスチナ人少女の視点からパレスチナ問題を描いたことでアメリカでは大きな物議を醸した。欧米のように立場が二分するわけではない、ここ日本での評価を期待するというジュリアン・シュナーベル監督のインタヴューを掲載する。
2011.7.29 update
原発事故以降、来日アーチストのキャンセルが相次ぐ中、オファーを即断で快諾してくれたのだというイエジー・スコリモフスキ監督が、『アンナと過ごした4日間』以来、約1年半振りの来日を果した。フィルムセンターでのトークショーや京都でのイベントなど、多忙を極める監督に貴重なお時間を頂いた私たちは、監督が自らの最高傑作と自負する本作『エッセンシャル・キリング』の創作の源について興味深いお話を伺う幸甚を得た。
2011.7.25 update
今年3月に行なわれた上映イベント<ボックスオフィスの彼方に 〜興行の縁で映画を考える〜>では、震災の翌日というタイミングにも関わらず、バーバラ・ローデン『Wanda』上映と坂本安美さん(東京日仏学院)のトークショーが予定通り行なわれた。類い稀なる女性映画『Wanda』について、坂本さんご自身の来歴について、そして、映画と批評について、忌憚のない率直な言葉で語られたトークショーの採録を掲載します。
2011.7.8 update
フランス映画祭2011のために新作『Chantrapas』を引っ提げて来日したゲオルギア(グルジア)の巨匠オタール・イオセリアーニ監督が行なった、映画美学校での感動的な一夜、マスタークラス講義の採録を掲載しました。
2011.6.29 update
フランス映画の新しいミューズ、レア・セドゥが主演、海外勤務で父が不在、姉は家にほとんど寄り付かないという状態で、母親を亡くしてしまった17歳の少女が受けた衝撃を、ティーンの性と友人関係の疎外感を通じて描いた『美しき棘』が、2010年ルイ・デリック賞新人賞を受賞し注目を浴びた、新人女性監督レベッカ・ズロトヴスキがフランス映画祭のために来日、監督ご自身について、本作について、率直に語ってくれた。
2011.6.10 update
『イエローキッド』が高い評価を受けた、若き鬼才真利子哲也監督の新作中編映画『NINIFUNI』が公開される。青山真治監督の最新作『東京公園』のキャメラが蓮實・青山対談で激賞された月永雄太が撮影を手掛けた『NINIFUNI』は、アイドルグループ「ももいろクローバー」と孤独な犯罪者を演じる宮﨑将の劇的なコントラストが観るものの心を揺さぶる、轟音と詩情に満ちた傑作である。『イエローキッド』の公開から約1年半弱、その間に、震災が起き、世界が一変してしまった。そんな状況の中、本作の公開を間近に控える真利子哲也監督に、じっくりとお話を伺った。
2011.6.9 update
九州新幹線が全線開通し、一番列車がすれ違うその瞬間に願い事をすれば”奇跡”が起きるという噂を信じ、周りの同級生を巻き込み大人を騙して旅に出る子供たちの冒険譚とそれをさりげなく迎え入れる大人の、瑞々しいロケーション撮影も魅力の傑作映画ですら、起こってしまった震災の影響から無縁でいられるわけではない。新作が向き合う複雑な事態に当惑を隠さない是枝監督だが、今回の震災で報道の立場に立とうとしたが実現しなかったことなど、現在の状況や心境を率直に語ってくれた。
2011.6.3 update
イラク出身の映画監督、モハメド・アルダラジーは『夢(Ahlaam)』という第1作で一度来日している。その作品で評判を獲得し、現在はイギリス在住の監督の2作目『バビロンの陽光』は静かでいて野心的な映画となっている。イラクという国家を超え、アラブという人種を超え、普遍的な人間の物語を紡ぐことを追求する、アルダラジー監督のインタヴューをお届けする。
2011.4.27 update
『バグダッド・カフェ』で圧倒的にその名を知られるパーシー・アドロン監督の新作『マーラー 君に捧げるアダージョ』は、マーラー生誕150周年、没後100年を記念して製作されたが、マーラーの視点から見た妻アルマにフォーカスが当てられ、彼の『交響曲第10番』の「アダージョ」が全編をバックボーンのように支える。確かな語り口の本作で評判を呼び、再び注目を浴びる監督に、マーラーと自身の映画史について語ってもらった。
2011.4.27 update
世界中でじわじわと評価を高めている”聖なる映画”『四つのいのち』がいよいよ劇場で公開される。スクリーンの横、ではなく裏側から音が聞こえるように音響を設計したのは、スクリーンの向こう側に存在するものについて観客に考えてほしいからと語るミケランジェロ・フランマルティーノ監督。映画に限らず、全ての表現に携わる方々に読んで頂きたい、必読のインタヴューです。
2011.4.15 update
去年のイタリア映画祭で『勝利を』のタイトルで上映され観客を圧倒したマルコ・ベロッキオ監督2009年の傑作『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』が、いよいよ5月末に劇場公開され、5月13日には爆音映画祭にてプレミア上映される。自身の最高傑作とも囁かれる作品のお披露目と昨年10周年を迎えたイタリア映画祭のために、初来日を果たした巨匠に、短い時間ではあったがお話を伺う機会を得た。指揮者のような身振り手振りで熱く語ってくれたベロッキオ監督のインタヴューをお届けする。
2011.3.31 update
朝鮮総連で活動し、希望を胸に北朝鮮へ渡った彼女の兄たちを送り出した彼女の父親像を、パーソナルな日記を綴るように描いた『ディア・ピョンヤン』、新作『愛しきソナ』では、姪っ子ソナと兄たちの家族のこと、北朝鮮を信じ、ソナの祖父母として彼らを訪ねる自分の両親のこと、それを曇りなく見つめようとしながら、作家としての厳しくもやさしい視線を自らの家族に向けるヤン・ヨンヒ監督の言葉に耳を傾けた。
2011.3.25 update
全く以て新しい感性で作られた映画『名前のない少年、脚のない少女』を見た時、このブラジルのサンパウロから飛び出した新星こそ、新しい映画世界を担うフロントラインに立っていると感じた。足跡のない雪上を歩くような、そんな新鮮さを秘めていた。大人になる手前のティーンエイジャーの憂鬱と、孤独からネットに没入するリアリティーを見事に表現する28歳のエズミール・フィーリョ監督に映画化のいきさつから、映画感などを聞いてみた。
2011.2.23 update
人々の価値観が大きく揺さぶられた60年代を舞台に、自らのアイデンティティ<ユダヤ性>を自虐的なブラックコメディに昇華した傑作『シリアスマン』。全ては”ジョーク”だと言いながらも、”本音”がフィクションの中に必ず透けて見えるのが”映画”の怖いところ。めずらしく自伝的要素を作品の舞台設定に取り込んだ『シリアスマン』について語ったコーエン兄弟のオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2011.2.16 update
イランの名匠アッバス・キアロスタミ監督が初めて母国を離れて作り上げた長編最新作『トスカーナの贋作』は、イタリアのトスカーナを舞台に繰り広げられる男女の物語。知り合ったばかりの男女とも夫婦ともとれる、謎めいた男女をイギリスのオペラ歌手ウィリアム・シメルと名女優ジュリエット・ビノシュが演じ、観客をオリジナルとコピーが錯綜する迷宮の世界へと誘い映画を観ることの恍惚を今一度思い起こさせてくれる。そんな魔術的傑作を作り上げたキアロスタミ監督にお話を伺う幸甚を得た。現在日本で次作を準備中の監督がきっと日本の映画作家たちに良い刺激を与えてくれるだろうと願いつつ、キアロスタミ監督のインタヴューをお届けする。
2011.2.10 update
『サラエボの花』が2006年ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した、ヤスミラ・ジュバニッチ監督長編第二作『サラエボ、希望の街』は、死者20万人、難民・避難民200万人を出したボスニア紛争から15年、戦火の記憶がまだ色濃く残るサラエボの街を舞台に、不条理と不寛容な気配が強まって行く社会状況の中でも、しなやかに未来の可能性を探求する女性主人公ルナの愛の行方と彼女の”決断”を通して、明日への希望を描く。パリで取材に応えてくれたヤスミラ・ジュバニッチ監督のインタヴューをお届けする。
2011.1.28 update
イスラエル、ポスト・シオニズムの最重要映画作家アモス・ギタイ監督の特集上映:第三部が現在アテネ・フランセ文化センターで行なわれている。OUTSIDE IN TOKYOは、フィルメックと日仏学院での特集上映に来日した監督にインタヴューを敢行。監督の言葉は、簡潔で明晰な表現の中に濃密度な情報が圧縮されており、その言葉と映画を通じて、表現活動における”洗練”とは何かということを改めて考えさせてくれる貴重な機会を与えてくれた。
2011.1.28 update
『愛より強く』『そして、私たちは愛に帰る』と、愛、死、悪の三部作の2作目まで行きながら、そのシリーズの完結を待たずにユーモアに溢れたエンタテインメント作品『ソウル・キッチン』を仕上げ、ヴェネツィアで審査員特別賞を受賞したファティ・アキン監督。初来日を果たした監督に、この突然の転換とその未完結の三部作の行き先などについてお話をうかがった。
2011.1.14 update
エリック・ゴーティエが撮影監督を努めた『ウッドストックがやってくる!』は、「ウッドストック」もの音楽映画であるはずはなく、堅実に仕上げられた”家族のドラマ”であり、独特の佇まいを持った”オフビートなコメディ”として評価できる良質な”映画”である。アン・リー監督は「ウッドストック」という盛大なお祭り騒ぎが終わった後をどのように描いたのだろうか?ここに監督のオフィシャル・インタヴューを掲載する。
2010.12.27 update
第11回東京フィルメックスで行なわれたアモス・ギタイ監督特集上映<越えて行く映画:第1部>の上映前後に行なわれた、監督による作品解説、及び、観客とのQ&Aの採録を掲載します。
2010.12.27 update
第11回東京フィルメックスで行なわれたアモス・ギタイ監督特集上映<越えて行く映画:第1部>の上映前後に行なわれた、監督による作品解説、及び、観客とのQ&Aの採録を掲載します。
2010.12.24 update
第11回東京フィルメックスで行なわれたアモス・ギタイ監督特集上映<越えて行く映画:第1部>の上映前後に行なわれた、監督による作品解説、及び、観客とのQ&Aの採録を掲載します。
2010.12.15 update
5年振りにホームグラウンドのニューヨークで撮影されたウディ・アレンの新作は、爆笑TVドラマ『ミッドライフ・クライシス』の毒舌男ラリー・デヴィッドが主演を努めた快心作『人生万歳!』。原題Whatever Works(うまくいくなら何でもあり!)が示す通りの、万歳!な傑作をものにしたウディ・アレン監督のオフィシャル・インタヴューをお届けする。
2010.12.7 update
フランスのヌーヴェルヴァーグ、イタリアのネオレアリズモと同時期にその影響を受けて生まれたブラジルの映画運動“シネマ・ノーヴォ”の特集上映が、渋谷イメージフォーラムで行われている。OUTSIDE IN TOKYO は、今年5月にアテネ・フランセ文化センターで行われた「ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督作品特集2010」で来日した監督にインタヴューを敢行、今回の「シネマ・ノーヴォ特集」上映を祝して、シネマ・ノーヴォ以来現在に至るまでブラジル映画を牽引してきた、イーストウッドやゴダールよりも2歳年上の映画作家ネルソン・ペレイラ監督のインタヴューを掲載します。
2010.12.3 update
『NN-891102』『おそいひと』に続く、柴田剛監督長編第三作目は、京都の強烈な磁場と強者ミュージシャンが”映画”というフレーム超えて暴れ回るカオスな作品。フィルメックス2009でコンペ作品として上映され、その後、映像とサウンドを再編集、1年後の今、公開されて様々な反響を呼んでいる。インタヴュー予定時間45分を遥かに超過して、2時間半に及んでしまったロング・インタヴューを一気掲載。作品をご覧になり、頭の中がファンキーな状態でご一読頂きたい。
2010.11.15 update
圧倒的なリアリティが大きな反響と共感を呼んでいる『ソフィアの夜明け』のカメン・カレフ監督が東京国際映画祭の日本映画・ある視点部門の審査委員として来日。東京国際映画祭グランプリの影響や新作についてお話を伺った。カメン・カレフ監督が考える“映画”とはどういうものかがストレートに伝わるインタヴュー。
2010.11.9 update
去年の第10回フィルメックスで『春風沈酔の夜』というタイトルで上映されたロウ・イエ監督の傑作が現在『スプリング・フィーバー』として公開されている。 新作の撮影を終え、本作の公開に合わせて来日した監督に、“撮影禁止の5年間”について、本作と新作について、お話を伺った。あくまで”個人”を尊重した作品を世に問い続けるロウ・イエ監督の言葉は、今のような不寛容の時代にあってより重要な意味を帯びて響いてくる。
2010.11.4 update
TIFF2010アジアの風部門で「躍進トルコ映画の旗手 レハ・エルデム監督全集」と題し、全6作品が特集上映された鬼才レハ・エルデム監督のインタヴューを掲載。コンペティション部門で上映された『ゼフィール』(ベルマ・バシュ監督)といい、エルデム監督作品といい、躍進目覚ましいトルコ映画に注目!
2010.10.14 update
小池健&石井克人の強力コンビが7年間の歳月を掛けて放ったジェットコースター・アニメーション・ムービー『REDLINE』が公開中。制作は、『パプリカ』『時をかける少女』『サマーウォーズ』のマッドハウス、木村拓哉、蒼井優、浅野忠信がメインキャラクターの声を演じている。自分達が出来る事をやるだけという、肩の力が抜けたナイスなお二人にお話を伺った。
2010.10.8 update
フランスから、ジャック・タチ、ルイ・マル『地下鉄のザジ』の流れを汲む、ウェス・アンダーソン的洗練をも感じさせる素晴らしいコメディが届いた。同名の国民的絵本を原作に持つ本作は、悲しいことや辛いことばかり描かなくても、人生の“真実”を描く事は出来ると思わせてくれる快心の一作。フレンチ・コメディの新しい才能ローラン・ティラール監督のオフィシャル・インタヴューをお届けする。
2010.10.6 update
韓国の孤児院からフランス人の里親に引き取られ、以降フランスで育てられたという、ウニー・ルコントの自伝的背景を含んだ『冬の小鳥』は、彼女が体験した痛ましい別離と喪失の感情をベースに、過去をフィクションとして再構築する、映画ならではの突き抜けた表現領域に達し得た素晴らしい作品。そんな処女長編をものにした新人監督、ウニー・ルコントが真摯に話してくれた。
2010.10.1 update
「ファッションは束の間だが、映画は永遠だ」と語るトム・フォード、初の監督作品『シングルマン』は、自らのミドルライフ・クライシスを投影した主人公が死を決意した、その1日を緻密に描く、完璧主義者の彼らしいディテイルに凝りまくった作品。ファッション界のカリスマの”映画”への偏愛が伝わって来るインタヴューをお届けする。
2010.9.17 update
イランでは、ペルシャ人が1番、クルド人は2番という差別があり、クルド人である自分の作品は、イスラム教や国家の批判をしたわけでもないのに上映許可がおりず、自ら海外に脱出して海外で本作を公開するしかなかった、世界のみなさんにこうした状況を知って頂きたいと訴えるバフマン・ゴバディ監督のSkypeインタヴューを掲載。
2010.9.13 update
テリー・ギリアム、ティム・バートンと同じく、リアリティよりもイマジネーションで勝負する映画作家ジャン=ピエール・ジュネ(『デリカテッセン』『アメリ』)の集大成『ミックマック』が公開。自分を、フランス人ではなくETだと思っていると語るポップな幻視者ジュネの映画への愛に満ち溢れたインタヴューをお届けする。
2010.8.27 update
『何も変えてはならない』という類い稀なる映画に結実したペドロ・コスタ、フィリップ・モレル、ジャンヌ・バリバールの友情、現代フランス映画を代表する女優ジャンヌの(非)演技論、アートフィルムの罠、ペドロ・コスタのユーモア。スーパーデラックスでのライブの2日後に、ジャンヌ・バリバールが思うがままに語った単独インタヴューをお届けする。
2010.8.6 update
待望の『シルビアのいる街で』が、いよいよ今週末に公開される、もうひとりのJLG、ホセ・ルイス・ゲリン監督にインタヴューを敢行。来る東京国際映画祭での新作上映をも、今から楽しみにしつつ、この全く新しい感性の傑作『シルビアのいる街で』をご自分の目と耳で堪能された上で、本インタヴューを一読頂ければ幸いである。
2010.8.3 update
”退屈な傑作”(ジョナス・メカス)を生み出し続ける映画作家ペドロ・コスタが、ここ数ヶ月の内に何度も来日し、蒸し暑い東京の夜を静かな熱気で包んでいる。映画作家は、自らの作品によって全てを語るべきというアナクロニズムを信奉するものはさておき、ペドロ・コスタが、日本の映画好きな観客や若い映画作家たちに与える倫理的影響は大きい。2年前の夏、ペドロのインタヴュー記事からスタートした OUTSIDE IN TOKYO は、再び、彼と濃密な時間を共にすることが出来たことを嬉しく思う。
2010.7.21 update
彼女がスクリーンに現れると映画が突如として色めき立ち、唯一無二の輝きを放ちはじめる。彼女ならば、カネフスキー映画の強烈な存在感を放つロシア人たちにも負けないのではないか!?そんな勝手な妄想すら抱かせる、大物女優誕生の予感を誰もが感じている。『愛のむきだし』『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『サイタマのラッパー2』、そして『トルソ』と話題作・注目作への出演が続く、今最も注目の女優、安藤サクラのインタヴューをお届けする。
2010.7.20 update
いつもどこかしら枠にハマり切ることが”できない”シャマラン監督が、ハリウッドで映画を撮り続けることができるのは、ひとつの奇跡に違いないと思っていたが、やはりその影では長年に渡るメディアとの消耗戦が闘われていた、、、。新作『エアベンダー』が集中砲火を浴びているシャマラン監督を擁護すべくインタヴューを掲載!
2010.7.12 update
スウェーデンから届けられた『ぼくのエリ 200歳の少女』は、”ヴァンパイア映画”というジャンルを軽々と超えた、映画に流れる北欧的美意識と人間存在の哲学的考察が私たちを魅了する、恐るべき傑作である。本作の成功で世界中から注目を集め、既に新作を準備中だというトーマス・アルフレッドソン監督に話を聞くことができた。
2010.7.2 update
ソダーバーグの生々しい傑作『ガールフレンド・エクスペリエンス』で、主演に大抜擢されたのは22歳の現役ポルノ女優サーシャ・グレイ。ニーチェを愛読し、ゴダールへの傾倒を公言する、突き抜けた価値観の持ち主で社会の様々な障壁に挑戦する勇敢な女優サーシャ・グレイのオフィシャル・インタヴューをお届けする。
2010.6.28 update
60年代ベルギーの緑豊かな修道院やブリュッセルの見目麗しい街並を舞台に、激動の生涯を送った実在の<シスター>の物語『シスター・スマイル ドミニクの歌』で主演をつとめたセシル・ド・フランスさんに本作の魅力や彼女の演技への取り組み方についてお話を伺った。イーストウッドの最新作『Hereafter』への出演でも知られる彼女は、今世界で最も注目されている女優のひとりである。
2010.6.21 update
世界最高の写真家集団“マグナム”に所属し、ロバート・キャパ賞も受賞している著名な写真家・ジャーナリストにして、映画作家としても本作でフランス最高の映画賞ルイ・デリュック賞を受賞したレイモン・デゥパルドン監督にパリのご自宅で『モダン・ライフ』についてお話を伺った。
2010.5.26 update
オリヴィエ・アサイヤスの『8月の終わり、9月の初め』で女優デビューした後、カイエ・デュ・シネマで映画批評を執筆、『すべてが許される』(07)で監督デヴューを果し、長編2作目の本作は、カンヌ国際映画祭2009<ある視点部門>で審査員特別賞を受賞したフランス映画界期待の新鋭、ミア・ハンセン=ラブが来日。自然体でフェミニンな魅力を醸し出しながら、彼女を映像表現に突き動かす創造の源泉について、誠実に語ってくれた。
2010.5.19 update
あらゆる意味で”危険”な映画作家、ギャスパー・ノエの新作『エンター・ザ・ボイド』が公開されている。OUTSIDE IN TOKYOは、フランス映画祭に来日したギャスパーにインタヴューを敢行。寝不足だから寝たいと言いながらも、その夜もパーティーで盛り上がった彼のラテン的”パーティー体質”と虚無的な”死生観”が映画マニア的に共存するインタヴューをお届けする。
2010.5.10 update
フランスの鬼才ブリュノ・デュモン監督がフランス映画祭2010に来日、宗教への盲目的な愛と暴力が同居する現代の寓話を、シンプルかつ美しい映像で描いた重要作品『ハデウェイヒ』(09)についてお話を伺った。”映画”の賞味期限は今始まったばかりだという力強い言葉に、大いに勇気をもらった。
2010.4.27 update
今年で10年の節目を迎えるイタリア映画祭。OUTSIDE IN TOKYOは、2001年の第1回から作品の選定に関わってきた岡本太郎さん(翻訳家・ライター)に、イタリア映画祭の10年間と今年の見所、ゼロ年代のイタリア映画についてお話を伺った。
2010.4.14 update
内戦直後のリベリアで、実際の元少年兵を起用して撮影された『ジョニー・マッド・ドッグ』は、自らの恐怖を断ち切るように、殺戮と強奪を繰り返す少年兵たちの非情な世界を唯物的に描き、観る者の安易な感情移入を許さない。昨年のフランス映画祭2009に来日したジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督は、温厚な雰囲気を醸し出す好漢で、いずれ東京の若者たちを映画にしたいと語った。
2010.4.13 update
『イングリッシュ・ペイシェント』(96)、『ずっとあなたを愛してる』(08)の好演が印象深いイギリスの名女優クリスティン・スコット・トーマスが、一途な恋に生きる主人公を鮮烈に演じる『旅立ち(原題:Partir)』のカトリーヌ・コルシニがフランス映画祭2010に来日。現代版”ボヴァリー夫人”の情熱的な愛の美しさと怖さが際立つ本作についてお話を伺った。
2010.4.12 update
フランス映画祭2010でも観客賞に選ばれた、誰もが泣いて笑える最高の感動作『オーケストラ!』がいよいよ公開。骨太な笑いと涙の嵐で観客を包み、市井の人々に希望を与える作品を作り上げたラデュ・ミへイレアニュ監督のオフィシャル・インタヴューをお届けする。
2010.4.1 update
マーティン・スコセッシの最新作『シャッター・アイランド』公開に向けて、レオナルド・ディカプリオが、3年振り6度目の来日を果たした。当日の模様は、Ustreamでライブ中継され、1万3000人がこれを視聴したという。スコセッシが『シャッター・アイランド』を作るにあたり参照した映画の話など、映画好きにはとても好感がもてる話が聞けた記者会見の模様を全文掲載します。
2010.3.26 update
フランス映画祭2010での『クリスマス・ストーリー』上映につき、マチュー・アマルリックが来日。寝起きのような無造作ヘアも、トム・クルーズに匹敵するのでは?とすら思わせる最強の目ヂカラと相俟って、彼独特の雰囲気を醸し出し、取材陣を魅了した。『クリスマス・ストーリー』のアンリのキャラクタそのものを思わせるストレートな発言も飛び出す、デプレシャン組の現場の雰囲気が伝わるインタヴューをお届けする。
2010.3.24 update
2009年の第10回東京フィルメックス映画祭で最優秀映画賞、観客賞のダブル受賞を達成した『息もできない』は、監督のヤン・イクチュンが3年6ヶ月の月日と文字通り全財産を含む全てのエネルギーをつぎ込んで完成に漕ぎ着けた奇跡的な映画だ。劇中の粗暴なサンフンというフィクショナルなキャラクターと監督本人は明らかに違う人格ながらも、インタヴューで見せたそのシャイな笑顔には、サンフンからも確かに感じ取れる、この人特有の誠実さが滲み出ていた。
2010.3.11 update
『マッチポイント』(05)、『タロットカード殺人事件』(06)に次ぐ、我らがウディ・アレン監督のロンドン三部作最終章『ウディ・アレンの夢と犯罪』(07)が、いよいよ公開される。インタヴュー嫌いで知られるウディ・アレンが、本作について、そして、円熟期にある彼の人生と映画について語った。虚実ない交ぜな気配を漂わせながらも次第に真実味を帯びた口調に変化を遂げていくアレンの本心が垣間見えるインタヴューをお届けする。
2010.2.2 update
映画作家として円熟期を迎え、新作を作る毎に自身の最高傑作を更新し続けているスペインの巨匠ペドロ・アルモドバルから3年振りの新作が届けられた。様々な形の”愛の抱擁”とアルモドバル一流のメロドラマに彩られた極彩色の新作『抱擁のかけら』で主演を務めるのは、アルモドバル作品4度目の出演となるスペインの至宝ペネロペ・クルス。お互いの存在に全幅の信頼を寄せる二人のオフィシャル・インタヴューをお届けする。
2010.1.29 update
主演俳優ヒース・レジャーの突然の不幸な死によって完成が危ぶまれた、テリー・ギリアムの新作『Dr.パルナサスの鏡』は、ヒースの友人であるジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルが代役を務めるというハリウッド史上類を見ないアクロバティックな解決策によって、結果的には、完成に漕ぎ着けたばかりでなく、却って物語の世界に広がりを与えるという予期せぬ恩寵まで作品にもたらされた。映画の嘘と現実世界の真実が類い稀なる想像力によって紡ぎ上げられた紛れもない傑作である。スーパーモデルから女優へと華麗なる転身をみせた才媛リリー・コールとブラックユーモアが冴え渡るギリアム監督の掛け合いをお楽しみ頂きたい。
2010.1.26 update
2010年という新しい10年<New Decade>の冒頭を飾るに相応しい、新しい日本映画の才能が登場した。藝大大学院を卒業したばかりの弱冠28歳、真利子哲也である。その卒業製作『イエローキッド』が多くの批評家から絶賛され、早くも“鬼才”呼ばわりするメディアも出現。まだインタヴュー慣れしていないんで、、、と言って瑞々しさすら漂わせる真利子哲也監督にお会いして、『イエローキッド』についてお話を伺った。
2010.1.5 update
2009年10月6日、東京日仏学院で行われたフィリップ・クローデル監督と翻訳者高橋啓氏による対談を掲載。小説家として確固たる地位を確立しているクローデルが、初監督作品とは思えない出来映えの映画『ずっとあなたを愛してる』について、誠実に全てを語った。
2010.1.5 update
ハンガリーの鬼才タル・ベーラ監督の新作『倫敦から来た男』の公開を記念して行われたトークショーの模様を掲載。
・田中千世子(映画評論家・映画監督)×市山尚三(映画プロデューサー)
・堀江敏幸(作家)×長島良三(原作翻訳者)
2009.12.3 update
2009年10月2日に東京日仏学院で行なわれたモグラビ監督と映画評論家村山匡一郎氏との対談の採録を掲載しました。
2009.11.16 update
在米中国系作家イーユン・リーの傑作短編小説「千年の祈り」を、『スモーク』等、ポール・オースターとの共作で知られるウェイン・ワン監督が映画化。現在公開中の『千年の祈り』は、異なる国で生きてきた父と娘の前に立ちはだかる無言の壁を描き、普遍的な物語へと昇華させ、数々の映画祭で賞賛を浴びた。9月に来日したワン監督は、小津の影響から、イーユン・リーとのコラボレーション、役者の演出論まで創作の秘密を率直語ってくれた。
2009.10.31 update
森田芳光監督の新作『わたし出すわ』で初の単独主演をつとめた日本のクールビューティー・ナンバー1、小雪のオフィシャル・インタヴューを掲載。世知辛い今の世相に妙にマッチする本作の魅力を静かに語る小雪のシャイネスに、森田芳光と同種の知性が宿って見える。
2009.10.13 update
17年ぶりの新作『アンナと過ごした4日間』の劇場公開と機を同じくして開催されるTIFFでは60年代のスコリモフスキ作品が一挙に特集上映され、本人も映画祭の審査員として今年2度目の来日を果たす。近年はペインティングにもご執心の巨匠だが、映画監督としては『アンナ〜』をきっかけに傑作映画を連発する新たなる充実期を迎えているのかもしれない。
2009.9.25 update
前作『ブロークン・フラワーズ』から4年、謎に満ちた最新作『リミッツ・オブ・コントロール』について存分に語った、ジム・ジャームッシュ監督のオフォシャル・インタヴューを掲載します。
2009.9.24 update
『アモーレス・ペレス』、『21グラム』、『バベル』の脚本家、メキシコの鬼才ギジェルモ・アリアガの初長編監督作『あの日、欲望の大地で』が公開される。7月に来日した際に収録された監督のオフィシャル・インタヴューを掲載します。
2009.9.14 update
『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官に』の主演ハリソン・フォードと監督、脚本、製作のウェイン・クラマーのオフィシャル・インタヴューを掲載しました。
2009.8.11 update
教条的なキリスト教の世界観から離れ、生身の人間”キリストさん”をイタリア映画伝統の地、ポー川を舞台に寓話的に描いた『ポー川のひかり』。巨匠エルマンノ・オルミ監督に、「最後の劇映画になるだろう」という本作について幾つかのシンプルな質問を投げかけてみた。
2009.8.7 update
パリのアサイヤス監督に電話インタヴューを敢行。現在撮影中の新作について、そして、『クリーン』『NOISE』、かつてのパートナー、マギー・チャンから受けたインスピレーションについて率直に語ってくれた。
2009.7.17 update
『バーダー・マインホフ 理想の果てに』の監督ウリ・エデル、製作/脚本ベルント・アイヒンガー、原作シュテファン・アウストのオフィシャル・インタヴューを掲載しました。
2009.7.16 update
スパイク・リー監督のオフィシャル・インタヴュー、及び、バッファロー・ソルジャーを演じた役者たちのコメントを掲載しました。
2009.6.5 update
松山ケンイチ、麻生久美子が共演した話題作『ウルトラミラクルラブストーリー』で、商業映画デビューを飾った横浜聡子監督にインタビューを敢行。「映画は何でもあり」と語る監督の”自由な”発言は、あらゆる世代の表現者に刺激と勇気を与えるに違いない。脳味噌くたばれ、官能ばんざい!
2009.5.22 update
本国で大ヒットを記録した、傑作映画『夏時間の庭』は、ここ日本でも公開早々順調な滑り出しが伝えられている。常に現代社会のリアリティを映画というアートフォームを用いて表現してきた、現代フランスを代表する映画作家、オリヴィエ・アサイヤスに『夏時間の庭』についてインタヴューを試みた。
2009.4.28 update
昨年37歳という若さでこの世を去ったギョーム・ドゥパルデューの遺作のひとつ『ベルサイユの子』の脚本/監督を手掛けたピエール・ショレール監督がフランス映画祭のために来日。本作が長編第一作ながらも、ホームレス、シングルマザー/ファザーといった複雑な社会的テーマの感動作を見事なバランスで描いた監督に話を伺った。
2009.4.24 update
『Z』『告白』『戒厳令』『ミッシング』『背信の日々』『ミュージック・ボックス』の社会派エンターテイメント映画の巨匠コスタ=ガヴラスがフランス映画祭のために来日。ヨーロッパにおける移民の存在に光をあて、本国フランスでは賛否両論を巻き起こした新作『西のエデン』について聞き、巨匠の映画作りの真髄を垣間みた。
2009.3.19 update
中国の急激な変遷を、一般の人々の目線のままに、映画という語りの中で伝えてきたジャ・ジャンクー監督が、ダムの建設で水没する村を描いた『長江哀歌』の後に作ったのが、50年の歴史を持つ巨大国営工場を舞台に撮影した『四川のうた』。来日した際の2度の合同取材の内容を一挙掲載。市井の人々に注がれる監督の真摯な眼差しが見えてくる。
2008.10.31 update
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』でヴィゴ・モーテンセンと組み、潜在的な暴力を普通の家族の情景に映しこんだ、カナダの巨匠、デヴィッド・クローネンバーグが再び、自身がアーティストでもある俳優と手を組んだ。新作『イースタン・プロミス』と監督の近況についてインタヴュー、次回作はSFになるという監督の今後が増々楽しみだ。
2008.7.23 update
詩情溢れるストイックな映像美で国際的な賞賛を浴びるポルトガル人監督のペドロ・コスタが、最新作『コロッサル・ユース』の公開に向けて来日。私たち「OUTSIDE IN TOKYO」は、濃密な90分間を監督と共に過ごす幸甚を得ました。