リム・カーワイ監督特集 シネマ・ドリフターの無国籍三部作

"秘すれば花"(世阿弥)という東アジアに顕著な"沈黙の美学"を培った精神的風土は、一方では、"沈黙"が支配する"共同監視社会"を形成する上で予想以上の成果を発揮してしまうのかもしれない、という悪夢めいた連想を呼び寄せながらも、ソニック・ユース的ノイズミュージックが疾走するエンディングが、"全ての悪事を白日のもとに晒す"べく、恩讐の果てに復讐に舞い戻る"恐るべき子どもたち"の到来を予告する『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』(09)で、戦慄すべき長編映画デヴューを遂げたリン・カーワイ監督の特集上映、<シネマ・ドリフターの無国籍三部作>が行われる。この特集上映では、『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』に加え、ルー・リードの傑作アルバムからタイトルを拝借した『マジック&ロス』(10)、新作『新世界の夜明け』(11)が上映され、連日ディープな人選のトークショーが予定されている。注目の特集上映。
(上原輝樹)
2012.10.12 update
『新世界の夜明け』
リムくんが映画を撮った。昔からの友達だし、見るしかない。それはムチャクチャで突っ込みどころ満載の映画だった。しかし、どこかで真実を突いているような気もした。そう言えば、昔からリムくんには口癖があったんだった。『笑うしかないね』笑うしかないが頷ける。そんな映画。
オダギリジョー(俳優)
『マジック&ロス』
スリリングでエロチックでミステリアスな超境と溶融の交響曲!
暉崚創三(映画評論家)
『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』
アジアのパワーと混沌が、ヨーロピアンな深い思索をもって構築され、最後にはまるでハリウッド映画のような興奮で観客の心を釘付けにする・・・世界映画の理想的なカタチがここにある。つまりこの作者はエドワード・ヤンがやったさらにその先を提示しようとしているのだ。彼の名前はリム・カーウァイ、是非とも覚えておかねばなるまい。
黒沢清(映画監督『トウキョウソナタ』『贖罪』)
2012年10月13日(土)〜18日(木)
会場:オーディトリウム渋谷 
当日料金:1,300円均一(一般/シニア/学生)
前売券(劇場窓口での販売) 1回券/1,200円 3回券/3,000円
*リピーター割引 1,100円
*「SanpoMagazine」5号 リム・カーワイ特集号をを持参のお客様は当日1,300円のところ▶1,000円となります! 監督のサインもさせて頂きます。 東京では古書ますく堂、模索舎、盛林堂書所、三省堂神保町本店、古書ほうろう、BIBLIOPHILIC & bookunion新宿で販売中。 

公式サイト:
http://cinemadrifter.jimdo.com/
上映スケジュール
10月13日(土)
21:10
新世界の夜明け
(93分)
トークゲスト:
柘植伊佐夫
人物デザイン
「竜馬伝」「平清盛」


10月14日(日)
21:10
新世界の夜明け
(93分)
トークゲスト:
小林聖太郎
映画監督
『毎日かあさん』



10月15日(月)
21:10
新世界の夜明け
(93分)
トークゲスト:
山本政志
映画監督
『闇のカーニバル』、シネマ☆インパクト主宰

10月16日(火)
21:10
アフター・オール・ディーズ・イヤーズ
(98分)
トークゲスト:
奥原浩志
映画監督
『青い車』、『黒い四角』
10月17日(水)
21:10
マジック&ロス
(81分)
トークゲスト:
杉野希妃
女優・プロデューサー
『マジック&ロス』、『歓待』

10月18日(木)
21:10
アフター・オール・ディーズ・イヤーズ
(98分)
トークゲスト:
黒沢清
映画監督
『トウキョウソナタ』、『贖罪』
※トークショーの内容は変更の可能性があります。
上映プログラム

『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ 』
2009年/マレーシア・中国・日本/98分/HDV
監督・脚本・プロデューサー:リム・カーワイ
撮影:メイキン・フォン・ビンフェイ  録音:山下彩  編集:奥原浩志、Philipe Lin  美術:Amanda Weiss 音楽:Albert Yu  製作・配給:CINEMA DRIFTERS
出演:大塚匡将、ゴウジー(狗子)、へー・ウェンチャオ(何文超) 

2010年香港国際映画祭、大阪アジアン映画祭、北京インディペンデント映画祭、サンパウロ国際映画祭ほか 

十年ぶりに故郷に帰ってきたア・ジェ。だが家族ですら彼のことを忘れており、挙句に無実の罪を着せられ処刑されてしまう。しかし、そのア・ジェが再び現れる。彼は何者か? 目的は何か。過去と現在が複雑に交錯し物語はやがて不穏な様相を帯びていく。
『マジック&ロス』
2010年/日本・韓国・マレーシア・香港・中国・フランス・アメリカ/カラー/81分/HD/Stereo
監督・編集・構成&プロット:リム・カーワイ
プロデューサー:杉野希妃  エグゼクティブプロデューサー:小野光輔、坂本雅司、岩倉達哉  原案:リム・カーワイ、ジュディス・ペルニン  撮影:メイキン・ファン・ビン・ファイ  照明:トーマス・チャク・チャン  録音:山下彩  音楽:Jo Keita  スチール:友長勇介  作中絵:クレール・ルヴェ  制作プロダクション・配給:和エンタテインメント  製作:「マジック&ロス」製作委員会(S・D・P、シネグリーオ、和エンタテインメント)  機材協力:Studio DU  特別協賛:フォトカノン戸越銀座店
出演:杉野希妃、キム・コッピ、ヤン・イクチュン 

2010年釜山国際映画祭
2011年大阪アジアン映画祭、東京国際映画祭、日韓映画祭、香港インディペンデント映画祭ほか 

香港のリゾート地、ムイオ島にやってきた日本人と韓国人の二人の女。「満員」の張り紙にも係わらず誰もいないように見えるホテルで彼女たちは知り合い、行動を供にすることになる。神秘的な島の風景に触れるうち二人はあの世とこの世の狭間を彷徨い始める。
『新世界の夜明け』
2011年/日本・中国/カラー/93分/HD
監督・脚本・プロデューサー・編集:リム・カーワイ
プロデューサー:友長勇介  制作主任:濱本敏治  撮影監督:加藤哲宏  美術:塩川節子  録音、整音:宮井昇  照明:福田良夫  音楽:albert Yu
出演:史可(シー・カー)、小川尊、宮脇ヤン、友長えり、友長光明、安藤匡史、鈴田望、宮本果実、濱辺緩奈、JUN、ミヨシ フミタカ 

2011年第七回CO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)観客賞、Panasonic技術賞ダブル受賞
2011年香港国際映画祭、サンパウロ国際映画祭ほか 

北京の若い女性、ココは日本でのクリスマスに憧れ、大阪にやってくる。だが、辿り付いたのは、メトロポリタンとは遠く離れた大阪の新世界だった。言葉の通じない異国の地でてんやわんやの騒動に巻き込まれていく。中国のお嬢様が「新世界」の地で見たものとは!?
リム・カーワイ
1973年マレーシアのクアラルンプール出身。1993年日本に留学、1998年大阪大学基礎工学部電気工学科卒業。東京で外資系の通信会社で六年間をエンジニアとして勤めてから、2004年9月に北京電影学院の監督コースに入る。2005年釜山国際映画祭主催のAFA(アジア・フィルム・アカデミー)に選ばれ、侯孝賢の下で演出を学んだ。その後、北京と東京を往復して短編映画を作る傍ら、『プラスティック・シティ』(ユー・リクワイ監督)などいくつかの合作映画の現場で助監督や製作コーディネイターとして活躍する。
2009年、北京で撮影した『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』で長編デビュー。2010年香港国際映画祭、大阪アジアン映画祭、サンパウロ国際映画祭に公式招待された。
2010年、第2作目である本作『マジック&ロス』を香港で撮影し、釜山国際映画祭で初上映され話題を呼ぶ。同年、立て続けに撮った第3作目『新世界の夜明け』ではCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)の観客賞&技術賞をダブル受賞。どこにも定住せずに漂流を続けており、毎回場所やジャンルを変え多層的な作品を撮る鬼才監督である。


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