ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ



カサヴェテスの映画を劇場で観たのは、カサヴェテスが亡くなった直後の80年代末か90年代初頭のニューヨークでのことだったから、もうかれこれ20年の歳月が過ぎている。後にも先にも、彼の映画を観たのはそれっきりで、ビデオでもDVDでもテレビでも観た記憶がない。(ニューヨークの直後に東京で行なわれた特集上映は観ているかもしれないが、、、)それにも関わらず、彼の名前を口にする回数は数えきれない程多く、このサイトでもことあるごとに彼の名前を挙げてきた気がする。いずれにしても、最後に観たのは『ラブ・ストリームス』で、その最後にジョンがキャメラ目線で観客の方を見て、グッドバイと言ったことに驚嘆したことを鮮明に覚えているのだが、果たして、その記憶は正しかったのか、単なる捏造だったのか。そんな個人的な記憶の真偽はさておき、"アメリカン・インディーズの父"といわれるジョン・カサヴェテスが、"アメリカ"や"インディーズ"に限定されない世界中の映画作家に多大な影響を与え続けているのは何故なのか、その創造の源泉に触れることができるこの機会を、ゆめゆめお見逃しなきよう!
(上原輝樹)
2012.4.9 update
2012年5月26日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
上映スケジュール
5月26日(土)〜6月1日(金)
11:00
アメリカの影
(82分)

14:00
こわれゆく女
(147分)
17:00
ラヴ・ストリームス
(141分)

20:00
フェイシズ
(130分)
6月2日(土)〜8日(金)
11:00
チャイニーズ・
ブッキーを殺した男

(134分)
14:00
ラヴ・ストリームス
(141分)
17:00
こわれゆく女
(147分)

20:00
オープニング・ナイト
(144分)
6月9日(土)〜15日(金)
11:00
こわれゆく女
(147分)

14:00
オープニング・ナイト
(144分)
17:00
フェイシズ
(130分)

20:00
ラヴ・ストリームス
(141分)
6月16日(土)〜22日(金)
11:00
ラヴ・ストリームス
(141分)

14:00
フェイシズ
(130分)
17:00
チャイニーズ・
ブッキーを殺した男

(134分)
20:00
こわれゆく女
(147分)
6月23日(土)〜29日(金)
11:00
オープニング・ナイト
(144分)

14:00
こわれゆく女
(147分)
17:00
アメリカの影
(82分)

20:00
ラヴ・ストリームス
(141分)
上映プログラム


© 1958 Gena Enterprises.
『アメリカの影』
1959年/アメリカ/82分/モノクロ/モノラル(デジタル上映)
脚本:ジョン・カサヴェテス
音楽:チャーリー・ミンガス
出演:ベン・カラザース、レリア・ゴルドーニ、ヒュー・ハード、アンソニー・レイ、デニス・サラス 

マンハッタンに暮らす、黒人の血を引いた三人の兄妹がそれぞれに肌の色からくる疎外感を体験していく様を描く。カサヴェテスのデビュー作にして、後の映像作家たちに大きな影響を与えたインディペンデント映画の金字塔。シナリオなしの即興演出で、映画の新たな方向性を確立した。
© 1968 JOHN CASSAVETES
『フェイシズ』
1968年/アメリカ/130分/モノクロ/モノラル(デジタル上映)
脚本:ジョン・カサヴェテス
撮影:アル・ルーバン
出演:ジョン・マーレイ、ジーナ・ローランズ、シーモア・カッセル、リン・カーリン

関係の破綻した中流アメリカ人夫婦の36時間を描く。男女の愛の葛藤を描くカサヴェテス一連の作品の原点。メジャー映画会社からの支援を一切受けず、自宅を抵当に入れたり、俳優としてのギャラをつぎ込んで製作。オスカー3部門でノミネートという成果を挙げ、ハリウッドにその存在を認知させた革命的傑作。ヴェネチア国際映画祭最優秀主演男優賞、イタリア批評家賞受賞。アカデミー賞最優秀助演男優賞、助演女優賞、脚本賞ノミネート。
© 1974 Faces InternationalFilms,Inc.
『こわれゆく女【復元ニュープリント版】』
1975年/アメリカ/147分/カラー/ヴィスタ/35mm
監督・脚本:ジョン・カサヴェテス
製作:サム・ショウ
出演:ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク、マシュー・カッセル、マシュー・ラボートー 

精神のバランスを崩した妻と土木工事の現場監督を務める夫との夫婦愛を描いたカサヴェテスの代表作の一本。脚本はジーナ・ローランズ主演の戯曲として執筆。現代人の閉ざされた人間関係の中での純粋な愛情をありふれた家庭の中に求めた秀作。ゴールデングローブ賞最優秀女優賞(ドラマ)受賞。アカデミー賞最優秀主演女優賞、監督賞ノミネート。
© 1976 Faces Distribution Corporation
『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』
1976年/アメリカ/134分/カラー/モノラル(デジタル上映)
脚本:ジョン・カサヴェテス
撮影:フレッド・エルムス
出演:ベン・ギャザラ、ティモシー・アゴリア・ケリー、シーモア・カッセル、アジジ・ジョハリ 

暗黒街のマフィア、ストリッパー、ナイトクラブ、犯罪。フィルム・ノワール的なテーマを持つカサヴェテス作品の中でも特異な1本。主人公コズモにカサヴェテス自らの人生の困難を重ねあわせ、芸術のために生きる孤独な男を描いたカサヴェテス一流の作品。ヴェネチア国際映画祭批評家賞。
© 1977 Faces Distribution Corporation
『オープニング・ナイト』
1977年/アメリカ/144分/カラー/モノラル(デジタル上映)
脚本:ジョン・カサヴェテス
撮影:アル・ルーバン
出演:ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ベン・ギャザラ、シーモア・カッセル 

一人の有名舞台女優を通して、人が〝老い″を自覚し始めた時に感じる焦燥や不安を描いた作品。本作でベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞したジーナ・ローランズの演技は必見。カサヴェテス作品の中で本作が唯一「夫婦役」として共演している。ベルリン国際映画祭主演女優賞受賞。
© MCMLXXXIV Cannon Films, Inc.
『ラヴ・ストリームス【ニュープリント版】』
1984年/アメリカ/141分/カラー/モノラル
脚本:ジョン・カサヴェテス
原作・共同脚本:テッド・アレン
出演:ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ダイアン・アボット、シーモア・カッセル 

他人を愛することに不器用ながらも、愛や孤独をテーマにした小説を書く男と狂おしいほどに夫と娘に愛を捧げたために精神のバランスを崩していく女の姿を描く。「愛、孤独、狂気」を主題にしたカサヴェテス映画の集大成となった傑作。ベルリン国際映画祭グランプリ受賞。
ジョン・カサヴェテス
1929年ニューヨーク生まれ。 ドラマティック・アカデミーで演劇を学び、そこでジーナ・ローランズと出会い、結婚。
50年代初頭から俳優活動に入り、『アメリカの影』('59)で監督デビュー。
普遍性と実験性に溢れ、人間の内面に鋭く迫った作品を次々と発表し、インディペンデント映画の新境地を切り開いた。
1989年に肝硬変で死去。


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