アンドレイ・タルコフスキー映画祭2010



長編劇映画第一作『僕の村は戦場だった』(62)でヴェネチアでグランプリに輝き、映画作家として輝かしい未来が約束されているかに見えたアンドレイ・タルコフスキーは、長編第二作、15世紀ロシアの画家ルブリョフの生涯を描いた大作『アンドレイ・ルブリョフ』(67)でソ連ブレジネフ政権下の映画行政当局に嫌われ、権力による不当な弾圧を受ける。以降、彼の作品(『惑星ソラリス』(72)、『鏡』(75))は自己の内面を深く見つめる傾向を強め、『ストーカー』(79)でソ連映画行政当局と徹底的に対立し母国を去ることに。次作の『ノスタルジア』(83)はイタリアで撮り、続く『サクリファイス』(86)はスウェーデンで撮影した。イーストウッドより1歳若いタルコフスキー、54歳の時の作品『サクリファイス』が彼の遺作となった。イーストウッドは、"自己犠牲"の精神を問うた『グラン・トリノ』を77歳の時にものにしたが、過酷な後半生を過ごしたタルコフスキーは、54歳にして他人のために自分の命を犠牲にする人物を描いていた。
そんなタルコフスキーの半生を知らなくとも、スクリーンでこそ見ておきたい美しい映像詩に彩られた名作の数々、大学時代の習作『殺し屋』から21世紀への予兆に満ちた遺作『サクリファイス』まで、タルコフスキー全作品を見ることができる"自由"を、今この機会に満喫すべき!
2010.2.9 update
2010年2月6日(土)~3月12日(金)
場所:シアター・イメージフォーラム
配給:ロシア映画社、ザジフィルムズ、フランス映画社
料金:前売券1,200円 ※劇場窓口、チケットぴあにて販売
   当日料金一般1,500円/学生・シニア・会員1,000円

上映スケジュール
2月6日(土)
―9日(火)
12:30
ソラリス(165分)

16:00
僕の村は戦場だった(94分)
18:00
ノスタルジア(126分)

 2月10日(水)
―12日(金)
12:30
ノスタルジア(126分)

15:00
ソラリス(165分)

18:30
僕の村は戦場だった(94分)
2月13日(土)
―16日(火)
12:30
ソラリス(165分)

16:00
僕の村は戦場だった(94分)
18:00
ノスタルジア(126分)

2月17日(水)
―19日(金)
12:30
殺し屋+ローラー(65分)
15:00
ノスタルジア(126分)

18:30
(110分)

2月20日(土)
―23日(火)
12:30
(110分)

15:00
殺し屋+ローラー(65分)
17:30
ストーカー(163分)

2月24日(水)
―26日(金)
11:30
ストーカー(163分)

15:00
(110分)

17:30
アンドレイ・ルブリョフ(182分)
 2月27日(土)
―3月2日(火)
12:00
(110分)

14:30
ストーカー(163分)

18:00
サクリファイス(149分)
3月3日(水)
―5日(金)
12:00
アンドレイ・ルブリョフ(182分)
15:30
殺し屋+ローラー(65分)
18:00
ノスタルジア(126分)

3月6日(土)
―9日(火)
12:00
サクリファイス(149分)
15:00
アンドレイ・ルブリョフ(182分)
19:00
ストーカー(163分)

3月10日(水)
―12日(金)
12:00
殺し屋+ローラー(65分)
14:00
アンドレイ・ルブリョフ(182分)
18:00
サクリファイス(149分)
上映プログラム

『殺し屋』
共同監督:M・ベイク、A・ゴルドン/原作:アーネスト・ヘミングウェイ/脚本:アンドレイ・タルコフスキー、A・ゴルドン/出演:アンドレイ・タルコフスキー/1958年/35mm/モノクロ/スタンダード/19分/配給:ロシア映画社

2003年に日本初公開された全ロシア国立映画大学での習作。20代の若いタルコフスキー本人も出演。
『ローラーとバイオリン』
脚本:A・ミハルコフ=コンチャロフスキー、アンドレイ・タルコフスキー、撮影:ワジーム・ユーソフ/音楽:ヴャチェスラフ・オフチンニコフ/出演:イーゴリ・フォムチェンコ、ウラジーミル・ザマンスキー/1960年/35mm/カラー/スタンダード/46分/ニューヨーク国際学生映画コンクール1位/配給:ロシア映画社

卒業制作の最初の単独監督作。日常的な出来事の中の奇跡を描いた美しい中篇。新しい映像作家の誕生を示した。
『僕の村は戦場だった』
原作:ウラジーミル・ボゴモーロフ/脚本:ウラジーミル・ボゴモーロフ、ミハイル・パパーワ/撮影:ワジーム・ユーソフ/音楽:ヴャチェスラフ・オフチンニコフ/出演:ニコライ・ブルリャーエフ、ワレンチン・ズブコフ、Ye・ジャリコフ、V・マリャービナ/1962年/35mm/モノクロ/スタンダード /1時間34分/ベネチア国際映画祭・金獅子賞、サンフランシスコ国際映画祭・監督賞/配給:ロシア映画社

祖国のために戦った少年パルチザンの悲劇。長編第一作目で詩情豊かな映像で新たなスタイルを確立し、世界的な評価を得た。
『アンドレイ・ルブリョフ』
脚本:A・タルコフスキー、アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー/撮影:ワジーム・ユーソフ/音楽:ヴャチェスラフ・オフチンニコフ/出演:アナトーリー・ソロニーツィン、イワン・ラピコフ、ニコライ・グリニコ、ニコライ・セルゲエフ/1967年/35mm/パートカラー/シネマスコープ/3時間2分/カンヌ国際映画祭・批評家連盟賞/配給:ロシア映画社

15世紀ロシアの偉大なイコン画家ルブリョフの生涯を描いた大作。激動の時代を背景に芸術家の誕生を描いたこの作品でソ連当局からの弾圧を受ける。
『惑星ソラリス』
原作:スタニスラフ・レム「ソラリスの陽のもとに」/脚本:アンドレイ・タルコフスキー、フリードリヒ・ガレンシュテイン/撮影:ワジーム・ユーソフ/音楽:エドゥアルド・アルテミエフ/出演:ナタリア・ボンダルチュク、ドナタス・バニオニス、ユーリー・ヤルヴェト/1972年/35mm/カラー/シネマスコープ/2時間45分 /カンヌ国際映画祭・審査員特別賞、国際エヴァンジェリー映画センター賞/配給:ロシア映画社

ポーランドのSF小説を映画化したSF映画の不朽の傑作。深層意識を物質化するソラリス上空のステーションを舞台に、記憶と地上へのノスタルジーを描く。
『鏡』
脚本:アレクサンドル・ミシャーリン、アンドレイ・タルコフスキー/撮影:ゲオルギー・レルベルグ/音楽:エドゥアルド・アルテミエフ/挿入詩:アルセニー・タルコフスキー/出演:マルガリータ・テレホワ、オレーグ・ヤンコフスキー、イグナト・ダニルツェフ、フィリップ・ヤンコフスキー/詩朗読:アンドレイ・タルコフスキー/1975年/35mm /カラー/スタンダード/1時間50分/配給:ロシア映画社

タルコフスキーの幼年期の自伝的作品。意識下の記憶の中に母と妻、私と息子が溶け合う。水、火、風の美しいイメージが幻想的に紡ぎだされる傑作。
『ストーカー』
原作・脚本:アルカージー&ボリス・ストルガツキー/撮影:アレクサンドル・クニャジンスキー/音楽:エドゥアルド・アルテミエフ/詩:フョードル・チュッチェフ、アルセニー・タルコフスキー/出演:アレクサンドル・カイダノフスキー、アリーサ・フレインドリフ、アナトーリー・ソロニーツィン/1979年/35mm /カラー/スタンダード /2時間43分/ダヴィド・ドナテロ賞、ルキノ・ヴィスコンティ賞/配給:ロシア映画社

どんな望みもかなえられるという"ゾーン"への3人の男の探索。SF小説を原作にした哲学的映像作品。ソ連での最後の作品となる。
『ノスタルジア』
脚本:アンドレイ・タルコフスキー、トニーノ・グエッラ/撮影監督:ジュゼッペ・ランチ/音楽:ベートーベン「交響曲第9番」、ヴェルディ「レクイエム」/出演:オレーグ・ヤンコフスキー、エルランド・ヨセフソン、ドミツィアナ・ジョルダーノ、パトリツィア・テレーノ/1983年/35mm/カラー/ヴィスタ/2時間6分/カンヌ国際映画祭・創造大賞/配給:ザジフィルムズ

イタリアに留学するロシアの詩人のノスタルジアという病を描く。監督自身の境遇をも重ね合わせずにはいられない傑作。
『サクリファイス』
脚本:アンドレイ・タルコフスキー/撮影:スヴェン・ニクヴィスト/音楽:J.S.バッハ「マタイ受難曲」/出演:エルランド・ヨセフソン、スーザン・フリートウッド、アラン・エドヴァル 、グドルン・ギスラドッティル /1986年/35mm/カラー/ヴィスタ/2時間29分/ カンヌ国際映画祭・審査員特別大賞、国際映画批評家賞、エキュメニック賞、芸術特別貢献賞/配給:フランス映画社

他人のために自分の命を犠牲にする人物を描く核の時代の「黙示録」的作品。タルコフスキーの最後の作品となった傑作。
Andrei Tarkovsky アンドレイ・タルコフスキー
1932年、ロシアに生まれた映像詩人アンドレイ・タルコフスキーが、'86年、亡命先のパリで亡くなるまでに残した作品はわずか9本。20世紀に人類が抱え込んだ様々な問題と対峙し、そこから生まれた美しく、苦悩と感動に満ちた作品の数々は、いまだに世界の人々にはかり知れない影響を与えています。


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