第2回広島国際映画祭 HIFF2015



カンヌ国際映画祭で話題を呼んだ、日本初上映となるミゲル・ゴメスの6時間越えの大作『アラビアン・ナイト』や、長編処女作にしてロカルノ国際映画祭で特別大賞を受賞したダミアン・マニヴェルの『若き詩人』等が上映される【特別招待作品部門】、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を獲得した濱口竜介監督の記念碑的傑作『ハッピーアワー』を始めとして、染谷将太、安川有果、草野なつか等、日仏新進気鋭の映画作家の作品がセレクトされた【若手監督特集】、ジャン=マリー・ストローブの新作短編『水槽と国民』がラインアップされ、審査委員長を吉田喜重監督、特別審査員を女優岡田茉莉子が務める【コンペティション】、シネマテーク・フランセーズの創設者にして、ヌーヴェルヴァーグの生みの親、誰もフィルムを保存することなど考えもしなかった時代に、フィルムの保存、修復の重要性を訴え、上映されることによってフィルムは生き続けることを証明したフィルム・アーカイブの先駆者アンリ・ラングロワの功績を讃える【アンリ・ラングロワ特集】、まさに映画の起源から現在までを、「広島/HIROSHIMA/ヒロシマ」に立ち上らせようという画期的な映画祭、「第2回広島国際映画祭」が開催されようとしている。本映画祭には、ミゲル・ゴメス監督、ダミアン・マニヴェル監督、濱口竜介監督の他にも、批評家のジャン=フランソワ・ロジェ氏も招かれており、日本各地でのイベントも予定されているという。前身となった「ダマー映画祭 in ヒロシマ」が新人の発掘や育成を目的としていた、その遺伝子を受け継ぎつつ、国内外への"発信型"の映画祭を目指す、野心的かつ、ハードコアなまでに正統派な試みの行方に注目したい。今回、広島の地において、現在進行形で刻まれてようとしている"映画史"の1コマに立ち会えるものは幸運である。
(上原輝樹)
2015.11.13 update
第2回広島国際映画祭 HIFF2015
2015年11月20日(金)〜23日(月)@NTTクレドホール、広島市映像文化ライブラリー、八丁座、横川シネマ
公式サイト http://hiff.jp
上映スケジュール
上映プログラム抜粋

【コンペティション部門作品】
コンペA

『清澄』(KIYOSUMI)
日本/2015/10分
監督:染谷将太

中年のスーツの男と若いスーツの男が隅田川沿いを散歩する。ふたりの男はいつしか時制の歪みの中でファンタジックに変容していく。俳優としても活躍する染谷将太の『シミラーバットディファレント』に続く二作目の監督作品となる。
『カンボジア2099』(Cambodia 2099)
フランス、カンボジア/2014/21分
監督:ダヴィ・チュウ

プノンペン、カンボジア。ダイアモンドアイランド、そこはカンボジアのプノンペンにある最先端の開発地域。そこで、友人が二人、昨夜お互いが見た夢を語り合う。
『プエブロ』(Pueblo)
スペイン/2015/30分
監督:エレナ・ロペス・リエラ

長年に亘る亡命生活の後、ラファはスペイン南部の故郷の村に戻り、取り残された幽霊たちと直面しなければならなくなった。
コンペB

『列島、露わにされた花崗岩』(Archipels, granites denudes)
フランス、ギリシャ/2014/25分
監督:ダフネ・ヘレタキス

2014年のアテネ。欲望を失い、希望までも奪われた中で、フィルム・ダイアリーは都会の壁にぶつかる。危機的な田舎の日常生活の問題、惰性に陥った革命の問題、政治に直面する個々の問題、理想に向かう生き残りの問題。まだこんな単純な問題が解決できていない。
『贖罪』(Redemption)
ポルトガル、フランス、ドイツ、イタリア/2013/27分
監督:ミゲル・ゴメス

1975年1月21日、ポルトガル北部のとある村。一人の子供がアンゴラにいる両親へポルトガルがいかに悲惨かを知らせる手紙を出す。2011年7月13日のミラノ、ある老人が初恋を思い出す。2012年5月6日のパリでは、ある男は自分の赤ん坊の娘に、自分は決して本当の父親にはならないと伝える。1977年9月3日にライプツィヒである結婚式の最中に、花嫁は頭から離れないワーグナーのオペラと格闘する。いったい、いつからどこから、4匹の悪魔は償いを求め始めたのだろうか。
『水槽と国民』(L'Aquarium et la Nation)
フランス/2015/32分
監督:ジャン=マリー・ストローブ

水槽の中を泳ぐ魚たち。庭に面した一室でアンドレ・マルローの『アルテンブルクのくるみの木』を朗読する男性。そして、ジャン・ルノ ワールの『ラ・マルセイエーズ』が引用される。

審査員
審査員長:吉田喜重(映画監督)
審査員:ダミアン・マニヴェル(映画監督)、坂本安美(アンスティチュ・フランセ東京 映画プログラムディレクター)
特別審査員:岡田茉莉子(女優)
【特別招待作品】

『アラビアン・ナイト 第1部 休息のない人々』(As Mil e Uma Noites volume1: The Restless One)
ポルトガル、フランス、ドイツ、スイス/2015/125分
監督:ミゲル・ゴメス

vol.1 2013年、経済破綻寸前に陥ったポルトガル。解雇された港湾労働者たちのデモを背景に監督自身が登場するが、彼は何を撮ればいいのか悩んだあげくにダッシュで現場逃亡。そして突然映画はアラビアンナイトにヒントを得て、自由に現実と虚構を往復する語り部の娘シェヘラザードによる物語の海へと船出する。「勃起した男たち」。ポルトガルの壊滅的な経済状態を前にして政策を話し合う銀行家や政治家たちはラクダでの道すがら、突如現れたアフリカのまじない師のスプレーを股間に吹きかけられる。すると・・・「雄鶏と炎の物語」夜明け前なのに鳴いてしまう雄鶏が裁判にかけられてしまう物語と、携帯を通じた少年少女たちが嫉妬の炎を燃やすラブストーリーが同時進行する。「偉大な男たちの水泳」は、病気で失業した労働者が毎年恒例のニューイヤー寒中水泳に出られなくなり鬱状態になってしまう。彼を励ます娘とのエピソードを中心に、失業者たちの声をカメラにおさめ、映画は海岸に打ち上げられた鯨の幻想と水泳大会のドキュメンタリーに漲る人々のエネルギーを活写している。
『アラビアン・ナイト 第2部 孤独な人々』(As Mil e Uma Noites volume2: The Desolate One)
ポルトガル、フランス、ドイツ、スイス/2015/131分
監督:ミゲル・ゴメス

「腸なしシモンの逃亡の日記」やせっぽちでいくら食べても太らないと噂の「腸なし」シモンは、一家皆殺しの凶悪犯として人里離れた山中で気ままな逃亡生活を続け、恐れられているが、その反面、伝説の存在になっていた。警官160人総動員の末、彼が逮捕された時、人々がとった行動とは?
「裁判官の涙」野外劇場で芝居として演じられる話で、母親として娘の幸せを願う裁判官は、法廷でとある夫婦の告白から数珠つなぎに登場する、唖の娘や木に話しかける牛や中国のビジネスマンの元恋人や泥棒や仮面を付けた部族・・・といった人々の愚かで絶望的な話にうんざり疲れ果て、遂にある叫びを発する。「ディクシーの所有者」ある低所得者向けの公営住宅で老夫婦に飼われているプードルのディクシー(2015カンヌ映画祭パルムドッグ受賞)。住人たちに起こる不幸や死といった出来事のためにディクシーは飼い主を転々とするが、人間たちと違って常に可愛らしいままであった・・・。
『アラビアン・ナイト 第3部 魅了された人々』(As Mil e Uma Noites volume3: The Enchanted One)
ポルトガル、フランス、ドイツ、スイス/2015/125分
監督:ミゲル・ゴメス

「バグダッドの島々」「千夜一夜物語」に語り手として登場する娘シェヘラザードが、王に語る物語に苦労していると父である大臣に告白し、暫しの猶予のあいだに放蕩者の美男や、泥棒でもダンサーでもあるエルビスに出会う。ノーヴォス・バイアノスの Samba da Minha Terraがフィーチャーされる、ミュージカルやブラジリアン・ポップスへのオマージュでもあるエピソード。「小鳥の歌声コンペ」この映画で最も長いパートで、野鳥を捕獲して飼育し、歌声を競うコンテストでの優勝を目指す風変わりな男たちのドキュメンタリー。
以前のエピソードでも俳優として登場していた人々も登場し、小鳥の声に取り憑かれた男たちの生活ぶりや、その歴史や、コミュニティーなどが克明に描かれていく。さらにこのエピソードの途中に現実に起こった労働者たちのデモと警官隊が衝突するドキュメンタリー画面に、画面外では中国からの移民女性の悲劇を語る「暑い森」を挟み、映画は揺れ動くポルトガルのあらゆる現実をとらえながら進行していく。
『あん バリアフリー版』(An)
日本/2015/112分
監督・脚本:河瀨直美

「私達はこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。 ...だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。」

縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎(永瀬正敏)。そのお店の常連である中学生のワカナ(内田伽羅)。ある日、その店の求人募集の貼り紙をみて、そこで働くことを懇願する一人の老女、徳江(樹木希林)が現れ、どら焼きの粒あん作りを任せることに。徳江の作った粒あんはあまりにも美味しく、みるみるうちに店は繁盛。しかし心ない噂が、彼らの運命を大きく変えていく...。
『熱波』(Tabu)
ポルトガル、/2012/118分
監督:ミゲル・ゴメス

最期の時を迎える老婆が薄れる意識のなかで想う「最後に一目、会いたい人。」

50年の歳月を遡り、胸を焦がす熱波が甦る。

気性が粗く、ギャンブル好きの老女アウロラ。彼女はお手伝いのサンタと、なにかと世話­を焼いてくれる隣人のピラールと過ごしていたが、病に倒れ、突然ヴェントゥーラという­男を呼んでほしいと言い出す。二人にはある約束があったのだ。そして50年の時をさか­のぼり、二人が若かりし頃に出会ったアフリカ―タブウ山麓での熱い記憶が明らかになっ­ていく...。
『犬を連れた女』(La Dame au chien)
フランス/2010/15分
監督:ダミアン・マニヴェル

暖かな夏の日の午後、ある青年が町の公園で、迷子の犬と出会う。彼はその犬を飼い主に返そうとする。大きな黒人の、半ば酔っ払った夫人がドアを開け、感謝したいから入れと青年を促す。
『若き詩人』(Un jeune poète)
フランス/2014/71分
監督:ダミアン・マニヴェル

思春期を抜け出たばかりのレミは、詩人になって、心を揺さぶる素晴らしい詩で世の中を魅了したいと夢見ている。南仏セトの街でひらめきを探して、照りつける太陽の下、Bicのボールペンとメモ帳だけを手に、レミは詩を書く事を決意するのだが...はたしてどこからひらめきはやってくる?海をずっと眺める、山の頂きに登る、鳥のさえずりを聞く、図書館に行く、「女神」を見つける、酒場に行く、墓地を訪ねる、海に潜る...でももしそれでも上手くいかないのなら...飲むしかない。飲んで飲みまくる。ひらめきが溢れ出るまで。
『日曜日の朝』(Un dimanche matin)
フランス/2012/18分
監督:ダミアン・マニヴェル

いつもの日曜の朝のように、パリの郊外で、ある一人の男は犬の散歩をする。
『静まれ、私の痛み』(Sois sage, ô ma douleur)
フランス/2008/10分
監督:ダミアン・マニヴェル

ある若い女性の肖像、または自分の肉体の中を生きることの難しさ。
『男らしさ』(Viril)
フランス/2007/9分
監督:ダミアン・マニヴェル

7人の男性がそれぞれの様々な男らしさを実践する。例えば、謙虚さ。自分の限界と力を試すのだが。
『ディス・イズ・コメディ』(This is Comedy, Judd Apatow & Co.)
フランス/2014/58分
監督:ジャッキー・ゴルドベルグ

人気コメディ監督であり、プロデューサーでもあるジャド・アパトーに関するドキュメンタリー。
『ゴールデン・スランバーズ』(Toto and His Sisters)
フランス、カンボジア/2011/96分
監督:ダヴィ・チュウ

在仏カンボジア系監督が祖国のホラー映画史を発掘する貴重なドキュメンタリー。"黄金のまどろみ"を意味し、ビートルズの曲も想起させるタイトルを持つ本作は、フランスに生まれたカンボジア系のダヴィ・チュウ監督が祖国の映画史を発掘していく貴重なドキュメンタリーである。1960~75年にかけて首都プノンペンは映画の都として東南アジアに君臨し、400本に達する映画が製作された。しかし75年にポル・ポト率いるクメール・ルージュが政権を握るとただちにそのほとんどが処分され、映画人もまた粛清された。現存するフィルムは30本といわれている。
【アンリ・ラングロワ特集】

『カリガリ博士』(Das Cabinet des Dr.Caligari)
ドイツ/1920/52分
監督:ロベルト・ヴィーネ

表現主義映画の代表作。カリガリ博士が眠り男ツェザーレを操って、次々に殺人事件を起こすという怪奇譚。ラングロワは、シネマテーク・フランセーズの前身となるシネクラブで本作と「アッシャー家の末裔」などを上映した。ラングロワの活動の始まりを告げた1作である。
(東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品)
『快楽園の創造』

『アンディー・ウォーホル』

『T,O,U,C,H,I,N,G(タッチング)』
『対角線交響曲』(Symphonie Diagonale)
ドイツ/1924/7分
監督:ヴィキング・エッゲリング

『バレエ・メカニック』(Ballet Mécanique)
フランス/1924/11分
監督:フェルナン・レジェ

『快楽園の創造』(Inauguraition of the Pleasure Dome)
アメリカ/1954/38分
監督:ケネス・アンガー

『フリーラディカルス』(Free radicals)
フランス/1958/5分
監督:レン・ライ

『アンディー・ウォーホル』(Andy Warhol)
アメリカ/1965/22分
監督:マリー・メンケン

『サーカス・ノート』(Note on the Circus)
アメリカ/1966/12分
監督:ジョナス・メカス

『T,O,U,C,H,I,N,G(タッチング)』(T,O,U,C,H,I,N,G)
アメリカ/1968/12分
監督:ポール・シャリッツ

ラングロワは、前衛映画の収集、紹介にも力を注いだ。このパートでは、1920年代の作品と、アンダーグラウンド映画とも呼ばれた、ケネス・アンガー、ジョナス・メカスらの作品などを上映。
『ラングロワの影』(L'Ombre de Langlois)
フランス/1971/7分
監督:ピエール・カスト

『市民ラングロワ』(Citizen Langlois)
フランス/1995/69分
監督:エドガルド・コザリンスキー

シネマテーク・フランセーズで働き、映画監督となったカストとコザリンスキー。このパートでは、ラングロワを知る2人が撮ったドキュメンタリーによって、ラングロワ自身に焦点をあわせる。
『王手飛車取り』

『ブルー・ジーンズ』
『王手飛車取り』(Le Coup du berger)
フランス/1956/28分
監督:ジャック・リヴェット

『ブルー・ジーンズ』(Blue jeans)
フランス/1958/22分
監督:ジャック・ロジエ

『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』(Charlotte et Véronique,ou tous les garçons s'appellent Patrick)
フランス/1959/21分
監督:ジャン=リュック・ゴダール

『愛は存在する』(L'Amour existe)
フランス/1960/21分
監督:モーリス・ピアラ

『パリ、ある冬の日』(Paris, un jour d'hiver)
フランス/1965/9分
監督:ギイ・ジル

シネマテーク・フランセーズで映画を学び、批評家を経て映画監督になったヌーヴェルヴァーグの監督たち、そしてラングロワが積極的に取り上げた若手監督たち。このパートでは、'ラングロワの子供'ともいえる監督たちの短編を上映。
『リュミエール兄弟初期作品集』
フランス/1895-96/14分
監督:オーギュスト&ルイ・リュミエール

『ルイ・リュミエール』(Louis Lumière)
フランス/1968/65分
監督:エリック・ロメール

「工場の出口」「赤ん坊の食事」「水をかけられた散水夫」など、映画の誕生を告げたリュミエール兄弟の初期作品のアンソロジーを上映。「ルイ・リュミエール」では、エリック・ロメールがルイ・リュミエールについて、ジャン・ルノワールとアンリ・アングロワにインタビューし、その対話は「映画とは何か」という問いにまで及ぶ。
『水晶の揺籠』(Le Berceau de cristal)
フランス/1976/80分
監督:フィリップ・ガレル

ヌーヴェルヴァーグ以後の監督の中で、ラングロワと強いつながりを持った監督の一人、フィリップ・ガレル。1970年代のガレル作品のミューズともいえるニコの主演で、シャイヨー宮時代のシネマテーク・フランセ―ズの美術館で撮影された唯一の劇映画。
【若手監督特集】

『ハッピーアワー』(Happy Hour)
日本/2015/317分
監督:濱口竜介

30代も後半を迎えた、あかり、桜子、芙美、純の4人は、なんでも話せる親友同士だと思っていた。純が1年にわたる離婚協議を隠していたと知るまでは......。中学生の息子がいる桜子は、多忙な夫を支えながら家庭を守る平凡な暮らしにどこか寂しさを感じていた。編集者である夫をもつ芙美もまた、真に向き合うことのできないうわべだけ良好な夫婦関係に言い知れぬ不安を覚えていた。あかりはバツイチ独身の看護師。できの悪い後輩に手を焼きながら多忙な日々を過ごし、病院で知り合った男性からアプローチを受けるも今は恋愛をする気になれずにいる。

純の現状を思わぬかたちで知った彼女たちの動揺は、いつしか自身の人生をも大きく動かすきっかけとなっていく。つかの間の慰めに4人は有馬温泉へ旅行に出かけ楽しい時を過ごすが、純の秘めた決意を3人は知る由もなかった。やがてくる長い夜に彼女たちは問いかける。

--私は本当になりたかった私なの?
『不気味なものの肌に触れる』(Touching the skin of eeriness)
日本/2013/54分
監督:濱口竜介

千尋(染谷将太)は父を亡くして、腹違いの兄・斗吾(渋川清彦)が彼を引き取る。斗吾と彼の恋人・里美(瀬戸夏実)は千尋を暖かく迎えるが、千尋の孤独は消せない。千尋が夢中になるのは、同い年の直也(石田法嗣)とのダンスだ。しかし、無心に踊る彼らの街ではやがて不穏なできごとが起こりはじめる...。
『シミラー バット ディファレント』(Similar but different)
日本/2013/25分
監督:染谷将太

とある女と男。車の中、部屋の中と、同じ時間と空間を共有するふたりは、ある朝にそれぞれの道へと歩いていく。お互いに旧友と再会するも、もの憂げな表情を浮かべる女と、どこか心ここに在らずといった男。綾織りのように絡み合う人間関係が、タバコの灯りに照らされながら描かれる。
『螺旋銀河』(Antonym)
日本/2014/73分
監督:草野なつか

美人だが自分本位な性格で友だちのいない綾(石坂友里)は、OL勤めの傍らでシナリオ学校に通っている。ある日、綾の原稿が学校課題のラジオドラマに選ばれるが、今のシナリオでは不十分で共同執筆者を立てることが放送の条件だと講師に言われてしまう。負けず嫌いな綾は、会社で偶然言葉を交わした同僚・幸子(澁谷麻美)の地味でおとなしい性格に目をつけ、共同執筆者に仕立て上げようとする。華やかな綾に憧れ過剰に接近して行く幸子は、綾と同じような服装をして行きつけのカフェに突然現れ、さらにはラジオドラマのシナリオにも「役に立てれば...」と口を出すようになる。そんな幸子を鬱陶しく思う綾。そして二人のことを知る寛人(中村邦晃)の出現により困惑を深める綾と幸子の関係性は、シナリオ朗読によるラジオドラマの収録を通して、思いもよらぬクライマックスへとひた走る―。
『Dressing Up』(Dressing Up)
日本/2012/68分
監督:安川有果

桜井育美は父親とふたり暮らしの 中学一年生。授業で「将来の夢」に ついて考えるという課題が出ても、 自分の未来を想像することができな い。「母親のような立派な人になりた い」というクラスメイトの発言を聞 いた育美は、幼いころに死んだ母親 がどういう人だったのか興味を持ち はじめる。やがて育美は、父親がず っと隠していた母親の過去を知って しまう。けっして開けてはならない 箱を開けてしまった少女。この世界 で生き抜くために、愛を求めてさまよう彼女の見たものとは――
『talk to remember』(Talk to remember)
日本/2015/30分
監督:野原位

香葉子は自殺した弟の死の真相を知るため、弟の恋人であった瑞希のもとを訪ねる。初対面の2人は牽制し合い、真夏の山道を彷徨い歩く。ちぐはぐな会話は、解きほぐされては紡がれていく。「信之の指、覚えてる?」−やがて2人の記憶がゆっくりと、弟の、そして恋人の死の事件へと向かい始める時、激しく柔らかな交感の時間が訪ずれる。
『Day』(Rives)
フランス/2011/78分
監督:アルメル・オスティウ

パリのある一日、三人の登場人物。お互いを知らず、また知り合うこともないが、皆それ­ぞれ閉塞感を抱えて生きている。ふとしたきっかけで都会の狭間に紛れ込んだ三人は、未­知の自分に出会う。日常に潜む異質なものへの共感を丁寧な眼差しで描くオスティウ監督­の初長編監督作。
『カウズ・ライフ』(A Cow's Life)
フランス/2011/62分
監督:エマニュエル・グラ

あなたは牛のことをじっと見たことがあるだろうか。 草原で寝そべり,平和そうに草を食べている牛たち 彼らが一日中何をしているか考えたことはあるだろうか。 そもそも彼らは何かを考えているのだろうか。 何かを感じているのだろうか。 批評家も絶賛し,数々の賞を取ったドキュメンタリー「カウズライフ―牛の生活」 この作品を通して,大きく一見おとなしく見える彼らの知られざる世界を垣間見ることが­できる。
『Motu Maeva』(Motu Maeva)
フランス、ポルトガル/2014/42分
監督:モーレン・ファゼンデイロ

モトゥ・マエバ島の自らが建てた小屋に住む、20世紀の冒険家・ソニア アンドレの記憶をたどった旅。時系列や特定の道筋に沿うことなく、1950年代から1970年代の間にスーパー8mmフィルムによって捉えられたイメージと、女性のナレーションや地図とともに、チャドからインドシナそしてタヒチへの絶え間ない活動を追っている。
『私がソニアの庭で働いているとき、池のそばの二本の木の間にかけられた一つの輪に、私は気付きました。私は興味をひかれました。ソニアは教えてくれました。誰も池の向こう側にある美しいポプラの木に気を留めないから、その輪がそこにあるのだと。だからあの輪は、どこを見るべきかを指し示すために、そこにあったのです。そのときに、私は彼女の庭を撮影するというアイデアを思いつき、撮影を決めました。ソニアを生き生きと描き出すためには、たくさんのディテールとともに彼女が形づくった場所を、描写しなければなりませんでした。彼女はよくこう言ったものでした。「ここの庭師は自由を提供しているの。みんな好きなようにやっていいのよ。」私は彼女の誘いを言葉通りに受け取りました。』
『トリオ』(Trio)
2014/14分
監督:ユ・デオル

深夜の駐車場。車から降りない1人の男がいる。男はしばらく考えに浸った後、助手席からバイオリンを取り出す。彼が奏でるバイオリンの音色が、ラジオから流れる弦楽三重奏と合わさり、駐車場を満たしていく。
【ヒロシマEYE】

『鏡の女たち』(Femmes en miroir)
日本/2002/129分
製作:グループコーポレイション、現代映画社、ルートピクチャーズ、グループキネマ東京
プロデューサー:成澤章、綾部昌徳、高橋松男
監督・脚本:吉田喜重
撮影:中堀正夫
照明:佐野武治
美術:部谷京子
音楽:原田敬子、宮田まゆみ
編集:吉田喜重、森下博昭
録音:横溝正俊
出演:岡田茉莉子、田中好子、一色紗英、室田日出男、西岡徳馬、山本未来、北村有起哉、三条美紀、犬塚弘
『太陽が落ちた日』(The day the Sun Fell)
2015/78分
監督:ドメーニグ綾

若き内科医として原爆投下のその日から広島赤十字病院で被爆者を治療した祖父の足跡を辿っていくうちに監督は当時、同じような体験をした看護師と医師にめぐり会う。監督の祖父は生涯を通じて決して自らの体験を語る事はなかったが登場人物たちとの出会いによって祖父に近づいていく。2011年3月11日、福島の原発事故により監督の探索の旅は新たな局面を迎えることになる。
短編映画特集『カティア』『She, Who Excels in Solitude』(Katya / She, Who Excels in Solitude)
監督:上綱麻子

『カティア』
ニューヨークの空港で若いロシア人売春婦カティアを拾った旧ロシア人タクシー運転士ビクター。彼女の肢体に彫られた奇妙な数字の刺青が「座標」を示すものだと見破った元ソ連潜水艦航海士の彼に、30年前に潜水艦K129とともに姿を消した親友ミハイルの面影が再び蘇る。

『She, Who Excels in Solitude』
1961年、宇宙開発競争の最中、世界初の女性宇宙飛行士を目指す一人の女性が、夢を諦めようとしている看護婦に出会う。実話を元に描かれた作品。
『折鶴 ~ Orizuru 2015 ~』(Orizuru)
監督:曽原三友紀

アメリカに移住した小学5年生のさとし。
カルチャーギャップでなかなか現地校の生徒との関係がうまくいかない。
ある日二人は近所に住むリチャードブルーナー氏から「折鶴の折り方と介添えとしてハワイの平和式典へ同行してほしい」との依頼を受けるさとしと百合子。
戸惑う中、気分転換にとハワイ行きを決め向かう。ハワイで待っていたのは なんとあの「禎子と千羽鶴」の本物の禎子鶴だったのだ。
リチャード氏と禎子鶴との関係は??
禎子鶴によって導かれた人々との出会いや体験を通して成長していくストーリー。
『Manda-la in Hiroshima』(Manda-la in Hiroshima)
監督:倉増和真

本作品は、2014年の夏に広島の原爆ドーム前で撮られた一枚の写真をめぐるドキュメンタリーである。写真家の宇佐美雅浩氏は、日本各地の社会問題を独自の視点で写真におさめる「Manda-la」というプロジェクトを行っている。2014年の夏、宇佐美氏は「広島」の写真を撮影するために、広島市を訪れる。しかし、広島の原爆ドームの前で写真を撮ることは容易なことではなかった。困難をひとつひとつ乗り越えながら進んでいったプロジェクト。写真はどのように撮られたのだろうか。また、原爆投下から70年の節目の今年、人々は宇佐美氏の写真をどのように受け止めたのだろうか。




第2回広島国際映画祭 HIFF2015について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





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