伊藤高志映画回顧展

実験映画作家、伊藤高志の回顧展が行なわれる。CGの特殊効果を使わずに、驚異的なコマ撮りやバルブ撮影といった、映画のアナログな特殊撮影技術にこだわった伊藤高志の80年代、90年代の映像には、その時代の空気が図らずもドキュメントされているように見える。特に、石井聰亙作品に貢献した頃の『THUNDER』『GHOST』『GRIM』といった作品には、同時代のNO NEW YORK的なヒリヒリした緊張感が張りつめ、エコノミック・アニマルと世界から揶揄され、これからバブル時代に突入して行こうとしていた日本で、犯罪都市ニューヨークの不穏な空気と通底する映像の実験が執拗に行なわれていたことの証左となっている。

本回顧展では、伊藤高志の主要な20作品が一挙上映される。11月28日(土)にはアヴァンギャルド映画作家の巨匠松本俊夫、12月5日(土)は現在注目の若手アーティスト「トーチカ」と伊藤高志のトークイベントを開催、貴重な制作秘話が明かされるという。
伊藤高志プロフィール
日本を代表する実験映画作家。九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)で松本俊夫(映像作家・『薔薇の葬列』など)に師事、在学中に発表した 処女作『SPACY』(1981)が世界中で高く評価され、以降もコマ撮り、バルブ撮影など、映画の特殊技術をアヴァンギャルドに発揮した魅惑的な映像を次々と発表し、世界中の観客を虜にしてきた。
1995年には、クレルモンフェラン国際短編映画祭(フランス)が映画誕生100年を記念した特集プログラム「短編映画の1世紀」の上映作品100本に『SPACY』 を選出。同プログラムには、他に『月世界旅行』(ジョルジュ・メリエス、1992)、『アンダルシアの犬』(ルイス・ブニュエル+サルヴァドール・ダリ、1929)など映画史に燦然と輝く名作がラインナップされている。
2009.11.20 update
2009年11月28日(土)~12月11日(金) レイトショー(連日21:00~)
会場:シアター・イメージフォーラム(東京・渋谷) Tel:03-5766-0114 http://www.imageforum.co.jp/theatre/
料金:当日一般1,500円/学生1,200円/小中高・シニア・会員1,000円
特別鑑賞1回券(前売) 1,200円 劇場窓口、チケットぴあ(Pコード:461-284)で発売
配給:ダゲレオ出版

11月28日(土)
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上映前、松本俊夫(映像作家)によるトークイベント
11月29日(日)
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11月30日(月)
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12月1日(火)
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12月2日(水)
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12月3日(木)
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12月4日(金)
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  12月5日(土)
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上映前、トーチカ(クリエイティブ・ユニット)×伊藤高志によるトークイベント
  12月6日(日)
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  12月7日(月)
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  12月8日(火)
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  12月9日(水)
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12月10日(木)
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12月11日(金)
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上映作品
プログラムA(13作品73分)
『SPACY』
1981/10分/16ミリ/モノクロ・カラー/音響:稲垣貴士
82年パリ市立近代美術館で上映/83年香港国際映画祭招待/84年イギリス・エジンバラ国際映画祭招待/85年福岡県立美術館で上映/90年ロンドン・ヤング・ジャパニーズ・シネマ招待上映/92年ポーランド・ワルシャワ現代芸術センターほか中欧3力国講演付上映(「SPACY」ほか伊藤高志作品5作上映)/93年スペイン、マドリッド映画週間招待/97年ブラジル、サンパウロ国際短編映画祭招待(『SPACY』ほか伊藤高志作品9作上映)/95年フランス、クレルモンフェラン国際短編映画祭「短編映画の1世紀」で上映された100本の中の1本に選出/パリ、ポンピドー・センター所蔵

700枚もの写真を素材としたデビュー作。日本アートフィルム界のレジェンド。
『BOX』
1982/8分/16ミリ/モノクロ&カラー/音響:稲垣貴士
90年ロンドン、ヤング・ジャパニーズ・シネマ招待上映

もし、地球が立方体だったら? 風景を閉じこめた立方体が永遠に回転する。後のCGアートにも大きな影響を与えた。
『THUNDER』
1982/5分/16ミリ/カラー/音響:稲垣貴士
83年ベルリン国際映画祭招待

雷鳴とパルスともに光線が尾を引いて走る!! 一定時間カメラのシャッターを開放するバルブ撮影で作られた作品。
『スクリュー』
1982/3分/16ミリ/カラー/サイレント

並べられた二つの映像は、テレビモニターに半分垂らしたスクリーンに8ミリを投影し再撮影したもの。
『DRILL』
1983/5分/16ミリ/モノクロ/サイレント
90年ロンドン、ヤング・ジャパニーズ・シネマ招待上映/91年オランダ、ロッテルダム国際映画祭招待

1本の柱を中心にして左右が歪み、室内のパースペクティヴが狂い始める.... アナモルフォーシス画のような不安定な空間。
『GHOST』
1984/6分/16ミリ/カラー/音響:稲垣貴士
85年オーストラリア、メルボルン「日本現代美術展」で上映/87年全オーストラリア巡回上映/92年ワルシャワ現代芸術センターほか中欧3力国講演付上映

フィルム感光速度と被写体の速度のずれが「亡霊」となる、動く心霊写真。
『GRIM』
1985/7分/16ミリ/カラー/音響:稲垣貴士
86年シカゴ・フィルムセンターを始めとして全米巡回上映

室内の様々なモノからその表皮のみが剥ぎ取られ宙を漂い他のモノに貼りつく。GRIMとは"ぞっとするような"という意味。
『写真記』
1986/3分/8ミリ/カラー/サイレント

福岡の3分間映画特集「パーソナル・フォーカス」のために制作された日記的写真のアニメーション。
『WALL』
1987/7分/16ミリ/カラー/音響:稲垣貴士
87年ニュージーランド国際映画祭招待/87年全オーストラリア巡回上映/87年ドイツ、オスナブリュック実験映画祭招待/87年ドイツ、ケルン日本文化センターで上映/89年サンフランシスコ国際映画祭招待/90年ロンドン、ヤング・ジャパニーズ・シネマ招待上映

手に持った写真のフレームの中でレンガ造りの巨大な倉庫が激しく半回転の往復運動を繰り返す。
『写真記87』
1987/3分/8ミリ/カラー/サイレント

プライベートな日々の写真を様々な技法でコマ撮りした「日記映画」。
『悪魔の回路図』
1988/7分/16ミリ/カラー/音響:稲垣貴士
91年ロンドン映画祭招待/93年スペイン、マドリッド実験映画週間招待

屋根の間から1本だけそびえ立つ60階建て高層ビルが物凄いスピードで回転する映画。
『ミイラの夢』
1989/5分/16ミリ/モノクロ/サイレント
89年ロンドン映画祭招待/90年香港国際映画祭招待

表層的な美の裏側はすべてが腐敗してしまっているという都会のイメージを映像化。
『ビーナス』
1990/4分/16ミリ/モノクロ/サイレント

顔のない母と子の光景。
プログラムB(7作品77分)
『12月のかくれんぼ』
1993/7分30秒/ビデオ
韓国、光州ビエンナーレ1995「INFOART」招待

自分の息子に時折感じる違和感を映像化した異形のホーム・ムービー
『THE MOON』
1994/7分/16ミリ/カラー/音響:稲垣貴士
95年ロッテルダム国際映画祭招待/95年カナダ、バンクーバー国際映画祭招待/95年インド、ケララ国際映画祭招待/96年ニュージーランド映画祭招待

むかし夢の中によく出てきた、月明かりに浮きあがる神秘的で不気味な風景。
『ZONE』
1995/13分/16ミリ/カラー/音響:稲垣貴士
95年ニューヨーク映画祭招待/96年ドイツ・オーバーハウゼン国際映画祭優秀賞受賞/96年オーストラリア・ブリスベン国際映画祭招待/95年カナダ、バンクーバー国際映画祭招待/96年フィンランド、タンペレ国際短編映画祭招待/96年ニュージーランド映画祭招待/96年ドイツ、ヨーロピアン・メディア・アート・フェスティバル招待。

白い部屋の中で手足を縛られた顔のない男が小刻みに震え、悪夢のように奇妙な事が次々と起こる。
『ギ・装置M』
1996/6分/16ミリ/カラー/サイレント/出演:森村泰昌
97年アメリカ、ワシントンDCレズビアン&ゲイ・フェスティバル招待/97年オランダワールドワイド・ビデオ・フェスティバル招待/97年アメリカ、オリンピア映画祭招待/97年オーストラリスブリスベン国際映画祭招待

96年4月6日一6月9日に横浜美術館で開催された、森村泰昌展のために制作された。「7年目の浮気」のマリリン・モンローに扮した森村泰昌をモデルに撮影。
『モノクローム・ヘッド』
1997/10分/16ミリ/カラー/音響:稲垣貴士
97年韓国、釜山国際映画祭招待/97年バンクーバー国際映画祭招待/97年アメリカ、オリンピア映画祭招待/98年ロッテルダム国際映画祭招待

静かな狂気とスピードに満ちた、伊藤高志の新境地を切り開いた傑作。
『めまい』
2001/16ミリ/カラー/11分/音響:木津裕史
03年ロッテルダム国際映画祭招待

投身自殺を目撃した二人の女の子の壊れた心の状態を描く。
『静かな一日・完全版』
2002/ビデオ/カラー/20分/音響:稲垣貴士
03年ローザンヌ・アンダーグラウンド・フィルム&ミュージック・フェスティバル実験映画最高賞受賞

生と死の間を揺れ動く不安を映画にしようとする少女。この悪夢は現実なのか映画なのか....
<関連情報>2009年12月18日 DVD「伊藤高志映画作品集」発売!!
DVD特典:映像インスタレーション「恋する虜 -The Dead Dance」(09)記録映像/公演「DOUBLE/分身」(01/ダンス:山田せつ子/映像・構成:伊藤高志)記録映像ほか
発売・販売:ダゲレオ出版 TEL:03-5766-1119
DAD09041/4,935円(込)/本編150分+特典/カラー、B+W/片面一層2枚組/JAN4529905209418


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