ゲンスブールと女たち



女、女、女、女、女たち!というめくるめく官能の映画かと思って見始めると、ロシア系ユダヤ人の両親に愛されて育ちながらも、ナチスが支配するヴィシー政権下のパリの屈辱が、少年時代のゲンスブールに大きなトラウマを与えたであろうことが、本職がバンドテシネ作家であるという監督らしい独特な絵作りで描かれていく冒頭から、彼の人生のミステリーに引き込まれていく。ゲンスブールの早熟な少年時代から、画家を目指したが挫折し、ボリス・ヴィアンやジュリエット・グレコと出会い音楽の才能を認められていく青年時代、才能が開花し、バルドーと熱愛する黄金時代、そして、ジェーン・バーキンとの出会い、、、魅力的な女たちに愛し、愛され、それでも、少年時代のトラウマを生涯引きずったゲンスブールの祖国フランスに対する複雑な思いも映画に繊細に染み込ませて描くジョアン・スファール監督によるゲンスブールのポートレートは、対象への愛に満ちている。ガラスのようなあやうさでジェーン・バーキンを演じたルーシー・ゴードンが本作撮影終了後に自殺してしまったことが何とも無念だが、音楽プロデューサを嬉々として演じるクロード・シャブロル監督の強烈な存在感が凄まじく、それだけでも必見!の一作である。
(上原輝樹)
2011.5.20 update


『ゲンスブールと女たち』
www.gainsbourg-movie.jp
5月21日(土)、Bunkamuraル・シネマ、新宿バルト9他にて全国ロードショー

監督:ジョアン・スファール
出演:エリック・エルモスニーノ、ルーシー・ゴードン、レティシア・カスタ、ダグ・ジョーンズ、ミレーヌ・ジャンバノワ、アナ・ムグラリス、ヨランド・モロー、サラ・フォレスティエ、クロード・シャブロル
(2010年/フランス・アメリカ/フランス語/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル・DTS/2時間2分)

配給:クロックワークス
原題:GAINSBOURG(Vie heroique)
©2010 ONE WORLD FILMS-STUDIO37-UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL FRANCE - FRANCE 2 CINEMA - LILOU FILMS - XILAM FILMS
『ゲンスブールと女たち』の公開を記念して、渋谷のカフェレストラン「ドゥ マゴ パリ」で彼の人生を彩った「女たち」(ジェーン・バーキン、ブリジット・バルドー、カトリーヌ・ドヌーヴ、フランス・ギャル、ジュリエット・グレコ、バンブー、ヴァネッサ・パラディ、娘のシャルロット・ゲンスブール・・・)満載の写真展が行なわれ、併せて、ゲンスブールの写真集「馬鹿者たちのレクイエム」が発売される。

「馬鹿者たちのレクイエム」
Pヴァイン・ブックス
¥2,940(税込)
バーキン、バルドー、バンブー、そして娘シャルロットへの愛と調教、TVで本物の500フラン紙幣を燃やした瞬間。ポップス業界で30年間ヒット曲を量産しては破壊しつづけた男が語る型破りな作詞作曲法、常識はずれな映画の撮影秘話切っても切れない酒、煙草、セックスに関する病的で挑発的な告白。彼の奔放かつ破滅的人生を、貴重な写真とともに本人の発言を織り交ぜながら振り返る豪華クロニクル・ブック。


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