クロード・シャブロル監督特集



2010年9月12日、惜しくもこの世を去った映画監督クロード・シャブロルは、キャリアの初期にジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、エリック・ロメール、ジャック・リヴェットと共にフランスのヌーヴェル・ヴァーグを代表する作家として活躍し、生涯で54本もの長篇作品を遺した。手の空いた時にはテレビ番組の演出等も手掛けるなど、総じて多作の映画作家だったと言って良いだろう。しかし、遺作となった『刑事ベラミー』の日本公開もまだ正式にアナウンスされていないという事実が示すように、2000年以降の日本での劇場公開は『石の微笑』の僅か1作品に留まっていた。そんな状況を一変させるきっかけになったのが、監督の逝去だったことは如何にも複雑な気持ちにさせられる。film comment誌に「海面上の"波"を作りだすことよりも、海底を深く暗く流れる"潮流"を見つめることにより魅せられた」と評されるその生涯を通じて、シャブロルはどのような映画を遺したのか、『引き裂かれた女』の公開に続いて、見逃すわけにはいかない特集上映が、今、正に様々な価値観が根底から揺らぎ、大きな地殻変動が起きつつある街、東京を舞台に始まろうとしている。
2011.4.6 update
『引き裂かれた女』
4月9日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開後、全国順次公開
公式サイトwww.eiganokuni.com/hiki
出演:リュディヴィーヌ・サニエ、ブノワ・マジメル
2007年/フランス/1時間55分
配給:紀伊國屋書店、マーメイドフィルム
配給協力:(社)コミュニティシネマセンター

【特集上映】

「映画の國 名作選クロード・シャブロル未公開傑作選」
『甘い罠』『最後の賭け』『悪の華』の3本が同時公開!!
5月21日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて3週間限定ロードショー
http://www.eiganokuni.com/meisaku2-chabrol/

『最後の賭け』
1997年/フランス/105分/カラー
出演:イザベル・ユペール、ミシェル・セロー、フランソワ・クリュゼ

1970年代後半以降、シャブロル作品のミューズとなったイザベル・ユペール 『8人の女たち』『ピアニスト』と演技派ミシェル・セロー『とまどい』『クリクリのいた夏』の2人が詐欺師を演じる本作は、監督お得意のクールな 心理サスペンスがなりをひそめ軽妙さとブラック・ユーモアを前面に出した異色の犯罪スリラー。 マフィアの金に手を付けた詐欺師コンビの運命はいかに?雪山のスイス、南国のアンティル諸島等、 多彩なロケ撮影と巧みなストーリーテリングで最後まで目が離せない快作。
『甘い罠』
2000年/フランス/100分/カラー
出演:イザベル・ユペール、ジャック・デュトロン、アナ・ムグラリス 

アメリカの作家シャーロット・アームストロングの「見えない蜘蛛の巣」を基に作られた本作は、 心の深奥にひそむ善と悪の葛藤をクールに描いた犯罪心理ドラマの傑作。 平和なブルジョワ家庭が薄皮を剥がすように崩壊していく物語を淡々と描写しながら、 クライマックスでは見るものを慄然とさせるサスペンスの技巧は正にシャブロルの独断場。 リストのピアノ曲「葬送」を始めとしたクラシック音楽の隠喩的使用と ヒロイン役ユペールの完璧な演技は圧巻の一語!

『甘い罠』レビュー 2011.5.23 update
『悪の華』
2003年/フランス/104分/カラー
出演:ナタリー・バイ、ブノワ・マジメル、ジュザンヌ・フロン

第2次大戦末期ドイツ占領下での悪夢の記憶を脈々と受け継ぐブルジョア一族。 一見優雅で平安に満ちた家族に1枚の中傷ビラが波紋を投げかける。 物語の進行につれて徐々に暴かれる韓流ドラマ以上に複雑で謎めいた血縁関係や ブルジョア階級の退廃的なモラルを悪意に満ちた眼差しで映しとる演出は監督のお家芸。 階段場面のドラマチックさはヒッチコック通のシャブロルならでは。 ギリシャ悲劇的な格調の高さをもった超一流のサスペンスに胸躍る。
フランス映画祭2011年特別企画シャブロル特集
6月25日(土)〜7月17日(日)ユーロスペース、東京日仏学院にて上映

【トークショー】
『不完全さの醍醐味 クロード・シャブロルとの対話』(清流出版)刊行記念
滝本誠(映画評論家)×大久保清朗(映画研究家、本書翻訳)トークショー
「シャブロルという名の快楽」

日 時:2011年4月9日(土)15:00~17:00(14:30開場)
参加費:1,500円(当日精算)
予約制:電話または店頭にて受付 Tel.03-3408-9482
    ※60名様になり次第締切り
電話予約受付:火~土曜 12:00~20:00
会 場:Bibliothèque(ビブリオテック)
http://www.superedition.co.jp/biblio/event/2011/0409.html
【UStream 配信】
『引き裂かれた女』公開記念トーク

第1回(録画)
http://www.ustream.tv/recorded/13641552
樋口泰人(映画評論家・爆音映画祭・boid主宰)、山下宏洋(イメージフォーラム支配人)、進行:小倉聖子(VALERIA・映画宣伝)

第2回(録画)
http://www.ustream.tv/recorded/13680902
猫沢エミ(ミュージシャン)、川口潤 (映画監督『77boadrum』『kokorono』)、進行:小倉聖子(VALERIA・映画宣伝)

第3回(録画)
http://www.ustream.tv/recorded/13791048
ゲスト:屑山屑男(TRASH-UP!!編集長)、真魚八重子(映画ライター)、岡本敦史(映画ライター)、進行:小倉聖子(VALERIA・映画宣伝)

第4回(録画)
http://www.ustream.tv/recorded/13832700
ゲスト:佐向大(映画監督『ランニング・オン・エンプティ』)、大嶺洋子(リトル・モア編集者)、進行:小倉聖子(VALERIA・映画宣伝)
【DVD】

『肉屋』『不貞の女』『女鹿』発売中!(発売元:スターライトフィルムズ、販売:紀伊國屋書店)

『肉屋』
1970年/フランス、イタリア/イーストマンカラー(1:1.85)/89分/フランス語2ch/日本語字幕/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
出演:ステファーヌ・オードラン、ジャン・ヤンヌ、アントニオ・パッサリア

心に闇を抱えた男女が紡ぎ出す、悲痛で奇妙な愛の物語。
『不貞の女』
1969年/フランス、イタリア/イーストマンカラー(1:1.66)/94分/フランス語2ch/日本語字幕/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
出演:ステファーヌ・オードラン、ミシェル・ブーケ、モーリス・ロネ

緊密で抑制されたシャブロルの演出が堪能できる傑作スリラー。
『女鹿』
1968年/フランス、イタリア/イーストマンカラー/95分/フランス語2ch/日本語字幕/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
出演:ステファーヌ・オードラン、ジャクリーヌ・ササール ほか

対照的な二人の女が織り成す、ミステリアスでエロティックなパワーゲーム。

『主婦マリーがしたこと』『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』初DVD化 6月8日発売(発売・販売元:キングレコード)

『主婦マリーがしたこと』
1988年/フランス/カラー/108分/フランス語2ch/日本語字幕/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
出演:イザベル・ユペール、フランソワ・クリュゼ、マリー・トランティニャン、ドミニク・ブラン

ギロチンへの道。罪を犯すごとに彼女が美しくなってゆくのは、何故なのか...?

第二次世界大戦中、ナチ占領下のノルマンディで、子育てをしながら、戦地からの夫の帰りを待っている平凡な主婦マリー。裕福とは程遠い生活をしていたが、ある日彼女に転機が訪れる。隣の奥さんの堕胎を手伝ったのだ。当時は堕胎は法律で禁じられていた。つまり、犯罪だった。それを分かっていながらも、手伝ったお礼に蓄音機を貰ったことに味をしめるマリー。マリーは自分の隠れていた意外な能力、すなわち堕胎の技術を見出し、にわか堕胎医として仕事にしようと決意する。やがて、戦地から夫が戻って来るも夫婦仲は既に修復不可能な程に冷え切っており、同時にふとしたきっかけでリュシーという娼婦が居候として転がり込んでくる。その日を境にそれまでの貧乏生活をから一変、マリーの生活は変わり、夫に一切頼ることなく収入を得て、どんどん経済力と生活力を付けていき、裕福に、そして綺麗に、妖艶にすらなっていく。マリーが輝いていく一方で、夫はヒモ状態に陥る。だが、その家庭内自立がマリーを思わぬ悲劇へと招いていく...。
『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』
1995年/フランス/カラー/111分/フランス語2ch/日本語字幕/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
出演:イザベル・ユペール、サンドリーヌ・ボネール、ジャクリーン・ビセット、ヴィルジニー・ルドワイヤン、ジャン・ピエール・カッセル

見えない敵意、ひびわれゆく日常。全ての歯車が、惨劇に向けて回り始めた...。

裕福なカトリーヌ家に家政婦として雇われたソフィー。仕事ぶりは完璧で真面目で善良そうなソフィーに一家は大満足するが、実は彼女には誰にも知られたくない、ある"秘密"があった。その"秘密"が暴かれることを死ぬほど恐れ怯えるソフィーは、何事にも無関心・無表情を装い続けていた。そんな彼女の唯一の友人となったのが、豊かさへの羨望と憎悪を持つジャンヌ。二人は奇妙な友情を育む。そんなある日、カトリーヌ家の善意により、ついにソフィーの"秘密"が暴かれ、発覚してしまう...。それを契機に、ソフィーとジャンヌの友情はカトリーヌ家への激しい敵意となり、やがて殺意となる。それは一家を破滅へと導く、壮絶な惨劇の幕開けだった。
【クロード・シャブロル フィルモグラフィ】

『美しきセルジュ』(1958)
『いとこ同志』(1959)
『二重の鍵』(1959)
『気のいい女たち』(1960)
『ダンディ』(1960、放映題)
『貪欲の罪』(『新・七つの大罪』の一篇、1962)
『悪意の眼』(1961、映画祭題)
『オフェリア』(1963、特殊上映題)
『エッフェル塔を売った男』(『世界詐欺物語』の一篇、1964)
『青髭』(1963、ビデオ題)
『虎は新鮮な肉を好む』(1964)
『ラ・ミュエット』(『パリところどころ』の一篇、1965)
『ジャガーの眼』(1965)
『スーパータイガー 黄金作戦』(1965)
『境界線』(1966、日本未公開)
『殺意』(1967)
『コリントの道』(1967、日本未公開)
『女鹿』(1968)
『不貞の女』(1968、DVD題)
『野獣死すべし』(1969、日本未公開)
『肉屋』(1970、DVD題)
『破局』(1970、日本未公開)
『夜の直前』(1971、日本未公開)
『ジャン=ポール・ベルモンドの交換結婚』(1972)
『血の婚礼』(1973、日本未公開)
『ナーダ』(1974、日本未公開)
『お楽しみ』(1975、日本未公開)
『汚れた手をした無実の人々』(1975、日本未公開)
『魔術師たち』(1976、日本未公開)
『ブルース・ダーンのザ・ツイスト』(1976、ビデオ題)
『アリスまたは最後の家出』(1977、日本未公開)
『刑事キャレラ 血の絆』(1978、ビデオ題)
『ヴィオレット・ノジエール』(1978、日本未公開)
『誇りの馬』(1980、日本未公開)
『帽子屋の幻影』(1982、日本未公開)
『他人の血』(1984、ビデオ・DVD題)
『若鳥のヴィネガー煮込み』(1985、日本未公開)
『刑事ラヴァルダン』(1986、日本未公開)
『仮面』(1987、日本未公開)
『ふくろうの叫び』(1987)
『主婦マリーがしたこと』(1988)
『クリシーの静かな日々』(1990)
『Dr.M/ドクトル・エム』(1990、ビデオ題)
『ボヴァリー夫人』(1991)
『ベティ』(1992、日本未公開)
『ヴィシーの眼』(1993、日本未公開)
『愛の地獄』(1994)
『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』(1995)
『最後の賭け』(1997、日本未公開)
『嘘の心』(1999)
『甘い罠』(2000、日本未公開)
『悪の華』(2003、日本未公開)
『石の微笑』(2004)
『権力の陶酔』(2006、日本未公開)
『引き裂かれた女』(2007)
『刑事ベラミー』(2009、映画祭題)


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