第14回東京フィルメックス【特別招待作品】

第14回東京フィルメックス
2013年11月23日(土・祝)~12月1日(日)@有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇、ヒューマントラストシネマ有楽町
公式サイト http://filmex.net/2013/
上映スケジュール
上映プログラム
【特別招待作品】

オープニング作品
『罪の手ざわり』
(A Touch of Sin / 天注定)
中国、日本 / 2013 / 129分 
監督:ジャ・ジャンクー
配給:ビターズ・エンド、オフィス北野
 

ジャ・ジャンクーにとって『長江哀歌』(06)以来7年ぶりの長編劇映画となる『罪の手ざわり』は、山西省、重慶、湖北省、広東省で実際に起こった4つの事件に基づき、急激に変貌する中国社会の中でもがき苦しみながらもひたむきに生きる人々をパワフルかつ美しく描いた作品だ。公共の炭鉱を私物化する人々に憤る男。妻と子には「出稼ぎ」だと偽って各地を渡り歩きながら犯罪を繰り返す男。顧客からいわれのない侮辱を受けるサウナの受付係の女。単調な工場労働に飽き、歓楽街に身を投じ同い年のダンサーと恋に落ちる青年。中国が直面する様々な問題を内包した4つの物語は微妙に連携し、時には暴力的な手段に訴えざるをえない中国の庶民の現状を浮き彫りにする。その見事な構成が評価され、カンヌ映画祭脚本賞を受賞した。 

11/23(土・祝) 15:30
クロージング作品
『THE MISSING PICTURE(英題)』
(THE MISSING PICTURE / L'Image Manquante)
カンボジア、フランス / 2013 / 95分 
監督:リティ・パニュ
配給:アステア
 

1970年代後半、ポル・ポト政権下のカンボジアでは音楽や映画が禁止され、多くの映像が廃棄処分となったという。『THE MISSING PICTURE』は、その時代に少年期を過ごし、両親を始め多くの親族を失ったリティ・パニュが自らの体験を語りつつ、失われた映像を取り戻そうとした試みとも言える作品である。この試みのため、丹念に彩色された土人形をジオラマ風に配置し、当時の庶民の生活が再現される。それはある時は華やかな街頭の風景であり、ある時は陰惨な収容所である。更にパニュは、当時の政治的プロパガンダ映像を導入し、それを人形たちの映像と巧みに構成する。テーマの重さと技術的洗練さとが絶妙に絡み合った傑作である。カンヌ映画祭「ある視点」部門最優秀賞受賞。

11/30(土) 18:00
『微笑み絶やさず』(Ongoing Smile / Ongoing Smile)
UK / 2013 / 52分 
監督:モフセン・マフマルバフ
 

1996年に釜山映画祭を創設し、2010年に勇退するまでディレクターを務めたキム・ドンホ(現在は名誉ディレクター)にイラン映画の巨匠、モフセン・マフマルバフが密着したドキュメンタリー。釜山映画祭の"顔"であると同時に韓国映画界からの尊敬を集め、ディレクター勇退後も様々な活動を続けるキム・ドンホの日常生活が、彼をよく知る人々へのインタビューを交えながら描かれる。初めて映画監督に挑戦した短編映画『Jury』(12)の撮影現場が見られるのも興味深い。2011年に急逝したサンパウロ映画祭前ディレクター、レオン・カーコフへのオマージュとして、カーコフが製作・主演した2本の短編映画『可視から不可視へ』(08)、『イェレバン』(12)を併映する。
『可視から不可視へ』(From Visible to Invisible / Do Visível ao Invisível)
ブラジル / 2008 / 4分 
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ


携帯電話を題材として、現代社会を鋭くコミカルに風刺する短編。サンパウロ映画祭によって製作され、当時のディレクターであった故レオン・カーコフが主演している。(第9回東京フィルメックスで上映)
『イェレバン』(Yerevan / O visível)
ブラジル / 2012 / 10分 
監督:アトム・エゴヤン
 

アルメニアの首都イェレバンの中心にある広場に一人の男が立っている。男の目的は消息不明となった祖父の足跡をたどるためだった......。約100年前、オスマン帝国下で起こったアルメニア人虐殺の事実を静かに訴えかける短編。

11/23(土・祝) 19:10 11/25(月) 12:30
『わたしの名前は...』(My Name is Hmmm... / Je m'appelle Hmmm...)
フランス / 2013 / 121分 
監督:アニエス・トゥルブレ(アニエスベー)


ファッション・デザイナーであり、映画製作も手がけてきたアニエスベーの監督デビュー作は、11歳の少女を主人公とする瑞々しいロードムービーだ。家庭環境の中で心に傷を負った少女は、学校の遠足で出かけた海辺に偶然停まっていた長距離トラックに潜り込む。かくして、スコットランド人のトラック運転手と少女の旅が始まる。少女の目の前には新しい世界が開けるが、彼女のこの行動は思わぬ波紋を呼ぶことになる......。少女が海辺を訪れた時、映画の空気が一変する。この描写の力に非凡さを感じない者はいないだろう。『ジダン/神が愛した男』(06)を監督したダグラス・ゴードンが運転手を好演している。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。

11/28(木) 21:20 11/30(日土) 10:00
『鉄くず拾いの物語』(An Episode in the life of an Iron Picker / Epizoda u zivotu beraca zeljeza)
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、フランス、スロベニア / 2013 / 74分 
監督:ダニス・タノヴィッチ


ボスニア・ヘルツェゴヴィナのロマ民族の村に住むナジフは体に変調をきたした身重の妻セナダを病院に連れてゆく。セナダには至急手術が必要なことがわかるが、保険証を持っていないため、ナジフの鉄くず拾いの仕事では到底払えないような費用を病院側から要求される......。ダニス・タノヴィッチの監督第5作である本作は、実際に起こった事件をその当事者たちを俳優として起用し、9日間という短期間で一気に撮り上げた作品である。ドキュメンタリーと見まがうかのようなリアリズムの中に経済格差、民族差別など東欧が直面する様々な社会問題を浮き彫りにするこの力作は、ベルリン映画祭で審査員グランプリ、男優賞、エキュメニカル賞特別賞の3賞を受賞する栄誉に輝いた。

11/29(金) 19:00
『アナ・アラビア』(ANA ARABIA / ANA ARABIA)
イスラエル、フランス / 2013 / 85分 
監督:アモス・ギタイ 


テルアビブ郊外のヤッファ地区とバットヤム市の境界にある古い住宅地に若い女性ジャーナリスト、ヤエルがやって来る。ユダヤ人とアラブ人が居住しているこの住宅地で、ヤエルは住人たちに取材を始める。時の流れから取り残されたかのような雰囲気の中、ヤエルは仕事を忘れて人々の話に聞き入る......。アモス・ギタイの最新作は全編ワンカットの驚異的な長回しによって古い共同体の人間模様を見せてくれる傑作だ。ギタイがドキュメンタリーで追求してきた共生のテーマに連なる作品と言えるだろう。映画は夕方4時から5時半にかけて撮られたというが、夕暮れの微妙な光の変化をとらえた撮影は見事という他ない。ヴェネチア映画祭コンペティションで上映。

11/24(日) 10:10 11/30(土) 21:20
『閉ざされたカーテン』(Closed Curtain / Pardé)
イラン / 2013 / 106分 
監督:ジャファル・パナヒ&カンボジヤ・パルトヴィ


カスピ海沿岸の別荘で一人の作家が執筆活動を行っている。別荘には愛犬がいるだけだ。そこに一組の男女が訪ねてくる。兄妹であるというその二人は、政府当局に追われ、逃げ場を探しているという。やがて、兄は車を探しに出てゆき、作家は妹をかくまう羽目になる......。政府によって映画製作を禁止されているはずのジャファル・パナヒが『これは映画ではない』に続いて発表した新作『閉ざされたカーテン』は、見る者に様々な問いを投げかける作品だ。共同監督も務めた盟友カンボジア・パルトヴィ演じる作家をめぐる物語は、パナヒその人がおもむろに画面に登場した瞬間から大きく揺れ動き、観客に刺激的な映画体験を与えてくれる。ベルリン映画祭脚本賞受賞。

11/29(金) 21:20 12/1(日) 15:00
『ピクニック』(Stray Dogs / 郊遊)
台湾 / 2013 / 138分 
監督:ツァイ・ミンリャン


台北の郊外に暮らす父親と二人の子供たち。父親は新興住宅地をPRする看板を掲げて街頭に立つ仕事でわずかな金を稼ぎ、子供たちは試食品を目当てにスーパーマーケットの食品売り場をうろつく。夜になると彼らは廃墟になった建物の中にある住みかに帰ってゆく。ある日、一人の謎めいた女性が家族の前に現れる。その日は父親の誕生日だった......。『ヴィザージュ』以来4年ぶりとなるツァイ・ミンリャンの長編作品は、その特異なスタイルが極限にまで推し進められた傑作だ。極端な長回しにも耐えるリー・カンションの演技も素晴らしい。ツァイ作品を支えてきた3人の女優が次々と登場するのも見どころだ。ヴェネチア映画祭で絶賛を受け、審査員大賞を受賞した。 

11/30(土) 13:20 12/1(日) 17:30


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