ポーランド映画祭2012



短編小説「菖蒲」を元にした物語、撮影現場ドキュメント、主演女優クリスティナ・ヤンダの独白による三重構造の、現実と虚構が織り成す、詩情豊かな傑作『菖蒲』が公開中のアンジェイ・ワイダ監督による50~60年代の名作群、その「菖蒲」の原作者でもある、ポーランドを代表する小説家・詩人として知られるヤロスワフ・イヴァシュキェヴィチ原作の『尼層ヨアンナ』、40歳の若さで急逝したアンジェイ・ムンク監督全5作品の内の4作品、そして、現在進行形で映画の最先端を疾走するスコリモフスキ監督とポランスキー監督の初期の名作が上映される「ポーランド映画祭2012」がイメージ・フォーラムで開催される。本映画祭の作品選定の監修を務めたイエジー・スコリモフスキ監督が、2011年5月以来約1年半ぶりに、息子さんの監督作品を携えて来日するというのだから、是が非でも会場に駆けつけずにはいられない。
(上原輝樹)
2012.11.21 update

イエジー・スコリモフスキ監督(監修)から日本の皆さまへ

1999年に初めて日本を訪れて以来、私は別人に生まれ変わったと言っても過言ではありません。
民族的、情緒的、倫理的、文化的な側面で、また食の嗜好でも、私は日本から多大な影響を受けました。
建築、絵画、書だけでなく、日常にみられる日本独自の美と平衡感覚は、私自身の作品にも大きな影響を与えました。
また、幸運にも日本では多くの良き友人と巡り合いました。
日本の皆様は私の映画を理解してくださる最高の観客です。
皆様の映画に関する深い知識、審美眼、情熱には感銘を受けました。
今回、ポーランド映画祭を監修するにあたり、日本の観客のみなさんに心からの感謝を申し上げます。
日本の友人たちと入念な選考を行なって選んだラインナップは、全て自信をもっておすすめする作品ばかりです。
ぜひ劇場にてお楽しみ頂けたら幸いです。
イエジー・スコリモフスキ
2012年11月24日(土)〜12月7日(金)2週間限定開催
イエジー・スコリモフスキ監督来場(予定)
会場:渋谷シアター・イメージフォーラム 
料金:当日一般1,500円 / 学生1,300円 / シニア・会員1,000円
何回でも見られるフリーパス8,000円!劇場窓口のみ発売!

公式サイト:http://www.polandfilmfes2012.com/
上映スケジュール
11月24日(土)
11:00
尼僧ヨアンナ
(108分)

13:30
エロイカ
(87分)






16:00
夏の終りの日
(66分)



18:30
夜行列車
(100分)




11月25日(日)
11:00
バリエラ
(81分)

13:00
イクシアナ
(98分)
上映前:
映画祭開幕挨拶
上映後:
ティーチイン予定
16:00
鉄路の男
(89分)
上映後:
解説トーク予定
18:30
水の中の
ナイフ

(94分)
上映後:
解説トーク予定
11月26日(月)
11:00

(98分)

13:30
夜の終りに
(87分)






16:00
夜行列車
(100分)



18:30
列車の中の人々
(98分)



11月27日(火)
11:00
沈黙の声
(98分)

13:00
さよなら、
また明日

(88分)





16:00
パサジェルカ
(61分)



18:30
灰と
ダイヤモンド

(102分)



11月28日(水)
11:00
サラゴサの
写本

(182分)
14:30
愛される方法
(97分)






16:30
戦争の真の終り
(89分)


18:30
ポリティカル
・ドレス

(61分)



11月29日(木)
11:00
さよなら、
また明日

(88分)
13:30
不運
(92分)






16:00
沈黙の声
(98分)



18:30
ビーツ・オブ
・フリーダム

(78分)



11月30日(金)
11:00
愛される方法
(97分)

13:30
パサジェルカ
(61分)






15:30
夏の終りの日
(66分)



19:00
シャザ・プレイズ・ポランスキー
(70分程度)


*11月25日(日) 舞台挨拶、トークショ-(予定)
『イクシアナ』上映前:開幕舞台挨拶 登壇:イエジー・スコリモフスキ監督/ツィリル・コザチェフスキ駐日ポーランド大使/ミハウ・スコリモフスキ監督(予定)
『イクシアナ』上映後:ミハウ・スコリモフスキ監督(『イクシアナ』共同監督)のティーチイン舞台挨拶(予定)
『鉄路の男』上映後:イエジー・スコリモフスキ監督による解説トーク(予定)
『水の中のナイフ』上映後:イエジー・スコリモフスキ監督による解説トーク(予定)
 

12月1日(土)
11:00
灰と
ダイヤモンド

(102分)
13:30
夜の終りに
(87分)

15:30
エロイカ
(87分)

19:00
シャザ・プレイズ・スタレヴィッチ
(70分程度)
12月2日(日)
11:00
列車の中の人々
(98分)
13:00
沈黙の声
(98分)

15:30
不運
(92分)

19:00
シャザ・プレイズ・ポランスキー
(70分程度)
12月3日(月)
11:00
エロイカ
(87分)

13:30
鉄路の男
(89分)

15:30
サラゴサの
写本

(182分)
19:00
バリエラ
(81分)


12月4日(火)
11:00
バリエラ
(81分)

13:30
水の中の
ナイフ

(94分)
16:00
夜の終りに
(87分)

18:30
夏の終りの日
(66分)


12月5日(水)
11:00

(98分)

13:30
灰と
ダイヤモンド

(102分)
16:00
愛される方法
(97分)

18:30
地下水道
(96分)


12月6日(木)
11:00
夜行列車
(100分)

13:30
尼僧ヨアンナ
(108分)

16:00
地下水道
(96分)

18:30
水の中の
ナイフ

(94分) 

12月7日(金)
11:00
戦争の真の終り
(89分)
13:30
不運
(92分)

16:00
さよなら、
また明日

(88分)
18:30
鉄路の男
(89分)


上映プログラム

『影』
1956年/98分/35mm
監督:イエジー・カヴァレロヴィッチ 

アンジェイ・ワイダ、アンジェイ・ムンク監督と共に、1950年代後半のポーランド映画界に登場した新潮流〈ポーランド派〉を代表する作家の一人、カヴァレロヴィッチによる社会派ミステリー。列車から転落死したスパイの男をめぐる謎解きの物語が斬新な編集で描かれた本作は、戦争中から戦後にかけてのポーランドの闇を鮮やかに照射した傑作サスペンスである。
『エロイカ』
1956年/87分/デジタル
監督:アンジェイ・ムンク 

わずか5本の長編作品を残し40歳の若さで事故死したアンジェイ・ムンクは硬質で無垢な芸術表現、残酷なまでの知的リアリズム、人間に対する深い洞察をもつ作風で、現在もなお色あせることなく多くの作家に影響を与えている。ワルシャワ蜂起の内実と平和な収容所でおこる悲劇を2部構成で描いた本作。"戦争"を主題に扱うことの多い〈ポーランド派〉の代表的な1本である。
『戦争の真の終り』
1957/89分/35mm
監督:イエジー・カヴァレロヴィッチ 

ウクライナで生まれクラクフの美術アカデミーの映画研修コースを卒業したカヴァレロヴィッチが自身の妻ルツィナ・ヴィンニツカを主演に描いた戦争の傷痕。廃人となって戦場から戻ってきた夫に悩むヒロインは彼を療養所に送ろうとするが...。劇中、夫の回想シーンに登場するナチス収容所のショッキングな描写は観る者を戦慄させる。
『地下水道』
1957年/96分/デジタル
監督:アンジェイ・ワイダ 

「灰とダイヤモンド」と並び〈ポーランド派〉の傑作と絶賛されたワイダの代表作。ワルシャワの対独レジスタンスが迷路のような地下の下水道で繰り広げる壮絶な戦いを非情なドキュメンタリー・タッチで描いた本作は、光と影を巧みに使った斬新な演出で後年ホラー、サスペンスジャンルの映画に多大な影響を与えている。カンヌ映画祭審査員特別賞。
『鉄路の男』
1957年/89分/デジタル
監督:アンジェイ・ムンク 

列車事故を防ごうとして命を落とした退職鉄道技師の物語をリアリズム・タッチで描いたムンクの意欲作。社会主義政権の自由化進展をうながした1956年の政変〈十月の春〉をとりあげた最初の映画と言われている。当時の若手映画人が崇拝していた「羅生門」や「市民ケーン」にならい複雑な物語構成、パン・フォーカスによる映像等、監督の作家的成熟がかいまみられる一編。
『夏の終りの日』
1958年/66分/デジタル
監督:タデウシュ・コンヴィツキ 

戦争で精神を病んだ男と恋人を失った女のひとときの出会いを描いた本作は、来たるべき〈ヌーヴェル・ヴァーグ〉の時代を予見したとも言われるコンヴィツキのデビュー作。ポーランド文学を代表する作家でもある彼は、リトアニア生まれでワイダやカヴァレロヴィッチ作品の脚本家として映画界入りした異色の経歴をもつ。ヒロイン役イレーナ・ラスコフスカは実の妹。
『灰とダイヤモンド』
1958年/102分/デジタル
監督:アンジェイ・ワイダ 

ヴェネチア映画祭で国際批評家連盟賞を受賞しポーランド映画の存在を一躍世界に知らしめた歴史的作品。戦後のポーランド映画界を牽引した巨匠ワイダの名は本作によって映画ファンにあまねく知られる事となった。戦争中レジスタンスとして活動し戦後はテロリストとなり悲惨な最後を遂げた青年の姿をシャープなモノクロ映像で描いた傑作!
『夜行列車』
1959年/100分/デジタル
監督:イエジー・カヴァレロヴィッチ 

恋人との別れを決意して旅に出た傷心の女と逃亡中の殺人犯...。その列車にはさまざまな想いを背負った人々が乗り合わせていた。ワルシャワからバルチック海へと疾走する列車の中で人それぞれの人生模様が描かれる本作は、メロドラマ仕立てでありながら大胆なカメラワークでクールな叙情性を醸し出したカヴァレロヴィッチの才気が光る秀作。
『不運』
1960年/92分/デジタル
監督:アンジェイ・ムンク 

1930年代から1950年代のポーランドを舞台に日和見主義者の青年が語る人生悲話。6回のフラッシュバックにおいて描かれるのは共産主義やファシズム、戦争、抑圧された幼年時代の影響で歴史の犠牲となってしまった悲運な個人の肖像である。ポーランドの作家に時折りみられるロマン主義的傾向を辛辣に風刺した一作。
『夜の終りに』
1961年/87分/デジタル
監督:アンジェイ・ワイダ 

戦後のポーランドで空虚な日々を過ごす若者の青春群像にスポットを当てた巨匠ワイダの異色作。ウッチ映画大学に在学中のイエジー・スコリモフスキが脚本を書き、ポーランド・ジャズ界の才人クシシュトフ・コメダが音楽を担当した本作は、主題を前面に押し出すワイダのスタイルが影をひそめ男女の心の触れ合いとすれ違いを繊細なタッチで描いた名作。
『沈黙の声』
1960年/98分/デジタル
監督:カジミェシュ・クッツ 

〈ポーランド派〉の活躍した時期に作られた作品ながら長い間論じられることのなかった幻の傑作。後のヌーヴェル・ヴァーグやアントニオーニの作品群を予見した映画である。逃亡兵と若い女の恋物語がわずかな台詞、ヴォイチェフ・キラルの音楽、大胆な画面構成で描かれ、製作当初当局からすぐに上映許可が下りなかった衝撃の1本。
『さよなら、また明日』
1960年/88分/デジタル
監督:ヤヌシュ・モルゲンシュテルン 

「灰とダイヤモンド」で主人公マチェックを鮮烈に演じ東欧のジェームズ・ディーンと呼ばれたズビグニェフ・ツィブルスキが脚本・主演した知られざる傑作。フランス人の若い娘との淡い恋物語がヌーヴェル・ヴァーグ風の軽快なタッチで描かれる。社会主義政権下でありながら西側の文化が徐々に浸透してきた時代の雰囲気を表現。ポランスキーのゲスト出演とコメダの音楽も必見・必聴。
『尼僧ヨアンナ』
1961年/108分/デジタル
監督:イエジー・カヴァレロヴィッチ 

「夏の終わりの日」で監督デビューしたコンヴィツキが共同脚本で参加した本作はカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞したカヴァレロヴィッチの代表作。17世紀の尼僧院を舞台に悪魔にとり憑かれた女院長と悪魔払いとして派遣された若い神父との異様な愛をとおして、人間の抑圧と自由という普遍的な主題を描いた傑作。撮影と美術の超現実的な美しさに耽溺する一本。
『列車の中の人々』
1961年/98分/デジタル
監督:カジミェシュ・クッツ 

「訪問者なし」で先鋭的な映画表現を試みたクッツだが本作では細かい観察に基づいたリアリズム描写に挑戦している。第二次大戦中の地方駅を舞台に"ありふれた1日"の出来事を寄せ集め的に構成し、当時のポーランド社会を描こうとしたのである。ワイダと異なり主人公を英雄的に扱わない視点にクッツの作家性がよく表われている一作。
『水の中のナイフ』
1962年/94分/デジタル
監督:ロマン・ポランスキー 

鬼才ポランスキーの名を世界に知らしめた長編処女作。裕福な中年夫婦と貧しい青年が偶然に湖でバカンスを過ごす。主な登場人物3人、全編オールロケで炙りだされる世代間の断絶や階層のギャップ。共同脚本として初めてタッグを組んだイエジー・スコリモフスキの才気とクシシュトフ・コメダのモダン・ジャズがスパークした大傑作。ヴェネチア映画祭批評家連盟賞受賞。
『愛される方法』
1963年/97分/デジタル
監督:ヴォイチェフ・イエジー・ハス 

K・ブランディスの同名小説に基づき、原作者自身が脚色。人気ラジオ女優がパリへ向かう機上で、戦時中ナチスに敵対した恋人と、彼を巡って自身が見舞われた悲劇を回想する。ムンクの「パサジェルカ」と同じく、女性の視点を通じて戦争を見つめた作品。英雄的闘争は対象化され、一人の女性が抑圧や不条理を受容しつつ静かに抵抗する姿が描かれる。サンフランシスコ映画祭グランプリ受賞。
『パサジェルカ』
1963年/61分/35mm
監督:アンジェイ・ムンク 

アウシュヴィッツ収容所の女看守という特殊な状況下のヒロインを描いたムンクの遺作。作品の大部分を撮り終えた監督が事故死し、残されたフィルムをもとにまとめあげられた。結果、冒頭とエンディングはスチルのみのモンタージュ、収容所の場面はシネマスコープのフィルムという大胆な構成となり緊張感に満ちた映画的効果を生んだ異色の傑作。カンヌ映画祭国際映画批評家連盟賞。
『サラゴサの写本』
1965年/182分/デジタル
監督:ヴォイチェフ・イエジー・ハス 

17世紀のスペインを舞台に繰り広げられる愛と冒険の物語。現代音楽の鬼才ペンデレツキのサウンドにのせて語られる本作は〈ポーランド派〉以降登場した歴史・文芸路線の代表的な1本。夢の論理をそのまま視覚化したような迷宮感覚は、今見ても衝撃的。ルイス・ブニュエルをはじめコッポラ、スコセッシ、リンチ、グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアらが熱狂した超カルトな幻想怪奇譚である。
『バリエラ』
1966年/81分/デジタル
監督:イエジー・スコリモフスキ 

ワイダ、ムンク、カヴァレロヴィッチ等〈ポーランド派〉より一世代下にあたるスコリモフスキは、オーソン・ウェルズ同様、監督・脚本・主演を一人でこなす神童としてポーランド映画界に登場した。世代間の断絶を前衛的な手法で描いた初期の傑作。物語性からの逸脱と研ぎ澄まされた造形美、コメダのサウンド... 21世紀の今観ても全てが斬新で謎めいている!
『ビーツ・オブ・フリーダム』
2011年/78分/デジタル
監督:ヴォイテク・スウォタ、レシェク・グロインスキ 

両親がポーランド人の音楽ジャーナリスト、クリス・サレヴィチが案内役を務めるポーランド・ロックのドキュメンタリー。1967年ワルシャワで開催されたローリング・ストーンズのコンサートやポーランド初のパンク・バンド"ティルト"のライブ映像等、超レアなフッテージ満載。60年代後半のロックが80年代のポーランドで再現されていたという歴史的事実は興味深い。
『ポリティカル・ドレス』
2011年/61分/デジタル
監督:ユディタ・フィビゲル 

戦後ポーランドファッションの歴史をモードと政治の関係性から考察したドキュメンタリー。流行を追う人は反体制的として迫害された社会主義国家でデザイナー達はいかに闘ったか? 登場する洋服や数多くのモード写真にみられる驚くべきモダンさにポーランド・サブカルチャーの底力を実感する作品。今も現役のデザイナーや写真家、モデルたちの証言に胸打たれる。
ポーランド人デュオアーティストSzaZa(シャザ)による映画ライブ
『シャザ・プレイズ・ポランスッキー』『シャザ・プレイズ・スタレヴィッチ』
70分程度(予定)/デジタル 

パヴェウ・シャムブルスキ、パトルィク・ザクロツキの2人組による音楽集団SzaZa(シャザ)。ワルシャワで結成されたこのグループは演劇、舞踊、映像とのユニークなコラボレーションが世界中で評判の前衛ユニット。今回は、ストップ・モーション・アニメの創始者とも言われるウワディスワフ・スタレヴィッチの作品及びポランスキーが学生時代に撮った短編のコラージュを素材に映像と音楽による生ライブが実現します。
ジャパン・プレミア上映!スコリモフスキ兄弟最新監督作
『イクシアナ』
2011年/98分/デジタル
監督:ミハウ・スコリモフスキ、ユゼフ・スコリモフスキ 

巨匠イエジー・スコリモフスキの息子たちミハウとユゼフ兄弟による最新監督作。デビュー作がベストセラーになった若い人気作家の心理的葛藤を怪奇スリラー風に描いた本作は、主人公の現実と妄想が巧みにミックスされた異色の作品。謎めいた女や奇妙な人物たちの造形に父親譲りの才気が。撮影は近年のスコリモフスキ作品でおなじみのアダム・シコラ。


ポーランド映画祭2012について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





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