イメージフォーラム・フェスティバル2014



今年も映像の祭典、イメージフォーラム・フェスティバルが、東京、横浜、京都、名古屋、福岡の5都市で開催される。ホセ・ルイス・ゲリンらが審査員を務める一般公募部部門<ジャパン・トゥモロウ>、日本の個人映画、実験映画の新作を紹介する<ニューフィルム・ジャパン>、ゲリンの新作が上映される<ニューフィルム・インターナショナル>、アレクセイ・ゲルマンの新作(!)やジャック・スミスの特集が組まれている<特集:ユートピア 夢想の発火点>の4部門で全体が構成され、アート・フィルムの起源に触れつつ、実験映画、個人映画の現在に触れる絶好の機会となるだろう。以下に、特に気になる作品をピックアップしています。
(上原輝樹)
2014.4.25 update
2014年4月27日(日)〜5月6日(火)

2014年5月17日(土)〜5月23日(金)

2014年6月4日(水)〜6月8日(日)

2014年6月18日(水)〜6月22日(日)

2014年6月27日(金)〜6月29日(日)
会場:横浜美術館 

入場料:当日券[1回券]1,200円(シアター・イメージフォーラム会員/京都シネマ会員は会員証提示で当日1回券を200円割引)
[4回券]3,200円 [フリーパス券]8,000円 

チケットぴあ、ローソンチケットなどで特別鑑賞券を発売中!
[特別鑑賞]1回券1,000円 [4回券]3,200円 [フリーパス券]8,000円
チケットぴあ......TEL:0570-02-9999 Pコード:465-464
ローソンチケット......TEL:0570-000-777
L コード:東京34012、京都56743 

公式サイトはこちら:http://www.imageforumfestival.com/
上映スケジュール
東京 | 京都 | 福岡 | 名古屋 | 横浜
作品ピックアップ

【ニューフィルム・インターナショナル(海外招待部門)】

ゲリンは窓越しの風景を日記的に撮影している。向かい側に見える建物の住人のなかにヴァイオリンを練習している男がいる。その男の悲劇が近隣の人々のインタビューによって語られ、やがて人間の孤独、都市空間におけるディスコミュニケーション、人生のはかなさにまつわるいくつかの物語が、『工事中』(2000)でも見せたゲリン得意の軽やかさで浮かびあがる『ある朝の思い出』。絵画と映画の関係についての思索的インスタレーション『アナへの2通の手紙』の映画版とともに上映する。

『ある朝の思い出』
ホセ・ルイス・ゲリン / 2011 / デジタル / カラー / 45分(スペイン)

2008年1月21日の朝、ゲリンの家の近所に住んでいるバイオリニストが、窓から裸で飛び降り自殺をした。彼について知っていたことは、最近ゲーテの「若きウェルテルの悩み」の新しい翻訳に取り掛かっていたということだけだった。
『アナへの2通の手紙』
ホセ・ルイス・ゲリン / 2010 / 35ミリ(デジタル上映)/ 白黒 / 28分 / サイレント(スペイン)

恋人が戦いに赴いてしまったので悲しみにうち沈んでいる、ひとりの若いギリシャ人女性についての伝説。ろうそくの光で恋人の影を壁に映し出し、愛する人の傍らに眠るというイリュージョンを生み出す。
【特集:ユートピア 夢想の発火点】

『神様はつらい』
アレクセイ・ゲルマン / 原作:ストルガツキー兄弟『神様はつらい』/ デジタル / 177分 / 2013(ロシア)

中世"暗黒時代"で進化を止めてしまった惑星アルカナルに、地球から科学者たちが観察のために派遣されている。未来から知識を携えてやってきた彼らは現地で神の如き存在であるが、目の前で大量殺戮が繰り広げられても彼らは介入することを許されず、できることはそれを傍観することのみである......。製作に15年費やし、2013年に完成間近で亡くなったロシア映画の巨匠アレクセイ・ゲルマンの遺作。汚泥、糞尿、血漿、嘔吐物、唾液、肉片を画面いっぱいに炸裂させたゲルマン最後の傑作は、これ以上のものは今後の映画史に現れないだろうと観るものに確信させる視覚的圧力・物量を備えている。「反商業主義の頂点に君臨する映画」(アレクセイ・ゲルマン・Jr)。
『闇をはらう呪文』
ベン・リヴァース+ベン・ラッセル / デジタル / 98分 / 2013(エストニア+フランス)

エストニアの小島のコミューンで共同生活をする男。フィンランド北部の原生林を一人で放浪し、オスロのブラック・メタルのコンサートで轟音のギターをかき鳴らし、絶叫する。ベン・リヴァースとベン・ラッセルは、初めての共同監督作品で、極北の光と寂寞とした風景の研ぎすまされた美しさ、そして圧倒的な音響が輪郭を描く、闇に満ちるエネルギーを通して、映画をラジカルな変容の場へと称揚する。
『ジャック・スミスとアトランティスの崩壊』
マリー・ジョーダン / 出演:ジョナス・メカス、マイク・ケリー、ケン・ジェイコブス、トニー・コンラッド、ジョン・ウォーターズ、ジョン・ゾーン、その他 / デジタル / 96分 / 2006(アメリカ)

知られざる天才アーティスト、ジャック・スミスの生涯を、貴重な資料映像とインタビューで綴ったドキュメンタリー。妥協を許さないアヴァンギャルディズムとパラノイア、一見異常にも見えるその特異な才能についての数々の証言によって、アートに全身全霊を込めるジャック・スミスの姿が鮮やかに浮かび上がり、観るものの胸に突き刺さる。「ジャック・スミスこそ本物のウォーホルだ」(ジョン・ゾーン)。
公開されるや否や発禁処分となり、その後の上映運動によってアメリカのアンダーグラウンドの象徴に祭り上げられた伝説的作品『燃え上がる生物』。作品のセンセーショナルな扱われ方に嫌気がさしたジャック・スミスは、以降作品を完成させることを放棄し、本人が同席するライブ的な映画上映にこだわっていく。1968年の大統領選に呼応してつくられた『ノー・プレジデント』を併映。「(『燃え上がる生物』は)イマジネーション、視覚、詩情と芸術的才能の最も贅沢なほとばしりである」(ジョナス・メカス)。

『燃え上がる生物』
ジャック・スミス / 1963 / 16ミリ / カラー / 46分(アメリカ)

ジャック・スミスは、古典映画の傑作に引けを取らないグラフィックとリズムの威力で、ニュー・アメリカン・シネマのアナーキーな解放を華々しく飾った。映画をアートのレベルまで引き上げた最初の人物であり、その映画は徹底的に{こうき}礼儀正しさを欠き、それまでの映画作家がいかに抑制されていたかに気づかされてしまうような性描写だった。

「彼はそれまでの誰よりも明確に、あらゆるものを包含する権利が詩人にはあるのだということ見せつけた。魂だけでなく肉体におけるものも、夢や象徴についてだけでなく目の前の現実についても語れるのだと。映画のようにそれを成し遂げた芸術は他になく、スミスがその領域を広げたのだ」(Film Culture)。「最終討議において、選考委員たちは判断を下した。つまり、委員の大多数はジャック・スミスの『燃え上がる生物』を美学的・実験的な見地から高く評価していたが、ベルギーの法のもと、この作品を上映するのは不可能だという結論に満場一致で至ったと言明することにしたのだ」(1964年、ベルギーのKnokke-Le-Zouteで開催された「第3回国際実験映画コンペティション」プログラム・ノートより)。
『ノー・プレジデント』
ジャック・スミス / 1967-70 / 16ミリ / b&w / 50分(アメリカ)

『燃え上がる生物』の続編ともいえるジャック・スミスの長編第2作目。1930年代のホラー映画から飛び出してきたモンスター、そして人魚や好色漢たちが、人間の想像の奥底に眠る極彩色の楽園で響宴を繰り広げる。ハリウッドB級映画の女王マリア・モンテスへのスミスのあこがれを具現化したとも言える作品。


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