筒井武文監督特集



<以下、リリースより転用>
該博な映画的知識を駆使しながら、映画作家、映画批評家、映画教育者として活躍する筒井武文。フィクションからドキュメンタリー、サイレント映画から3D映画まで、広汎なフィールドにわたるその創作活動を追う。
2011.3.2 update
2011.4.14 update
筒井武文ー映画史を逆側へと突き抜けて行く過激な現代映画作家
諏訪敦彦(映画作家)
東京藝大や映画美学校で教鞭をとっているからという訳ではなく、筒井武文は学生時代から教育者であった。ビデオソフトなど無い時代に、年間1000本の映画を見ていた彼が「これは傑作だ」と呟けば、われわれは否応無くその映画を見なければならなかったし、なぜそれが傑作なのかを考えなくてはならなかった。 同じ東京造形大学の学生であった、犬童一心や私をもっとも教育したのは筒井武文である。しかし作家としての彼は、映画館の暗闇にいる時とまったく別の艶やかな表情をしている。大学の教室で「レディメイド」を初めて見た時、シネマスコープで映し出されたファーストカットを見ただけで、ただただ「ああ、映画 だ!」と驚嘆したのを覚えている。映画が滴っていた。あれは理論や原理で撮れるショットではない。「ゆめこの大冒険」も、映画史との戯れといった呑気な営みなどではなく、映画への欲望によって映画史を逆側へと突き抜けて行く過激な現代映画であるし、20年前に3Dを奥行きの表現として使おうとした「アリス・イン・ワンダーランド」の映画的先見性も注目に値するが、何よりそれはジャック・ドゥミーのような呪われた愛に貫かれている。学生時代以来ゆっくりと更新されてゆくフィルモグラフィーにおいて、筒井武文が前進させてゆく「映画」に、私は未だに追いつけていない。
2011年3月8日(火)〜3月12日(土)
※地震のため延期となった3月11日(金)、12日(土)のプログラムを5月20日(金)、21日(土)に開催します。
会場&お問い合わせ:アテネ・フランセ文化センター(御茶ノ水)
当日料金:一般 1回1,000円 3回2,400円(3月の特集で販売した3日券もご使用いただけます)
アテネ・フランセ文化センター会員1回800円
映画美学校、東京藝術大学大学院、東京造形大学学生1回800円
※受講証、学生証をご提示ください。
※アテネ・フランセ文化センター会員入会をご希望の方は登録が必要になります。
登録料:一般=1,500円/アテネ・フランセ学生=1,000円(2011年12月まで有効)
上映スケジュール
3月8日(火)
17:30
レディメイド
(60分)
ゆめこの大冒険
(サウンド版)

(70分)










19:40
トーク:
犬童一心(映画作家)




3月9日(水)
17:30
ゆめこの大冒険
(活弁版)

(70分)
学習図鑑
(50分)











19:30
トーク:
諏訪敦彦(映画作家)




3月10日(木)
17:30
オーバードライヴ
(127分)
アリス・イン・ワンダーランド
(14分)











20:00
トーク:
瀬田なつき(『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』監督)
池田千尋(『東南角部屋二階の女』監督)
5月20日(金)
14:00
レディメイド
(60分)
学習図鑑
(50分)
16:20
ゆめこの大冒険
(染色サウンド版)

(70分)
学習図鑑
(50分)
18:00
孤独な惑星
(94分)
19:40
トーク:
瀬川昌治(映画作家)




5月21日(土)
14:00
ヒカリ
(8分)
映像の発見
松本俊夫の世界
パイロット版

(13分)
バッハの肖像
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009より

(120分)





16:30
トーク:
松本俊夫(映画作家)




※入れ替えなし
※トークは半券のご提示で参加いただけます。
上映プログラム

『レディメイド』
1982年製作(16ミリ・モノクロ・シネマスコープ・60分)
脚本・撮影:高瀬伸一、録音:平方宏明、助監督:城戸俊治 製作:西村朗
出演:小野寺里美、西野公平、犬童一心、鈴野志紋、鈴野麻衣、筒井紀美子 

遊園地という出来合いの迷路をさまよう三組のカップルと一組の子供。彼らの錯綜した行き違いは、オーソン・ウェルズの記憶を留める「鏡の間」で頂点に達するが、巧妙な「つなぎ間違い」によりアラン・レネの時空へと漂い、いくつかの平手打ちを経て、魔法のようにハッピーエンドへと解きほぐされる。恐るべき長編処女作。
『ゆめこの大冒険(サウンド版)』
1986年製作(16ミリ・モノクロ・スタンダード・70分)
『ゆめこの大冒険(澤登翠活弁版)』
1987年製作(16ミリ・モノクロ・スタンダード・70分)
脚本:筒井武文 撮影:宮武嘉昭、熊谷朋之 音楽:蓮舎通治 助監督:諏訪敦彦 製作:西村朗
出演:かとうゆめこ、すずきやすし、宮原清、にわ望、高橋孝英、沖山美紀、チーコ 

筒井流「ゲームの規則」。怪盗ゆめことマッド・サイエンティストが乗る気球は、メリエス的な世界一周の旅へと出発し、二人の熱いキスで北極熊を驚かせ、巴里の夜景へと私たちを誘う。さらに偽りの遠近法の中の追跡劇は、映画が作り物の真実であることを指し示す。無声映画への深い愛と該博な知識に裏づけされた初期代表作。
『学習図鑑』
1987年--1989年製作(16ミリ・カラー・スタンダード・50分)
撮影:宮武嘉昭 録音:浅利公治 音楽:太田恵資 製作:西村朗、菅安映
出演:高泉淳子、白井晃、篠崎はるく、遊◉機械/全自動シアター 

即興的な集団創作で知られる劇団、遊◉機械/全自動シアターとともに、映画における演劇性とは何かを追求した実験的試みにして娯楽作。マルクス兄弟的ナンセンスが炸裂する秋刀魚の手術シーンや、たった一枚のスカーフによって一組のカップルの数十年間を表現してしまう叙情的なメキシコ料理屋のシーンが圧巻の革新的傑作。
『アリス・イン・ワンダーランド』
1988年製作(35ミリ・カラー・3D・14分)
脚本:筒井武文 撮影:宮武嘉昭 音楽:竹間淳 助監督:諏訪敦彦
出演:ローレン・ディーン、マリアナ・マコルスキー、サム・サンダー、すずきやすし

日本から一歩も出ずにルイス・キャロルの作品世界を忠実に再現。アリスが裁判にかけられる場面で画面を横切るトランプの乱舞はオプチカル処理され(CGではない)、筒井の狂気の映画愛をうかがわせる。映画史上、数ある「アリス」映画の中でも演出の厳格さではトップクラス。映画のアルチザンとしての手腕が光る幻の逸品。
『オーバードライヴ』
2004年製作(35ミリ・カラー・ヴィスタヴィジョン・127分)
脚本:EN 撮影:芦澤明子 照明:白石成一 美術:磯見俊裕 製作:榎本憲男
出演:柏原収史、鈴木蘭々、杏さゆり、ミッキー・カーチス、小倉一郎、諏訪太郎、石橋蓮司 

杏さゆりのキュートな魅力に惹かれ、今時の若者の柏原収史は、津軽三味線などにうっかり手を染め、地中深くに作られた特異な構造の日本家屋の長い階段を彼女とともに昇り降りする羽目になる。文字通りのどん底から高台の闘技場へ。再起をかけた彼の上昇運動を筒井は緻密に設計し、芦澤明子のキャメラが見事にそれを捉える。
『ヒカリ』
2006年製作(HD-CAM・カラー・ヴィスタヴィジョン・8分)HDV上映
脚本:小林美香 撮影:宮武嘉昭 照明:箕輪栄一 美術:磯見俊裕
出演:長島良江、本間幸子、熊本野映

長女の不倫、妊娠をきっかけに三人姉妹の間に起こる小波瀾を、たった一間の和室のセットを使った「光」のドラマとして演出。彼女たちの感情の揺れを捉える作家の繊細な眼差しは成瀬的な女性映画の伝統に連なるものだが、ふとしたはずみにルノワール的な欲望が画面を貫く。人生の一断面が鮮やかに切り取られた愛すべき小品。
『映像の発見 松本俊夫の世界 パイロット版』
2006年製作(DVD・カラー・ヴィスタヴィジョン・13分)
撮影:瀬川龍、小野寺真 照明:市川元一 録音:山崎茂樹 製作:武井登美
出演:松本俊夫

砂浜に打ち寄せる波。それは決して事件の痕跡を拭いさりはしない。なぜなら波は砂に投影された映像に過ぎないから。松本俊夫が入念に仕上げたこのインスタレーションは「痕跡」と「投影」を「映画」の本性として主題化する。筒井が敬愛するこの映画作家の声、身振り、思考の痕跡を定着し、スクリーンに投影するための試み。
『バッハの肖像 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009より』
2010年製作(HD-CAM・カラー・ヴィスタヴィジョン・120分)HDV上映
撮影:芦澤明子、御木茂則 録音:鈴木明彦、森永泰弘 製作:堀越謙三、田中深雪
出演:ミシェル・コルボ、鈴木雅明、勅使川原三郎、タチアナ・ヴァシリエヴァ、ルネ・マルタン 

勅使川原三郎の躍動する身体とその影、そしてタチアナ・ヴァシリエヴァによる無伴奏チェロ組曲が織りなす妖しくも官能的な舞台。ミシェル・コルボや鈴木雅明の情熱溢れる指揮による受難曲やカンタータ。それらを捉える冷静な画面の合間に映画作家自身のパッションが不意に噴出する瞬間が訪れる希有な音楽ドキュメンタリー。
(交渉中につき別作品に変更になる可能性があります)
『孤独な惑星』
2010年製作(35ミリ・カラー・スタンダード・94分)
脚本:宮崎大祐 撮影:芦澤明子 照明:御木茂則 サウンドデザイン:森永泰弘
出演:竹厚綾、綾野剛、三村恭代、水橋研二、ヒカルド、市山貴章、ミッキー・カーチス

団地の踊り場を挟んで向き合う孤独なOLとカップル。ひょんなきっかけから男がOLの部屋のベランダに転がり込み、奇妙な恋愛喜劇が始まる。ドアの開閉によって人間関係に新たな変化が生じる様はルビッチ映画のようにスリリングで、彼らの恋のゆくえに目が離せない。ガラス戸を挟んだもどかしげな男女のやり取りが素晴らしい。
筒井武文監督プロフィール
1957年三重県生まれ。東京造形大学在学中に習作『6と9』(1981)を手掛けた後、長編処女作『レディメイド』(1982)を発表。その後、フリーの助監督、フィルム編集者を経て、独立後、 自主制作映画『ゆめこの大冒険』(1986)を3年がかりで完成させ劇場公開。その他に劇団、遊◉機械/全自動シアターの世界を映像化した『学習図鑑』(1987)、3D作品『アリス イン ワンダーランド』(1988)がある。並行して、TV、記録映画、企業CMなど幅広く演出。『おかえり』(篠崎誠、1996)では製作と編集を、『どこまでもいこう』(塩田明彦、1999)では編集を担当。イメージフォーラム、映画美学校、東京芸術大学大学院映像研究科などで後進の育成につとめる。また、映画批評、海外映画人へのインタビューなども多数手がける。2004年、監督作『オーバードライヴ』が公開。最新作は、映画美学校第10期高等科生とのコラボレーション作品『孤独な惑星』。現在、東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻教授。


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なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
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