TIFF 第25回東京国際映画祭



「コンペティション」と「ワールドシネマ」は全作品情報を掲載。その他の部門は、気になる作品を独断で抜粋して掲載しています。
2012.10.15 update

コンペティション  2012.10.15 update

WORLD CINEMA  2012.10.15 update


【気になる作品を抜粋】特別招待作品/日本映画・ある視点/natural TIFF/TIFF in 日本橋  2012.10.15 update





TIFF 第25回東京国際映画祭
2012年10月20日(土) ~ 10月28日(日)@六本木ヒルズ、シネマート六本木ほか
公式サイト http://2012.tiff-jp.net/ja/
上映スケジュール
上映プログラム
【コンペティション】

© Mirror Mountain Pictures
『アクセッション ― 増殖』
78分/ズールー語/Color, Black & White/2012年/南アフリカ
監督/製作/脚本/撮影/編集:マイケル・J・リックス
音響デザイナー:ブレット・バーンズ
出演:ペトロ・テンバ・ムボレ、 ヴズムズィ・ンドゥモ
 

南アフリカの都市郊外で、定職もなく手当たり次第のセックスで気を晴らす青年が、HIV感染の疑いから逃れるために取った恐るべき行為とは。迷信と無知の恐ろしさが徹底してミニマルな手法で描かれ、監督の強い個性に貫かれた衝撃の作家映画。 

撮影地は、ヨハネスブルグの南東に位置するドゥドゥザ地域近辺。現地の暮らしがリアルに描かれる一方、目を背けたくなるような深刻なテーマを強烈な作家性で描き切っている。英題のAccessionという単語には「何らかのものの所有者になり、それを受け入れること」、そして「何かが加わることによる増殖」という意味があると監督は語る。主人公の置かれた環境、彼の感情とその行動を示唆するタイトルの真の解釈は、観客に委ねられている。 

10/23(火) 18:00 10/27(土) 18:10
『天と地の間のどこか』
124分/トルコ/Color/2012年/トルコ=ドイツ
監督:イェシム・ウスタオール
撮影監督:ミヒャエル・ハモン  編集:マティルデ・ムヤルド  編集:スヴェトリック・ミカ・ザッチ  編集:ナイム・カナット  プロダクション・デザイナー:オスマン・オスジャン  音楽:マルク・マルデル  音響デザイナー:シルヴァン・マルブラント  衣装:アイシェ・ユルドゥズ
出演:ネスリハン・アタギュル、 バルシュ・ハジュハン、 オズジャン・デニズ、 ニハル・ヤルチュン、 ウルガズ・コジャテュルク
 

郊外の高速沿いのドライブインに勤務し、単調で展望のない日々を送る少女。出入りするドライバーたちが、彼女を外の世界へとつなぐ唯一の存在だったが...。ヒロインの心理を代弁するような寒々しくも端正な映像が効果的な、残酷さと美しさを兼ね備えた青春のドラマ。 

原題のArafとは、天国と地獄の間に位置する「煉獄」あるいは「リンボ」を意味するトルコ語である。ダンテの「神曲」では、待たされるばかりの「煉獄編」が最も辛いに違いないと語る監督は、ドライブインでくすぶる少女の状態を煉獄に重ねる。大都市イスタンブールと首都アンカラを結ぶ重要な高速道路沿いに勤務しながら、繁栄を終えたような場所に留まるヒロインたちのもどかしい思いは、トルコだけでなく、世界中の優れた青春映画と共鳴している。 

10/23(火) 14:30 10/27(土) 20:55
© MILES Films
『ティモール島アタンブア39℃』
90分/テトゥン語/Color/2012年/インドネシア
監督/脚本:リリ・リザ
プロデューサー:ミラ・レスマナ  エグゼクティブ・プロデューサー:イグナティウス・アンディ  エグゼクティブ・プロデューサー:サンディ・スギハルト  エグゼクティブ・プロデューサー/ライン・プロデューサー:トト・プラスティヤント  第1アシスタント・ディレクター:リファノ・スティヨ・ウトモ  第2アシスタント・ディレクター:ラトゥリカラ・ベッ・アディティヤ  撮影監督:グナル・ニンプノ  編集:ワルヨ・イフワンディアルドノ  録音:スハディ  音響デザイナー:サトゥリオ・ブディオノ  音楽:バスリ・シーラ
出演:グディーノ・ソアレス、 ペトゥルス・ベイレト、 プトゥリ・モルック 


2002年に独立した東ティモールから多くの難民が流入した、国境近くの街アタンブア。離れた母を想う青年のリアルな日常と、淡い詩情の中で語られる引き裂かれた家族の物語。現在のインドネシアを代表する作家のひとり、リリ・リザ監督が新境地に挑んだ美しい最新作。 

インドネシア南部に浮かぶティモール島の東半分、東ティモールは、長らく同国に併合されていた。スハルト政権が崩壊すると99年の住民投票を経て2002年に独立を果たしたが、一連の混乱で99年には25万の難民が西ティモールのアタンブアに流入した。アタンブアはカトリックの人口が多いことから、本作でもキリスト教の存在感は顕著であり、人民の受難と、死者への鎮魂の思いが作品を貫いている。リリ・リザ監督は、本年の「アジアの風」で旧作(『虹の兵士たち』『夢追いかけて』)の特集が組まれている。 

10/24(水) 20:55 10/25(木) 15:35
『黒い四角』
144分/北京語/Color/2012年/日本
監督/脚本/編集:奥原浩志
プロデューサー:李鋭  プロデューサー:奥原智子  撮影監督:槙 憲治  美術:高鵬  録音:張陽  音楽:サンガツ  視覚効果:オクティグラフィカ
出演:中泉英雄、 丹紅、 陳璽旭、 鈴木美妃、 王宏偉、 狗子、 張次禹 


北京郊外の芸術家村。上空を浮遊する謎の黒い物体に導かれ、画家のチャオピンはひとりの男と出会う。男は何者なのか? 遠い過去の記憶を探るチャオピン。やがてチャオピンの妹リーホワも男の面影を追い始める。 

日本人監督による全編北京語の恋愛映画。企画に賛同したスタッフ、キャストが日中双方から集結し、手作り感あふれるコラボレーションが実現した。撮影は北京郊外の芸術家村を中心に市内各所で行われ、北京の様々な表情を見てとることができる。主演の中泉英雄は日本国内のみならず、近年、中国映画界でもその存在に大きな期待が寄せられている。 

10/21(日) 17:10 10/24(水) 14:20
『風水』
120分/北京語/Color/2012年/中国
監督:ワン・ジン
脚本:ウー・ナン  原作:ファン・ファン  撮影監督:リウ・ヨウニエン  編集:フォン・ウェン  音響監督:ワン・チャンルイ  プロダクション・デザイナー:バイ・ハオ  音楽:ヤン・スーリー
出演:イエン・ビンイエン、 ジアオ・ガン、 チェン・ガン
 

高層アパートに越した労働者階級一家の生活が、徐々に崩れていく。果たして家の場所が悪いのか、それとも母親の個性のせいなのか...。強烈な上昇志向が高じて悪妻となってしまう女性が送る苦闘の人生を通じ、幸せの追求とその残酷な代償を描く痛切な家族ドラマ。 

ワン・ジン監督は過去に猟奇殺人とインターネットをつなげたスリラー"Invisible Killer"や、薬剤問題を巡る社会派スリラー"Vegetate"などを手掛けているが、本作では90年代の経済成長の裏で苦闘の人生を送る女性の姿を描き、人間ドラマに真正面から取り組んだ。たくましくも哀しいヒロインを好演するイエン・ビンイエンは、ラブ・コメディー"Memory of Love"から児童サスペンス『流浪児を探して』まで幅広いジャンルに取り組む注目の女優である。 

10/22(月) 20:55 10/24(水) 11:00
© SPACE SHOWER NETWORKS.inc
『フラッシュバックメモリーズ 3D』
72分/日本語/Color/2012年 日本/配給:株式会社スポッテッドプロダクションズ
監督:松江哲明
プロデューサー:高根順次  撮影監督/3D効果:渡辺知憲  編集:今井大介  編集助手:小守真由美  アニメーション:岩井澤健治  整音:山本タカアキ  録音:中内茂治  音響:内田直之  照明:中久喜"チャキ"正典  映像提供:黒川 貴
出演:GOMA、 辻 コースケ、 田鹿健太、 椎野恭一 


追突事故で高次脳機能障害を負ったディジュリドゥ奏者 GOMAが、リハビリ期間を経て徐々に復活する過程を振り返る。GOMAのスタジオライブと過去映像、そしてフラッシュバックが共存する「全く新しい形の3D 映像作品」であり、まぎれもない「家族愛の物語」。 

首都高速で追突事故に遭遇し高次脳機能障害を負ったディジュリドゥ奏者 GOMA。家族に支えられながらリハビリ期間を経て徐々に復活する過程を振り返りつつ、突然異なる映像が頭の中に飛び込んでくる症状=フラッシュバックをアニメーションで表現。渋谷WWWでのGOMAのスタジオライブと過去映像、そしてフラッシュバックが共存する「全く新しい形の3D 映像作品」であり、まぎれもない「家族愛の物語」である。 

10/21(日) 20:25 10/26(金) 14:05
© Heimatfilm
『ハンナ・アーレント(原題)』
113分/ドイツ語、英語/Color, Black & White/2012年/ドイツ/配給:セテラ・インターナショナル
監督/脚本:マルガレーテ・フォン・トロッタ
脚本:パメラ・カッツ  プロデューサー:ベティーナ・ブロケンパー  プロデューサー:ヨハネス・レキシン  撮影監督:カロリーヌ・シャンプティエ  編集:ベッティナ・ボーラー  作曲:アンドレ・マーゲンターラー  音響デザイナー:グレッグ・ヴィットーレ  プロダクション・デザイナー:フォルカー・シェイファ
出演:バルバラ・スコヴァ、 アクセル・ミルベルク、 ジャネット・マクティア、 ユリア・イェンチ、 ウルリッヒ・ノエテン、 ミヒャエル・デーゲン 


60年代初頭。高名な哲学者であるハンナ・アーレントが、ホロコーストの責任を問う元ナチ高官の裁判に立ち会う。発表されたレポート記事を巡り、世論は揺れる。絶対悪とは何か、そして考える力とは何かを問いかけるとともに、アーレントの強固な信念を描く感動の歴史ドラマ。 

ハンナ・アーレントは、全体主義の起源を最初に分析したことなどで知られる、ドイツ系ユダヤ人の哲学者。本作は、60年代のNYを舞台に、既に名声を確立しているアーレントがナチ高官裁判の傍聴記事を巡ってバッシングされるエピソードに焦点を絞った歴史ドラマである。フォン・トロッタは、60年代後半から80年代にかけてファズビンダーやヴェンダースなどが牽引した「ニュー・ジャーマン・シネマ」の系譜に連なる監督であり、『鉛の時代』(81)や『ローザ・ルクセンブルグ』(85)などの骨太な作品を作ってきている。本作で迫真の見事な演技を見せる主演のバルバラ・スコヴァは、多数のフォン・トロッタ作品に主演しており、政治と女性を中心にした作品を手掛ける監督の盟友的存在である。 

10/21(日) 11:00 10/26(金) 16:15
© Nordisk Film 2012
『シージャック』
99分/デンマーク語/Color/2012年/デンマーク
監督/脚本:トビアス・リンホルム
プロデューサー:ルネ・エズラ  プロデューサー:トマス・ラドアー  撮影監督:マウヌス・ノアンホフ・ヨンク  編集:アダム・ニールセン  音楽:ヒルドゥル・グナドッティエル
出演:ヨハン・フィリップ・アスベック、 ソーレン・マリン、 ダール・サリム 


インド洋沖でデンマークの商船がアフリカ系の海賊にジャックされる。本社は、遠く離れた海賊の心理を探りながら困難な交渉を始めるが、船員は徐々に疲弊していく...。多発する海賊事件を息の詰まるリアリズムで再現した、交渉術と人間心理を巡るサスペンスドラマ。 

デビュー作の"R"(10)で刑務所の中の息詰まる人間関係を細かく描写したトビアス・リンホルム監督は、本作でも追い込まれた登場人物たちの心理を描き込むことに抜群の力量を発揮している。脚本家としてトーマス・ヴィンターベア監督の『光のほうへ』(10)と"The Hunt"(12)に参加しており、後者は今年のカンヌ国際映画祭でマッツ・ミケルセンに男優賞をもたらしている。長編監督2本目にして、早くもデンマークで最も次回作が期待される監督のひとりである。" 

10/20(土) 10:45 10/22(月) 17:50
© 2012 NATIONAL HUMAN RIGHTS COMMISSION OF KOREA & SOUTH PARK FILM All Rights Reserved.
『未熟な犯罪者』
107分/韓国語/Color/2012年/韓国
監督/脚本/エクゼクティブ・プロデューサー:カン・イグァン
エグゼクティブ・プロデューサー:ヒョン・ビョンチョル  プロデューサー/脚本:パク・ジュヨン  撮影監督:ピョン・ボンソン  照明:パク・チャニュン  編集:パク・ユギョン  編集:キム・ジニ  音楽:カン・ミングク  録音:パク・ソンマン  音響デザイナー:ソ・ヨンジュン  衣装:ハン・イェジュン
出演:ソ・ヨンジュ、 イ・ジョンヒョン、 チョン・イェジン 


保護観察中の16歳の少年が祖父を失い、天涯孤独の身となろうとするその時、死んだはずの母親が現れる。彼女は17歳の時に彼を産み、逃げたのだった...。未熟すぎる母親と大人になれない少年のせつない関係を、瑞々しさ溢れる役者の魅力を得て繊細に綴った親子の物語。 

本作のスタッフや俳優は実在の少年院に寝泊まりし、収容者たちと同じ生活を送ることで彼らの心理や置かれた状況に対する理解を深めた。他の舞台もすべて実際の施設で撮影されており、作品に独自のリアリティーがもたらされている。世間を達観したように見えつつ、幼さと大人らしさを兼ね持つ存在感を発揮したソ・ヨンジュは主としてTVドラマで活躍しており、本作が3本目の映画出演となる。生活力が無いが、何とも愛らしい新鮮な母親像を演じたイ・ジョンヒョンは、日本でも活動歴のある人気シンガー。

10/25(木) 21:10 10/26(金) 11:25
© 2012 Magda Film, Paco Cinematografica
『ニーナ』
78分/イタリア語/Color/2012年/イタリア
監督/脚本:エリザ・フクサス
製作:シルヴィア・パトリツィア・イノセンツィ  製作:ジョヴァンニ・サウリーニ  脚本:ヴァリア・サンテッラ  撮影監督:ミケーレ・ダッタナスィオ  編集:エレオノーラ・カオ  編集:ナタリー・クリストィアーニ  プロダクション・デザイナー:カーマイン・グァリーノ  衣装:グラツィア・コロンビーニ  作曲:アンドレア・マリアーノ
出演:ディアーヌ・フレーリ、 ルカ・マリネッリ、 アンドレア・ボスカ、 エルネスト・マイエ、 ルイジ・カターニ


夏休みで無人となったローマ郊外を舞台に、声楽を教えたり犬の世話のバイトをしたりして暮らす孤独な少女ニーナの見る世界。彼女の漠たる不安を象徴するかのような、広い空間をスタイリッシュに切り取る独特の映像感覚に注目。新人女性監督デビュー作。

『ローマの休日』からナンニ・モレッティ、そしてジャンニ・ディ・グレゴリオまで、元来ローマの街にスクーターはよく似合う。本作のヒロインは郊外を滑走し、その無人の光景はファンタジーの世界を思わせるほど新鮮でユニークである。81年生まれの監督を始め、若い才能が結集した。主演のディアーヌ・フレーリは『マイ・ブラザー』(07)でブレイクして以来、舞台やテレビを含め幅広く活躍している。共演のルカ・マリネッリは『素数たちの孤独』(10)で存在感を発揮しており、『ワルツ』(07)が印象的だったマリーナ・ロッコも華を添えている。 

10/24(水) 18:00 10/25(木) 13:00
© FABULA
『NO』
108分/スペイン語/Color, Black & White/2012年/チリ=アメリカ
監督:パブロ・ラライン
製作:ファン・デ・ディオス・ラライン  製作:ダニエル・マルク・ドレフュス  脚本:ペドロ・ペイラーノ  撮影監督:セルヒオ・アームストロング  プロダクション・デザイナー:エステファニア・ラライン  編集:アンドレア・シニョリ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、 アルフレド・カストロ、 ルイス・ニェッコ、 アントニア・セヘルス、 マルシャル・タグレ、 ネストル・カンティリャーナ、 ハイメ・バデル、 パスカル・モンテーロ


チリに君臨するピノチェト独裁政権の信任を問う国民投票の実施が決まる。強者の「YES」陣営に対し、「NO」陣営は広告界の若きエグゼクティブを採用して果敢なキャンペーンを展開する。88年当時の模様を斬新なスタイルで再現した、勇気溢れる興奮の政治エンタテインメント。 

"Post Mortem"(10)で独裁政権の誕生を描き、『トニー・マネロ』(08)で独裁時代の最も暴力的な時期を語ったラライン監督は、ピノチェト政権を振り返る3部作の締めくくりとして『NO』を完成させた。3作とも全く異なるスタイルであるが、本作では資本主義の象徴とも言える広告業界を通じて独裁政権の終焉を見つめ、80年代当時のフッテージ映像が映画に馴染むように、撮影にはアナログの日本製ビンテージカメラが用いられている。 

10/25(木) 18:30 10/27(土) 11:30
© Rapsodie Production - Cité Films
『もうひとりの息子』
101分/フランス語、ヘブライ語、アラビア語、英語/Color/2012年/フランス
監督/脚本:ロレーヌ・レヴィ
脚本:ナタリー・ サウジョン  原案/脚本:ノアム・フィトゥッシ  プロデューサー:ヴィルジニー・ラコンブ  プロデューサー:ラファエル・ベルドゥゴ  撮影監督:エマニュエル・ソワイエ  編集:シルヴィー・ガドメール  音響:ジャン=ポール・エヴァンベルナール  音楽:ダファー・ヨーゼフ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、 パスカル・エルベ、 ジュール・シトリュク、 マハディ・ダハビ、 アリン・オマリ、 カリファ・ナトゥール


兵役用健康検査の結果、両親の実子でないことを知ったイスラエル人の青年。出生の際の手違いが明らかになり、やがてイスラエルとパレスチナふたつの家庭のアイデンティティと信念とが大きく揺さぶられる事態に発展する。根深い憎しみからの解放を巡る感動のドラマ。 

本作が3本目の長編作品となるレヴィ監督は、脚本家として豊富なキャリアを積んでいる。イスラエルとパレスチナ問題を背景にした物語を語る上で陥りがちなパターン化を避けるべく、イスラエル人やイスラエル在住パレスチナ人スタッフの意見を日々取り入れながら脚本は改訂され、全くオリジナルで感動的な家族の物語が誕生した。舞台演出家の顔もある監督による役者の動かし方も的確である。主演のエマニュエル・ドゥヴォスは現在のフランスで最も尊敬を集める女優のひとりであり、本作でも動揺する母性愛を絶妙に表現している。なお、イスラエル側の息子を演じるジュール・シトリュクは、子役時代に『ぼくセザール10歳半1m39cm』(03)に主演し来日も果たしており(2004年フランス映画祭)、成長した姿を見せている。 

10/20(土) 17:45 10/26(金) 19:35
© 2012 Fortissimo Amsterdam
『テセウスの船』
143分/英語、ヒンディー語/Color/2012年/インド
監督/脚本:アーナンド・ガーンディー
製作:ムケーシュ・シャー  製作:ソーハム・シャー  エグゼクティブ・プロデューサー:ミテーシュ・シャー  撮影監督:パンカジ・クマール  編集:アーデーシュ・プラサード  編集:サンユクター・カザー  編集:サトチト・プラーニク  音響デザイナー:ガボール・エルデリ  作曲:ナレーン・チャンダーワルカル  作曲:ベネディクト・テイラー  プロダクション・デザイナー:プージャー・シェーッティー
出演:アイーダ・エル・カーシフ、 ニーラジ・カビ、 ソーハム・シャー


製薬会社の動物実験に抗議する一方、自らが病に倒れ薬に頼らざるを得なくなる男性。薬を拒否し、衰弱していくが...。人間の選択した行為と、その行為が内包するパラドックスをテーマにムンバイを舞台にした3つの物語。巧みなストーリーテリングと深い人間洞察が刺激的。 

船の部品を全部交換したとして、それは前と同じ船と呼べるであろうか? というのがギリシャ神話に伝わる「テセウスの船」のパラドックスである。本作では、人間の体の部品たる臓器の移植を巡って、パラドックスとアイデンティティの問題が考察される。ガーンディー監督は2本の短編で既にカルト的な注目を集めており、名匠シェカール・カプール監督も絶賛のコメントを寄せている。哲学的で内省的な側面を持ちながら、鮮烈なビジュアルイメージと豊潤な物語世界を併せ持つ、驚くべき監督長編デビュー作品である。 

10/20(土) 20:40 10/22(月) 14:15
© Red Crown Productions USA
『メイジーの知ったこと』
99分/英語/Color/2012年/アメリカ
監督:スコット・マクギー
監督:デヴィッド・シーゲル  脚本:ナンシー・ドイン  脚本:キャロル・カートライト  原作:ヘンリー・ジェームズ  製作:ダニエラ・タップリン・ランドバーグ  製作:ダニエル・クラウン  製作:ウィリアム・ティートラー   製作:チャールズ・ウェインストック  撮影監督:チャールズ・ナットゲンズ
出演:ジュリアン・ムーア、 アレキサンダー・スカルスガルド、 オナタ・アプリール、 ジョアンナ・ヴァンダーハム、 スティーヴ・クーガン


『綴り字のシーズン』(05)で壊れそうな家族の絆を救おうとする少女を描いた監督コンビが、本作では既に壊れてしまった夫婦関係に翻弄される少女を瑞々しく描いている。新しい子役スターの誕生を予感させるメイジー役のオナタ・アプリール(コンペのもう1本のアメリカ映画である『イエロー』にも出演)を始め、脚本を読んですぐに興味を持ったというジュリアン・ムーアや、スウェーデン出身の注目俳優アレクサンダー・スカルスガルド、そしてイギリス人の個性を存分に発揮しているスティーヴ・クーガンなどの効果的なキャスティングが、痛切でありながらユーモラスでもある本作の雰囲気作りに大いに貢献している。 

10/23(火) 20:35 10/27(土) 15:05
© medient 2012
『イエロー』
105分/英語/Color/2012年/アメリカ
監督/脚本:ニック・カサヴェテス
脚本:ヘザー・ウォールクィスト  プロデューサー:マヌー・クマーラン  プロデューサー:クリス・ハンレイ  プロデューサー:ジョーダン・ガートナー  撮影監督:ジェフ・カッター  編集:ジム・フリン  プロダクション・デザイナー:パトリシオ・M・ファレル  衣装:ボニー・ストーチ
出演:ヘザー・ウォールクィスト、 シエナ・ミラー、 メラニー・グリフィス、 ジーナ・ローランズ、 ルーシー・パンチ、 レイ・リオッタ


安定剤に頼って自我を保っている代理教員の女性が、疎遠だった家族と向き合うことで自らの過去と現在に対峙していく人間ドラマ。ポップで斬新なイメージがヒロインの心象風景を彩り、豪華な配役の張りつめた演技がドラマに奥行をもたらす。N・カサヴェテス監督の新境地! 

ニック・カサヴェテス監督が自身でオリジナル脚本を手掛けた作品としては、原作ものや実話をもとにしたものを除くと、監督デビュー作『ミルドレッド』(96)以来となる(本作は主演女優ヘザー・ウォールクィストとの共同脚本)。現代社会とうまく折り合いをつけて生きていくことができない女性の混乱した日常を、豊かなイマジネーションとともに描いていく本作は、既に商業映画監督として十分な実績を上げているカサヴェテス監督の第2のデビュー作とも、新境地とも呼べる快作である。 

10/21(日) 13:40 10/22(月) 11:15


TIFF 第25回東京国際映画祭について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





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