広島国際映画祭 特別アンコール上映
シネマテーク・フランセーズ共同企画
「世界のすべての記憶」特集



2017年の広島国際映画祭(HIFF)で大好評を博したシネマテーク・フランセーズ特集「世界のすべての記憶」が、アンスティチュ・フランセ東京でアンコール上映される。ジャン・ヴィゴ『アタランタ号』に10年先駆けた傑作"河の映画"と絶賛されるアンドレ・アントワーヌ『ツバメ号とシジュウカラ号』を皮切りに、"視覚的ポリフォニー"を試みたアベル・ガンスの3画面映画『マジラマ/戦争と平和』、ゴダールとダネーが「映画史」についてひたすら語る続ける『セルジュ・ダネーとジャン=リュック・ゴダールの対話』、サイレント時代のルネ・クレールの傑作喜劇『イタリア麦の帽子』、権威ある"ルイ・デリュック賞"に名を残す、フランス印象主義を代表するルイ・デリュックの監督作品『洪水』『エルノアへの道』まで、広島に馳せ参じることが出来なかった者にとって見逃せない特集上映である。新年早々幸先の良い映画初めになりそうだ。
(上原輝樹)
2017.12.28 update
2018年1月5日(金)〜13日(土)
会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
料金:一般1,200円/学生800円/会員500円
※上映当日各回の30分前から上映開始10分後まで。チケット販売時間内には、当日すべての回のチケットをご購入いただけます。全席自由。整理番号順での入場とさせていただきます。また、上映開始10分後以降の入場は、他のお客さまへの迷惑となりますので、固くお断りいたします。

ゲスト:
岡田秀則(東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)
柳下美恵(サイレント映画ピアニスト)
廣瀬純(龍谷大学教授、映画批評家)
結城秀勇(映画批評家)

公式サイト:http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1801050113/
上映スケジュール

1月5日(金)
18:30
ツバメ号とシジュウカラ号
(78分)
上映後、岡田秀則によるトークショーあり
1月7日(日)
14:00
マジラマ/戦争と平和(三面ポリヴィジョン版)
(57分)

16:00
セルジュ・ダネーとジャン=リュック・ゴダールの対話
(129分)
上映後、廣瀬純と結城秀勇による対談あり
1月12日(金)
19:00
イタリア麦の帽子
(115分)


1月13日(土)
13:00
洪水
(87分)
柳下美恵によるピアノ伴奏つき
15:30
エルノアへの道
(50分)
柳下美恵によるピアノ伴奏つき

17:30
ツバメ号とシジュウカラ号
(78分)
作品ラインナップ

© L'hirondelle et la mésange, André Antoine, collections La Cinémathèque française.
『ツバメ号とシジュウカラ号』(L'Hirondelle et la Mésange d'André Antoine)
フランス/1920年/78分/モノクロ/デジタル/日本語字幕
監督:アンドレ・アントワーヌ
出演:ジョルジュ・デノラ、ピエール・アルコヴェー、ルイス・ラベット

二隻の船、ツバメ号とシジュウカラ号がベルギーのアントワープからフランスへと向かっている。船頭のピエールは、妻グリエとその妹マルテと共に船上で平穏な日々を送っている。しかし新しく雇った水先案内人のミッシェルにマルテは恋心を抱くが、ミッシェルはグリエを誘惑し、三人のバランスが崩れてしまう。また、ミッシェルはピエールが密輸しているダイヤの隠し場所を知ってしまい......。スタジオから抜けだし、田園風景、フランドル地方の商業都市ゲント、そしてそこに住む人々や俳優たちの表情を数台のキャメラで様々な角度からみずみずしく捉えた本作は、10年後に撮られるジャン・ヴィゴの『アタラント号』の誕生を予感させる「河の映画」の傑作といえるだろう。
『マジラマ/戦争と平和(三面ポリヴィジョン版)』
(Magirama (J'accuse) d'Abel Gance, Nelly Kaplan)
フランス/1957年/57分/モノクロ/デジタル/日本語字幕
監督:アベル・ガンス、ネリー・カプラン
出演:ロベール・ヴァティエ

アベル・ガンスは『ナポレオン』(1927年)で初めて3画面の投影装置を試みたが、興行には困難であったため、再び試みるまでに30年を要した。中央の画面に主題を、その両側で伴奏のような画を映し出せるように「プロテラマ」(視覚的ポリフォニー)を構想。国立映画センターの支援を受け1956年にようやく「マジラマ」としてパリの映画館スタジオ28で上映された。1937年版『戦争と平和(原題:私は弾劾する)』の映像を使用しながら、あらためて第一次世界大戦をテーマとし、戦争の悲惨さを伝えられる形式を作り出そうとした。修復版は、『戦争と平和』のほかノーマン・マクラレンの『色彩幻想』など4本の短編とで構成され、ガンスの助手であった映画監督で作家のネリー・カプランによって編集されている。
© Entretien Serge Daney / JLG, collections La Cinémathèque française.
『セルジュ・ダネーとジャン=リュック・ゴダールの対話』
(Entretien entre Serge Daney et Jean-Luc Godard de Jean-Luc Godard)
フランス/1988年/129分/カラー/デジタル/日本語字幕
監督:ジャン=リュック・ゴタール
出演:ジャン=リュック・ゴダール、セルジュ・ダネー

おびただしい量の映像、声、音楽、文字のコラージュによってゴダールの映画史観が展開される、全8章、約4時間半の大作『映画史』。その製作を始めた時期に、ゴダールと映画評論家のセルジュ・ダネーが『映画史』について語り合う。まるで観客が立ち合い人であるかのように、終始カメラは固定で対話を捉えていく。
『イタリア麦の帽子』(Un Chapeau de paille d'Italie de René Claire)
フランス/1927年/115分/モノクロ/デジタル/日本語字幕
監督:ルネ・クレール
出演:アルベール・プレジャン、オルガ・チェホーワ、ゲモン・ヴィタル、ポール・オリビエ

美しいエレーヌとの結婚式へと馬車を走らせていたファディナール。彼が鞭を拾っている間に馬が麦わら帽子を食べてしまう。中尉と逢い引き中だった帽子の持ち主は、帽子を取り戻せないと夫の待っている家に帰れない。二人は新婚夫婦の家にまで押しかけてきて「帽子を返せ!」と迫るのだが......。シネマテーク・フランセーズとサンフランシスコ無声映画祭の協力によって、2016年に4K修復されたルネ・クレールの4作品目の傑作コメディ。公開当時に付けられていた薄紫がかった青と琥珀色も見事に再現されている。

「ルネ・クレールは、ロシア人監督達のように、無声映画のエクリチュールの進化を絶えず探求している偉大な監督のひとりである。」(アンリ・ラングロワ)
© L'lnondation, Louis Delluc, collections La Cinémathèque française.
『洪水』(L'Inondation de Louis Delluc)
フランス/1923年/87分/モノクロ/35mm/日本語字幕
監督:ルイ・デリュック
出演:エーヴ・フランシス、ヴァン・デル、エドモンド・ダエル、ジネット・マディ

ローヌ川沿いの静かな村。若くて正直な農民のアルバンは美しいが移り気なマルゴと婚約している。町役場で働く父親に会いに来た貧しいジェルメーヌは、アルバンに親切にされ、いつしか深く愛するようになる。しかし彼から拒絶されたショックでくずれ落ちてしまう。その頃、川の洪水で村が浸水し始める。映画特有の美を追究したフォトジェニー論で知られるルイ・デリュックの遺作。注文作品でありながら、そこにはデリックが好んだテーマ(よみがえる過去、恋愛の三角関係と幻滅、拒絶感と復讐心)が盛り込まれている。
© Le Chemin d'Ernoa, Louis Delluc, collections La Cinémathèque
『エルノアへの道』(Le Chemin d'Ernoa de Louis Delluc)
1920年/フランス/50分/モノクロ/35mm/日本語字幕
監督:ルイ・デリュック
出演:エーヴ・フランシス、アルセーヌ・デュレク、ガストン・ジャッケ

バスク地方出身の裕福な農民のエチェゴールは美しいアメリカ人女性マジェスティ・パーネルに夢中になる。実は、マジェスティの夫は窃盗をはたらき、警察に追われており、エチェゴールに嘘のアリバイを強要するために妻に誘惑させていた。当初『アメリカ人』というタイトルで企画された本作は、デリュックが始めてロケで撮影した作品であり、この地方独特の光、熱を帯びたような官能的な雰囲気がドラマの中でうまく生かされている。ルイ・デリュックの2本の作品はシネマテーク・フランセーズによって保存されていた素材からCNCのデジタル政策の一環としてドキュモン・シネマトグラフィックによって、2015年に2Kに修復された。




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