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RECOMMENDATION
2012/1/27(金)
アピチャッポン・ウィーラセタクン傑作選「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ」
アピチャッポンの森が爆音”ウォール・オブ・サウンド”の中に蘇る必見必聴の企画上映が吉祥寺バウスシアターで行なわれる。『ブンミおじさんの森』(10)のみならず、『真昼の不思議な物体』(00)、『ブリスフリー・ユアーズ』(02)、『トロピカル・マラディ』(04)という過去の傑作群を35mm/フィルム上映で体験する”ヒア アフター”を彷徨う2週間!
(但し、爆音上映は28日&29日の夜のみ!)

1月28日(土)〜2月10日(金)@吉祥寺バウスシアター

2012/1/24(火)
『アニマル・キングダム』
マーティン・スコセッシ『グッドフェローズ』の語りのスタイルを踏襲しながらも、20世紀ギャング映画のように暴力はスペクタクルに炸裂せず、時間をかけて人の内面を抑圧する。先日、WOWOWで放映された”トラウマ映画”、ウォルター・E・グローマンの『不意打ち』同様、実に恐ろしきは母親の溺愛なり!この殺伐としたギャング映画に登場する数少ない”善人”、ジョエル・エドガートンとガイ・ピアースの二人が何と素晴らしい好人物に見えることか。

2012/1/6(金)
『哀しき獣』
ナ・ホンジン監督(『チェイサー』)の新作『哀しき獣』は、監督の圧倒的な演出力、ハ・ジョンウ、キム・ユンソクといった一級の俳優陣、アクションシーンの技術水準の高さ、朝鮮族自治州と南北国境地帯を舞台に「狂犬」として生きざるをえなかった男の哀しみを絶妙に描き切った脚本、そうした全てが寡黙にして単純ならざる卓越した活劇を創造することに奉仕しており、観終わった後に思わず拍手喝采したくなるような極上のクライム・サスペンスに仕上がっている。自ら抜群の行動力を発揮する殺人請負業の”社長”を演じるキム・ユンソクが出色の存在感で映画を盛り上げる。近年の韓国映画では別格の傑作!

2012/1/5(木)
『テトロ』
2010年のラテンビート映画祭で上映され、それっきり音沙汰がなかったフランシス・フォード・コッポラ監督、2009年の傑作『テトロ』が、急遽『テトロ 過去を殺した男』として劇場公開されることになった。当初マット・ディロン主演で構想されたことからも分る通り、『ランブルフィッシュ』を強く想起させる本作だが、主演にビンセント・ギャロを迎え入れたことで、コッポラが執着する兄弟の物語が、よりエキセントリックな緊張感の中で展開するさまを観客は目撃することなるだろう。アメリカでも限定公開に終わった本作は、日本においても、宣伝費も投入されない単館短期間上映となったが、仏カイエ誌が2009年年間ベスト10の6位に選出するなど、批評家やシネフィルの評価は高い。巨匠がブエノスアイレスで撮り上げた詩情溢れる傑作を、是非とも劇場でご覧になることを!

2011/12/28(水)
『宇宙人ポール』
『ルルドの泉で』
『ブリューゲルの動く絵』
2011/12/22(木)
『クリスマスのその夜に』
『ホルテンさんのはじめての冒険』『キッチン・ストーリー』で日本でも人気の高いノルウェーのベント・ハーメル監督の最新作。クリスマス・イブの夜を過ごす、様々な夫婦や恋人、子供たちの姿を切なく、愛らしく、時にほろ苦く描く。離婚して家を追い出された元夫がサンタに化けて家に忍び込み、愛しい我が子を抱き上げる、、、我が子の柔らかい体を抱く瞬間に涙!追い出されてしまったダメ亭主の悲哀を描く一連の繊細な演出が素晴らしい。エンディングも秀逸な大人のためのクリスマス群像劇。
2011/12/2(金)
『ピザボーイ 史上最凶のご注文』
『ゾンビランド』のルーベン・フライシャー監督とジェシー・アイゼンバーグ(『ソーシャル・ネットワーク』)のコンビによる新作。まあ、このコンビの新作だから見逃すわけにはいかない。あまりにも色々な事が起きた今年、2011年という年を忘れるわけにはいかないが、この映画を観ている82分間は全てを忘れて大笑いしたい。前作を上回る爆発力の、今年一番の爆笑映画!

2011/12/1(木)
『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』
月、北極、南米、中東、ロシア、チベット、サハラ砂漠、カリブ海などなど、世界中を舞台に、情報技術が発達する前の時代にも関わらず、徹底的なリサーチに基づき背景や小道具を描き込んだ、ベルギー生まれのエルジェによる冒険活劇「タンタンの冒険」が、スティーブン・スピルバーグによって映画化されるのは時間の問題だったといって良いかもしれない。ピーター・ジャクソンをプロデューサに迎え、満を持して3DCGで映像化された『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』は、新奇な実写的なクオリティを持つ人間や動物のCGキャラクタが、実写では不可能な漫画的動きで大画面を狭しと動き回る。やりたい放題にやったスピルバーグの悪戯っぽい笑顔を思い浮かんでくるローラーコースター・ムービーに仕上がっているが、ディテイルに目を奪われ過ぎて、観終わってみると、今観たものは一体なんだったのか?と、狐につままれたような気持ちになる人もいるかもしれない。

『プリピャチ』
チェルノブイリ原発事故後に原発周辺の立入制限区域で生きる人々を捉えたドキュメンタリー。チェルノブイリ事故当日と十年後をフィクションとして描き、今年のTIFFで上映され好評を博した『失われた大地』とも比較して観てみたい。ニコラウス・ゲイハルター監督のトークも予定されている。

<6日間限定ロードショー>
12/3(土)、6(火)〜10(土)@アテネ・フランセ文化センター

2011/10/14(金)
『キャプテン・アメリカ』
ナチス・ドイツがヨーロッパを席巻した1940年代を舞台に、”マーベルコミック”のパラレル・ワールドが展開するアクション大作。再現された1940年代を背景に、SF的意匠が3Dの映像表現で展開する面白さと、強すぎない初代アメリカン・ヒーローの活躍が不快でない人間味を醸し出し、好感が持てる。トミー・リー・ジョーンズの存在感も吉。

2011/9/29(木)
『カンパニー・メン』
「ER 緊急救命室」「ザ・ホワイトハウス」を手掛けるTVドラマの名手ジョン・ウェルズの長編映画デヴュー作『カンパニー・メン』は、MBAを持っているホワイトカラーでさえ失業の危機に追いやられる、リーマンショック以降のアメリカの厳しい現実を描いたシリアスな作品ながらも、トミー・リー・ジョーンズ、ベン・アフレック、クリス・クーパー、ケヴィン・コスナーといったハリウッド・スターが揃ったアンサンブル・キャストの豪華さ故、観ていて安心感があり、娯楽作品として立派に成立してしまっているところに、アメリカ映画の懐の深さを感じさせられる。所々に、舞台となった港町ボストンの景観を捉えた見事なショットが紛れ込んでいるのは、名撮影監督ロジャー・ディーキンスの仕事、監督の演出プランによるものだと思うが、絶妙な案配でほどほどに格調を高めるサジ加減がお見事。

2011/9/22(木)
『アンダーグラウンド』
ナチス・ドイツ占領下のセルビア、弾圧を逃れ広大な地下空間(アンダーグラウンド)で人知れず50年間暮らした人々が地上へ出ると、もはや祖国はなくなっていた!サラエヴォ生まれの風雲児エミール・クストリッツアの1995年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品、寓話的群像劇『アンダーグラウンド』が、デジタルリマスターされ15年振りにスクリーンに蘇る。併せて、クストリッツァ傑作選『黒猫・白猫』、『マラドーナ』の上映もあり。

9月24日(土)〜10月21日(金)@シアターN渋谷

2011/9/12(月)
Image.Fukushima vol.2
「福島」について考え続けること、あるいは、イメージし続けることは、私たち日本に住む者すべての責務であると思う。その契機を、フォード、タルコフスキー、キアロスタミ、亀井文夫、森崎東といった映画作家たちの優れた作品が与えてくれようとしているこの機会を逃す手はない。

9月17日(土)〜23日(金・祝)@ユーロスペース
KINO TRIBE 独立映画宣言!
「福島」についてイメージすることは、「インディペンデント」であることや「自由」であろうとすることを考えることと矛盾しない。「Image.Fukushima vol.2」と同期間、同じ渋谷のキノハウスに、日本のインディペンデント映画最強の顔ぶれが集う特集上映が行われることはなかなか痛快なことだ。

9月17日(土)〜23日(金・祝)@オーディトリウム渋谷
2011/9/2(金)
『ライフ』
あのBBC製作のネイチャードキュメンタリー、というだけあって、滅多にお目にかかれない動物たちの驚きに満ちた営みを大スクリーンで体験できる喜びを提供してくれることは間違いない。ただ、それらの野生動物の行動を”人間”の目線で解釈し、”家族”、”愛”といったわかりやすいヒューマニズムに落とし込む番組作りにいささか首を捻ってしまった。しかし、そのヒューマンな方向付けを脳科学者の養老孟司などは高く評価しているとのこと。子どもと一緒に見れるファミリー映画として、おすすめできる。
2011/8/9(水)
三大映画祭週間2011
ズバリ、おすすめは以下の3作品。『夏の終止符』は、昨年のベルリン映画祭レポートでも少しご紹介している通り、映画祭会場でとても話題になっていたというロシアのミステリー作品。『宇宙飛行士の医者』は、なんと『フルスタリョフ、車を!』のアレクセイ・ゲルマンの息子さんの作品。そして、今や、彼女が出る作品にハズレなし、の感すらある、クリスティン=スコット・トーマス出演のフランス映画『唇を閉ざせ』の計3本。

『夏の終止符』アレクセイ・ポポグレブスキー
2010年ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀男優賞、芸術貢献賞)
『宇宙飛行士の医者』アレクセイ・ゲルマン・ジュニア
 2008年ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)
『唇を閉ざせ』ギヨーム・カネ
 2007年セザール賞最優秀監督賞、最優秀男優賞

8月13日(土)〜26日(金)@ヒューマントラストシネマ渋谷
2011/7/22(金)
サイレント小特集
チャップリン、キートン、エイゼンシュタインの名作サイレント映画の数々、フリッツ・ラングが中世ドイツの叙事詩「ニーベルンゲンの歌」に挑んだニーベルンゲン2部作、ルビッチのレアな一作『山の王者』、そして、せっかくのこの機会にムルナウの『サンライズ』をスクリーンで!(全作品16mmフィルム上映)

7/23(土)〜8/5(金)@シネマヴェーラ渋谷
フィルム傑作選ソクーロフ
アレクサンドル・ソクーロフ、近年の代表作『チェチェンへ アレクサンドラの旅』『エルミタージュ幻想』から、劇場未公開の2作品、エリツィンに迫ったドキュメンタリー『ソビエト・エレジー』とタルコフスキーについてのドキュメンタリー『モスクワ・エレジー』を含む16作品一挙上映。ソクーロフ監督の通訳を20年間務める児島宏子(7/23)、フィルムセンター主幹岡島尚志(7/24)、ロシア文学者亀山郁夫(7/26)によるトークショーも予定されている。(全作品35mmフィルム上映)

7/23(土)〜8/5(金)@ユーロスペース
2011/7/1(金)
『蜂蜜』
トルコのセミフ・カプランオール監督、ユスフ三部作の第三部『蜂蜜(はちみつ)』。人間が、働き、眠り、食事をし、言葉を学び、生きていく、そして、死ぬということを、最もシンプルな形で粛々と続けて行くこと、その事だけをフィルムに収めようという、ラディカルな意思の下に創られた聖なる映画。『ユキとニナ』『ブンミおじさんの森』『四つのいのち』、今や映画のフロンティアは”森”の中へ向かう。第一部『卵』、第二部『ミルク』は7/30(土)より。
初日の7/2(土)銀座テアトルシネマにて、ユスフ三部作一挙オールナイト上映あり。
2011/6/24(金)
ロベール・ブレッソンの芸術『スリ/ラルジャン』
紀伊國屋書店&マーメイドフィルムの黄金コンビが繰り出す<映画の國名作選>、第1回のイタリア映画名作選(ベルトルッチ『暗殺の森』、『フェリー二の道化師』、ロッセリーニ『ロベレ将軍』)、第2回シャブロル未公開傑作選(『甘い罠』『最後の賭け』『悪の華』)の余韻も醒めやらぬ内に繰り出される<ロベール・ブレッソンの芸術>、『スリ』、『ラルジャン』のニュープリント上映が始まってしまう。東京は今、見きれない数の名作映画がスクリーンに溢れかえっている。一体この躁状態はいつまで続くのか?

6/25(土)〜7/15(金)@シアター・イメージフォーラム
2011/6/23(木)
「爆音映画祭2011」
今回も凄いことになっている「爆音映画祭」。少なくとも、24(金)21時『ザ・ローリング・ストーンズ レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』(ハル・アシュビー!)、26(日)20時『サウダージ』、30(木)21時半『ヘア・スタイリスティックス 無声映画ライブ』は必見だ!と思いつつ、ジョン・カーペンター『ゼイリブ』、ベロッキオ『夜よ、こんにちは』もマストだし、『アリ』、『ハーダー・ゼイ・カム』、『ソウルメン』のブラック・パワーにもあやかりたい!という欲張りな観客の欲望を開拓する「爆音映画祭」、万歳!

6/24(金)〜7/9(土)@吉祥寺バウスシアター
2011/6/20(月)
「ヘルツォーク傑作選2011」
うかうかしている間に、残り1週間となってしまったヘルツォーク特集。何とか、見るからに陰鬱そうな日本未公開作品『My Son, My Son, What Have Ye Done』ともう1本くらいは観て、やはり常道を逸してこそ人生、ということを密かに再確認したい。

6/11(土)〜24(金)イメージフォーラム
2011/5/27(金)
「EUフィルムデーズ2011」
ほんの些細な不親切から恐ろしい体験に巻き込まれるヒロインの恐怖の3日間を描くサスペンス・スリラー。エゴヤンの『秘密のかけら』が印象に残るアリソン・ローマンは、『エクソシスト』の女優リンダ・ブレアを彷彿させるどちらかといえば”非美人系”、体当たり演技でヒロインを演じ新境地を開拓した。ホラー映画が苦手な人にも”オモシロコワい”と大評判のサム・ライミの新作。

5/27(金)〜6/19(日)@東京国立近代美術館フィルムセンター
2011/5/24(火)
「映画の授業」
『武器庫』ドヴジェンコ、『吸血鬼』ドライヤー、『俺は善人だ』フォード、『未来への迷宮』アブラム・ローム、『希望/エルテルの山々』マルロー/ペスキーヌ、『外套と短剣』ラング、『アナタハン』スタンバーグ、『アナタハン島の真相はこれだ!!』吉田とし子、『叛乱』佐分利信/阿部豊、『紙の花』グル・ダット、全て観たいが、イム・サンスによるリメイク『ハウスメイド』の8月公開が決まっている、キム・ギヨンの『下女』はどうしてもスクリーンで観ておきたい。

5/24(火)〜6/4(土)@アテネ・フランセ
2011/5/16(月)
『少女たちの羅針盤』
いわゆる”ご当地もの”映画ながら、長崎俊一監督、主演成海璃子、(個人的には良いと思わなかった)『マイ・バック・ページ』の忽那汐里共演のミステリーということで仄かな期待を抱かせる『少女たちの羅針盤』は、ミステリー映画としての評価はともかく、青春時代特有のヒリヒリした切羽詰まった感覚を捉え、まずまず期待を裏切らない出来映えに収まっている。そんな中で、観るものの期待感やら、広島県福山市やら、ミステリーやら、美少女共演映画やらという、諸々の付帯状況を超えて、抜群の存在感を放ち、フレームの外へ疾走していく成海璃子が、やはり、本作でもずば抜けて素晴らしい。
2011/5/10(火)
「世界のドキュメンタリー」スペシャル
この機会に挑戦したいドキュメンタリー巨編、ロバート・クレイマー『ルート1』240分、王兵(ワン・ビン)『鉄西区』545分、日本を代表する二人のドキュメンタリスト土本典昭と小川紳介の名作『海盗りー下北半島・浜関根ー』(土本)、『三里塚・岩山に鉄塔が出来た』(小川)、放射能物質が舞う今こそ観ておきたい『ダストー塵ー』、青山真治監督2001年の作品『すでに老いた彼女のすべてについては語らぬために』など、必見の作品が並ぶドキュメンタリー映画の特集上映。

5/11(水)〜20(金)@渋谷オーディトリウム
2011/4/28(木)
イタリア映画祭2011
『マーラー 君に捧げるアダージョ』
『ミスター・ノーバディ』
公式サイト

レビュー
『キッズ・オールライト』
『ブルー・バレンタイン』
『メアリー&マックス』
『歓待』
去年のTIFFある視点部門で上映され作品賞を受賞、とにかく観た人、特に玄人衆の評判がやたらに良い作品。宣伝文曰く「現代日本を風刺した傑作テツガク喜劇」とのこと。24日(日)〜29日(金)まで連日トークショーも予定されている。
『昼間から呑む』
連休中にうってつけのタイトル!の韓国映画。日本の若手映画作家たちが、低予算でも面白い映画が作れることを証明している!とこぞって本作を賞賛。
『イブ・サンローラン』
正統派ファッショニスタの間で圧倒的な支持を受ける”デザイナーの中のデザイナー”、イブ・サンローランの孤独と栄光の日々を、サンローランの公私にわたるパートナーとして知られるピエール・ベルジュが語る、決定的なYSLドキュメンタリー。必見!
2011/4/14(木)
『悲しみのミルク』
印象的な眼差しと歌声を持つ女優マガリ・ソリエルが即興で作り出した歌と彼女が演じる悲劇的人物ファウスタが、残酷さと笑い、悲しみと喜びが共存する「ペルー的感性」を持つといわれるクラウベル・リョサ監督(小説家マリオ・バルガス=リョサの姪)作品でどのように息づいているのか。『シルビアのいる街で』の撮影で知られるナターシャ・ブレイアの映像美とスサーナ・バカ等のメランコリックな崇高さが漂う音楽でも知られる国、ペルーから届いた本作を、このどさくさに紛れて見逃すわけにはいかない。
2011/3/24(木)
『わたしを離さないで』
カズオ・イシグロの長編小説が原作のこの作品、どうやら原作小説を読んでから映画を観ないとその魅力が伝わりずらい作品らしい。かくいう私は、原作を読まずに、去年のTIFFで映画を観てしまい、さっぱり作品の良さが理解出来なかった。小説を読んで観た人々の評価は概ね好評なので、これからご覧になろうという方は、原作小説を読んでからご覧になることをお薦めします。

2011/3/4(金)
『恋とニュースのつくり方』
『ノッティングヒルの恋人』のロジャー・ミッシェル監督と『プラダを着た悪魔』の脚本家アライン・ブロッシュ・マッケンナのコンビによる、ニューヨークを舞台に3流大学出身の新人番組プロデューサーの活躍を小気味よく描いたサクセス・ストーリー。オーバーアクティング気味のハリソン・フォードとダイアン・キートン共演、主演レイチェル・マクアダムスのコメディエンヌぶりが素晴らしい!所々突っ込みどころはあるものの、久々に出会った良質なハリウッドコメディ。サントラもナイス!

2011/2/25(金)
『悪魔を見た』
正確に言うと、万人向けのおすすめ映画では全くない。最愛の婚約者を殺され復讐の鬼と化したイ・ビョンホン演じる主人公が、チェ・ミンシク演じる殺人鬼を追いつめて制裁を加え、また逃がしては捕まえて制裁を加えるという凄惨な復讐劇。試写では途中退場者が何人も出たという問題作。ドSのイ・ビョンホンを見たいという暗い欲望を抱えた向きにはおすすめだが、それだけの映画であればここにわざわざ掲載しない。なぜここまでやるのか?という疑問は最後の最後まで残るが、中途半端な一神教批判が残念だった『冷たい熱帯魚』を遥かに凌駕する映画作りのクオエリティの高さと、“悪魔”と宗教的モチーフを短絡的に結びつけない潔い映画的即物性は驚きに値する。
2011/2/4(金)
『毎日かあさん』
原作者西原理恵子を小泉今日子、夫の鴨志田さんを永瀬正敏、という原作の設定に近い元夫婦が演じる。実生活で離婚した二人に同じような境遇を演じさせるなんて“映画”でなければ出来る事ではない。その永瀬が演じる“元戦場カメラマン”鴨志田さんが世界と繋がり“戦争”を日常に持ち込んでくる、そのはた迷惑な“影”の部分が西原さんの人生を嫌が上にも豊かに彩るさまを映画の中心にしっかりと描きながら、原作の精神を活かしユーモアと軽さと明るさで見事に演出した小林聖太郎監督の手腕が見事。二人の子役も素晴らしい、万人にお薦めしたい日本映画。
2011/1/27(木)
『ヘヴンズ・ストーリー』
圧倒的な賞賛の声が寄せられている瀬々敬久監督の意欲作『ヘヴンズ ストーリー』が、新宿 K's cinemaにて1/29(土)〜2/4(金)の1週間上映される。見逃している方は是非この機会に!
2011/1/21(金)
『デュー・デート』
痛快コメディ『ハングオーバー』の製作チーム(トッド・フィリップス監督)による新作。前作で苦笑を誘ったメタボ体型のザック・ガリフィアナキスと目下絶好調のロバート・ダウニー Jr.の迷コンビが、アメリカ大陸横断の旅に出てあれやこれやのトラブルに巻き込まれる、全くもって気楽に楽しめそうな脱力系コメディ。
『さしさわりのある映画特集』
ミニシアターがバタバタと倒れる中、刺激的なプログラムで攻め続けるアップリンク・ファクトリー。公開当時、実際にかなり差し障りのあった『ゆきゆきて、神軍』から、古典的名作三隅研次の『座頭市物語』、ヘルツォーク『小人の饗宴』、そして、社会派の巨匠山本薩夫の『真空地帯』など4作品、ソクーロフの『ボヴァリー夫人』まで、映画として素晴らしい作品ばかりが並ぶ、配給会社パンドラの企画上映。
2011/1/14(金)
『アンストッパブル』
言わずと知れたトニー・スコット監督の新作は前作『サブウエイ123 激突』の暴走サブウエイに続く、暴走列車アクション!こうも確信犯的に暴走列車モチーフを続けられると、自らの力ではもはや止まることが出来ない現代人の迷走が影のテーマか?などと勘ぐりたくなるが、まあ、そんな事はどうでもいいから、まずはトニスコの新作アクションを楽しむべし!という声がTLから聞こえてくる。
『WE DON'T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY…』
ガスパール・クエンツ、セドリック・デュピール共同監督作品。東京のアンダーグラウンド(とは限らないが)音楽シーンで活動する8人のミュージシャン(坂本弘道、大友良英、山川冬樹、L?K?O、Numb、Saidrum、竹久圏、嶋崎朋子)をフィーチャーした、都市の雑踏と廃墟の中に、驚くべき美しさを垣間見せるノイズ映画の傑作。山川冬樹の圧倒的な身体表現、Umi no Yeah!!のバカバカしいスーパークールネスに興奮し、ラストシーン、坂本弘道のチェロに涙する。

2010/12/28(火)
『アブラクサスの祭』
今年の1月に開催された特集上映「未来の巨匠たち」で、濱口竜介、瀬田なつき、佐藤央、三宅唱、小出豊らと共に「未来の巨匠」に列せられたひとり、加藤直輝の商業映画デビュー作『アブラクサスの祭』は、クリスマスの喧噪が終わり、「ゆく年くる年」の静寂が近づきつつある今こそ見るに相応しい、仏教とロックを突き抜ける瑞々しいストイシズムが漲る傑作映画。
『海炭市叙景』
村上春樹、中上健次と並び称されながらも、評価に恵まれず自ら命を経った不遇の小説家、佐藤泰志の幻の小説が、原作のモデルとなった街”函館”を知る北海道出身の熊切和嘉監督により映画化。絶好調の加瀬亮を見るためにも足を運びたいと思いながら、TIFFでも見逃した、なんて人もいるのでは?この年末年始にどうしても観ておきたい作品。
『溝口健二傑作選』
年末年始のまとまった、ゆっくりとした時間の中でその豊かさを味わいたいのが、日本映画の名作選。溝口映画の洗練は、世界中の映画作家にとって、未だ色褪せない永遠の憧れであり続けている。トラン・アン・ユンの『ノルウエィの森』は、溝口映画への最も新しいオマージュのひとつだと言うことはできないだろうか?
『友川カズキ 花々の過失』
R.E.M.やモグワイのビデオ作品で知られるフランスの映像作家ヴィンセント・ムーンが、大島渚や中上健次らと親交の深かった無頼派の詩人、友川カズキを捉えたドキュメンタリー映画。”花々の過失”という言葉からして、ざわざわと良からぬ想像力を掻き立てられる、観ることが特別な体験になりそうな予感を感じさせる不穏な一作。
2010/12/17(金)
『シチリア!シチリア!』
ジョゼッペ・トルナトーレ監督最新作。”ヴィスコンティの『山猫』に登場するドン・ファブリツィオは、「17歳になるまでにシチリアを出なければ、シチリア人の欠点が身に染み付いて取れなくなってしまう」と言っていたが、まさにこの私がそうである”とトルナトーレ監督自信が認める通り、本作の90%を良くも悪くも”シチリア”が占め、観るものを幾分辟易させるかもしれない。しかし、残りの10%、冒頭とエンディングをワープで繋げる子どもの疾走を見事に演出した映画言語のマジックが、いやがうえにも観客の号泣を誘う。主演の伊達男フランチェスコ・シャンナのダンディズムもイタリア映画ならではの豊かさ。

『ロビン・フッド』
イギリスのシャーウッドの森に住んていたとされる伝説の義賊”ロビン・フッド”といえば、弓矢の達人。中世で最もメジャーな武器であった”弓矢”の持つ破壊力、その重量感のある映像/音響描写は、さすがに希代のビジュアリスト、リドリー・スコットの面目躍如。その弓矢が大量に放たれる戦闘シーンはさすがに見応えがある。無愛想なラッセル・クロウと男勝りなケイト・ブランシェットのコンビにも倒錯的な魅力的が漂う。そうした全てが既視感の中に収まってはいるものの、今後長く見続けることができる良質の娯楽映画として高く評価されてしかるべき作品。アモス・ギタイ監督『幻の薔薇』での主演があまりにも素晴らしかったレア・セドゥーの美しい肢体を目にすることができるのは嬉しいオマケ。
2010/12/3(金)
『極悪レミー』
21世紀の今、こんな生き方ができる奴はちょっと他にいない。モーターヘッドキッズが「核爆発が起きても、ゴキブリとレミーは死なねえぜ!イェー!」と言ってる隣りで 「そうだぜ、そうだぜ、間違いない!」と連れのキッズが相づちを打つ冒頭のシーンにまずは爆笑、以降、挙げればキリがないほどの爆笑シーンとロックシーンの重要人物によるレミー礼賛証言の数々、あまりに自由過ぎるレミーの生き様は、世知辛い現代人にとってはもはや癒しすら与えてくれる。レミーをリスペクトするミュージシャンは、メタリカやオジー・オズボーンといったヘビメタ人脈にとどまらず、クラッシュ、ダムド、ニューオーダー等のUKロック、パンク、ニューウエーブから、元パルプのジャーヴィス・コッカー、名優にして映画作家でもあるビリー・ボブ・ソーントンにまで至る。今まで、ヘビメタと思って敬遠していたモーターヘッドの音楽も大いに見直す事間違いなし。レミー在籍時のホークウインドのサイケデリックなライブ映像にも目が釘付け!

2010/11/19(金)
第11回東京フィルメックス
アピチャッポンの『ブンミおじさんの森』で開幕する今年のフィルメックス。キアロスタミ監督が初めて祖国イランを離れて撮影した長編『トスカーナの贋作』(大傑作!)を始め、アモス・ギタイ『幻の薔薇』、ジャ・ジャンクー『海上伝奇』、ワン・ビン『溝』等の特別招待作品、ダンテ・ラム『密告者』、チョン・チョルス『ビー・デビル』、想田和弘『Peace』等、注目のコンペ作品がずらりと並ぶ。映画祭は時間との闘い、何とかやり繰りして一つでも多くの作品を大スクリーンで観たいもの。OUTSIDE IN TOKYO では、作品レビュー、監督インタヴューの掲載を予定しています。

公式サイト

『ブンミおじさんの森』レビュー
(カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞時のもの)
2010/11/17(水)
『クリスマス・ストーリー』
今年のフランス映画祭で上映されたアルノー・デプレシャン監督『クリスマス・ストーリー』がいよいよ劇場公開。ドヌーヴ様、キアラ・マストロヤンニ、メルヴィル・プポー、イポリット・ジラルド、アンヌ・コンシニといったフランス映画界を代表する名優たちとマチュー・アマルリック、エマニュエル・デゥヴォスらデプレシャン常連組が豪華共演を果たした、ユーモアとアイロニーに満ちた、辛辣にしてやっかいな家族の群像劇。フランス映画祭上映時のレビューとマチュー・アマルリックのインタビューを以下に掲載しています。

2010/11/8(月)
『マチェーテ』
ミシェル・ロドリゲス、リンジー・ローハン、ドン・ジョンソン、ジェシカ・アルバ、スティーブン・セガール、ロバート・デ・ニーロという豪華共演者を脇役に配し、タランティーノ映画の”手裏剣野郎”ダニー・トレホが堂々主役の大役を演じる痛快下克上エンターテイメント映画『マチェーテ』が絶賛公開中!楽しめる!だけでなく移民擁護のメッセージが明快に示され、『イングロリアス・バスターズ』のタランティーノ同様、弟分ロバート・ロドリゲスの成長著しい姿に喜びの涙!

2010/10/29(金)
フィンランド映画祭
昨年のアキ・カウリスマキ特集上映で知られるフィンランド映画祭が今年も行われる。劇場公開が決まっている『ヤコブへの手紙』『4月の涙』を含む7作品が上映され、監督の来日、ティーチインも予定されている。フィンランド内戦末期の赤衛軍の女性兵士とエリート兵士の苛酷な運命を描いた『4月の涙』は、知られざるフィンランド史と秘められたセクシュアリティの問題が絡みあう、一種異様な作品。

10月30日(土)〜11月5日(金)@恵比須ガーデンシネマ
2010/10/26(火)
爆音映画祭@横浜
TIFFにうつつをぬかしている間に、横浜では爆音映画祭が始まっていた。ジョン・カーペンターの傑作『ゼイリブ』を爆音で観られるとは!元祖80年代インダストリアル・ノイズ、ノイバウテンの『半分人間』、ブルックリン・ブリッジのたもとに77台のドラムスを集めて行われたボアダムズのライブ・ドキュメンタリー『77BOADRUM』など、爆音で観たら昇天モノのラインナップが並ぶ。

10月23日(土)〜29日(金)@横浜黄金町シネマ・ジャック&ベティ
『約束の葡萄畑』
本来であればレビューで紹介したい素晴らしい作品。『クジラの島の少女』で知られるニキ・カーロ監督の新作。ダルデンヌ兄弟作品、アサイヤスの『夏時間の庭』が印象深いジェレミー・レニエが野心的なワイン醸造家ソブランを、美しく情熱的な妻を『クジラ〜』のヒロイン、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、ソブランとの禁断の愛に揺れる男爵夫人を『デパーテッド』『マイレージ、マイライフ』のヴェラ・ファミーガ、ソブランを誘惑する天使をギャスパー・ウリエルが演じる。19世紀のブルゴーニュ地方の四季を絵画的に描いた見事なロケーション撮影に負けない、俳優陣の匂い立つ官能溢れる存在感が素晴らしい。

2010/10/13(水)
ソフィア・ローレン作品上映会・写真展
「高松宮殿下記念世界文化賞」演劇・映像部門の受賞を記念してソフィア・ローレンの作品上映会と写真展が開催される。『ひまわり』『あゝ結婚』『特別な一日』『昨日・今日・明日』といった名作から『NINE』『微笑みに出逢う街角』といった新作まで、全6作品が全て入場無料!

10月14日(木)〜16日(土)@イタリア文化会館
2010/10/7(木)
クリス・フジワラによる映画表現論『フランス映画における時間とパフォーマンス』
「アワーミュージック」

「罪の天使たち」
© synops-Gallimard
「我が至上の愛 アストレとセラドン」
© Rezo Productions / C.E.R.

映画批評家クリス・フジワラ氏による連続講義。一筋縄ではいかないこれらの作品、ひとつひとつとじっくり向き合うことができる貴重な機会。

第1回 10月8日(金)
17:00 参考上映『アワーミュージック』(80分)
18:30 講義「ジャン=リュック・ゴダール論」

第2回 10月9日(土)
15:40 参考上映『罪の天使たち』(96分)
17:30 講義「ロベール・ブレッソン論」

第3回 10月15日(金)
16:30 参考上映『我が至上の愛〜アストレとセラドン〜』(109分)
18:30 講義「エリック・ロメール論」
2010/10/4(月)
みつめていたい!若尾文子
60年代の日本映画を代表する名女優、若尾文子出演の大映映画20作品を一挙特集上映。タランティーノも悶絶必至のお色気文芸映画『瘋癲老人日記』が今堂々とスクリーンに蘇る!

10月2日(土)〜10月22日(金)@神保町シアター
映画監督五十年 吉田喜重
1960年のデビュー作『ろくでなし』をはじめ、映画監督・吉田喜重50年の足跡を振り返る本格的回顧上映。劇映画全19作に、長・短篇の記録映画を加えた計43本(24プログラム)が上映される。監督ご本人、蓮實重彦御大、青山真治監督、女優岡田茉莉子さんが登場する豪華トーク・イベントも予定されている。

10月5日(火)〜10月31日(日)@東京国立近代美術館フィルムセンター
2010/9/2(木)
『トラブル・イン・ハリウッド』
思えば21世紀の10年は、デ・ニーロ&パチーノ ファンにとってはフラストレーションが溜まる時代であった。『ヒート』以来の競演作となった『ボーダー』は、まったく噴飯もののチープな仕上がりで、もう完全に二人の時代は終わったのだなという醒めた感慨すら覚えたほど。傑作テレビ映画『エンジェルス・イン・アメリカ』以外にこれといった出演作が思い浮かばないパチーノは、映画よりも演劇にその軸足を移したようで、スクリーンでの存在感は薄まるばかり。一方、デ・ニーロの方は、自らの監督作品『グッド・シェパード』の製作や、コメディを中心に全盛期ほどではないにせよ、十分”名優”ぶりを発揮してきたと言えないこともないが、この新たな10年はより充実したDECADEになることを期待したい。本作は、その3の線のデ・ニーロ主演のハリウッド内幕物。豪華俳優陣(ショーン・ペン、ロビン・ライト・ペン、ブルース・ウィリス、クリスティン・スチュワートなど)とのアンサンブル演技を堪能しつつ、軽い気持ちで楽しめそうな一品。
2010/8/10(火)
『ルンバ』
チャップリンやキートン、ジャック・タチの素晴らしい喜劇の伝統を甦らせた!とのフレコミのベルギーの道化師カップル、アベル&ゴードンによる長編第2作目の道化師映画。12月にゴダールの新作を配給するフランス映画社のバウ・シリーズ作品となれば、もう間違いないのでは!と思ったりもする。彼らの長編第1作『アイスバーグ!』も同時上映。
『瞳の奥の秘密』
本国アルゼンチンで大ヒットを記録し,アカデミー最優秀外国語賞を受賞した話題作が今週末に公開される。裁判所を定年退職した男が、25年前に起きた忘れられない殺人事件を題材に小説を書こうと決意し、未解決事件の謎に挑むのだが、自分が正面から向き合うことを避けてきた過去の秘密と向き合うことになる、、、未解決の殺人事件の謎と愛の物語が交錯する極上の人間ドラマとの評判に大いに心惹かれる一作。
2010/7/16(金)
『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』
70年代アメリカの伝説的な映画を上映するZIGGY FILMS 第2弾は、ハル・アシュビー、1971年の傑作『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』。主人公のハロルド青年は、恵まれた環境に生まれ育ちながらも、生きることの意味を見いだせず、死の幻想に取り憑かれ、日々自殺の夢を見て周囲を困惑させる。そんなある日、自由を謳歌して生きる79歳の老婦人モードと出会い、生まれて初めて恋を知り、生きることの喜びや悲しみに触れ、人間らしい感情を経験していく。編集マンとしてキャリアをスタートさせたアシュビーらしい、見事な映画のリズムと名撮影監督ジョン・A・アロンゾの情感溢れる美しい映像美が今なお新鮮な、永遠の青春映画である本作には、幼少期に両親の離婚、父親の自殺を経験、自らも高校時代に結婚と離婚を経験、19歳でハリウッドのユニバーサルスタジオで働き始めたという苦労人ハル・アシュビーの人生のエッセンスが凝縮されている。
2010/7/15(木)
第32回 PFF ぴあフィルムフェスティバル
1977年以来、日本の自主映画を支え、新たな才能の発掘に貢献してきたPFF。今年は、日米自主映画の巨頭、若松孝二とジョン・カサヴェテスの特集上映が組まれている。オドロオドロしいタイトルで敬遠されがちな若松作品に対する偏見を払拭する絶好の機会だ。そして、役者として活躍しながら、自主制作で撮り上げたカサヴェテスの初監督作品『アメリカの影』、我らがジャンヌ・バリバールが大好きだという女優、レニア・ゴルドーニが50年代末のニューヨークのストリートを疾走し、ミンガスのジャズが炸裂するこの名作を、未見の方は是非この機会に観てほしい。過去のPFFスカラシップ作品の一挙上映や、『川の底からこんにちは』の石井裕也監督と『イエローキッド』の真利子哲也監督による、『独立愚連隊西へ』(岡本喜八)の対談解説等、イベントも充実している。

7月15日(木)〜30(金)@東京国立近代美術館フィルムセンター
2010/7/5(月)
『ハングオーバー』
結婚式直前のバチュラーパーティーで、ラスベガスへ行った4人組が、ハメを外しすぎた挙げ句にとんでもない事態を引き起こすナイトメア・コメディの傑作。ファレリー兄弟以降、アメリカのコメディに定着した下ネタ、差別ネタ満載のお下劣スタイルでグイグイ押して来る。ヘザー・グラハムがストリッパー役でパンチの効いた存在感を示しているが、この役を脚本段階であまりにもバカらしいと思って断ってしまったというリンジー・ローハンは今になって後悔しているという。とはいえ、この作品の仕上がりを脚本段階で想像するのはかなり難しそうで、リンジーが断るのも無理もない、と思わせる程に荒唐無稽な一品。あまりに暑い日にはこういう映画で一息つくのも悪くない。
2010/6/21(月)
『闇の列車、光の旅』
中米のホンジュラスからメキシコを超えてアメリカへの越境を目指す主人公の少女が、メキシカン・マフィアの少年と列車の屋根で出会う命がけの逃避行。実際の移民やマフィアへの取材から得た実話とボーイ・ミーツ・ガールの物語の定型を見事なフィクションに再構築した、本作が初長編監督作品となる日系人キャリー・ジョージ・フクナガは、移民問題に一石を投じるとともに、生命力そのものの少女と過酷な現実を生きるしかない少年の絶望を濃密に描いた。少女の強い目と少年の遠くを見つめる視線、そして中米の鬱蒼と茂る緑がいつまでも印象に残る。

『ローラーガールズ』
公開から早一ヶ月が過ぎてしまったので、今更ではありますが、、、。ハリウッドの俳優一家に育ち、4歳でスクリーン・デヴュー、女優として華々しいキャリアを築きながらも、私生活で様々なトラブルを経験してきたサバイバー、ドリュー・バリモアの処女監督作品『ローラーガールズ』(エレン・ペイジ主演)は、バリモアらしい毒を発しながらも、なかなかフレッシュな出来映えの青春エンターテイメント。テキサスな彼らのミュージックビデオが本作のイメージソースのひとつになっているに違いない、キングス・オブ・レオンの曲から始まる冒頭からして、バリモアのカルチャー的バックグラウンドを率直に告白する骨太な作家性を感じさせる。巷で言われている”イーストウッドの後継者”というよりは、いつまでもバイオレンス&ガーリーなやんちゃ映画人で居続けてほしい。まだ未見の方は是非。

2010/6/4(金)
『春との旅』
今まで親族との付き合いを疎んで我が儘に暮らしてきた老人忠男(仲代達矢)が、ある日突然、家を捨て、疎遠にしていた親族を巡る旅に出る、小林政広版ロード・ムービー。北海道から東北・宮城へと物語の流れに沿って撮影された各地の風情が映画に生々しい潤いを与えている。忠男を支える孫娘の春(徳永えり)の独特の存在感も良いが、何と言っても、大滝修治、菅井きんの老夫婦、旅館を切り盛りするしっかりものの姉を演じる淡島千景といった日本映画史を彩ってきた素晴らしい俳優陣へのオマージュそのものであるかのような映画の佇まいが素晴らしい。”家族”を冷静な視点で見つめる『東京物語』的テーマの変奏は、孤児院で育てられたトリュフォーが、血の繋がった家族ではなく、”映画”の世界に家族を発見せざるをえなかったという、有名な映画史の一コマとも重なって見え、感動を禁じ得ない。
2010/5/31(月)
EUフィルムデーズ2010
日本では知られざるEUの映画作家の作品の数々をスクリーンで体験することができる数少ない機会到来。『カティンの森』に続くアンジェイ・ワイダの新作『菖蒲(しょうぶ)』、ジョナス・メカスの代表作『リトアニアへの旅の追憶』、オリヴィエラ2006年の作品、ブニュエルへのオマージュ『夜顔』ら、有名映画作家の作品にも惹かれる。

5月28日(金)〜6月20日(日)@東京国立近代美術フィルムセンター
2010/5/14(金)
『書道ガールズ』
成海璃子主演の青春映画。不況と人口流出で衰退していく”紙の街”、愛媛県四国中央市を舞台に、”書道パフォーマンス”で地域を盛り上げるべく立ち上がった高校生たちの実話の映画化。あまりにマンガ的なカット割りや映画的持続の時間とは無縁なテレビ的な全体構成と”ズームイン朝”、”24時間テレビ”などの日テレ的感性の”テレビ映画”ではあるものの、地元テレビ局が地域の面白い取り組みを吸い上げていく仕組みが見事に機能した一例としては、単なるコミックや小説の映画化企画とは一線を画する。成海璃子ら”書道ガールズ”の体当たりパフォーマンスも目新しく新鮮に写った。

2010/4/26(月)
『プレシャス』
80年代ニューヨークのハーレムを舞台に、両親から酷い虐待を受けながらも力強く現実をサバイバルしようとする16歳の少女”プレシャス”が、暗闇の中から一縷の希望の光を見出すプロセスを描く、リアル・ブラック・アメリカの物語。映画の作りはそれ程でもないが、その強烈なストーリー、”プレシャス”を演じるガボレイ・シディベと鬼畜な母親を演じるモニークのリアリティ溢れる演技、サントラのグルーヴに魂をプッシュされるパンチの効いた一作。
2010/4/9(金)
『カケラ』
「キン○マついてりゃえらいのか!」「男知らなくて何が悪い!」というポップに尖った宣伝ビジュアルが新鮮なLGBTテーマのガールズムービー『カケラ』は、桜沢エリカのコミックが原作の、弱冠27歳安藤モモ子監督のデヴュー作。園子温の『愛のむきだし』で絶賛を浴びた満島ひかりが、グダグタな関係にある”彼”と一方的に告白されて関係を迫られる”彼女”との間で揺れる女の子を大胆かつ繊細に演じる。海外映画祭での評判も上々で、出来映えがとても気になる一作。
2010/2/25(木)
『バッド・ルーテナント』
ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才ヘルツォーク(『ノスフェラトゥ』(78)、『フィッツカラルド』(82))が、アベル・フェラーラの『バッド・ルーテナント』(92)を、ニコラス・ケイジ主演、舞台をニューヨークからニューオリンズに移してリメイク。リメイクされたフェラーラ監督はすっかり気分を害し、カンヌ映画祭の記者会見の席で「ニコラス・ケイジとヘルツォークは、地獄へ堕ちるがよい。」と語ったという、、、。
”自分に甘い男”を演じさせれば右に出る者がいないニコラス・ケイジが、ギャンブルとドラッグに溺れ堕ちていく刑事というハマリ役を演じ、自分の靴を調理して食べる自らの姿が収められた短篇映画について「人生の壁にぶつかっている人がこれを見て勇気づけられることを願う」とのコメントを発するなど、数々の伝説的なエピソードで知られる奇才ヘルツォーク監督の演出も楽しみな一作。
2010/2/1(月)
『フローズン・リバー』
08年サンダンス映画祭でグランプリに輝き、審査員長を務めたタランティーノから「今年観た中で、最高にエキサイティングで息をのむほどすばらしい」との賛辞を贈られた話題作。コロンビア大学でポール・シュレイダーに学んだという米インディーズ映画の新しい才能コートニー・ハントが監督と脚本を務め、4年の歳月を費やして完成まで漕ぎ着けた本作は、米国が直面する社会問題を背景に、家族のために、どんな苦境も乗り越えていく二人の母親の姿を情感豊かに描いた感動作との評判。
2010/1/14(木)
『かいじゅうたちのいるところ』
鬼才スパイク・ジョーンズの新作は、同名絵本の実写映画化。奇想天外な想像力の持ち主だけに、一体どんなことになっているのか?とても気になる作品。サウンドトラックに、ヤー・ヤー・ヤーズのカリスマお姉さまカレン・オーが参加していることも好き者を刺激。音楽倒れ、見かけ倒れ、キッズネタ倒れのお洒落映画に終わっていない事を祈る!
『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
全世界で2100万部を売上げる、北欧発の傑作ミステリー小説の映画化。ストックホルムの孤島を舞台に、未解決事件の謎を追う緊迫のサスペンス。経済スキャンダルを巡る社会派要素もバランス良く盛り込まれた大人のエンターテイメントとの評判。原作者スティーグ・ラーソンは、20年間グラフィック・デザイナーとしてキャリアを積んだ後に、反ファシズムの政治雑誌の編集に携わり、2002年から<ミレニアム・シリーズ>の執筆に取りかかったという。ラーソンは、2005年にベストセラーとなった本作の大成功を目にすることなく、2004年、享年50歳で死去している。
2010/1/7(木)
『(500)日のサマー』
全米注目のライターコンビ(スコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバー)が脚本を手掛け、『JUNO/ジュノ』で知られるエリック・スティールバーグが撮影、ミュージッククリップで映像センスを発揮してきたマーク・ウェブが監督、新鮮さ溢れる80年代生まれの二人の個性派俳優ズーイー・デシャネル&ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演のビター&スウィートなラブーストーリー。アトム・エゴヤン映画で知られるマイケル・ダナの音楽と80年代のエバーグリーンなバンド、ザ・スミスの名曲が映画を彩る、アメリカン・ニュー・ブリード感満載の注目コメディ。
2009/12/28(月)
『カティンの森』
齢80歳を超えたポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ(『灰とダイヤモンド』)の最新作。1939年、ドイツヒトラーとソ連スターリンの密約によって、ポーランドはドイツ、ソ連に相次いで侵略される。そのソ連の捕虜になった15,000人のポーランド将校が、1940年を境に行方不明になり、3年後の「カティンの森」で数千人の遺体が発見された。ドイツはソ連の犯行とし、ソ連はドイツの仕業であると主張し、お互いに罪を否定した。戦後、ソ連の衛星国となったポーランドでは、「カティンの森」について語ることは固く禁じられることになる。ソ連の捕虜になった15,000人のポーランド将校の身に一体何が起きたのか?映画は、実際に遺された日記や手紙をもとに、事件の真実に迫る。巨匠ワイダ渾身の一作。
大雷蔵祭
日本映画黄金期の映画スター市川雷蔵の出演作品を一挙100本上映という史上最大の市川雷蔵祭が大開催中。雷蔵にあまり馴染みのない若い人には、スタイリッシュな映像美が今なお新鮮な三隅研次監督作品がおすすめ。
2009年12月12日〜2010年2月26日
女優・高峰秀子
『大雷蔵祭』に負けず劣らず、日本映画の名作目白押しの大女優高峰秀子特集上映。正月になると何故か名作映画が見たくなる。成瀬巳喜男、木下恵介の作品がまとめて見れる嬉しさも。それにしてもこの公式サイト、もう少し何とかならないのでしょうか?
2009年12月19日〜2010年2月5日(12月29日〜1月3日は休館)
2009/12/21(月)
『誰がため』
1941年、ナチス・ドイツ占領下のフランスで、、、と始まり、やりたい放題暴れまくったのは、タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』だが、こちら『誰がために』は、1944年、ナチス・ドイツ占領下のデンマークに実在した2人の若きレジスタンスの生き様を実話に基づいて描いた衝撃作。本国デンマークでは国民の8人に1人が見るという驚異的大ヒットを記録、黒沢清も「紛れもない傑作」と断言!
2009/12/16(水)
『インフォーマント!』
ソダーバーグの新作『インフォーマント!』は、マット・デイモンが<企業内部告発者/インフォーマント>を、体重を15kg増やした成りきり演技でシリアス&コミカルに演じる実話に基づいたブラック・コメディ。仕事で窮地に追い込まれた事から、自分を守る為につき始めたウソが、雪だるま式に次から次へと発展していき、FBIや法務省まで騙すことに、、、。企業の内部告発というディープなテーマを扱いながら、マット・デイモン演じるインフォーマントのアクロバティックな”嘘”の嵐が思わず笑いを誘う、知的エンターテイメント。その痛快なブラック・ユーモアの背後に見え隠れする、ソダーバーグが『セックスと嘘とビデオテープ』以来継続している社会全体に蔓延する証拠映像信仰への批判と企業を中心とした資本主義社会への疑念が映画に厚みを与えている。
2009/12/9(水)
『倫敦から来た男』
ジャームッシュやガス・ヴァン・サントがリスペクトするハンガリーの鬼才タル・ベーラ監督の新作『倫敦から来た男』が12月12日にいよいよ公開。これに伴い、シアター・イメージフォーラムにてトークショーが開催される。

“映像美を語る”
12月17日(木)19:00の回 上映前
若木信吾(写真家)×立川直樹(プロデューサー/ディレクター)

“監督タル・ベーラを語る”
12月19日(土)13:30の回 上映後
田中千世子(映画評論家・映画監督)×市山尚三(映画プロデューサー)

“文豪ジョルジュ・シムノンを語る”
12月25日(金)19:00の回 上映前
堀江敏幸(作家)×長島良三(原作翻訳者)

2009/11/18(水)
第10回東京フィルメックス
OUTSIDE IN TOKYO が独断と偏見でおすすめするのは、ズバリ以下の3本!
『ヴィサージュ』ツァイ・ミンリャン
『カルメル』アモス・ギタイ
『ニンフ』ペンエーグ・ラッタナルアーン
そして、「ニッポン・モダン1930 〜もう一つの映画黄金期〜」と題される特集上映では、溝口健二の最高傑作とも言われる『残菊物語』が東劇の大スクリーンで上映される。3年前の没後50年特集上映『溝口健二の映画』の時に見逃した人は是非この機会に!

11月21日(土)〜29日(日)@有楽町朝日ホール、東劇、シネカノン有楽町1丁目
2009/11/6(金)
『スペル』
ほんの些細な不親切から恐ろしい体験に巻き込まれるヒロインの恐怖の3日間を描くサスペンス・スリラー。エゴヤンの『秘密のかけら』が印象に残るアリソン・ローマンは、『エクソシスト』の女優リンダ・ブレアを彷彿させるどちらかといえば”非美人系”、体当たり演技でヒロインを演じ新境地を開拓した。ホラー映画が苦手な人にも”オモシロコワい”と大評判のサム・ライミの新作。
『谷中暮色』
蓮實重彦が「東京の街がなお魅力的な被写体たりうることを実証してみせた貴重な作品」と断言する本作が、午前11時からのモーニングショー公開だけで良いのか!と不満なのは私のような夜型人間だけ?製作から配給宣伝までを自らおこなうという「オルタナティブ・シネマ」(Node of Cinema)の闘いは始まったばかりだ。

2009/10/16(金)
TIFF 東京国際映画祭
第22回を迎える東京国際映画祭が今年も開催される。OUTSIDE IN TOKYO が独断と偏見でおすすめするのは、ズバリ以下の3本!
コンペティション部門:『ボリビア南方の地区にて』J・C・ヴァルディヴィア
アジアの風部門:『時の彼方へ』エリア・スレイマン
WORLD CINEMA 部門:『シングル・マン』トム・フォード
サム・ライミの『スペル』、カウフマンの『脳内ニューヨーク』、リベットの『小さな山のまわりで』、トルナトーレの『バーリア』は、劇場公開を待てば良いがこの3作品は劇場公開が危ういので、見逃すと後悔しそう。その他でもスコリモフスキの60年代の4作品や『イスラエル映画史』(第1部、第2部)などもそそられるが、時間が、、、圧倒的に足りない!

10月17日(土)〜25日(日) @六本木ヒルズ
2009/10/2(金)
『ボヴァリー夫人』
ジャン・ルノワール、ヴィンセント・ミネリ、クロード・シャブロル、マノエル・ド・オリヴェイラといった世界の巨匠が映画化した、フランス文学の至宝ギュスターフ・フローベールの『ボヴァリー夫人』がロシアの鬼才アレクサンドル・ソクーロフ(『エルミタージュ幻想』、『太陽』、『チェチェンへ アレクサンドラの旅』)によって映画化されたのは1989年の話。完成から20年を経た今、オリジナルの167分を128分に監督自らが再編集した2009年版『ボヴァリー夫人』が公開される。悲劇の主人公エマが纏うディオールの衣装にも注目。
2009/9/25(金)
『空気人形』
”心”を持ってしまった人形を、韓国の人気実力派女優ペ・ドゥナが驚くべき繊細さで演じる。リー・ピンビンの秀逸なキャメラワークと種田陽平、金子宙生の美術を見事な映像表現にまとめあげ、東京という都市の”空虚”を”空気人形”を狂言回しに炙り出す是枝監督の手腕が見事。

9月26日(土)、シネマライズ、新宿バルト9ほか 全国順次ロードショー


© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会
写真/瀧本幹也
2009/8/18(火)
『3時10分、決断のとき』
ラッセル・クロウが悪名高い強盗団のボスを演じ、クリスチャン・ベールが生活に苦しむ足が不自由な牧場主を演じる。ついに保安官に捕まったギャングのボスが裁判所のあるユマに護送されることになり、借金苦からその護送役を買って出る牧場主のベールだが、それはあまりにも危険な仕事だった。父の危機を察知して息子が応援に駆けつけるのだが、、、『ジャッキー・ブラウン』原作のエルモア・レナードらしい男泣かせなストーリーに、映画を見る前から早くも涙腺が緩む。『許されざる者』以来、最高の西部劇と評される本作の出来映えやいかに?
2009/8/4(火)
『湖のほとりで』
ノルウェーの”ミステリーの女王”カリン・フォッスムの小説の映画化、イタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞史上最多の10部門を独占、大ヒットを記録したミステリー/ヒューマン・ドラマ。アンドレア・モライヨーリ監督は、現代イタリアを代表する映画作家ナンニ・モレッティの助監督として現場の経験を積んだ本格派。俳優陣も今のイタリア映画界を代表する顔ぶれが並ぶ。その中にはスパイク・リー『セントアンナの奇跡』でファシストの父親役を演じたオメロ・アンヨヌッティの顔も。この夏の見逃せない一作。
『サマーウォーズ』
アニメ版『時をかける少女』の細田守監督最新作。『映画芸術』誌上で、監督が「夏は暑いからあんまり難しいことは考えられない。だからスカッとした映画を目指した」と語っていて、思わず納得。日頃、アニメには親しみが薄い”大人”なあなたも、束の間の夏休み気分に浸ってみては。
2009/7/13(月)
『扉をたたく人』
愛する妻に先立たれて以来、心を閉ざし、孤独に生きてきた初老の大学教授が、出張先のニューヨークで、シリア出身の移民青年との交流をきっかけに再び生きる意味を見出していく感動作。主演のリチャード・ジェンキンスは、俳優生活40年の名脇役として知られるが、監督、脚本を手掛けたトム・マッカーシーは、自身が『父親たちの星条旗』など多くの出演作を持つ俳優でもあり、俳優として長年リスペクトしてきたジェンキンスのためにこの役柄を書き上げたという。舞台となったニューヨークも魅力的に描かれ、映画の影のテーマ、移民の人権問題にも深く切り込み、アムネスティの映画コレクションにも指定されている、見所満載の大人のための映画。
2009/6/19(金)
『ディア・ドクター』
『ゆれる』の西川美和、長編第三作目の作品。僻地における終末医療という難しい問題、人の職業/生業のウソとホントにまつわる深い洞察、”多忙を極める芸人の中の芸人”笑福亭鶴瓶を主役のドクター役に抜擢するという選択、監督の二重三重の挑戦的な姿勢が伝わって来る力作。瑛太、余貴美子、香川照之、笹野高史といった芸達者たちが監督の挑戦を好サポート、八千草薫と井川遥のシーンは、往年の日本映画の(敢えて誰とは言わないが)名監督のシーンを想わせる。

© 2009『Dear Doctor』製作委員会
2009/6/8(月)
『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』
ジョシュ・ハートネット、木村拓哉、イ・ビョンホン共演という謎なキャスティンながらも、現在『ノルウェイの森』の製作が伝えられる、『青いパパイヤの香り』『シクロ』『夏至』のトラン・アン・ユン監督の新作ならば見ない訳には行かないのでは?という微妙な義務感に駆られる作品。
2009/5/18(月)
『消されたヘッドライン』
マット・デイモンの「ボーン」シリーズの脚本で知られ、『フィクサー』『デュプリシティ』では演出も手掛けるようになったトニー・ギルロイが脚本に参加。スピルバーグの『ミュンヘン』をインスパイアした『ブラック・セプテンバー』でアカデミー・ドキュメンタリー映画賞を受賞、『ラスト・キング・オブ・スコットランド』でも高い評価を受けたケヴィン・マクドナルドが監督を務める。ハリウッドの”問題児”ラッセル・クロウが演じるジャーナリスト像も楽しみのひとつ。
『インスタント沼』
『亀は意外と早く泳ぐ』『図鑑に載っていない虫』の三木聡監督・脚本の新作。細か過ぎる演出が冴え渡り、独自の進化を遂げる日本製携帯電話を思わせる出来の良さ。風間杜夫があり得ない風体の父親を演じさせられ、いつも髪の毛が寝ている印象の加瀬亮の頭はモヒカンリーゼントに。形から入るキャラクター設計は、変だけどわかりやすい。麻生久美子の弾けっぷりも見事な傑作コメディ。

2009/5/13(水)
『感傷的な運命』
ゴダールの『愛の世紀』に先立つ事1年、同じテーマを描いたアサイヤス監督2000年公開の傑作。現在公開中の『夏時間の庭』へとストレートに繋がる”現代性”が、20世紀初頭のリモージュを舞台に文芸大作の形を借りて描かれる。シャルル・ベルリング、エマニュエル・ベアール、イザベル・ユペールら俳優陣が秀逸、ミア・ハンセン=ラブの美しさには一目惚れ必至。

2009/4/28(火)
『グラン・トリノ』
『チェンジリング』の大ヒットが記憶に新しいイーストウッドの新作が早くも登場。本人の監督・主演作は『ミリオンダラー・ベイビー』以来4年ぶりとなる。前作とは打って変わって、主役の本人以外は地味目なキャストが周囲を固めるが、そんな時こそ要注意なのがイーストウッド作品。『父親たちの星条旗』のあの地味なキャスティングにも関わらず、あの出来映え。もちろん今作も見逃せない!
『ベルサイユの子』
ギョーム・ドゥパルデューの遺作であり、”愛”をテーマにした社会性豊かな映画でもある本作は、リモザンの『NOVO』やゴダールの『愛の世紀』『アワーミュージック』といった21世紀の傑作映画群の撮影を手掛けたジュリアン・イルシュの自然光を利用した素晴らしい撮影とピエール・ショレール監督の挑戦的なストーリーテリングが相俟って、魅力溢れる傑作に仕上がっている。

© Les Films Pelléas 2008
『四川のうた』
四川省の成都、50年の歴史を持つ巨大国営工場が舞台。ジャ・ジャンクー監督は、そこで家族と共に暮らし、工場が“故郷”である労働者たちの日常のエピソードを撮りながら、ドキュメンタリーとフィクションを織り交ぜ、偶然にも、世界的に報道された四川大地震前に作られた美しい瞑想のような作品となっている。

2009/4/6(月)
『フロスト × ニクソン』
1977年、全米4500万人が目撃した伝説のTVインタヴューの映画化。コメディアン出身のセレブなテレビ司会者デビッド・フロストとウォーターゲート事件の汚名にまみれてホワイトハウスを去ったリチャード・ニクソンの熾烈なトークバトルを、ダイナミックに描き上げた知的エンターテイメント。『クイーン』のブレア首相役が記憶に新しいマイケル・シーンがフロストを演じ、ニクソンを演じたフランク・ランジェラは、本作でアカデミー主演男優賞にノミネートされた。脚本は、『クイーン』『ラスト・キング・オブ・スコットランド』『ブーリン家の姉妹』のピーター・モーガン!
2009/3/30(月)
『ウォッチメン』
ケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争といった歴史的な事件の陰で現実に介在する”ウォッチメン”と呼ばれるものたちがいた、という仮定に基づいたパラレルワールドがミステリアスに展開する本作の原作は、単なるフィクションに留まらない”哲学”を描いた大人向けのグラフィック・ノヴェルとして『ダークナイト』と並びアメリカでは高い評価を獲得している。映画化困難といわれてきたその原作を『300(スリーハンドレッド)』のヴィジュアリスト、ザック・スナイダーが、その難解かつ壮大な世界観の映像化に見事に成功したといわれる話題作。

Photo: Clay Enos
© 2008 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved. TM & © DC Comics.
2009/3/19(木)
『ダウト あるカトリック学校で』
カトリック学校を舞台に、疑いをかけられた神父と真実を暴こうとする厳格なシスターの対立がサスペンスフルに展開するドラマ。名作『月の輝く夜に』の脚本家、ジョン・パトリック・シャンリィがブロードウェイで大絶賛を浴び、トニー賞、ピューリッツァー賞のダブル受賞を果たした戯曲を自らの手で映画化。またもやアカデミー主演女優賞にノミネートされた主演のメリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンの名演技対決や、名撮影監督ロジャー・ディーキンスの仕事ぶりなど見所満載。現代アメリカ映画界の粋を集めた本作の出来映えは果たして如何に?
2009/3/9(月)
ファティ・アキン監督特集 『太陽に恋して』『愛より強く』
『そして、私たちは愛に帰る』が好評のファティ・アキン監督の旧作がそれぞれ1週間限定で公開中。『愛より強く』は、2004年ベルリン映画祭で、ファスビンダー以来、18年振りに映画祭の母国ドイツに金獅子賞をもたらした傑作。この機会にぜひスクリーンで観ておきたい。

3/7(土)〜3/13(金)『太陽に恋して』
3/14(土)〜3/20(金)『愛より強く』
ともに、シアターN渋谷にて
『愛より強く』ファティ・アキン
2009/2/23(月)
『罪とか罰とか』
『映画嫌い』な演劇界の鬼才、ケラリーノ・サンドロヴィッチの新作は、売れないアイドル(成海璃子)が”一日警察署長”に就任、難事件の解決に乗り出すという、奇想天外なストーリーとブラックな笑い満載の傑作コメディ。椎名林檎も絶賛。

2月28日(土)、シネマライズ、テアトル新宿ほか全国ロードショー
配給:東京テアトル
©「罪とか罰とか」製作委員会
2009/2/2(月)
『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』
カトリーヌ・ドヌーブとフランソワーズ・ドルレアックの美人姉妹とミッシェル・ルグランの音楽、一世を風靡したファッション、アメリカのミュージカル映画に憧れたジャック・ドゥミの斬新なフレンチ・ミュージカル、60年代フランス映画の最高傑作が今デジタルリマスターでスクリーンに蘇る。
2009/1/19(月)
『我が至上の愛 アストレとセラドン』
御年88歳の巨匠ロメールが本作を最後に引退を宣言。前々作『グレースと公爵』では革命に湧く18世紀パリを描いたが、本作は更に1300年程さかのぼり、5世紀(!)フランスの愛と官能を描く。5世紀と言われても何一つ連想出来ないが、これが最後と言わずに、どこまでもさかのぼり続けてほしい!
2009/1/13(火)
『サーチャーズ2.0』
ジャームッシュと並ぶ、英米の元祖インディーズの雄、アレックス・コックス5年振りの新作は、なんとジョン・フォードの名作「捜索者(The Searches)」のロケ地“モニュメント・バレー”から発せられた“イラク戦争”への異議申し立てだった!
年末年始
『懺悔』
グルジアの巨匠テンギズ・アブラゼ監督の遺作。ペレストロイカの象徴となった、ソ連崩壊前夜に作られた伝説的な映画。25年の歳月を経て、ついに日本公開!
『永遠のこどもたち』
『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロがプロデュース。スペイン=メキシコ合作らしく、シュールリアリズムの伝統を踏まえながら親子の愛を描いた”ダークファンタジー”の注目作。
『そして、私たちは愛に帰る』
トルコ系ドイツ人の若き俊英が、移民問題等を背景に複雑な親子の姿を描いた感動作。ヘルツォーク作品の撮影を努めたクラウスマンが捉えたイスタンブールの魅力的な町並みも必見!
『英国王給仕人に乾杯!』
チェコ・ヌーヴァルヴァーグの巨匠イジー・メンツェル、『10ミニッツ・オールダー』以来の新作。チェコ20世紀現代史を愛と笑いで描き、巨匠メンツェルの最高傑作との呼び声も高い。
『アンダーカヴァー』
緻密な映画作りと寡作で知られるジェームズ・グレイ監督の新作。ホアキン・フェニックスとマーク・ウォールバーグを主演に迎え、NY市警とマフィアの死闘を描く重厚な犯罪ドラマ。

© 2007 2929 Productions LLC. All rights reserved
『アラビアのロレンス』
イギリスの巨匠デヴィッド・リーン生誕100周年記念。名作中の名作を巨大スクリーンで体験するチャンス!50年前の超大作ながら、今なおリアルな政治ドラマとして堪能できる傑作。
『その男ヴァン・ダム』
ピークを過ぎたアクション・スター、J・C・ヴァン・ダムが捨て身でセルフ・パロディを演じる。『狼たちの午後』へのオマージュが、可笑しくも哀しい佳作。サントラの発売を請う!
2008/12/22(月)
『マルセイユの決着(おとしまえ)』
フランス人小説家ジョゼ・ジョバンニ原作の映画化『ギャング』(ジャン・ピエール・メルヴィル監督1966年)をアラン・コルノー監督が、ダニエル・オートゥイユ、モニカ・ベルッチ、ジャック・デュトロン、ニコラ・デュヴォシェルという最高のキャスティングで完全リメイク。愛すべき<フレンチ・フィルム・ノワール>の新作。
2008/12/15(月)
『エグザイル/絆』
香港映画最後の巨匠、ジョニー・トー監督の最高傑作との呼び声も高い、中国返還直前のマカオを舞台にした犯罪ドラマ。ジョニー・トー監督は、次回作ジャン=ピエール・メルヴィル『仁義』のリメイク(オーランド・ブルーム主演)でハリウッド進出を果たす。
『ブロークン・イングリッシュ』
世界中のシネフィルの心を揺さぶった、米インディーズ映画の父、ジョン・カサヴェテス。その娘、ゾーイ・カサヴェテスの監督作品というだけで無条件に応援したくなるという人々が世界中に続出したに違いない、そんな周囲の期待にも見事に応える、堂々たる長編映画第一作。セレブ友達コネクションが豊富そうなメルヴィル・プポーがここにも登場、映画に華やぎを添える。
2008/12/8(月)
特集 ストローブ=ユイレの軌跡 1962-2008
第二部:2008年12月9日(火)〜12月13日(土)@アテネ・フランセ文化センター
映画を見る目を鍛える、ストローブ=ユイレのレトロスペクティブ。ダニエル・ユイレの訃報に接し、ペドロ・コスタが『リベラシオン』紙に寄せた、並外れて明るい追悼文を想い出しつつ。(『コロッサル・ユース』劇場用パンフレットに収蔵)
『バンク・ジョブ』
1971年のロンドン、英国王室を震撼させる、実際に起きた“大事件”を映画化したクライム・サスペンス。この素材で映画が面白くなければ、監督(ロジャー・ドナルドソン)の立つ瀬がない!

© 2007 Baker Street Investors, LLC. All Rights Reserved.
2008/12/1(月)
ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督特集
〜ブラジル映画の奇跡〜
2008年12月6日(土)@アテネ・フランセ文化センター
イタリアのネオレアリズモ、フランスのヌーベルヴァーグの影響を受けた、ブラジルの映画運動<シネマ・ノーヴォ>の中心的な映画作家、ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督の代表作『マクナイーマ』をスクリーンで観るチャンス到来!
『BOY A』
『大いなる陰謀』でロバート・レッドフォードと丁々発止のダイアローグを展開してみせたアンドリュー・ガーフィールドが、刑務所に入っていた過去を隠しながら、新しい生活をスタートさせる、苦悩に満ちた青年を演じる。監督ジョン・クローリーと脚本マーク・オロウは、共にアイルランド出身、全編、北イングランドのマンチェスターで5週間で撮影されたというブリティッシュ・インディーズの注目作。
2008/11/25(火)
第13回 カイエ・デュ・シネマ週間
2008年11月15日(土)〜11月30日(日)
女優のサンドリーヌ・ボネールが、初監督となるドキュメンタリー映画の先行上映にあわせて来日!
『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』
ベン・スティラーが、監督・製作・脚本を手掛け、ジャック・ブラックと共演、ハリウッドの史上最低コンビが黒い爆笑の嵐を炸裂!と思いきや、最も派手に一座の笑いをかっさらったのは、ロバート・ダウニー・Jr.だった!デヴィッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』のニヒルなサングラス男優ジャスティン・セローが、スティラーと共同で脚本を執筆。ハリウッドの“笑い”は、地下水脈でマルホランド・ドライブの“狂気”に通じている。

Photo: Merie Weismiller W
2008/11/17(月)
第13回 カイエ・デュ・シネマ週間
2008年11月15日(土)〜11月30日(日)
女優のサンドリーヌ・ボネールが、初監督となるドキュメンタリー映画の先行上映にあわせて来日!
『ブラインドネス』
ブラジルの鬼才フェルナンド・メイレレス監督(『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』)の新作は、ジュリアン・ムーア、伊勢谷友介、木村佳乃、ガエル・ガルシア・ベルナルといった国際的なキャストによるパニック・サスペンス。アトム・エゴヤン監督『エキゾチカ』で独特な存在感を示した男優ドン・マッケラーが、脚本を書いている。
『ブロークン』
元ファッション・フォトグラファー、ショーン・エリス(『フローズン・タイム』)の新作は、“鏡”をテーマにしたスタイリッシュなサスペンス・スリラー。エリック・ロメールの『夏物語』で、ミュージシャン志望の繊細な若者を地のままに演じたメルヴィル・プポーが、順調にキャリアを伸ばしている姿が見れるのも嬉しい。
2008/11/10(月)
特集 ストローブ=ユイレの軌跡 1962-2008
第一部:2008年11月4日(火)〜11月22日(土)@アテネ・フランセ文化センター
映画を見る目を鍛える、ストローブ=ユイレのレトロスペクティブ。
『ブーリン家の姉妹』
スティーブン・フリアーズ監督の『クイーン』や『ラスト・キング・オブ・スコットランド』の俊英ピーター・モーガンが脚本を手がけた注目作。ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンセンがコスチューム・プレイで競演。

© 2008 Columbia Pictures Industries, Inc. and Universal City Studios
『その土曜日、7時58分』
84才の巨匠シドニー・ルメットの新作は“メロドラマ”。救いのない物語展開に観る者を暗澹たる気分にさせつつも、狡猾な映画的仕掛けに満ちた時間旅行を体験させてくれる希有な一品。
※観る前に、原題(Before the Devil Knows You're Dead)の意味を知ってから観る事をお薦めします。

© 2008 Sony Pictures Entertainment(Japan)Inc. All Rights Reserved