映画の授業 Cinema Lesson グルジア映画篇



1961年、東西ドイツは"ベルリンの壁"によって隔てられ、その3年後には、米国による北ベトナム爆撃が始まり、ソ連ではブレジネフ政権が誕生する。その頃、ウクライナのキエフ撮影所では、世界中の注目を浴びることになるセルゲイ・パラジャーノフの『火の馬』(64)が撮影されていた。それから24年を経た「1989年」には、中国の天安門事件起き、"ベルリンの壁"が崩壊する。『火の馬』(64)から、ラナ・ゴゴベリーゼの現代的な"女性映画"『転回』(86)まで、"ベルリンの壁"が存在した20余年の間に製作された「グルジア映画」全12作品が、「映画の授業 Cinema Lesson グルジア映画篇」としてアテネ・フランセ文化センターで上映される。五〜六世紀にはキリスト教が入り、古くから国家が形成、文化的にもモスクワのロシアよりはるかに先んじていたというグルジアでは、ソビエト連邦加盟下の共和国時代に多くの傑出した作品が輩出された。グルジアを代表する映画人一家を出自に持つゲオルギー・シェンゲラーヤ、ソビエト女性映画の代表格ラナ・ゴゴベリーゼ、後にペレストロイカの象徴となる作品『懺悔』(84)を撮ることになる巨匠テンギス・アブラーゼ、そして、我らがイオセリアーニ御大!全て必見と言うべき見逃せない作品ばかりが上映される1週間の到来である。
参考:「ロシア・ソビエト映画史―エイゼンシュテインからソクーロフへ」山田和夫(キネマ旬報社)
(上原輝樹)
2012.5.23 update
2012年5月29日(火)〜6月2日(土)(5日間)
会場:アテネ・フランセ文化センター
料金:一般=1回券1,000円/3回券2,700円 アテネ・フランセ文化センター会員=800円 

公式サイト:http://www.athenee.net/culturalcenter/program/lc/lc.html
上映スケジュール
5月29日(火)
17:00
ピロスマニ
(87分)



19:00
若き作曲家の旅
(104分)


5月30日(水)
16:00
結婚
(20分)
インタビュアー
(95分)

18:30

(20分)
転回
(100分)
5月31日(木)
17:00
戦火を越えて
(92分)



19:00
ルカじいさんと苗木
(90分)


6月1日(金)
16:30
火の馬
(97分)
ピロスマニのアラベスク
(20分)
19:00
青い山/本当らしくない本当の話
(95分)

6月2日(土)
15:50
田園詩
(98分)



18:00
希望の樹
(108分)


上映プログラム


『ピロスマニ』
1969(87分)
監督:ゲオルギー・シェンゲラーヤ 

さすらいの旅を続け、民衆の暮らしを描き続けた画家ニコ・ピロスマナシヴィリ(1862--1918)の生涯。画壇に迎合せず自分の絵を信じる画家の姿に、監督の批判精神が重なる。
『若き作曲家の旅』
1985(104分)
監督:ゲオルギー・シェンゲラーヤ 

革命前夜の時代、古いグルジア民謡をすべて採集するという夢に取りつかれた若い作曲家がいた。グルジア映画の重鎮シェンゲラーヤの、抑圧された祖国の歴史への思いを秘めた作品。
『結婚』
1964(20分)
監督:ミハイル・コバヒーゼ 

バスで知り合った女性にプロポーズを決意した若者の運命。セリフや音声を排し、映像と音楽だけで作られた映画大学の卒業制作。1960年代グルジアの映像実験を代表する作品。
『インタビュアー』
1978(95分)
監督:ラナ・ゴゴベリーゼ 

仕事にも家族にも恵まれ、幸せな人生を送っていると信じている女性が、夫に裏切られて途方に暮れる。ゴゴベリーゼ監督が、日常の中で女性たちが直面する問題を繊細に描く。
『傘』
1967(20分)
監督:ミハイル・コバヒーゼ 

自由に跳ね回る傘をつかまえ、軽やかにスキップする男に少女が引き寄せられてゆく。軽妙な短編で注目を集めながらも、実験性ゆえに不遇をかこったコバヒーゼ監督の代表作。
『転回』
1986(100分)
監督:ラナ・ゴゴベリーゼ 

二人の初老の女性----元スタア女優と言語学者が久しぶりに再会して起こる二人の人生の急転回。女性の生き方に焦点を当てた作品を発表し続けたゴゴベリーゼ監督の代表作。
『戦火を越えて』
1964(92分)
監督:レゾ・チヘイーゼ

戦争で負傷した息子を見舞いに行こうとした父親が、なりゆきでドイツへ反撃する部隊の兵士となってベルリンまで行くが......。英雄物語ではない個人的体験として戦争を描く。
『ルカじいさんと苗木』
1973(90分)
監督:レゾ・チヘイーゼ

孫を連れて、昔あった幻のナシの苗木を探して旅をする老人のロードムービー。昔ながらのもてなしの美徳を保ちながらも、大きく変貌していく町や農村、人間の姿が描かれる。
『火の馬』
1964(97分)
監督:セルゲイ・パラジャーノフ

ウクライナの辺境・カルパチア地方の民話を映画化。人間と自然、そして超自然的なものが自由なキャメラワークでとらえられていく。監督の名を世界に知らしめた初期の代表作。
『ピロスマニのアラベスク』
1986(20分)
監督:セルゲイ・パラジャーノフ

パラジャーノフ監督が画家の運命と作品に捧げたオマージュ。ドキュメンタリー作品として画家の生涯を追いながら、逆遠近法による絵画空間を映像化する試みが盛り込まれる。
『青い山/本当らしくない本当の話』
1984(95分)
監督:エリダル・シェンゲラーヤ

作家ソソは「青い山」という小説を書き上げ、出版社に持ち込むが、出版社の誰もが本来の仕事以外の何事かで忙しく......。官僚社会を皮肉ったエキセントリック・コメディー。
『田園詩』
1975(98分)
監督:オタール・イオセリアーニ

とあるのどかな農村の村人たちと、そこを訪れた音楽家たちとの交流が、物語的なドラマトゥルギーによらず、ドキュメンタリー的正確さと詩情を兼ね備えた映像で綴られてゆく。
『希望の樹』
1977(108分)
監督:テンギス・アブラーゼ

美しい娘が、貧しい恋人から引き離され、金持ちと結婚させられたことから起こる悲劇。美しくも残酷な処罰のシーンが印象的な、革命前を舞台にしたグルジア史三部作の第二作。


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