『ベニスに死す』ニュープリント上映



ルキーノ・ヴィスコンティ、不朽の名作『ベニスに死す』が、ニュープリントでスクリーンに甦る。 

1912年に発表された原作小説で描かれたことについて、作者トーマス・マンの妻カタリーナが「あの小説はいちいち起こったことだし、私たちが体験したことをもとにしている。」と後年の回想記で明かし、究極の美少年タジオの実際のモデルとなったポーランド貴族の末裔タデウスは「少年は虚弱体質だから長生きしないだろう」との予測を裏切り、皺が深く刻まれた老人となって生きていたことをドイツの新聞が大々的に報じた後に、"美"の幻想を知り尽くした巨匠ヴィスコンティが"究極の美"の儚さを流れ去っていくマーラーの交響曲の調べと共にフィルムに焼き付けた映画『ベニスに死す』を完成させてから、40年の歳月を経た今、あまりに多くのものを見聞きし過ぎた私たちの目と耳に、この名作映画は一体どのように写り、響くだろうか。 

必要以上の字幕を削ぎ落とし、より映像と音を堪能出来るよう手を加えられたというニュープリント版が上映されるこの機会に、同じ楽曲を使った園子温の21世紀的傑作『恋の罪』(11月12日公開)と比較して観るという、今、日本に住むものだけに許された贅沢を享受できることに感謝しつつ、この20世紀が遺した傑作映画に今一度、正面から向き合いたい。
(上原輝樹)
2011.9.30 update


『ベニスに死す』
公式HP:http://death-in-venice.net/
10月1日(土)、銀座テアトルシネマほかにて、陶酔のロードショー! 

物語:
ベニスを静養のため訪れたドイツの高名な作曲家アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は、滞在先のホテルで出会ったポーランド人の美少年タジオ(ビョルン・アンドレセン)に心を奪われる。夏の終り、コレラが蔓延するベニスで出会ってしまった"究極の美"。
その瞬間、美の囚人となったアシェンバッハの苦悩と恍惚が始まった...。 

製作:ルキーノ・ヴィスコンティ
脚本:ルキーノ・ヴィスコンティ、ニコラ・バラルッコ
原作:トーマス・マン「ベニスに死す」(2011年8月集英社文庫刊)
音楽:グスタフ・マーラー「交響曲第3番」 「交響曲第5番」
撮影監督:パスクァリーノ・デ・サンティス
編集:ルッジェーロ・マストロヤンニ
出演:ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン、シルヴァーナ・マンガーノ
1971年/イタリア・フランス/131分/カラー/英語・イタリア語・ポーランド語・フランス語/シネスコ
配給:クレストインターナショナル

©1971 Alfa Cinematografica S.r.l. Renewed 1999 Warner Bros., a division of Time Warner Entertainment Company, L.P. All Rights Reserved.


『ベニスに死す』ニュープリント上映について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





Comment(0)

印刷