シネマ☆インパクト第3弾



まさに「選ばれた精鋭の監督たちが、限られた時間と予算の中で"映画作り"のしのぎを削る、映画の格闘場」(山本政志)であるに違いない"シネマ☆インパクト"の、第3弾が始まろうとしている。私が試写で観ることが出来たのは、『止まれない晴れ』『集まった人たち』『海辺の町で』『水の声を聞く-プロローグ-』の4作品だが、いずれも、金はないけど元気がある、やりたいことをやっている潔さを辺り一面に撒き散らしており、観るものの気分を高揚させてくれる。 

熊切和嘉監督の『止まれない晴れ』は、慎ましく暮らす夫婦の日常が、徐々に軋み出し、やがて発狂するまでを突っ走る、じゃがたらのライブのような30分1曲の熊切節。いまおかしんじ監督『集まった人たち』は、リチャード・リンクレーターの『SLACKER』(91)を想起させるスタイルで撮られた、SEX未満のSEX大礼賛映画で、独特の演出スタイルと台詞が際立ち、女優陣が揃いも揃って魅力的に撮られている。廣木隆一監督の『海辺の町で』は、震災の被災地である福島でロケーション撮影されている。俳優陣、スタッフを福島に引き連れていき、そこに敢えて"日常的な光景"を描き出すことで、その地とそこ以外の地との間を隔てる見えない壁を打ち破ろうとする試みだ。映画を見終わった後、ヌケの良さが広がっていく佳作である。そして、"シネマ☆インパクト番長"山本政志監督の『水の声を聞く-プロローグ-』は、本当に<-プロローグ->だったんだ、、と観るものをアッと驚かせる終わり方ながら、この作品が完成した暁には、2013年の日本映画を代表する一本になるに違いないと思わせる、風格とテーマの大きさを感じさせる仕上がり。『水の声を聞く』の完成を心待ちにしながら、まずは、シネマ☆インパクト第3弾に駆けつけようではないか。 

個人的には、第1弾、第2弾を完全に見逃し悔しい思いをしているので、いずれ何らかの形で観ることが出来ることを願いつつ、第1弾、第2弾で上映された10作品の作品情報も掲載した。
(上原輝樹)
2013.3.26 update
3月30日(土)〜4月19日(金)
会場:オーディトリウム渋谷 
料金:当日一般 1,500円 / 学生、シニア 1,200円
特別鑑賞券発売中:1回券 1,200円 / 3回券 3,000円 

公式サイト:http://www.cinemaimpact.net/vol3/
上映スケジュール
3月30日(土)〜 4月2日(火)
16:10
恋の渦
(140分)
3/30(土)上映後:
大根仁監督舞台挨拶 


19:00
海辺の町で
(64分)
水の声を聞く 
-プロローグ-

(31分)
3/30(土)上映後:
山本政志監督舞台挨拶 

4/2(火)上映後:
廣木隆一監督舞台挨拶
4月3日(水)〜 7日(日)
16:50
海辺の町で
(64分)
水の声を聞く 
-プロローグ-

(31分)
19:00
止まない晴れ
(32分)
集まった人たち
(62分)
4/3(水)上映後:
いまおかしんじ監督舞台挨拶
4/6(土)上映後:
いまおかしんじ監督+大森立嗣監督によるトークショー
4月8日(月)〜 12日(金)
16:10
止まない晴れ
(32分)
集まった人たち
(62分)

18:20
恋の渦
(140分)
4/11(木)上映後:
大根仁×三浦大輔(劇団ポツドール)+スペシャルゲストによるトークショー 





4月15日(月)
21:00
海辺の町で
(64分)
水の声を聞く 
-プロローグ-

(31分)
4月16日(火)
21:00
恋の渦
(140分)



4月17日(水)
21:00
止まない晴れ
(32分)
集まった人たち
(62分)
4月18日(木)
21:00
海辺の町で
(64分)
水の声を聞く 
-プロローグ-

(31分)
4月19日(金)
21:00
恋の渦
(140分)



4月13日(土)
21:00
恋の渦
(140分)



4月14日(日)
21:00
止まない晴れ
(32分)
集まった人たち
(62分)
上映プログラム

『止まない晴れ』
2013年/32分
監督:熊切和嘉
制作:山本 政志 脚本:辻田 洋一郎 制作担当:吉川 正文 助監督:加治屋 彰人 撮影:高木 風太 

ささやかで平凡な生活を送っていた夫婦。
ある日同窓会に参加すると徐々に驚愕の事実が明らかになっていく。日常に潜む狂気を見事にえぐり出した熊切監督最新作! 

[監督コメント]
せっかくこういう機会なので、型にはまらない、むきだしの俳優と出会えたらいいなと思っていました。そしたらいたんです、凄いのが。彼女をいかに追いこみ、ぶっ壊し、どれだけ本当の感情を引き出すことが出来るか?――それだけを考えて一本の映画を作ってみました。撮ってて泣けたのは久しぶりです。
(熊切和嘉)
『集まった人たち』
2013年/62分
監督・脚本:いまおかしんじ
制作:山本 政志 制作担当:吉川 正文 撮影:戸田 義久 

とにかくセックスがしたい!だけどうまくいかない!老いも若きも男も女も右往左往!世界を脱力させ続ける、いまおかワールド・フルストッロル!! 

[監督コメント]
何やっていいか分からず、まず"ねるとん"やって、カップル作って、エチュードやって、芝居見て、そうやってる内に、何となく"セックスしたいけどなかなかできない人たち"の話をやったらいいんじゃないかと思って、一日でシナリオ書いて、その場しのぎで撮影しました。歩道橋でセックスするシーンを撮影してたら警察が来て、ビックリした。公然ワイセツだと。うるせえ!バカ!
(いまおかしんじ)
『恋の渦』
2013年/140分
監督:大根仁
原作・脚本:三浦大輔 制作:山本政志 撮影:大根仁、大関泰幸、高木風太 

超絶劇団ポツドールの三浦大輔、原作・脚本「恋の渦」の映画化に、大根仁監督が「モテキ」以降、初の長編作品として挑む。
これはもう"事件"だ!! 

[監督コメント]
「現場は地獄になる。だが地獄からしか作品は生まれない」久々にこの言葉を思い出しました。初めての自主映画、2時間20分を4日で撮影、限りなくゼロに近い制作費、撮影前日に役者が逃亡、山本プロデューサーの恫喝...だがしかし、間違いなく面白い作品が出来ました。ご期待ください!!
(大根仁)
『海辺の町で』
2013年/64分
監督・脚本:廣木隆一
制作:山本 政志 プロデューサー:吉川 正文 撮影:鍋島 淳裕 

福島出身の廣木隆一監督が、同じく福島出身の撮影:鍋島淳裕と共に 福島ロケを敢行。様々な人々が交差する海辺の町を舞台に綴られた映像詩。この新鮮な映画力、必見! 

[監督コメント]
全員が出るアルトマンのような映画にしたかった。全員を福島に連れて行きたかった。津波から3年目のいわきを見せたかった。皆がどう感じ、演じるか見たかった。役者と言うよりも一個人的な人間として感じて欲しかった。そして、自分もどう感じるか、撮影して見たかった。彼らの中に俺の中に吹き付けるような冬の風と雪と海と雨と夕陽に試されてるような不思議な感覚と静かな感動があるはずだと信じたい
(廣木隆一)
『水の声を聞く−プロローグ−』
2013年/31分
監督・脚本:山本政志
制作:吉川正文 撮影:高木風太 

ミンジョンは、新宿コリアンタウンのシンバン=巫女。彼女の元をおとずれる、様々な苦悩を背負った人々に、水と緑からのメッセージを伝 える。傷ついた魂に水の声は、届くのか。 

[監督コメント]
短編は飽きた。長編を撮ろうと思った。しかし、インパクトの枠には収まらない。で、予算枠に収まる程度の長さで、長編の冒 頭から撮った。今まで意図的に避けてきた、「ロビンソンの庭」「熊楠」につながる世界になった。気合が入った。本編 「水の声を聞く」は、5月に撮影することにした。
(山本政志)
シネマ☆インパクト第1弾、第2弾の上映作品
第2弾
『サンライズ・サンセット』
2012年/44分
原作・脚本・監督:橋口亮輔
制作:山本政志 撮影監督:上野彰吾 

クランク・イン前日の映画会社を舞台に、様々な人物が入り乱れ繰り広げられる人間悲喜劇。97年に上演された橋口監督のオリジナル戯曲を映画化! 

[監督コメント]
崖っぷちの人々の怒涛の群像コメディ!。撮影現場も怒涛のごとく、スタッフ、出演者、必死になって撮り上げた!
(橋口亮輔)
『しば田とながお』
2012年/18分
脚本・監督:ヤン・イクチュン
制作:山本政志 制作担当:吉川正文 助監督:吉田光希 撮影:志田貴之 

傷ついた心が癒えない女、それを見守る男。都市をさまよいながら、瑞々しいタッチで描かれる「愛」。『息もできない』で世界を驚嘆させたヤン・イクチュン最新作!! 

[監督コメント]
"しば田とながお"は誰でもが生きていく間に経験できる、日常の小さい物語です。もしかして、あまりにも日常の一断面だけが映画を通して観えるのではないかと気にもなりますが、その小さい断面が一つ一つが繋がってまた大きい一つの全体の人生に帰結されるはずなので、それらを生の大切な一部分として思いたいです。皆さんの人生の中の記憶の断面とこの物語がどのように繋がるのか気になりますね。
(ヤン・イクチュン)
『ありふれたライブテープにFocus』
2012年/44分
監督:山下敦弘
構成:向井康介 助監督:平波亘 撮影:高木風太 

フィリピンから母親を捜しにやってきた女を助けながら、その過程をドキュメンタリー映画にしていく学生達。いかがわしくて可笑しい、山下敦弘のフェイクワールド! 

[監督コメント]
限られた時間の中、集ったメンバーの能力を出し切り"新宿"という街でなんとか映画にしてみた。というのが自分の実感です。観る人によって"映画のようなもの"として映るかもしれません。が、そのグレーゾーンこそが自分の最大の武器なのだと思っています。なので山下敦弘にとっての劇場公開最新作です。ひとつよろしくお願いいたします。
(山下敦弘)
『SAWADA』
2012年/35分(予定)
監督:松江哲明
制作:山本政志 制作担当:吉川正文 助監督:品田竜輔 撮影:松江哲明、品田竜輔、橋本孝志郎、岡崎雅、佐々木裕文、山口可奈子、小松崎敦史、鶴岡由貴 

ある映画監督の一周忌に集まった7人の女と1人の男。その一晩を6台のカメラが同時に記録。これはフィクションだが松江哲明自身のドキュメントでもある。初の劇映画!! 

[監督コメント]
初回の自己紹介から異様な雰囲気だった。「自己開発セミナーかよ」ってくらいに皆が自分をさらけ出して来た。困った。ふわっとした青春ドキュメンタリーを撮るつもりだったのに。こりゃいかん、予定変更。結果フィクションとはいえ極私的な内容となり身も心もボロボロな二週間だった。ただ受講生の「映画やってみよっかなー」なんて幻想はぶち壊せたと思う。で、作品は僕の中で最もへたっぴなモノになった。それが嬉しい。
(松江哲明)
『タコスな夜』
2012年/28分
監督・脚本:山本政志
撮影::伊藤寛 

ミュージシャン兼チンピラのショウ。今日も親分から無理難題を押し付けられた。なんとかなると、軽いノリで夜の街に出て行ったショウだったが...。ダメ人間達の新宿一夜物語。 

[監督コメント]
前回「アルクニ物語」は、話を作り込む方向性だったので、今回はいい意味で緩くて軽く、作りこみ過ぎないものをやってみようと思った。作品の冒頭とラストだけを決めて、中間は、受講生から演じたいキャラクターを募り、その役柄を採用し演じてもらったりしながら構成していった。新宿らしい、グワッチャァ~感が出せたはず。
(山本政志)
第1弾
『2.11』
2012年/29分
監督:大森立嗣
撮影:深谷敦彦 

占拠されたビルの中、集団は狂気と破壊と祝祭へと向かう。従来の力強さに自由なタッチが導入された大森立嗣監督の新世界! 

[監督コメント]
放射能が地上に降り注いで故郷を奪った。映画からはフィルムがなくなろうとしている。そんな瓦解しそうな世の中に、ほぼ発狂した'シネマインパクト'が忽然と現れ、僕は映画を作った。誰にも望まれてない映画を作る覚悟を自分自身に、そして参加者に問いました。無力な自分への怒り、壊れかけの社会へ抗い、傷つき、ひねくれ、憎しみ、それでも笑い、もう一度立ち上がる覚悟です。僕は暴動の映画を作りました。シネマインパクトは映画の暴動になればいい。
(大森立嗣)
『この森を通り抜ければ』
2012年/50分
監督:瀬々敬久
撮影:鍋島淳裕 

目に見えない放射能に怯え戸惑いながら生き方を探る人々。瀬々敬久監督が描く原発事故後の日本! 

[監督コメント]
始まりは、詩を書き、その朗読で競い合う「詩のボクシング」。映画のヘソも彼らの声である、その詩。制作受講者はそこから脚本を書く。すべてが化学反応の場所。今、ここで起こることだけで映画を作る。疲れは尋常でなかった。なにせ皆、こちらのパワーを吸い取ろうと野心満々なのだ。それでいて良いのは各人バラバラなこと。てんでバラバラでまだ何者でもないデタラメな集団で生み出した映画、冗談でなく少し誇りに思っている。
(瀬々敬久)
『ポッポー町の人々』
2012年/86分
監督:鈴木卓爾
撮影:鎌刈洋一 

大地震の発生から1年後、ポッポー町の人々を通して、鈴木卓爾監督が新たなフィクションの在り方を問う野心作! 

[監督コメント]
今回の企画を受けた時、「よし群像劇だ」と思った。制作者側が一切キャストを選ばず、自発的に参加した全13人の俳優と7人の制作志望者と共に、脚本もなく手探りで映画は作られた。物語の人物達が住む架空の町の名前を「ポッポー町」と名付けた。ポッポー町は日本中どこにでもあるような町で、この町の時間軸は2011年3月11日から一年後の未来だ。これは現実の撮影日でもあった。現実の響きを映像と音響に記録しつつ、どこまで我々のフィクションとグルーブが持ち堪え、ファンキーに弾めるか?が試された。
(鈴木卓爾)
『胸が痛い』
2012年/40分
監督:深作健太
撮影:鈴木一博 

どうしようもない女と、どうしようもない男の、どうしようもない愛。深作健太監督が、常識とモラルを撃つ! 

[監督コメント]
参加した受講生達の笑顔と心意気に打たれた。いま邦画ブームを支えるのはTV局主導の作品ばかり。本当の映画人が消えかけている今、日本映画に新しいムーヴメントを作るのは、自ら現場に飛び込み、表現する、体験参加型の映画なんじゃないだろうか。シネマインパクトに「希望」が見えるのは、 そこに集まる受講生の真摯な明るさにある。これからも傑作と、素敵な笑顔が生まれ続ける事を切に求めてやまない。
(深作健太)
『アルクニ物語』
2012年/35分
監督:山本政志
撮影:池内義浩 

非常事態に突入した現在、一室に閉じ込められた8+1人の50年間の物語。食と性と暴力とリサイクル、山本政志監督製激毒寓話。 

[監督コメント]
他の全作品で、いずれも偶然か必然か「地震」が直接的、間接的に描かれていた。そこで、俺も入口は「地震」らしきものにしてみよう、と思った。さらに、低予算の王道"密室モノ"で、閉塞状態の"今"を寓話的に捉えてみる。出演者は、すでに他の監督コースでワークショップを経験済みなので、省略し、いきなり撮影に入った。怒涛の無理難題を克服し、超絶現場を乗り切った演技+制作コースの面々のエネルギー。それは、確実に作品に練りこまれた。シネマ☆インパクト、かなりイイ。
(山本政志)


シネマ☆インパクト第3弾について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





Comment(0)

印刷