イメージフォーラム・フェスティバル2013



今年で27回目を迎える「イメージフォーラム・フェスティバル」の特集テーマは「創造するドキュメンタリー、無限の映画眼」、ジガ・ヴェルトフのDNAが、現代にどのように引き継がれているかを検証する試みは、『ホーリー・モーターズ』で見事に復活を遂げたカラックスもとても高く評価しているという『リヴァイアサン』やジョナス・メカスによる60年代ニューヨーク、アヴァンギャルド・シーンの壮大な記録『ウォールデン』といった、映画の境界を拡張する作品群と観客との間で実証されていくことになるだろう。ヴェルトフの『カメラを持った男』(29)も、関連企画として16mmフィルムで上映される(4/26@イメージフォーラム3F「寺山修司」)ので、未見の方は、まずこの上映を観ておくと特集テーマの見通しが良くなるに違いない。
一方、国内外の新作では、平林勇の新作アニメーション『NINJA & SOLDIER』やスペインの批評家が2012年ベスト20に選んだ『石と歌とペタ』といった日本の映画/映像作家による注目作品、エドワード・ホッパーの絵画を映画的に再現した『シャーリー』、エネルギー溢れる「中国実験映画事情2013」、そして、ドナルド・リチー追悼上映まで見逃せない作品の数々がラインナップされている。
(上原輝樹)
2013.4.22 update
2013年4月27日(土)〜5月5日(日)

2013年4月27日(土)〜5月6日(月)

2013年5月18日(土)〜5月24日(金)
会場:京都シネマ 

入場料:当日券[1回券]1,200円(シアター・イメージフォーラム会員/京都シネマ会員は会員証提示で当日1回券を200円割引)
[4回券]3,200円 [フリーパス券]8,000円 

チケットぴあ、ローソンチケットなどで特別鑑賞券を発売中!
[特別鑑賞]1回券1,000円 [4回券]3,200円 [フリーパス券]8,000円
チケットぴあ......TEL:0570-02-9999 Pコード:464-693
ローソンチケット......TEL:0570-000-777
L コード:東京38302、京都58185 

公式サイトはこちら:http://www.imageforumfestival.com/
上映スケジュール
上映プログラム

【ニューフィルムジャパン 日本招待部門】

時代はフィルムからデジタルに大きく転回する。ニュー・フィルム・ジャパン(日本招待部門)では、いくつかの作品が"フィルムの臨終"に最後かもしれないアプローチをかけている。8ミリから35ミリまでさまざまな映画フィルムをコラージュした映像詩『Zmluva s diablom(悪魔との契約)』(伊藤隆介)、野菜や果物の皮をフィルム状に作り上げた『透かしてみれば』(奥山順市)、昨年のパート1に続く8ミリフィルムへの鎮魂歌的映像エッセイ『MOONS(Part Ⅱ)』(手塚眞)、8ミリ映像を16ミリ映像に再撮影した『L' Image de la Pucelle・Ⅱ』(太田曜)、8ミリフィルムにダイレクトに開けた無数の穴傷が曼荼羅を作り出す『Mark』(鈴木宏忠)、8ミリ作品をチーム<8ミリ天国>で制作するシリーズ最新作『通り過ぎ』(ほしのあきら他)、フィルムメディア自体をデジタル機器を使って製作する試み『DIGITALCINECALLIGRAPHY』(倉重哲二)など、イメージフォーラム・フェスティバルならではの極めて高度でユニークな作品が並ぶ。最後の最後まで突き詰めたフィルム芸術の最新の遺産。デジタルはいかに引き継いでいくのだろうか。
また、特集「創造するドキュメンタリー、無限の映画眼」で上映される『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW Omnibus 2011-2013』(前田真二郎他)は、前田の呼びかけ(指示書)に呼応した気鋭作家たちによるオムニバス作品。東日本大震災の翌月に始まったこのプロジェクトは期せずして時代を掬い取り、人間の営みの深淵を総体として見せることになった。
ほかにも毎年、バンクーバー国際映画祭で特集が組まれるなど、世界の映画祭から注目されるアニメーション作品(「ジャパン・アニメーション・パノラマ」)など、多彩なプログラムで構成。知覚の覚醒への冒険、映像による身体表現、記憶と風景の再構築、ナラティブ表現の実験など、いずれも映像表現の新たな地平を切り開こうとする作品だ。 


<A>ジャパン・アニメーション・パノラマ
11作品77分

『NINJA & SOLDIER』

IFF2010「ジャパン・トゥモロウ」大賞作家・岩崎宏俊の新作『MIRROR』、広島国際アニメーションフェスティバル木下蓮三賞『布団』、ベルリン国際映画祭正式招待『NINJA & SOLDIER』。傑作ドローイングや超絶ストップモーションなど多様多彩な日本のアート・アニメーション最前線!
  • 弟の夢(外山光男/デジタル/11分/2013)
  • 終日禁止安らぎ(金子早織/デジタル/3分/2012)
  • I SEE YOU YOU SEE ME(河原秀樹、抜水摩耶/デジタル/5分/2013)
  • Point in time(田端志津子/デジタル/6分/2013)
  • 1981-2001(古跡哲平/デジタル/10分/2013)
  • euclidrive(中西義久/デジタル/5分/2013)
  • Phantasm(Taro Shinkai/デジタル/8分/2013)
  • くつした(加藤郁夫/デジタル/7分/2012)
  • MIRROR(岩崎宏俊/デジタル/6分/2012)
  • 布団(水尻自子/デジタル/6分/2012)
  • NINJA & SOLDIER(平林勇/デジタル/10分/2012)
<B>攻撃的な映画たち
7作品88分

『生態系-20- STONE』

打ち寄せる波に抗う女性の肉体を艶かしいワンショットで捉えた『みそぎ』。海 岸の小石の丹念なコマ撮りと精緻なオーバーラップが崇高な抽象世界を創る『生態系』。積み重ねられたショットの連なりがエモーショナルな知覚を獲得する、果敢な姿勢のアヴァンギャルド・シネマ。
  • みそぎ(万城目純/デジタル/16分/2013)
  • A FOUND BEACH-omnibus-(大島慶太郎/デジタル/22分/2013)
  • 生態系-20- STONE(小池照男/デジタル/18分/2013)
  • ANALEMMA(相原郁美/デジタル/8分/2012)
  • mort(青山理紗/デジタル/6分/2012)
  • けわい、けはい(浅井佑子/デジタル/3分/2012)
  • 無言の乗客(仲本拡史/デジタル/15分/2012)
<C>進化するフィルム
東京:99作品105分(京都:8作品95分)

『Zmluva s diablom』

倉重哲二は市販のデジタル機器でフィルムメディア自体を生産、パーソナルファブリケーションにおけるフィルムメディアの可能性を探る。映画フォーマットとして終焉を迎えつつある"フィルム"だが、マイスター奥山順市の手にかかればリンゴの皮さえも映画になるのだ!!
  • 通り過ぎ(ほしのあきら、マエダシゲル、佐々木望円/8ミリ/30分/2013)
  • DIGITAL-CINECALLIGRAPHY(倉重哲二/16ミリ/4分/2013)
  • metamorphose(三谷悠華/8ミリ/8分/2012)
  • Zmluva s diablom(悪魔との契約)(伊藤隆介/16ミリ/5分/2013)
  • L' Image de la Pucelle・Ⅱ(太田曜/16ミリ/10分/2013)
  • MOONS(PartⅡ)(手塚眞/8ミリ/22分/2013)
  • Mark(鈴木宏忠/デジタル/7分/2012)
  • 透かしてみれば(奥山順市/デジタル/9分/2013)
  • フィルム石磨きフィルム石置き去り(鈴木余位/朗読/10分/2012)※東京5/3のみ

※京都では全てデジタル版で上映
<D>彼方の方角―風景映画集
7作品77分

『Frozen』

固定ショットで捉えた静謐なモノクロの風景に映る"光"にフォーカスをあてた『light scape』。小瀬村真美の『Frozen』では組み立てられたイメージによってまだ見ぬ風景が発見される。見出された光景、喚起された記憶から映像作家が見つめる「彼方」の方角。
  • Nancy & Henry(田中廣太郎/デジタル/16分/2013)
  • grained time vol.3 対象との距離(五島一浩/デジタル/6分/2013)
  • haze #2(福岡晃久/デジタル/4分/2012)
  • 丘の向こう(並河信也/デジタル/6分/2012)
  • light scape(水野勝規/デジタル/12分/2011)
  • IT HAS ALREADY BEEN ENDED BEFORE YOU CAN SEE THE END.(有川滋男/デジタル/11分/2012)
  • Frozen(小瀬村真美/デジタル/22分/2011)
<E>対象である自分ーセルフドキュメンタリーの現在
4作品103分

『秋丸・春丸』

昨年『目の中の水』で失明した左目の世界を描いた萩原朔美は、失明の理由を探る旅を映像化した。黒川芳朱は手のひらに収まるカメラで都市と知覚の相互作用を記録しようと試みる。映像が新たな知覚を持つべく、カメラが作者または作者の分身を写す4 作品。
  • 秋丸・春丸(萩原朔美/デジタル/20分/2013)
  • Lily(中野智代/デジタル/11分/2013)
  • 5月/May(佐藤健人/ビデオ/10分/2011)
  • 都市と知覚のフィールドノート1(黒川芳朱/デジタル/28分/2013)
  • みずうみは人を呑み込む(宮川真一/デジタル/44分/2013)
<F>創造する声
6作品87分

『Case Study』

トラウマとそれを構成する「何か」について探求している森弘治の『Case Study』は、事象となるケースを演じることでその「何か」を客体化し、内なる心の視覚化を試みる。『SSS』では官能小説の朗読が、『記憶のマチエール』では人生を語る声が作品を紡ぐ。
  • Case Study(森弘治/デジタル/9分/2012)
  • SSS(大木裕之/デジタル/20分/2000-2013)
  • 「M」(松岡真吾/デジタル/6分/2012)
  • 記憶のマチエール5〈D24〉(ビジュアル・ブレインズ(風間正+大津はつね)/デジタル/18分/2013)
  • Gray Zone(塚原真梨佳/デジタル/12分/2012)
  • そこにかえる(花岡梓/8ミリ/22分/2013)※京都ではデジタル版で上映
<G>パーソナル・パースペクティヴ
2作品95分

『痕跡imprint -内藤陳がいた-』

これまでに長短100あまりの作品を手がけ、一貫して、個人で映像を手がける意味を問い続けているかわなかのぶひろ。2011年に亡くなった友人・内藤陳(コメディアン、書評家)にまつわる作者のパーソナルな記録と記憶が交差する新作は、故人の肌に直接触れるような親密さをもった映像詩だ。
  • Photographs from Unknown Man(尾沼宏星/デジタル/50分/2013)
  • 痕跡imprint -内藤陳がいた-(かわなかのぶひろ/デジタル/45分/2013)
<H>冒険するドラマ
2作品118分

『石と歌とペタ』

「くだらなーい事から、大切な深ーい事まで入っていて、それがユーモラスに語られて長い時間飽きさせない」(しりあがり寿)と絶賛された『ニコトコ島』でIFF2009「ジャパン・トゥモロウ」大賞を受賞した大力・三浦コンビによる、ローマ国際映画祭正式招待の新作を日本初紹介。
  • 石と歌とペタ(大力拓哉、三浦崇志/デジタル/60分/2012)
  • 大童貞の大冒険(二宮健/デジタル/58分/2012)
<イ>インスタレーション
3作品

『自由落下』は模型をビデオ撮影し、その拡大映像と併置する「Realistic Virtuality」シリーズの最新作。落下し続ける核爆弾が再現される。独自の3D表現を追究する五島一浩は一台のカメラで画期的な立体映像を現出させる。
  • 自由落下(伊藤隆介/ビデオ・インスタレーション/2013)※東京のみ
  • SHADOWLAND(五島一浩/3D ビデオ・インスタレーション/14分/2013)※東京のみ
  • フィルム石磨きフィルム石置き去り(鈴木余位/インスタレーション/2012)
【ニューフィルム・インターナショナル 海外招待部門】

映像は単なる記録を超えて、新たな知覚を獲得し、世界の創造を試みる。先駆的な映像作品は、常にその地平への可能性を示してきた。 「世界で最も重要なものは、世界を映画的に感じること」(ジガ・ヴェルトフ)――カメラの眼は人間の知覚を超えるとしたヴェルトフの宣言から90年を経た今、彼の『カメラを持った男』を超えるような知覚体験に、映画は到達しているだろうか?
1971年のマイケル・スノウによる『セントラル・リージョン』は、映画にのみが獲得しうる視覚体験を追求した結果生まれた傑作。カナダ北部の荒野を、ロボットアームに装着されたカメラが縦横に動き探査する。
ルシアン・キャステイン=テイラーとヴェレーナ・パラヴェルの『リヴァイアサン』(2012)は、映像表現のフロンティアにまだまだ開拓の余地があることを示した傑作ドキュメンタリー。極小のカメラが、魚やカモメの目線になって海中・空中を自由に行きかうこの作品が与えるのは、「映画カメラは、無限に改良することが出来る」と言ったヴェルトフが夢見た、世界の新しい知覚体験そのものではないだろうか。
イメージフォーラム・フェスティバル2013では、"事実を客観的に記録する"だけに留まらない、映像表現としてのドキュメンタリーの可能性にフォーカスをあてる。 


<I>シャーリー リアリティーのビジョン
1作品92分

『シャーリー リアリティーのビジョン』© Jerzy Palacz

女優"シャーリー"が語る人生が、エドワード・ホッパー(1882-1967)の13点の絵画を一つに紡ぐ。絵画と映画、個人史と政治史の絶妙な融合と言える本作のために、実験映画の巨匠グスタフ・ドイチュはホッパーの絵画の完璧な映画的再現であるセットデザインも手がけている。ドイチュによる初めての劇映画。2013年ベルリン国際映画祭招待作品。
  • シャーリー リアリティーのビジョン(グスタフ・ドイチュ/オーストリア/デジタル/92分/2013)
<J>アニメーション・セレクション:肌から深みへ
5作品64分

『此処と大いなる何処か』

世界の映画祭で上映されたアート・アニメーションの最新傑作選。人体のパーツをアニメーション化したポール・ブッシュの『せきらら』は妙にエロチック。アカデミー賞ノミネートのアニメーション作家、ポール・ドリエッセンは、ギリシャ神話を不条理に翻案し、彼のキャリアで最も狂った作品『オイディプス』を完成させた。ある男の狭小から遠大に至る夢想を、24万本の小さな針を動かしてアニメーションにしたミシェル・レミューの最新作『此処と大いなる何処か』は、圧倒的な密度で観るものに迫って来る。
  • せきらら(ポール・ブッシュ/イギリス/デジタル/6分/2012)
  • ツィーゲノルト(トマーシュ・ポパクル/ポーランド/デジタル/18分/2013)
  • オイディプス(ポール・ドリエッセン/カナダ・オランダ/14分/2011)
  • 革命において未だ定義されざる行為(スン・シュン/中国/デジタル/12分/2011)
  • 此処と大いなる何処か(ミッシェル・レミュー/カナダ/14分/2012)
<K>中国実験映画事情2013
10作品83分

『チャイニーズ・カーニバル No.10』



政府の許可無しには公にインディペンデント映画を上映することの出来ない中国で、次々に新しい映像作家が生まれている。IFFでは2009年に実験映画の特集、昨年アニメーションの特集を組み、その新しい波を日本に紹介してきた。本国ではアンダーグラウンドで上映される彼らの驚くべき強固な作家性は、世界で類を見ないエネルギーに満ちている。東京会場では中国初のインディペンデント映画のアーカイブ・配給組織の中心創立メンバー、チャン・ヤーシュアン氏によるトークあり。(5/4 18:45の回)
  • 誰かの眼(タン・タン/中国/デジタル/16分/2011)
  • 無題3番(リ・ニン/中国/デジタル/12分/2009)
  • 海への路(グー・タオ/中国/デジタル/20分/2010)
  • 飛翔(リ・ルォ/中国/デジタル/5分/2004)
  • 鳥類学(リ・ルォ/中国/デジタル/5分/2005)
  • 黄色い精霊(リゥ・ウェンヤン/中国/デジタル/6分/2009)
  • 影(チゥ・ユー/中国/デジタル/5分/2008)
  • 咲き乱れ(イェ・ユアンユアン/中国/デジタル/3分/2011)
  • 冷徹な心(ディン・シーウェイ+フー・リアン/中国/デジタル/5分/2012)
  • チャイニーズ・カーニバル No.10(チェン・ツォ+ホァン・カーイー/中国/デジタル/6分/2008)

(プログラム選定:チャン・ヤーシュアン 中国インディペンデント映画アーカイブ共同設立者/ディレクター)
【フィルムメーカーズ・イン・フォーカス】

<L>ストム・ソゴー 甘美から発作へ
5作品76分

『声に導かれて』

「映画は、できるだけ汚らわしくて、狂ってなければいけない。みんなが映画館から逃げ出して、人生にもっとましなものを望むようになるために...。僕の映画は、精神に作用する視覚的キャンディーで、最初は甘く感じるけど、次に発作を起こさせる」(ストム・ソゴー)
  • 声に導かれて(ストム・ソゴー/アメリカ/デジタル/11分/2000)
  • ゆるやかな死(ストム・ソゴー/アメリカ/8ミリ/16分/2000)
  • シルバー・プレイ(ストム・ソゴー/アメリカ/デジタル/16分/2002)
  • ペリオディカル・エフェクト(ストム・ソゴー/アメリカ/デジタル/10分/2001)
  • シンク―アップ・エレメント(ストム・ソゴー/アメリカ/デジタル/23分/2007)

(プログラム選定:アンドリュー・ランパート アンソロジー・フィルム・アーカイブス アーキビスト)
※京都では全てデジタル版で上映。 


※ストム・ソゴー
ジョナス・メカスによって現代で最も刺激的な映画作家とされ、2000年代初頭のニューヨークのアンダーグラウンド映画シーンを牽引していた日本人ストム・ソゴー(1975-2012)の作品集。今回が日本では初めての紹介となる。
<M>私も幸せが欲しい
1作品83分

『私も幸せが欲しい』

5人の人間が幸せを求めて、放射能に汚染された常冬の地に存在する"幸福の鐘の塔"を目指す。タルコフスキーの『ストーカー』バラバーノフ版とも言える監督の最新作。ウォッカにまみれたハードボイルドな展開は、よりストルガツキー兄弟の原作に近いかもしれない。2012年ヴェネチア映画祭、2013年ロッテルダム映画祭公式招待作品。
  • 私も幸せが欲しい(アレクセイ・バラバーノフ/ロシア/デジタル/83分/2012)

※ロシアに光る怪星 アレクセイ・バラバーノフ
現在、個性的な若手映画作家を次々と輩出しているロシア。国際映画祭上映の常連作家でありながら、その特異でショッキングな作風のためか、日本でほぼ紹介されることのなかったアレクセイ・バラバーノフ(『ロシアン・ブラザー』、『フリークスも人間も』)。最新作を含む2作を上映。カウリスマキやジャームッシュとも比較されるが、予測不可能な展開と突発的な暴力描写や、その幻惑的な作風で、バラバーノフ独特の世界観を作り上げている。
<N>アフガン発・貨物200便
1作品90分

『アフガン発・貨物200便』



1984年ソビエト連邦、ペレストロイカ前夜。アフガンから飛んで来る輸送機「カーゴ200便」は、戦死したソ連兵のおびただしい遺体を運ぶ飛行機の隠語だった。実際に兵士として当時航空輸送に従事していたバラバーノフの"最もパーソナルな作品"。「ソ連終焉を痛烈に描きたかった」という監督は、この作品をショッキングなスリラーに仕上げ、国内で大きなスキャンダルを巻き起こした。2007年ヒホン国際映画祭監督賞受賞、同年ヴェネチア映画祭公式招待作品。
  • アフガン発・貨物200便(アレクセイ・バラバーノフ/ロシア/35ミリ(デジタル版)/90分/2007)
【特集 創造するドキュメンタリー、無限の映画眼】

<O>リヴァイアサン
1作品87分

『リヴァイアサン』

ハーバード大学の感覚人類学研究所に所属する映像作家兼人類学者の二人による、漁船漁業の様子を極小カメラで捉えた圧倒的なドキュメンタリー。カメラは網の中でもがく魚たちや、空中を飛ぶカモメ、あるいは魚をさばく漁師たちの目線となり、虚空から海中へとダイブする。波の音やクレーンのきしむ金属音、船が波に揉まれ叫ぶようにあげる轟音などの音響が観客を覆う。時には数ヶ月に渡る航海に同行し、過酷な状況の中、驚くような撮影方法で完成させた本作は、現在世界各地の映画祭の話題作だ。2012年ロカルノ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作品。
  • リヴァイアサン(ルシアン・キャステイン=テイラー+ヴェレーナ・パラヴェル/アメリカ+フランス+イギリス/デジタル/87分/2012)
<P>ステンプル・パス
1作品123分

『ステンプル・パス』

1970年代から90年代にかけて大学の研究者や、航空会社に爆発物を送りつけ、アメリカを震撼させた反産業社会のテロリスト、テッド・カジンスキー(ユナボマー)。風景映画の巨匠ジェームス・ベニングは、カジンスキーが生活していた小屋のレプリカをカリフォルニア山中に建て、そこで捉えた四季が移ろう4ショットで長編映画『ステンプル・パス』を作り上げた。サウンドトラックは、ベニングによるカジンスキーの残した日記の朗読である。
  • ステンプル・パス(ジェームス・ベニング/アメリカ/デジタル/123分/2012)
<Q>BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW Omnibus 2011-2013
1作品80分

『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW Omnibus 2011-2013』

映像作家・前田真二郎の指示書による映像制作を呼びかけた本プロジェクトは、山形国際ドキュメンタリー映画際、恵比寿映像祭、文化庁メディア芸術祭など多数の映画祭で話題を呼んだ。現在まで集まった60を超える作品からセレクトされた最新のイメージフォーラム・フェスティバル・ヴァージョンを上映。現代美術家の高嶺格やアニメーション作家の若見ありさなど映像の領域を超えて作家が参加している。
  • BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW Omnibus 2011-2013(企画:前田真二郎/ デジタル/80 分/2011-2013 参加作家:前田真二郎、有川滋男、崟利子、岡本彰生、萩原健一、齋藤正和、石川多摩川、若見ありさ、TANJC、池田泰教、高嶺格、大木裕之、五十嵐友子、マトロン、鈴木光)
<R>ブルース・レイシー教授の人間王国
2作品79分


『レイシー家の儀式』

ミュージシャン、ロボット制作者でハプニング・パフォーマーであり、スパイク・ミリガンやピーター・セラーズのTV 番組『グーン・ショウ』のスターだったイギリス希代の奇人アーティスト、ブルース・レイシー。ロンドンで開催された回顧展を機にリマスターされた彼のフィルム作品を上映する。レイシーの家族全員が参加した『レイシー家の儀式』は、楽しさ、ドラマチズム、アナーキー、皮肉が同居する傑作・実験ホーム・ムービーである。
  • エブリバディズ・ノーバディ(ブルース・レイシー/イギリス/16ミリ(デジタル版)/18分/1960)
  • レイシー家の儀式(レイシー家の人々/イギリス/16ミリ(デジタル版)/61分/1973)
<S>セントラル・リージョン
1作品180分

『セントラル・リージョン』

ミュージシャン、美術家、映像作家のマイケル・スノウは、技術者と共同で、カメラを垂直・平行、自在に動かせるロボット・アームを開発し、本作を撮影した。人の手を介さないプログラムによって、人間の目が見ることが出来ない、カメラだけが捉えられる驚異の時空間に到達した本作は、スノウの代表作というだけでなく、映像史に刻印される歴史的一本となった。"肉体を欠く目"(スノウ)によって、より純粋な映画の高みに近づく試み。
  • セントラル・リージョン(マイケル・スノウ/カナダ/16ミリ/180分/1971)
<T>ウォールデン
1作品180分

『ウォールデン』

昨年90歳を迎えた詩人でアメリカのカウンター・カルチャーのヒーロー、ジョナス・メカスは映画に日記というスタイルを生み出した。『ウォールデン』は彼の最初の日記映画であり、1960年代ニューヨークのアヴァンギャルド・アートシーンの壮大な記録となっている。個人映画における転回点となった作品。

登場人物:ジョナス・メカス、トニー・コンラッド、スタン・ブラッケージ、カール・ドライヤー、ティモシー・リアリー、アレン・ギンズバーグ、アンディ・ウォーホル、ジャック・スミス、ニコ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ケン・ジェイコブス、リチャード・フォアマン、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ他
  • ウォールデン(ジョナス・メカス/アメリカ/16ミリ(デジタル版)/180分/1969)
【追悼ドナルド・リチー】

<U>ドナルド・リチー 華麗なスキャンダル
東京:6作品84分(京都:7作品87分)

『戦争ごっこ』



その書物や記事を通して、小津・黒澤などの映画のみならず"日本文化"の紹介者として世界的に著名なドナルド・リチー(1924-2013)。また、自ら実験映画作家として50年代から60年代にかけて、先鋭的な映像作品を次々と生み出した。IFF2013ではその功績を偲び、土方巽が演出に加わった彼の代表作の一本『戦争ごっこ』をはじめ、近年ほぼ上映されることの無かった、本人お気に入りの作品『ライフ』と『のぞき物語』を含む6作品を上映する。「ぼくはリチーさんは啓示によって映画を作らされたんだと思っている」(横尾忠則)
  • 戦争ごっこ(ドナルド・リチー/日本/16ミリ/22分/1962)
  • ライフ(ドナルド・リチー/日本/16ミリ/4分/1965)※東京のみ
  • Life, Life, Life(ドナルド・リチー/日本/8ミリ(デジタル版)/6分/1953)※京都のみ
  • 猫と少年(ドナルド・リチー/日本/16ミリ/5分/1966)
  • 死んだ少年(ドナルド・リチー/日本/16ミリ/13分/1967)
  • のぞき物語(ドナルド・リチー/日本/16ミリ/20分/1967)※東京のみ
  • し(ドナルド・リチー/日本/8ミリ(デジタル版)/10分/1958)※京都のみ
  • 秋絵(ドナルド・リチー/日本/8ミリ(デジタル版)/11分/1958)※京都のみ
  • シベール(ドナルド・リチー/日本/16ミリ/20分/1968)

※京都では全てデジタル版で上映。
【特別招待上映】

JURY
1作品24分

釜山国際映画祭の執行委員長を立ち上げから15年間務めたキム・ドンホの監督デビュー作。 韓国映画界最大の顔、キム・ドンホの初メガホンに、主演の国民俳優アン・ソンギとカン・スヨンを始め 韓国映画界の錚々たるメンバーが集まった。とある国際映画祭に参加する5人の審査員が、言語や映画観の違いを乗り越えて 審議するさまを描いた、映画愛あふれる作品。東京初上映。
  • JURY(監督:キム・ドンホ、脚本:チャン・リュル(『キムチを売る女』監督)、脚色:ユン・ソンホ(『銀河解放戦線』監督)、撮影監督:カン・ヒョング(『グエムル- 漢江の怪物』撮影監督)、編集:カン・ウソク(『シルミド』監督)、助監督:キム・テヨン(『家族の誕生』、『レイトオータム』監督) 出演:アン・ソンギ、カン・スヨン、トニー・レインズ、富山加津江/韓国/デジタル/24分/2012)

※IFF2013のチケット及び半券持参で入場頂けます(入場無料)。5/5の11:00よりパークタワーホールのチケットカウンターで整理券を発行。開場時間に番号順でのご入場となります。


イメージフォーラム・フェスティバル2013について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





Comment(0)

印刷