第17回東京フィルメックス

今年も「フィルメックス」の季節が巡ってきた。アジアの新進映画作家の作品、10作品が上映される【コンペティション】、ワン・ビン、アミール・ナデリ、リティ・パン、キム・ギドク、モフセン・マフマルバフら名匠の新作、そして、エドワード・ヤン『タイペイ・ストーリー』やキン・フー 『俠女』のデジタル修復版、加藤泰『ざ・鬼太鼓座』のデジタルリマスター版が上映される【特別招待作品】、日本初公開の新作イスラエル映画が上映される【特集上映 イスラエル映画の現在】、どれも見逃せない作品で構成されたプログラムばかり。デジタル革命による映画の民主化に伴って、年々増殖してゆく(アジアの)映画群の中から確かな目で選りすぐった作品を毎年決まった時期に届け、人的交流も促してくれる「フィルメックス」は、もはや、日本の映画文化にとって必要不可欠なインフラだ。
2016.11.15 update
第17回東京フィルメックス
2016年11月19日(土)~27日(日)@有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇
公式サイト:http://filmex.net/2016/
上映スケジュール
上映プログラム

【コンペティション】

『オリーブの山』(Mountain)
イスラエル、デンマーク / 2015 / 83分
監督:ヤエレ・カヤム


主人公はエルサレム東部のオリーブ山にあるユダヤ人墓地の中の家で暮らす若い主婦、ツヴィア。夫が仕事に、子供たちが学校に出ていった後は一人で家事を行っているツヴィアは、時折気を紛らわすように墓地を散策する。ある夜、衝動的に外に出たツヴィアは、墓地で人目をはばかることもなく抱き合っている男女を目撃する。その瞬間、ツヴィアの単調な日々の生活に大きな転機が訪れる......。ヤエル・カヤムの監督デビュー作となる本作は、イスラエルの厳格なユダヤ教徒の家庭を舞台に、慎ましい生活を送っていた主婦がこれまで想像もしなかった世界を発見するプロセスをストイックに描いた作品だ。2015年ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映された。

11/22(火)15:50(有楽町朝日ホール)
11/24(木)21:15(TOHOシネマズ 日劇 3)
 
『バーニング・バード』(Burning Birds)
フランス、スリランカ / 2016 / 84分
監督:サンジーワ・プシュパクマーラ


2011年東京フィルメックスで上映された『フライング・フィッシュ』に続くサンジーワ・プシュパクマーラの待望の監督第2作。舞台は1989年、内戦中のスリランカの村。平凡な主婦・クスムは、ある日突然、夫を民兵に拉致され、殺害されるという悲劇に見舞われる。8人の子供たちと年老いた姑を養うためにクスムは街に出て働き始めるが、その先には途轍もない苦難が待ち構えていた......。実際に内戦の時代を経験したプシュパクマーラの暴力や女性蔑視に対する怒りがストレートに表現された力作。カンヌ映画祭レジデンス、エルサレム・フィルムラボなどの協力を得て完成し、プサン映画祭「ニュー・カレンツ」部門でワールド・プレミア上映された。

11/20(日)21:15(TOHOシネマズ 日劇 3)
11/21(月)12:30(有楽町朝日ホール)
『普通の家族』(Ordinary People)
フィリピン / 2016 / 107分
監督:エドゥアルド・ロイ・Jr


マニラの街頭で生きる16歳の少女ジェーンと、そのボーイフレンド、アリエス。主にスリなどで生計を立てていた二人の生活は、ジェーンに子供ができたことによって一変する。だが、一か月もたたないうちに、子供は何者かに誘拐されてしまう。二人は子供を取り戻すためにあらゆる努力を払おうとするが......。子供を奪われた主人公たちを媒介に、マニラの煩雑な街並みとそこに生きるストリート・チルドレンたちを生き生きと描いたエドゥアルド・ロイ・Jrの長編第3作。フィリピン・インディペンデント映画界の登竜門であるシネマラヤ映画祭で最優秀作品賞を含む5つの賞を受賞した後、ヴェネチア映画祭「ヴェニス・デイズ」部門に選ばれ、観客賞を受賞した。

11/23(祝・水)21:15(TOHOシネマズ 日劇 3)
11/24(木)15:10(有楽町朝日ホール)
『マンダレーへの道』(The Road to Mandalay)
台湾、ミャンマー、フランス、ドイツ/ 2016 / 108分
監督:ミディ・ジー


ミャンマー出身で、現在は台湾をベースに活躍するミディ・ジーの長編劇映画第4作。リャンチンはミャンマーからタイへと違法で国境を越える途中、同じく国境を越えようとしているグオと知り合う。リャンチンはバンコクの食堂で皿洗いの仕事を得るが、生活は思うようにゆかず、食堂が警察の捜査を受けたことをきっかけに郊外の紡績工場で働くグオを頼り、同じ工場で働き始める。リャンチンの最終的な目的は偽造パスポートを得て台湾に移住することだった。だが、グオの考えは別のところにあった......。『あの頃、君を追いかけた』に出演した台湾のスター、クー・チェンドンがグオ役を演じる。ヴェネチア映画祭「ヴェニス・デイズ」部門で上映。

11/21(月)18:30(有楽町朝日ホール)
11/26(土)21:15(TOHOシネマズ 日劇 3)
『神水の中のナイフ』(Knife in the Clear Water)
中国 / 2016 / 93分
監督:ワン・シュエボー


中国西北部の寧夏回族自治区の村。ある老人の妻が亡くなる。イスラム教のしきたりに従い、葬儀から40日後には法要が開かれるが、その時には牛を屠らなければならない。老人の息子は一家が飼っている老いた牛を殺せばいい、と主張するが、老人は家族のように育ててきた牛を殺すことにためらいを覚える......。2015年東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞したペマツェテン監督作品『タルロ』などのプロデューサーを務めたワン・シュエボーの監督デビュー作。イスラム教を信仰する回族の人々の日常生活を静謐なスタイルでとらえつつ、老人と牛との交流を描く。寡黙でありながら、深い感動を見る者に与える作品である。プサン映画祭「ニュー・カレンツ」部門で上映。

11/21(月)15:30(有楽町朝日ホール)
11/22(火)21:15(TOHOシネマズ 日劇 3)
『よみがえりの樹』(Life After Life/ 枝繁葉茂)
中国 / 2016 / 80分
監督:チャン・ハンイ


舞台は中国陜西省の山間の村。映画は、数年前に亡くなった女性シュウインの魂がその息子レイレイに憑依した、という設定から始まる。レイレイの姿を借りたシュウインは、レイレイの父、つまり自分の夫に対し、自分の願いを伝える。それは、結婚当時に植えた木を別の場所に移植してほしい、というものだった......。チャン・ハンイの監督デビュー作である本作は、一種の幽霊譚とも言うべき作品だ。映画の中では幾つかの不可思議な出来事が起こるが、そういった出来事が奇異なものではなく、ごく当たり前のように描かれている点が興味深い。ジャ・ジャンクーが若手監督作品をプロデュースする「添翼計画」の最新作。ベルリン映画祭フォーラム部門で上映。

11/22(火)13:10(有楽町朝日ホール)
11/23(祝・水)16:10(有楽町朝日ホール)
『恋物語』(Our Love Story)
韓国 / 2015 / 99分
監督:イ・ヒョンジュ


美術大学院生のユンジュは、修了制作展のための素材を探すために入った店でジスに出会う。その後、コンビニで偶然再会した二人はつき合い始める。やがて、ユンジュはすっかりジスに魅了されてしまう。それは男性との付き合いでは感じられなかった感情だった......。イ・ヒョンジュが韓国国立映画アカデミー(KAFA)の卒業制作として監督したこの長編第1作は、女性二人の間に展開されるラブ・ストーリーを奇を衒うことなく真正面から描いた作品だ。二人のヒロインの微妙な感情の動きを見事にとらえる手腕はイ・ヒョンジュの才能を十分に感じさせる。チョンジュ映画祭の韓国映画コンペ部門で最優秀賞を受賞。サン・セバスチャン映画祭でも上映された。

11/24(木)11:50(有楽町朝日ホール)
11/25(金)21:15(TOHOシネマズ 日劇 3)
© 2015 CJ E&M CORPORATION. And ATO Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
『私たち』(The World of Us)
韓国 / 2015 / 95分
監督:ユン・ガウン


スンは、友だちを作りたくても上手く振る舞うことができず、学校でも仲間外れにされがちな10歳の少女。そんなスンは、夏休みに近くに越してきた同い年の少女、ジャと知り合う。お互いの家を訪ねるうち、友情を築いてゆく二人。だが、新学期が近づくにつれ、家庭環境の格差が二人の友情に影を落とす。父親がアル中で、母親が働きに出ているスンは、母親に代わって弟の面倒を見なければならない。一方、一見幸せに見えるジャも、自分なりの問題を抱えていた......。子供たちの生き生きとした表情が鮮烈な印象を残すユン・ガウンの監督デビュー作。社会問題がさり気なく盛り込まれている点も興味深い。ベルリン映画祭ジェネレーション部門で上映。

11/20(日)21:15(TOHOシネマズ 日劇 3)
11/21(月)12:30(有楽町朝日ホール)
『ぼくらの亡命』(Our Escape)
日本 / 2016 / 115分
監督:内田伸輝


東京近郊の森でテント暮らしをする昇は、人々への恨みを書道にしてテントに貼りつけて飾る日々を送っている。ある日、美人局をやらされている女性・樹冬と出会った昇は、彼女をその境遇から救う目的で誘拐する。昇は樹冬の男・重久に身代金を要求するが、重久は意に介さない。捨てられるのを恐れた樹冬は重久の元に戻るが、重久が別の女に美人局をさせているのを見て逆上し、重久を刺す。それを目撃した昇は「重久は死んだ」と嘘をつき、樹冬と共に日本を脱出することを企てる......。『ふゆの獣』で2010年東京フィルメックス最優秀作品賞を受賞した内田伸輝の最新作。"他者への依存"という内田作品に共通するテーマが極限に至るまでに展開された力作。

11/20(日)18:10(有楽町朝日ホール)
『仁光の受難』(Suffering of Ninko)
日本 / 2016 / 70分
監督:庭月野議啓


主人公は謹厳実直な修行僧、仁光。仁光の悩みは、若い娘から老女まで、なぜか女たちに異常に好かれることだった。絶え間ない誘惑に気が触れそうになった仁光は、自分を見つめ直す旅に出る。旅の途中で出会った勘蔵という名の浪人とともに寂れた村にたどり着いた仁光は、村長から男の精気を吸い取る「山女」という妖怪の討伐を頼まれる。かくして仁光と勘蔵は山へと向かう......。奇想天外な妖怪譚を巧みな編集を駆使して描いた作品。時折挿入されるアニメーションやVFXも絶大な効果を上げている。様々なジャンルの作品を発表してきた映像作家・庭月野議啓が4年をかけて製作した長編デビュー作。

11/23(祝・水)13:20(有楽町朝日ホール)
【特別招待作品】

© 2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
オープニング作品
『THE NET 網に囚われた男』(The Net)
韓国 / 2016 / 114分
監督:キム・ギドク

妻子と平穏な日々を送っていた北朝鮮の漁師・ナムは、網がエンジンに巻き込まれたトラブルにより、意に反して水上の韓国との国境を越えてしまう。韓国の警察に捉えられたナムは、スパイと疑われて拷問を受け、更には韓国への亡命を強要される。妻子の元にただ戻りたいだけのナムは自らの意思を貫き、ついに北朝鮮に戻ることになる。表面的には資本主義の誘惑に打ち勝った英雄として北朝鮮に迎えられたナムだったが、彼を待っていたのは更に過酷な運命だった......。キム・ギドク作品のトレードマークであった極端なバイオレンスは本作では封印され、体制に翻弄される一人の男の姿が重厚に描かれた傑作。ナムを演じたリュ・スンボムの熱演も見どころだ。

11/19(土)19:10(TOHOシネマズ 日劇 1)
© 2016 Media Asia Film International Limited All Rights Reserved
クロージング作品
『大樹は風を招く』(Trivisa)
香港 / 2016 / 97分
監督:フランク・ホイ、ジェヴォンズ・アウ、ヴィッキー・ウォン

1990年代後半、中国への返還前夜の香港を舞台に、当時実在した3人のギャングの人生にヒントを得た脚本を映画化した作品。指名手配の身になりながらも密輸で金を稼いでいるイップ。逮捕されるリスクの少ない小規模な犯罪を繰り返しているクワイ。金持ちの息子を誘拐して大金を手に入れたチュク。お互いに出会うこともなくそれぞれの生活を送っていた3人だったが、「返還前に3人の窃盗王が一大事件を起こす」という噂が暗黒街に広まったことから、3人の運命は一変する......。ジョニー・トーが自ら主宰する「鮮浪潮短編映画祭」の受賞監督3人を起用して製作した作品。各監督がそれぞれ一人の登場人物のパートを演出するという興味深い方法で撮影されたという。

11/26(土)18:00(有楽町朝日ホール)
11/27(日)21:15(TOHOシネマズ 日劇 3)
『山<モンテ>』(Monte)
イタリア、フランス、アメリカ / 2016 / 105分
監督:アミール・ナデリ

前作『CUT』を日本で撮影したアミール・ナデリの最新作は、全編がイタリアで撮影された作品だ。時代設定は中世末期。主人公は山の麓の村で妻子と暮らすアゴスティーノ。巨大な山が壁のようにそびえているため、この村には太陽の光が十分に当たらず、作物も育たない。移住を勧める忠告に耳も貸さずアゴスティーノは村に住み続けるが、窮状は極まるばかりである。遂にアゴスティーノは、山そのものに挑戦するという驚くべき行動に出る......。何かに取り憑かれたかのように一つの行動を続けるというナデリ作品に共通する設定が、ある意味極限まで推し進められた異形の傑作。ヴェネチア映画祭での本作の上映に際し、ナデリに「監督・ばんざい!賞」が授与された。

11/24(木)18:30(有楽町朝日ホール)
11/25(金)13:10(有楽町朝日ホール)
『エグジール』(Exile)
フランス、カンボジア / 2016 / 78分
監督:リティ・パン

前作『消えた画 クメール・ルージュの真実』に続いてクメール・ルージュ時代のカンボジアを扱い、カンヌ映画祭でワールド・プレミアを飾った作品。映画は、狭い小屋の中に一人で暮らすパン本人を投影していると思われる(ただ、実際にはそのことは明らかではないが)少年が送る日々の生活を、時にリアリスティックに、時に幻想的に描き出す。クメール・ルージュ時代の様々な映像やスローガンが引用されるとともに、毛沢東やフランス革命時のジャコバン党のテキストなども引用され、革命の理想と現実が生み出すギャップという普遍的な問題を見る者に考えさせる。これまでのパン作品とは異なる詩的なアプローチで母国が被った歴史的悲劇を描いた映画的エッセイとも言うべき傑作である。

11/20(日)15:30(有楽町朝日ホール)
11/26(土)9:50(有楽町朝日ホール)
『苦い銭』(Bitter Money)
香港、フランス / 2016 / 152分
監督:ワン・ビン

雲南省出身の15歳の少女シャオミンは、長距離列車に乗り、遠く離れた東海岸の浙江省湖州へと向かう。シャオミンの目的は縫製工場で働くことだ。そこでは様々な土地から出稼ぎにきた女性たちが働いている......。ワン・ビンの最新作は、縫製工場で働く女性労働者たちを通して現在の中国の一つの側面を描き出す。映画はシャオミンの旅から始まるが、その後、カメラは数名のキャラクターの間を自在に移動し続ける。とりわけ強烈な印象を残すのはシャオミンの同僚リンリンで、彼女が夫の激しい暴力に抵抗する場面はこの映画の白眉であると言えよう。本作はヴェネチア映画祭オリゾンティ部門でワールド・プレミアを飾り、同部門の脚本賞を受賞した。

11/22(火)9:40(有楽町朝日ホール)
11/26(土)12:40(有楽町朝日ホール)
【特別招待作品 フィルメックス・クラシック】

『ザーヤンデルードの夜』(The Nights of Zayandehrood)
イラン / 2016 / 63分
監督:モフセン・マフマルバフ

人類学者の父親と救急病棟で働くその娘のたどる運命をイスラム革命前、イスラム革命中、そしてイスラム革命後の3つの時代にわたって描き、マフマルバフ本人もその一端を担った1978年のイスラム革命の意味を鋭く問う作品。検閲によって25分間カットされた後、1990年のテヘラン・ファジル映画祭で上映されたものの、再度の検閲で上映自体が禁止となってネガが当局に没収されたため、それ以降イラン国内外を問わず全く見ることのできなかった幻の映画。近年、何らかの形でネガがイラン国外に持ち出されてロンドンで復元作業が行われ、本年のヴェネチア映画祭クラシック部門のオープニングを飾った。検閲前のオリジナル版は100分であったと言われる。

11/19(土)22:00(TOHOシネマズ 日劇 3)
11/23(祝・水)19:10(有楽町朝日ホール)
『タイペイ・ストーリー』(Taipei Story)
台湾 / 1985 / 110分
監督:エドワード・ヤン

エドワード・ヤンの長編第2作。元野球選手で、親の家業の紡績業を継いだロン。その幼馴染の恋人で、アメリカに移住することを考えているチン。過去にとらわれる男と過去から逃れようとする女の関係が、経済成長の中で変貌する台北を舞台に描かれた傑作。ヤンの盟友ホウ・シャオシェンが製作、脚本と主演を兼ね、当時のヤンの妻であった人気歌手ツァイ・チンがヒロインを演じる。更に、ウー・ニェンチェン、クー・イーチェンら台湾ニューシネマを支えた映画作家たちが俳優として出演し、ホウ作品の脚本家チュウ・ティエンウェンが共同脚本を担当するなど、台湾ニューシネマの記念碑的な作品の一つと言える。ボローニャ市立シネマテークによるデジタル復元版。

11/25(金)10:30(有楽町朝日ホール)
11/27(日)10:30(有楽町朝日ホール)
『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿 デジタル修復版』(Dragon Inn)
台湾 / 1967 / 111分
監督:キン・フー

製作当時アジア各地で大ヒットを記録。カンフー映画の大ブームを巻き起こす原点となり、キン・フーの名を高めた傑作武侠映画。明朝時代の中国。権力を掌握し暴政を行う宦官のツァオは、反抗的な高官を無実の罪で処刑。復讐を恐れ、遺族をも抹殺すべく特務機関の兵士たちを荒野に派遣する。兵士たちは遺族を待ち伏せするために一軒宿「龍門客桟」に立ち寄るが、そこに次々と姿を現す謎めいた剣士たち。様々な思惑が絡み合う中、やがて兵士たちと剣士たちとの間に壮絶な戦いの火蓋が切って落とされる......。香港ショウ・ブラザーズで2作品を監督したキン・フーが、台湾で主に若手俳優たちを起用して作り上げた。後にツァイ・ミンリャン作品の常連となるミャオ・ティエンの姿も見られる。

11/22(火)21:40(TOHOシネマズ 日劇 2)
『俠女 デジタル修復版』(A Touch of Zen / 俠女)
台湾 / 1971 / 180分
監督:キン・フー

カンヌ映画祭で高等技術委員会グランプリを受賞したアジア・アクション映画の金字塔とも言うべき傑作。舞台は明朝末期。しがない生活を送っている書生のグーは、幽霊が出るという噂の廃屋で謎めいた美女に出会う。やがて、女は宦官によって死に追いやられた高官の娘で、秘かに復讐の機会を狙っていることが明らかになる......。後に大プロデューサーとして活躍することになるシュー・フォン、『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』に続いて出演したシー・チュン、バイ・イン、更に本作以降常連となる香港スター、ロイ・チャオといった、キン・フー作品のスター俳優たちが織り成す壮大なドラマ。特に高名な竹林での決闘は映画史上最も美しいアクション・シーンの一つと言って過言ではない。

11/27(日)16:00(有楽町朝日ホール)
『ざ・鬼太鼓座』デジタル・リマスター(The Ondekoza)
日本 / 1981 / 105分
監督:加藤泰

今年、生誕百年を迎えた巨匠・加藤泰の遺作となった作品。1971年に結成され、当初は佐渡を本拠地に活動を行っていた和太鼓の芸能集団「鬼太鼓座」の活動を追った作品。映画は共同生活を送る「鬼太鼓座」の若者たちの日常の姿とコンサート、ロケ、セットでの演奏の模様を描き出したドキュメンタリーと言えるが、その独特なカメラワークを含め、あらゆる点で加藤泰の作家性が十二分に発揮された傑作である。約2年をかけて製作されながら、様々な事情により一般公開されることはなく、見ることのできる機会は映画祭や特集上映の一環のような形での限定的な上映にとどまっていた。デジタルリマスターが本年ヴェネチア映画祭クラシック部門でワールド・プレミアを飾った。

11/25(金)21:40(TOHOシネマズ 日劇 2)
【特集上映 イスラエル映画の現在】

© 2016 July August Productions
『山のかなたに』(Beyond the Mountains and Hills)
イスラエル、ベルギー、ドイツ / 2016年 / 90分
監督:エラン・コリリン

『迷子の警察音楽隊』(2007)に続くコリリンの監督第3作。主人公は軍を退役してダイエット商品の販売を始めたダヴィドとその家族。レバノン音楽を好み、アラブ人に対する偏見を持たない娘のイファットは、ある晩、アラブ人青年に家に来ないか、と声をかけられるが、その申し出を断って帰宅する。その夜遅く、現在の境遇に不満を感じているダヴィドは、憂さ晴らしに銃を持ち出し、夜の闇に向けて発砲する。翌朝、一人のアラブ人が遺体となって発見されるが、それはイファットに声をかけた青年だった......。一見、善意のもとに暮らしている家族の日常描写の積み重ねの中に現在のイスラエルが抱える矛盾を浮かび上がらせる極めて野心的な作品。

11/22(火)18:50(有楽町朝日ホール)
11/25(金)15:50(有楽町朝日ホール)
『ティクン~世界の修復』(Tikkun)
イスラエル / 2015年 / 120分
監督:アヴィシャイ・シヴァン

若く献身的なユダヤ教超正統派の神学校生のハイム・アロンは、ある日、シャワーを浴びている時に突然意識を失う。昏睡状態となり、いったんは臨死状態と思われたハイム・アロンは奇跡的に意識を取り戻す。だが、その後のハイム・アロンはこれまでとは別人のように変わっていた。神学への興味を失くし、食生活も変わってしまったハイム・アロンはテルアビブの街を彷徨し、以前の彼には考えられなかった行動に移る......。2015年、エルサレム映画祭で最優秀作品賞を受賞するとともに、ロカルノ映画祭で審査員特別賞を受賞し、シヴァンの国際的な名声を高めた作品。美しいモノクロ画面に展開されるシュールレアリスティックな映像の数々に圧倒される。

11/25(金)18:20(有楽町朝日ホール)
11/27(日)13:10(有楽町朝日ホール)




第17回東京フィルメックスについて、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





Comment(0)

印刷