ポルトガル映画祭 マノエル・ド・オリヴェイラとポルトガル映画の巨匠たち【最終上映】



2010年7月26日にアテネ・フランセで行われたプレイベント「ペドロ・コスタ×ポルトガル映画史」では、オリヴェイラ監督の長編第一作『アニキ・ボボ』が上映され、その後、ペドロ・コスタによるポルトガル映画史のレクチャーが行われた。当日は、立ち見客まで出る盛況で、満席の会場は暑い熱気に包まれた。続く9月にフィルムセンターで開催された「ポルトガル映画祭 マノエル・ド・オリヴェイラとポルトガル映画の巨匠たち」は好評を博し、その後、全国9会場を巡回、1年後の今、アテネ・フランセ文化センターでいよいよ最終上映を迎える。フィルムセンター開催時はラインナップされていなかったモンテイロの『ラスト・ダイビング』も上映、映画批評家赤坂太輔氏による講演会「ポルトガル映画と上演の映画」(8/6土曜14:00)も聞き逃せない!
2011.7.26 update
2011年7月29日(金)~8月13日(土) ※日曜・月曜は休館日
会場・お問合せ:アテネ・フランセ文化センター TEL:03-3291-4339(13:00-20:00)
料金:一般:一回券1,200円/5回券5,000円
アテネ・フランセ文化センター会員:1回券1,000円/5回券4,000円
※アテネ・フランセ文化センター会員入会をご希望の方は登録が必要になります(当日入会可)
登録料:一般1,500円/アテネ・フランセ学生1,000円(2012年3月まで有効)

主催:アテネ・フランセ文化センター、一般社団法人コミュニティシネマセンター、ポルトガル大使館
特別協力:カモンイス院、東京国立近代美術館フィルムセンター、川崎市市民ミュージアム、シネマテッカ・ポルトゲーザ
後援:社団法人日本ポルトガル協会、ポルトガル映画・映像院
上映スケジュール
    
7月29日(金)
14:50
アニキ・ボボ
(71分)
16:30
春の劇
(91分)
18:30
過去と現在
昔の恋、今の恋
(115分)
7月30日(土)
12:20
カニバイシュ
(101分)
14:30
神曲
(142分)
17:30
黄色い家の
記憶
(122分)

7月31日(日)

休館日

8月1日(月)

休館日






8月2日(火)
13:20
ラスト・
ダイビング

(91分)




15:20
神の結婚
(154分)


18:30
トラス・オス
・モンテス

(111分)
8月3日(水)
13:10

(98分)





15:20
トランス
(126分)


18:00
私たちの好きな八月
(149分)
8月4日(木)
14:30
春の劇
(91分)





16:30
過去と現在 昔の恋、今の恋
(115分)
19:00
カニバイシュ
(101分)

8月5日(金)
13:30
神曲
(142分)





16:30
黄色い家の
記憶

(122分)

19:00
ラスト・
ダイビング

(91分)
8月6日(土)
14:00
講演
「ポルトガル映画と上演の映画」

講師/赤坂太輔(映画批評家)
15:30
神の結婚
(154分)


18:30
トラス・オス
・モンテス
(111分)>
8月7日(日)

休館日






8月8日(月)

休館日



8月9日(火)
13:20
トランス
(126分)


16:00
私たちの好きな八月
(149分)
19:00
アニキ・ボボ
(71分)
8月10日(水)
13:20
過去と現在 昔の恋、今の恋
(115分)
15:50
カニバイシュ
(101分)

18:00
神曲
(142分)
8月11日(木)
13:30
黄色い家の
記憶

(122分)

16:00
ラスト・
ダイビング
(91分)
18:00
神の結婚
(154分)
8月12日(金)
14:00
トラス・オス
・モンテス

(111分)

16:20

(98分)

18:30
トランス
(126分)
8月13日(土)
13:10
私たちの好きな八月
(149分)

16:10
アニキ・ボボ
(71分)

18:00
春の劇
(91分)
8月14日(日)

休館日



上映プログラム

『アニキ・ボボ』
原題:Aniki Bóbó
1942年/71分/モノクロ
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:アントニオ・メンデス
出演:ナシメント・フェルナンデス、フェルナンダ・マトス、オラシオ・シルヴァ 

オリヴェイラの長篇デビュー作。陽光降り注ぐポルトの街を舞台に、躍動するアナーキーな少年少女たちを縦横無尽に活写してネオレアリズモの先駆的作品と見なされる。「アニキ・ボボ」とは警官・泥棒という遊びの名前。 幼い恋の冒険を「罪悪」と「友愛」の寓意へ変貌させる演出のスケール感はすでにして巨大。
『春の劇』
原題:Acto de Primavera
1963年/91分/カラー
監督・脚本・撮影:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:ニコラウ・ヌネス・ダ・シルヴァ、エルメリンダ・ピレシュ、マリア・マダレーナ 

16世紀に書かれたテキストに基づいて山村クラリャで上演されるキリスト受難劇の記録。自ら「作品歴のターニングポイント」と述べる本作でオリヴェイラが発見したのは「上演=表象の映画」という極めて豊かな鉱脈だった。一見して不自然な「虚構」のドキュメントだけが喚起する謎と緊張。前人未踏の「映画を超えた映画」の始まり。
『過去と現在 昔の恋、今の恋』
原題:O Passado e o Presente
1972年/115分/カラー
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:アカシオ・ド・アルメイダ
出演:マリア・ド・サイセット、マヌエラ・ド・フレイタス、ペドロ・ピニェイロ 

長篇劇映画第三作。ヴィンセンテ・サンチェスの同名戯曲を監督が自ら映画用に翻案。『フランシスカ』に至る「挫折した愛の四部作」の第一部にあたる。現在の夫に心を開かず、事故死した最初の夫への想いを募らせる妻ヴァンダを中心に、過去と現在、死者と生者の間を交差する奇妙な愛が描かれる。
『カニバイシュ』
原題:Os Canibais
1988年/101分/カラー
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:マリオ・バローゾ
出演:ルイス・ミゲル・シントラ、レオノール・シルヴェイラ、ディオゴ・ドリア 

『過去と現在』から音楽を担当してきたジョアン・パエスとともに作られたオペラ・ブッファ映画。厳かに進行する貴族たちの晩餐会は、やがて、タイトルが予告する驚愕の食人場面へ。人間と動物、人間と機械、見せかけと本質・・・・・・ ヴァイオリンの調べに乗ってあらゆる境界が軽々と犯される。
『神曲』
原題:A Divina Comédia
1991年/142分/カラー
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影:イワン・コゼルカ
出演:マリア・ド・メデイロス、ミゲル・ギリェルメ、ルイス・ミゲル・シントラ

「精神を病める人々の家」の表札が掲げられた邸宅で、アダムとイブ、キリスト、ラスコリーニコフ、 ニーチェのアンチ・キリストら歴史的文学作品の登場人物たちが、信仰と理性と愛についての議論を戦わせる。西洋古典の深奥に分け入りながらも「まったく未知なものとして、絶対的な驚き」とともに再び映像として蘇らせるオリヴェイラ芸術の真骨頂。

マノエル・ド・オリヴェイラ Manoel de Oliveira
1908年12月11日ポルト生まれ。31年に前衛記録映画『ドウロ河』を発表。42年には劇場用長篇『アニキ・ボボ』を作るが、その後、サラザール独裁政権下で長期間の沈黙を強いられる。63年に長篇第二作『春の劇』を作るも、上映直後に投獄される。70年代から映画製作の環境が好転すると『フランシスカ』(81)、上映時間6時間40分の大作『繻子の靴』(85)、『神曲』(91)など西洋古典芸術の深奥から力を汲む傑作群を連作。「世界で最も偉大な映画作家」として敬愛される。90歳を超えても毎年一本という驚異的なペースで新作を発表し続け、その映像は年を重ねるごとに自由と瑞々しさを増してゆく。今年のカンヌ映画祭には新作『アンジェリカの奇妙な事件』O Estranho caso de Angélica を出品。満場の喝采で迎えられた。
『黄色い家の記憶』
原題:Recordações da Casa Amarela
1989年/122分/カラー
監督・脚本:ジョアン・セーザル・モンテイロ
撮影:ジョアン・ペドロ・ベナール・ダ・コスタ
出演:ジョアン・セーザル・モンテイロ、マヌエラ・ド・フレイタシュ、ルイ・フルタド

強烈な存在感で見る者を魅了してやまない痩身の中年男デウス(神)をモンテイロが愉快に自作自演した「ジョアン・ド・デウス」シリーズの第一作。姦淫、盗みなどの悪行に身を任せる天衣無縫のデウスの足跡が、そのままモラリスト的人間考察へと転じる。サッシャ・ギトリやバスター・キートンと比肩する偉大な個性を世界に印象づけた傑作。
『ラスト・ダイビング』
原題:O Último Mergulho
1992年/91分/カラー
監督・脚本:ジョアン・セーザル・モンテイロ
撮影:ドミニク・シャピュイ
出演:ファビアンヌ・バーブ、ディニス・ネト・ジョルジ、エンリケ・カント・イ・カストロ

死を想い波止場で淋しげにたたずむ青年に、老人が声をかける。実は自分も人生に飽きている。最後に街に繰り出し存分に遊び、それから死ぬことにしようじゃないか......。ネオン煌めく夜のリスボンで繰り広げられる歌と踊り、酒と官能の宴。絶望と引き替えに許された、底抜けに大らかな人生賛歌。
『神の結婚』
原題:As Bodas de Deus
1999年/154分/カラー
監督・脚本:ジョアン・セーザル・モンテイロ
撮影:マリオ・バローゾ
出演:ジョアン・セーザル・モンテイロ、リタ・デュラン、ジョアナ・アゼヴェド 

「ジョアン・ド・デウス」シリーズの最終作。「神の使い」から突如巨万の富を与えられたデウスは、それ幸いとばかりに自分の欲望を解禁する。実現した夢のような生活はしかし突如終息し、デウスは自分が破滅しているのを知る......。社会秩序の無効性を一方的に宣告するサド的な放縦さ。欲望と自由をめぐる孤高の省察。

ジョアン・セーザル・モンテイロ João César Monteiro
1939年2月2日フィゲレイダフォス生まれ。反体制的かつ無信仰的に育つ。63年に奨学金を得て渡英。ロンドン・フィルム・スクールで映画制作を学ぶ。60年代には映画批評誌で健筆を振るう。ラウラ・モランテ主演の『海の花』 Á Flor do Mar(86)がサルソ・マッジョーレ映画祭で上映され、審査員特別賞を受賞。 89年に漁色と放縦に走る反-聖人デウスを自ら演じ、映画史上に屹立する傑作『黄色い家の記憶』を完成させる。同作はヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞を獲得し、オリヴェイラに続くポルトガル映画の巨匠として認知される。『ラスト・ダイビング』(92)、『J.W.の腰つき』(97)などの意欲作を次々と発表するも、 2003年2月3日リスボンで惜しまれつつ癌により死去。 03年の『行ったり来たり』Vai e Vem が遺作となる。
『トラス・オス・モンテス』
原題:Trás-os-Montes
1976年/111分/カラー、モノクロ
監督・脚本:アントニオ・レイス、マルガリーダ・コルデイロ
撮影:アカシオ・ド・アルメイダ
出演:トラス・オス・モンテスの住民たち

ポルトガル現代詩を代表するアントニオ・レイスが、マルガリーダ・コルデイロと共に作った初長篇。川遊びなどにうち興じる子供たちの姿を中心に、遠い山奥のきらきらと輝く宝石のような日々を夢幻的な時間構成により浮かび上がらせる。公開当時、フランスの批評家たちを驚嘆させ、後にペドロ・コスタ監督にも影響を与えたという伝説的フィルム。

アントニオ・レイス、マルガリーダ・コルデイロ António Reis, Margarida Cordeiro
1927年ヴァラダレス生まれ。映画界に入る前はポルトガル現代詩を代表する詩人として知られていた。50年代末にポルトのシネクラブで実験映画Auto de Floripes を共同監督。オリヴェイラの『春の劇』(63)に助監督として参加。撮影場所のトラス・オス・モンテス地方は、後に自ら題材として再三取り上げられることになる。60年代から国立映画学校で講座を受け持ち、ペドロ・コスタらを指導。70年代からは、精神科医のマルガリーダ・コルデイロと共同で、四本の伝説的な名作を手がける。74年の『ジャイメ』Jaime、76年の『トラス・オス・モンテス』、85年の『アナ』Anna、89の『砂漠の薔薇』Rosa de Areia である。1992年に死去。
『骨』
原題:Ossos
1997年/98分/カラー
監督・脚本:ペドロ・コスタ
撮影:エマヌエル・マシュエル
出演:ヴァンダ・ドゥアルテ、ヌーノ・ヴァス、マリア・リプキナ

現代映画の最前線をひた走るペドロ・コスタの長篇第三作。リスボン近郊のスラム街フォンタイーニャス地区を舞台に、貧困と無気力にうちひしがれる若者たちの生を透徹した眼差しで描く。劇映画の枠組みを多分に残して作られたコスタ最後のフィルムであり、物語を食い破るように突出するショットの残酷な輝きが際立つ。

ペドロ・コスタ Pedro Costa
1959年生まれ。リスボン大学で歴史と文学を専攻。青春時代はロックに傾倒する。国立映画学校に学び、とりわけアントニオ・レイスに師事。卒業後ジョアン・ボテーリョらの作品にスタッフとして参加しつつ、1987 年、短篇作品『ジュリアへの手紙』Cartas a Júlia を監督。長篇作品『血』(89)、『溶岩の家』(95)、『骨』(97)を発表。大胆かつ尖鋭的な映像構成で世界を瞠目させる。その後、土地とそこで生活する住人との、親密で息の長い関係から映像を紡ぎ出す独自の路線へ舵を切り、『ヴァンダの部屋』(00)、『コロッサル・ユース』(06)などの傑作群を完成させる。最新作はフランス人女優ジャンヌ・バリバールの音楽活動を記録した『何も変えてはならない』(09)。
『トランス』
原題:Transe
2006年/126分/カラー
監督・脚本:テレーザ・ヴィラヴェルデ
撮影:ジョアン・リベイロ
出演:アナ・モレイラ、ヴィクトル・ラコフ、ロビンソン・ステヴニン

サントペテルブルグで暮らしていたソーニャは、より良い暮らしを求めて西ヨーロッパへ向かうが、旅の途中で過酷な現実に直面する。人間の尊厳を奪われる絶望的な状況の中で、奇妙にも、耽美的な夢世界への通路が開かれる。いまポルトガルでもっとも期待される才能のひとりヴィラヴェルデの代表作。

テレーザ・ヴィラヴェルデ Teresa Villaverde
1966年リスボン生まれ。監督第一作Idade Maior はベルリン映画祭のフォーラム部門ほか多数の映画祭で受賞。以後、ペドロ・コスタらと共にポルトガルの若手監督として脚光を浴びる。92年の『三人兄弟』 Três Irmãos では出演者のマリア・ド・メデイロスがヴェネチア映画祭の最優秀女優を獲得している。98年の『オス・ムタンテス』がカンヌ映画祭"ある視点"部門に出品され、国際的な注目を集め、また、ポルトガル国内でも興行的な成功を収める。続く『水と塩』Água e sal も再びヴェネチア映画祭に出品。04年にはドキュメンタリー映画A Favor da Claridade を監督。 『トランス』が五作目に当たる。
『私たちの好きな八月』
原題:Aquele Querido Mês de Agosto
2008年/149分/カラー
監督:ミゲル・ゴメス
脚本:ミゲル・ゴメス、マリアナ・リカルド、テルモ・チューロ
撮影:ルイ・ポカ
出演:ソニア・バンデイラ、 ファビオ・オリヴェイラ、ホアキン・カルヴァロ

新鋭ミゲル・ゴメスの長篇第二作。ヴァカンス期のポルトガル山間部を舞台に、地元の村人、映画製作チーム、音楽フェスティバルの様子をドキュメンタリー的に描く前半部が、やがていつの間にか、途切れることなく、美しい少年と少女のメロドラマを綴る後半部へと移行する。真夏の夜の夢のような脱ジャンル的秀作。

ミゲル・ゴメス Miguel Gomes
1972年リスボン生まれ。高等映画演劇学院で学ぶ。96年から00年まではポルトガルのメディアで映画批評を執筆。並行して短篇映画を手がけはじめ、オーバーハウゼン映画祭、ベルフォール映画祭で受賞。ロカルノ映画祭、ロッテルダム映画祭、ブエノス・アイレス映画祭、ウィーン映画祭にも出品される。04年に初長篇作品『自分に値する顔』A Cara que Mereces を監督。08年には『私たちの好きな八月』を発表。カンヌ映画祭の監督週間に出品されて絶大な反響を引き起こす。以後、世界40以上の国際映画祭に出品されて幾多の賞を獲得。一躍、世界の映画ファンから注目を集める存在になる。現在、最新作となる『曙光』Auroraを準備中。


ポルトガル映画祭 マノエル・ド・オリヴェイラとポルトガル映画の巨匠たち【最終上映】について、皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。
なお、ご投稿頂いたものを掲載するか否かの判断については、
OUTSIDE IN TOKYO 編集部の判断に一任頂きますので、ご了承ください。





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