OUTSIDE IN TOKYO
PARK CHAN-WOOK INTERVIEW

復讐三部作(『復讐者に憐れみを』(02)、『オールド・ボーイ』(04)、『親切なクムジャさん』(07))でブラック・ユーモアを漲らせながら”凶悪犯の涙”を描き、独特の哀しい感覚を緻密に映像化してきた韓国の名匠パク・チャヌク監督の新作がハリウッドで作られたという報せを聞いて、『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』という2つの傑作の後、『親切なクムジャさん』と『渇き』(09)でいささかやり過ぎな感じを覚えた自分にしてみれば、ハリウッド的な抑制はむしろパク・チャヌク作品を洗練に導くのではないか、という期待感が募った。

そうした期待と共に観た『イノセント・ガーデン』は、今もっとも旬な女優と言うべきミア・ワシコウスカと円熟味と艶かしさを漂わせるニコール・キッドマンが共演する、実にパク・チャヌクらしい様式美で彩られた、見事なスリラーに仕上がっていた。『イノセント・ガーデン』は、今までパク・チャヌクが内面的葛藤と共に描いてきた”殺るもの”と”殺られるもの”の2者のうち、”殺るもの”、つまり、”捕食者の系譜”に焦点を充て、暴力の起源に迫る試みであると言えるかも知れない。来日を果たしたパク・チャヌク監督に、まずは、あの「プリズン・ブレイク」の俳優ウェントワース・ミラーが書いたという脚本に、どのように監督の息吹を吹き込んでいったのか、聞いてみた。

1. 度を越してはいけない。そうなってしまうとジャンルの特長を失ってしまう

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Q:今回の作品『イノセント・ガーデン』は、脚本が『プリズン・ブレイク』で有名な俳優のウェントワース・ミラーさんということなのですが、彼の脚本はどこが一番素晴らしかったのでしょうか?
パク・チャヌク:余白の多い脚本だったのが良かったんです。つまり監督の世界をどんどん吹き込めるような開かれた空間がたっぷりあったということです。それから主人公の女の子の年齢が、私の実の娘の年齢と同じだったことにも興味を持ちました。

Q:誕生日ごとにプレゼントをあげるっていうエピソードは監督のアイデアだったと伺っています。ということは、“サドルシューズ”も監督のアイデアだったということでしょうか?
パク・チャヌク:サドルシューズという設定自体は元々ありました、ただ元々あったのはインディアがちょっと変わった風変わりな趣味で、そればっかり履いているという点と、それからお洒落なお母さんが、サドルシューズばっかり履いて、そんなのダサいわよって言ってうんざりしていた、そして娘はお母さんがこの靴を嫌うからもっと意地になって履き続けるという、その設定だけはありました。ですからそこに私が加えたのが、おっしゃる通り誕生日ごとに正体不明の人からそれが毎年届くということ、そして、ハイヒールを履くというのも私のアイデアで追加したところでした。

Q:さらに例を挙げるとすると、重要なものでは、どういうものがありますか?
パク・チャヌク:最初のシーンと最後のシーンもこちらで新たに付け加えました。そして叔父のチャーリーがベルトを使って殺すっていうところ、あと狩りのくだりも新たにこちらで付け加えました。学校で鉛筆で喧嘩するシーンもそうです。そんな風にたくさんありますね。

『イノセント・ガーデン』
英題:STOKER

5月31日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、シネマカリテ他、全国ロードショー

監督:パク・チャヌク
脚本:ウェントワース・ミラー
製作:リドリー・スコット、トニー・スコット、マイケル・コスティガン
撮影監督:チョン・ジョンフン
プロダクション・デザイナー:テレーズ・デプレス
編集:ニコラス・デ・トス
衣装デザイナー:カート・スワンソン、バート・ミュラー
音楽:クリント・マンセル
出演:ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グード、ダーモット・マロニー、ジャッキー・ウィーヴァー、フィリス・サマーヴィル、オールデン・エアエンライク、ルーカス・ティル、ラルフ・ブラウン

©2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

2013年/アメリカ/99分/カラー
配給:20世紀フォックス映画

『イノセント・ガーデン』
オフィシャルサイト
http://www.foxmovies.jp/
innocent-garden/
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