OUTSIDE IN TOKYO
LOU YE INTERVIEW

去年の第10回フィルメックスで『春風沈酔の夜』というタイトルで上映され、個人的には2009年の映画で最も印象に残る作品のひとつとなった、ロウ・イエの作品が『スプリング・フィーバー』として現在公開されている。

『スプリング・フィーバー』は、素晴らしく息の長い演出で、人の生命を蓮の花の短い一生に喩える郁達夫(ユイ・ダーフ)の詩を引用しながら、個人が抑圧される中国という国で、男女5人が複雑な恋愛に傷つき苦しみながら、それでも最後には一瞬の夢心地な時間に“希望”を託し、人間の幸福とは何か、愛、そして生きることの輝きを陽炎のように儚く揺れる時間の中で捉えた傑作人間ドラマ。

男女5人の中心人物ジャン・チョンを演じるチン・ハオは、ファム・ファタールならぬ、オム・ファタール的な存在感で、順撮りに撮影された本作の進むにつれて、強烈な魅力を発揮していくところも大きな見所だ。

パリでの新作の撮影を終え、これから編集段階に入るというロウ・イエ監督が日本での公開に合わせて来日、本作と新作について、そして、“5年間の撮影禁止”という選択の余地のない状態について、率直に語ってくれた。逆境の中でもブレないロウ・イエ監督の生き方、そのものが伝わってくる監督の率直な言葉は、今色々な意味で“苦境”にある日本に暮らす私たちにも、とてもリアルに響いてくる。

1. 自分の本当の気持ちを映画を通して伝えたい、
  それを完全に伝えることがアーティストの責任だと思う

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):日本の観客が観るという状況になって、ご気分はどうですか?
ロウ・イエ(以降LY):すごく嬉しいですね。

OIT:どんな反応を期待していらっしゃいますか?
LY:もちろん観客の皆さんにこの映画を気にいって頂ければ本当に嬉しいですけれども、この映画の場合は、多分一人一人の観客が異なった反応を示すと思いますね。皆さん違う感想をもたれると思います。

OIT:映画を見せること、映画を作ることはご自分としてはどう考えていらっしゃいますか?
LY:映画というのは僕にとっては色んな問題を解決してくれる、なくてはならないものだと思っています。例えば、どうしても発散できない、解決できないものを、解き放つことができます。自分のどうしても表現したいものを表現することにおいて、小説や詩と同じように僕にとってはすごく大きな意味を持っています。また映画を通じて、色々な交流ができるということもすごく素晴らしいと思いますね。普段だったらあまり会えない人とも会えるし、色々な方と知り合いになれる、映画を通じてそれができることは本当に素晴らしいことです。

OIT:映画を通じて伝えるということは、どれだけの強さを自分の中に持っているのですか?
LY:やはり何と言っても、自分がとにかく表現したいことを伝える手段を持って、完全に伝えることが映画を撮っているものとしての責任だと思います。アーティストとしての責任感というものをそこに感じています。ですからそれを観客が受け入れられるかどうかというのは別にしても、とにかく自分の本当の気持ちを映画を通して伝えたい、そうすべきだという風に思っています。多分、他の監督は別の考えで撮っていると思います。色々あって当然だと思いますね。色々な映画が存在して“映画”という概念が出来上がっていると思います。

『スプリング・フィーバー』
原題:春風沈酔的晩上

11月6日(土)より渋谷シネマライズほか全国順次ロードショー

監督:ロウ・イエ
脚本:メイ・フォン
プロデューサー:ナイ・アン、シルヴァン・ブリュシュテイン
撮影:ツアン・チアン
美術:ポン・シャオイン
編集:ロビン・ウェン、ツアン・チアン、フローレンス・ブレッソン
音楽:ペイマン・ヤズダニアン
出演:チン・ハオ、チェン・スーチョン、タン・ジュオ、ウー・ウェイ、ジャン・ジャーチー、チャン・ソンウェン

製作:ドリーム・ファクトリー、ロゼム・フィルムズ

2009年/中国・フランス/115分/HD/1:1.85/カラー/ドルビーSRD
配給・宣伝:アップリンク

『スプリング・フィーバー』
オフィシャルサイト
http://www.uplink.co.jp/
springfever/
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