OUTSIDE IN TOKYO
Giddens Ko INTERVIEW

本国台湾で社会現象を巻き起こすほどの大ヒットを遂げた、甘酸っぱい後味の青春映画『あの頃、君を追いかけた』(11)は、思春期特有の繊細さと幼稚さを、下ネタ満載のコメディタッチで描きながらも、見るものの琴線に触れる、映画ならではのマジカルな輝きがある。“ベストセラー作家の自伝的作品”の映画化と聞いていたので、若干斜に構えて見始め、冒頭5分程の幼稚な場面の連続に大いに不安を掻き立てられもしたのだが、見ているうちに自然と映画に引き込まれていき、本来、"青春"につきもののはずの“下ネタ”を、臆せず果敢に繰り出してくるところにも、近年の滅菌された日本の“青春映画”では見かけない、明け透けな魅力を感じた。

実際に、本作の原作者であり、監督であるギデンズ・コーに会ってみると、“ベストセラー作家の自伝的作品”と一言で括ってしまうと見えなくなる、現実では成就しなかった思いへの繊細かつ執拗な拘りが、創作の源にあることが伝わってきた。つまり、“自伝”と言っても、必ずしも主人公のイケメン男子(クー・チェンドン)だけが監督の過去の姿であるはずもなく、小太りのガリ勉メガネの男子(スティーブン・ハオ)にも監督の過去が投影されているに違いない。その辺りに、フィクションを創り出すことの鍵と琴線に触れる”甘酸っぱさ”の源泉があるのかもしれない。

1. 資金もなく、映画にも素人の集団が、
 いいものを撮りたいという情熱を注ぎ込んで作った映画

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):あえて最初にこの言葉を使いますけれども、エンターテイメントとして普通に楽しみました。それに対してはどう思われますか?
ギデンズ・コー:いいことですね。そうやって観てくれていいと思います。自分は小説を書く時も純文学ではなくて、大衆文学を書いているつもりで書いていますから。もし、アートな映画を撮れと言われても、それは自分には出来ないことですから。

OIT:構成がしっかりしていて、物語に問題なく入り込めたんですね。僕はつい色々穿って観るタイプなんですが、何も感じずにすっと観れたというのが印象的でした。最近は、エンターテイメントでも構成が(捻りが利き過ぎていて)えっ?、みたいなのが多かったりするので、逆にそこが面白いなと思ったんです。
ギデンズ・コー:この作品に関して言うと、スタッフの中で映画の専門家は極めて少なかったんです。例えばミュージックビデオはやってたことはあるけれども、映画は初めてっていう感じで、大多数は映画制作の現場としてはアマチュアの人が多かったんです。カメラマンもミュージックビデオは撮ってましたけど、映画の撮影は初めてだったんです。ですから技術的にも、資金面でも、かなり足りない部分はありましたが、だからこそ、情熱を注ぎ込んでいいものを撮りたいっていう意欲はありました。

OIT:コーさんは元々小説家ということですから、作家の方が文章を映像に転換する時に色々考えると思いますが、月並みな質問ですけれども、どういう風に考えられたのですか?
ギデンズ・コー:この作品を撮っていた時は、本当に資金が少なくて、主役の女優さんにスターを起用しようという案も出たんですけど、スターの方々はこの役にあんまり興味を持ってくれなかった。そうした事情もあって、事前の準備段階に、もの凄く長い時間をかけました。もう嫌になるほど長い時間がかかりました。そして僕と二人の助監督も、カメラマンも、みんな映画には素人なわけなんです。だからこそ、みんなであれこれ言いあうことができた。もしプロの人がいたら、その人の言うこと聞かなければならなかったと思いますけど、もうみんなアマチュアの集団ですから、意見を集約して、色々討論して、どうしてもいいものを撮ろうっていうことでやっていったわけです。

『あの頃、君を追いかけた』
英題:You Are the Apple of My Eye

9月14日(土)より、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー

監督・脚本・原作:ギデンズ・コー
製作総指揮:アンジー・チャイ
撮影:ジョウ・イーシエン
音楽監督:ジェイミー・シュエ
音楽作曲:クリス・ホウ
出演:クー・チェンドン、ミシェル・チェン、スティーブン・ハオ、ジュアン・ハオチュエン、イエン・ションユー、ツァイ・チャンシエン、フー・チアウェイ

2011年/台湾/110分/カラー/シネマスコープ
配給:ザジフィルムズ/マクザム

© Sony Music Entertainment Taiwan Ltd.

『あの頃、君を追いかけた』
オフィシャルサイト
http://www.u-picc.com/anokoro/
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