2014年7月 8日

『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』ピーター・ランデズマン

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star.gifstar.gifstar.gifstar.gif 上原輝樹

まさにタイトルが示す通り、テキサス州ダラスにおいてJ・F・ケネディ大統領が暗殺された瞬間から、容疑者リー・ハーヴェイ・オズワルドが埋葬されるまでの緊迫の4日間が、的確な意図を持った重厚な演出によって映画化されている。本作が初監督作品となる、長年ジャーナリストとして活躍してきたピーター・ランデズマンは、製作のトム・ハンクスから手渡されたヴィンセント・ブリオシの原作「Four Days in November」をベースに独自の取材を重ねた上で脚本を仕上げ、米国内で何百冊も書籍が出版されている手垢に塗れた主題に、新たなパースペクティブを齎すことに成功している。

ケネディとオズワルドの死は、"ひとりの人間の死"という視点において真の意味で民主主義的に並置され、20世紀で最も有名な映像のひとつと言って良いだろう、"ザプルーダー・フィルム"を8mmフィルムで撮影した男エイブラハム・サブルーダーの人生が、アメリカ合衆国における、象徴的な移民のドラマとして浮き上がってくる。撮影に使われたスーパー8mmフィルムキャメラは、当時最先端を行くもので、そのフィルムを現像出来るラボがなかなか見つからない、という事実の断片が丁寧に織り込まれているところも素晴らしい。

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合衆国市民として大統領のパレードを嬉々として撮影して、誰も想像しえない映像を手中に収めてしまうエイブラハム・サブルーダーを、時に大きな目玉に感情のジェットコースター宿らせながらも、静かな佇まいに後悔の念を滲ませて演じるポール・ジアマッティ、リー・ハーヴェイ・オズワルドを、感情を排して圧倒的な孤独感を醸し出し、謎を謎のままに演じるジェレミー・ストロング、オズワルドの誇大妄想狂の母を堂々たる存在感で演じきるジャッキー・ウィーヴァー、実直な兄を演じ見るものの共感を禁じ得ないジャームズ・バッジ・デールら、俳優陣の演技も見る者を惹き付ける。

大統領とは実際に家族ぐるみの信頼関係を築いていたと云われるシークレット・サービスの面々が、大統領の遺体が入った棺桶を、合衆国史上初めて、エアフォースワンに担ぎ入れるシーンのリアリティにこだわった描写は、見るものの胸を熱くせずにはいない。登場する人物の誰もが悉くカウボーイ・ハットを被っている米南部テキサス州ダラスとクール・カットの北部エリートたちの、根深い対立を醸し出す演出も絶妙だ。20世紀の悲劇を21世紀のプリズムを通して描いた秀作である。

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『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』
原題:Parkland

6月28日(土)より絶賛公開中!

監督・脚本:ピーター・ランデズマン
製作:トム・ハンクス、ゲイリー・ゴーツマン、ビル・パクストン、ナイジェル・シンクレア
出演:ザック・エフロン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ビリー・ボブ・ソーントン、ジャッキー・ウィーバー、ポール・ジアマッティ、ジェームズ・バッジ・デール、ジェレミー・ストロング、ジャッキー・アール・ヘイリー、コリン・ハンクス、デヴィッド・ハーバー、ロン・リビングストン、マーク・デュプラス

2013年/アメリカ/93分/カラー
配給:ファントム・フィルム

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