『輝ける青春』(03)の名匠マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の最新作『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』は、"鉛の時代"前夜に起きた、フォンターナ広場爆破事件の真相を描く、重厚な会話劇にして傑出した人間ドラマに仕上がっている。東西冷戦の中で、モラルを失った国家が如何にして陰謀を巡らせたのか、複雑に錯綜したパズルのピースひとつひとつを丹念に埋めてゆく気の遠くなるような調査に基づいて作られた本作は、フランチェスコ・ロージの『シシリーの黒い霧』(62)や『キリストはエボリで止まった』(79)、マルコ・ベロッキオの『夜よ、こんにちは』(03)や『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』(09)といった、イタリア政治映画の正統に連なる作品であると言って良いだろう。
主演男優ヴァレリオ・マスタンドレアを始め、後に誘拐、暗殺されることになるアルド・モーロを演じるファブリツィオ・ジフーニやネオ・ファシストの弁護士を演じるジョルジョ・マルケージ等の充実した俳優陣とイタリア映画ならではのダンディズム溢れる衣装や"暗い時代"を表現したルックなど、映画的な見所にも事欠かない。"善きもの"が永遠に失われる時にラジオから流れる、ギリシアの軍事クーデターを機に国外脱出したヴァンゲリスが組んだバンド、アフロディテス・チャイルドの楽曲「Rain and Tears」が、郷愁を誘うばかりではなく、"国家"というヴァーチャルなシステムが非人間的に機能する時の残酷さを、21世紀の私たちに向けて知らせている。
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