2013年10月 3日

『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』リズ・ガルバス

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マリリン・モンローをフェミニストの先駆者として位置付ける、
愛すべき秀作
star.gifstar.gifstar.gifstar.gif 上原輝樹

先日NHKで放映されたフランスのTV向けドキュメンタリー「マリリン・モンロー 最後の告白」もそうであったように、マリリンの伝記物を涙なしで見ることは難しい。本作もやはりその例に漏れないが、マリリン・モンロー没後50年を経て公開された手紙、詩、メモなど未公開文書を集めた書籍(「マリリン・モンロー 魂のかけら(原題:Fragments)」青幻舎刊)を基に作られた本作は、ユマ・サーマン、グレン・クローズ、エレン・バースティン、マリサ・トメイ、リリー・テイラー、リンジー・ローハンといった個性豊かな女優たちが、マリリンに成り代わって、マリリンが残した生の"断片"=Fragmentsを読む/演じるという趣向で見るものを楽しませてくれる。中でもブラック・スーツを颯爽と決めたエヴァン・レイチェル・ウッドが秀逸だ。そして、マリリンの周囲にいたアメリカの20世紀を彩った才能たち、ノーマン・メイラー、エリア・カザン、トルーマン・カポーティ、リー・ストラスバーグ、アーサー・ミラー、ビリー・ワイルダー、ジョージ・キューカーといった作家や映画監督たちを、それぞれ、ベン・フォスター、ジェレミー・ピヴェン、エイドリアン・ブロディ、ステーヴン・ラング、デヴィッド・ストラザーン、オリヴァー・プラット、ポール・ジアマッティが演じ、それぞれの語りが、等身大の"マリリン・モンロー像"を立体的に浮き上がらせる。

それにしても当時の20世紀フォックスのプロデューサーを筆頭に、ジョー・ディマジオとカポーティを除いて、周囲の男どもが何と下劣だったことか!21世紀のデジタル革命による"映画の民主化"は、撮られる必然性も感じられない与太話まで"映画化"されてしまうという弊害を生みつつも、一方で、20世紀においては語られることのなかった、語られるべき真実が世に問われる、そうした"正義"が行われる助けになっていることもまた否定しようのない事実だろう。苦悩するマリリンが、there are always bridges.と記し、でも私は、ブルックリン・ブリッジが大好きだから、あそこから飛び降りることはできないわ、と続ける。本作には、そうした切ないマリリンの生の断片が満ちているが、それだけでは終わっていない。メジャー・スタジオと闘ったマリリンをフェミニストの先駆者として位置付けるなど、原題(LOVE, MARILYN)通り、マリリンへの愛に溢れた愛すべき秀作に仕上がっている。

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『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』
原題:LOVE, MARILYN

10月5日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督・製作:リズ・ガルバス
製作:スタンリー・バックサル、エイミー・ホビー
製作総指揮:アン・ケリー
撮影:マリース・アルヴェルティ
編集:アジン・サマリ
出演:F・マーレイ・エイブラハム、エリザベス・バンクス、エイドリアン・ブロディ、エレン・バースティン、グレン・クローズ、ホープ・デイヴィス、ヴィオラ・デイヴィス、ジェニファー・イーリー、ベン・フォスター、ポール・ジアマッティ、ジャック・ヒューストン、スティーヴン・ラング、リンジー・ローハン、ジャネット・マクティア、ジェレミー・ピヴェン、オリヴァー・プラット、デヴィッド・ストラザーン、リリ・テイラー、ユマ・サーマン、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド

© 2012 Diamond Girl Production LLC. All Rights Reserved.

2012年/アメリカ・フランス/108分/カラー/ビスタ/5.1ch
配給:ショウゲート

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