2012年4月27日

『孤島の王』


ノルウェーの孤島に、問題を起こした少年たちを収容する施設があったという史実を基にしたサスペンス・ドラマ。北欧の孤島というロケーション、問題児が収容された施設で起きるサスペンスという設定の時点ですでに魅力的。シガー・ロスの楽曲や『ぼくエリ』の作曲家ヨーハン・デルクヴィストによる音楽が慎ましくも効果的に使われ、『ドラゴン・タトゥーの女』で強烈な印象を残したステラン・スカルスガルドの院長役もハマっている。主役ベンヤミン・ヘールスターの面構えもいい。近年の刑務所ものでは『預言者』が出色だったが(『孤島の王』は"刑務所"ではなく"施設"が舞台)、本作もそれに負けないくらい素晴らしい。
2012年4月27日

『ブラックパワー・ミックステープ 〜アメリカの光と影〜』


スウェーデンのテレビ局でお蔵入りしていた60〜70年代ブラックパワー・ムーブメント(キング牧師、マルコムX、ブラックパンサー党 etc)の息吹を伝えるアーカイブ映像に、現在のブラック・ミュージックを牽引するエリカ・バドゥ、タリブ・クウェリといったポップ・アイコンたちが現代の視点からコメントを加える傑作"ミックステープ"。ファンキーアフロヘアのアンジェラ・デイビスの映像に、ザ・ルーツのドラマー、クエストラブが音楽を付けている時点で既に必見!の格好良さなのだが、経済的、社会的な抑圧/非抑圧関係の中で、暴力的に虐げられる弱者の権利の行使としての"暴力"の必然性を語るアンジェラの圧倒的な正しさに戦慄を覚える。
2012年4月27日

『ブライズメイズ 史上最悪のウエディングプラン』


本年度ベスト級の面白さ!物語的には女性版『ハングオーバー』の趣きだが、内容的にはこちらの方が数段上!脚本・主演を務めたコメディアン、クリステン・ウィグの仕草や表情、身のこなしがいちいち素晴らしい。彼女の間違った決断や意味不明の開き直りといった行動の全てが"史上最悪のウエディングプラン"の暴走を加速していく傑作コメディ!
2012年4月26日

『裏切りのサーカス』


ジョン・ル・カレの小説「Tinker Tailor Soldier Spy」を、御大ル・カレを製作総指揮に招き、ジョン・ハート、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ハーディ、トビー・ジョーンズといった英国の名優をずらりと揃え、『ぼくのエリ 200歳の少女』のトーマス・アルフレッドソン監督が映画化。原作小説のシーンを取捨選択し、『ぼくエリ』同様、引き算の美学で、70年代に"国家のため"に諜報活動に従事した登場人物たちの"感情"の渦を描いている。M16本部が所在する霧のロンドン、ポール・スミスが監修を手掛けた衣装、独特なカラーパレットで構築された映像美が観るものを痺れさせる。ただ、前作と大きく違って弾けているのが、エンディングシークエンス。あそこであの曲を使うアルフレッドソン監督の変態的センスには心底驚かされる。
2012年4月13日

『バトルシップ』


『ハンコック』(07)のピーター・バーグ監督作品。AC/DCの爆音が鳴り響く戦闘シーンにおけるハードロックと米国海軍のホモジニアスな結託は、今や忘れ去られつつある"ハードロック"の反社会性と同時に、合衆国の反ヨーロッパ起源を思い起こさせる。フィクションにおいてエスカレートしたその"アンチ"の心性は、本作においては全人類に対して向けられ、宇宙から"エイリアン"という古き良き知人を呼び寄せ、地球を主戦場と化す。米国海軍を助けるお友達が他ならぬ、我々日本人であるというあながち荒唐無稽とも言い切れないサブプロットも盛り込まれた、重量級痛快娯楽映画。独自の佇まいで信頼感を醸し出す浅野忠信と、豹のようなルックスに加えて、声で観るものを魅了するリアーナが素晴らしい。見ていると愛着が湧いてくる『トランスフォーマー』チーム製作によるCGクリーチャー、リック・ルービン監修によるアゲアゲの選曲とスティーブ・ジャブロンスキーによるオリジナルスコア、音響デザインも秀逸。
2012年4月 4日

『マリリン 7日間の恋』


映画冒頭の"これは彼らの側から見た物語である"という言葉通り、世紀の映画スター、マリリン・モンローと無名の"サード"助監督コリン・クラークの恋の実際について、余人は知る由もない話だが、『王子と踊り子』(56)が実際に撮影された英国パインウッド・スタジオで、ミシェル・ウィリアムズ、エディ・レッドメイン、ケネス・ブラナーというキャストで、"サード"助監督コリン・クラークの回顧録が見事に映画化されたというだけで充分に夢のある話である。『ブルーバレンタイン』同様、スクリーン上の湿度を上げ、観るものの涙腺を緩ませるミシェル・ウィリアムズが素晴らしいが、シェイクスピア俳優ケネス・ブラナーが最後に呟く「われわれ人間は夢と同じもので出来ている」というプロスペローの儚い台詞が、本作の魅力の本質を見事に表している。

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