2012年2月27日

ジョン・ジョスト監督特集2012


70~80年代のシネマ・エッセイ(『スピーキング・ダイレクトリー』『プレーントーク&コモンセンス』)やフィクション作品、「フィルムの時代は終わった」と語った96年以降のデジタル・キャメラを使った作品、そして、新作『失われた町のかたち』まで、「新しい映画」のかたちを模索する映画作家ジョン・ジョスト監督の特集上映が行なわれる。最終日には監督ご本人を迎え、トークショーも予定されている。個人的には「IT産業前夜のサンフランシスコの空気を伝える」といわれる『レンブラント・ラフィング』や、オリヴェイラ、ヴェンダース、ペドロ・コスタといった固有名を想起させる町、リスボンを15年にわたって撮り続けたという『失われた町のかたち』が気になる。

2月28日(火)~3月3日(土)@アテネ・フランセ文化センター
2012年2月24日

『ヤング≒アダルト』


『ジュノ』(07)の監督ジェイソン・ライトマンと脚本ディアブロ・コーディのコンビによる新作。田舎のダイナーではドレスアップし過ぎ、犬の散歩で近所を歩く時はドレスダウンし過ぎる、世間の"中庸"という感覚からかけ離れたバツイチのライターを演じる主演シャーリズ・セロンが、ディアブロ・コーディの捻り出すブラックな台詞を容赦なく決める。そんなビッチなシャーリズが格好良くも、痛ましい。あの終わり方でいいのか?と観客を不安に陥らせるかもしれないが、ジェイソン・ライトマン映画ならではのミディアム・テンポのリズムが心地良く、一気に見せてしまう、技ありの一品。
2012年2月20日

『昼下がり、ローマの恋』

© 2011 FILMAURO Srl
イタリアで大ヒットとなったジョヴァンニ・ヴェロネージ監督作『イタリア的、恋愛マニュアル』(05)、『モニカ・ベルッチの恋愛マニュアル』(07)に続く"恋愛マニュアル"第三弾『昼下がり、ローマの恋』は、若年、中年、初老の三世代の男性の"恋"を時にシリアスに時に軽妙に描く、イタリア映画が得意とする艶っぽいコメディの佳作。若年の章の主人公を『輝ける青春』(03)、『あしたのパスタはアルデンテ』(10)のリッカルド・スカマルチョが演じ、モニカ・ベルッチに恋をする初老の主人公をロバート・デ・ニーロが演じている。監督作品としては、『グッド・シェパード』(06)という素晴らしい作品があるものの、俳優としては『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズが上出来な方というデ・ニーロ・ファンにとっては寂しい状態だったここ10年では最高の出来映え。イタリアの南国的鷹揚さが漂う画面で、肩の力が抜けた名優の姿を観る歓び!

2012年2月18日、シネスイッチ銀座他にて全国順次公開

提供:コムストック・グループ、アルシネテラン  配給:アルシネテラン
2012年2月14日

『ポエトリー アグネスの詩』


第63回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した本作は、韓国映画にまつわるイメージを一変してくれるだろう。監督は、『冬の小鳥』でウニー・ルコントの瑞々しい監督デビューをプロデュースした名匠イ・チャンドン。緑豊かな山間地帯、坂道の多い都市部、市井の人々が行き交う奥行きのある画面構成、賞を受賞した脚本だけでなく、脚本のエッセンスである"詩<ポエトリー>"を慎み深く画面に行き渡らせた画も素晴らしい本作は、主人公である初老の女性ミジャが示す、少女を自殺に追い込んだ事件に関わった我が孫に対する行動、その境地に到るまでのミジャの心の遍歴を描く、観る者の魂を揺さぶる傑作である。
2012年2月 9日

『タンタンと私』


誰もが、多かれ少なかれ、その人なりの波瀾万丈な人生を送るわけだが、本作を観て、「タンタン」の産みの親であるエルジュが、ナチスとの関係を誤解され投獄されたり、精神を患ったり、長年連れ添った妻と離婚したりしていたことを初めて知った。あの「タンタン」の作者としては意外だというよりも、大人が読んでもどこか難しいところがあると感じていた「タンタン」の作者の実像としては、むしろ随分と腑に落ちるところの大きいドキュメンタリーだった。今までは何となく立ち読みで済ませていた「タンタン」だが、初期の重大な転機を迎えることになったとされる作品「青い蓮」辺りをまずは買って読んでみたくなった。

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