国境の町ソマートンは、ここ何十年間も大事件が起きていない平和な町だ。訳あってこの町に退き、町の保安官をやっている男レイをアーノルド・シュワルツェネッガーが演じている。観客に、この男の過去に何があったのか、過去のフィルモグラフィーを想い出しながら想像させるノスタルジックな楽しみの間を少し与えてから、町に事件が起きる。牧牛家(ハリー・ディーン・スタントン)がある日、何者かに殺されたのだ。その直前に、ダイナーで見慣れない男たちを目撃していたレイは、何か良からぬ事が起きている、不穏な気配を察知していた。
一方、ラスベガスでは、刑務所から裁判所への移送中に、麻薬王コルテス(エドゥアルド・ノリエガ)が、FBIの護送の壁を破って逃亡を図っていた。逃げたコルテスを追うのは、司令塔ジョン・バニスター(フォレスト・ウィテカー)を中心としたFBIエリート集団とSWATチームだが、時速400kmの怪物シボレー・コルベットZR1を乗りこなすコルテスは、次から次へと追手を退け、メキシコ国境を目指して逃げてゆく。そして、そのZR1の行く先には、国境の町ソマートンがある。最新兵器で武装した麻薬王の一団に対して、ソマートンの保安官レイを中心とした、経験の浅い部下(ルイス・ガスマン、ジェイミー・アレクサンダー、ザック・ギルフォード)と囚人(ロドリゴ・サントロ)、武器マニア(ジョニー・ノックスヴィル)で構成された即席チームが、<最後の砦/The Last Stand>を守る戦いを仕掛ける。
物語の基本的な構造は、"西部劇"だが、時速400kmのZR1を表現するスピード感、都市と田舎の対比、『悪魔を見た』(10)のキム・ジウン監督らしい流血アクション、とうもろこし畑でのカーチェイスと、ジャンル映画的な見所には事欠かない。アクションの切れ味、重量感ともに見事で、シーンを殺伐とさせない為のユーモアも盛り込まれており、本作がハリウッド進出第一作目となったキム・ジウン監督とハリウッドのスタジオシステムとの相性の良さを印象づけている。欲を言えば、終盤のアクションシーンが紋切り型だったり、最後の展開に"粋"を欠いているところが、あと一歩というところだが、『オープン・ユア・アイズ』(97)や『NOVO』(02)のエドゥアルド・ノリエガがキャスティングされていたり、FBIの刑事役を演じている韓国人俳優が良い味を出していたり、常に国際的に才能を吸収して前進し続ける、アメリカ映画の強さを改めて感じさせる娯楽映画に仕上がっている。
4月27日(土)より、全国劇場公開
監督:キム・ジウン
製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ
美術:フランコ・カルボーネ
編集:スティーヴン・ケンパー、A.C.E.
衣装:ミシェル・ミッチェル
キャスティング:ロナ・クレス、CSA
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、フォレスト・ウィテカー、ジョニー・ノックスヴィル、ロドリゴ・サントロ、ジェイミー・アレクサンダー、ルイス・ガスマン、エドゥアルド・ノリエガ、ピーター・ストーメア、ザック・ギルフォード、ジェネシス・ロドリゲス
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2013年/アメリカ/カラー/107分
配給:松竹/ポニーキャニオン