『アベンジャーズ』(12)の監督と脚本を手掛けたことで知られるジョス・ウェドンと、「LOST」、『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)の脚本で知られるドリュー・ゴダードが共同脚本を手掛け、ドリュー・ゴダードの監督デヴュー作となった『キャビン』は、映画冒頭から、オール・アメリカンなカート(クリム・ヘムズワース)、ダム・ブロンドなジュールス(アンナ・ハッチソン)、利発そうなデイナ(クリステン・コノリー)のポップなアンサンブル演技をスマートに決めてくる。良く出来たホーラー映画の始まりを予感させる、シズル感溢れるオープニング・シークエンスが素晴らしい。
ハッパでハイになったマーティ(フラン・クランツ)と優等生ホールデン(ジェシー・ウィリアムズ)が合流し、案の定、若者たちは、人気のない山奥の「キャビン」へと車で乗り込んで行く、ホラー映画の定石通りの展開だ。しかし、リチャード・ジェンキンスが演じる、一見まともだが、実は相当トチ狂っているネクタイの男たちが、不意に画面に登場する辺りから、映画は、そのゲーム感覚的知性を発揮し始める。ジョス・ウェドンとドリュー・ゴダードの知性は、俳優陣の演技を損なわず、『ハンガー・ゲーム』(12)に足りなかったサバイバル・ゲーム的シナリオを律儀に演出してみせ、映画を思ったよりも遠い地点に着地させるだろう。男気を見せて、意外にも好印象を残すクリム・ヘムズワース、そして、ヒロインのデイナを演じるクリステン・コノリーが素晴らしい。ネタバレ厳禁な映画と思われるので、詳述は避けるが、個人的には『ホーリー・モーターズ』(12)のメルド的世界観との共振も感じられた。