6時間半の長丁場ながらも、TV用4エピソードの一気上映ゆえ、大作感は薄い。去年のイタリア映画祭で上映された3時間の歴史物『われわれは信じていた』(マリオ・ マルトーネ監督/名匠レナート・ベルタが撮影監督)の方がガッツリ長尺の映画を観たという感じが強かったが、こちらは現代的意匠を纏ったメロドラマの趣き。
映画は、マリオ・モニチェッリやヴェンダース、ビリー・ワイルダーの書籍を書店に並べたりすることで、シネフィルへの目配せらしきものは感じさせるが、全般的に映画的興奮を呼び寄せる瞬間は少なく、むしろポール・ハギス的現代アメリカ映画の心理描写を重視した脚本の影響が強く見られる。
例えば、主要な登場人物のひとりである末っ子のロレンッオ(アレッサンドロ・スペルドゥッティ)は何の前触れもなく唐突に事故で死んでしまう。残された家族はその喪失の重みに長い時間を掛けて耐えていくしかなく、観客もまた、彼らと共に非スペクタクルな時空間を共有していくしかない。そんな6時間半というメロドラマ的時間の中で、等身大の登場人物たちが私たちの中にじわじわと浸透してくる。