『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』アルノー・ラリユー、ジャン=マリー・ラリユー

上原輝樹
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やはり、フランスの名匠ラリユー兄弟クラスの画と音を巨大スクリーンで見るという体験は何ものにも代え難い。試写室の小さなスクリーンで見ているものを同じ"映画"と呼べるのか疑わしい気分になるほど、破格に素晴らしい体験だった。急遽来日が決まって舞台挨拶に訪れた、ラリユー兄弟の盟友マチュー・アマルリックは、ラリユー版ノワールである本作を、黒沢清監督の名前を挙げて参照。カラヴァッジォが手掛ける音楽は、今年公開された映画では『熱波』(12)以来のオリジナリティを感じさせ、『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』(12)、ペドロ・コスタ篇の『 スイート・エクソシスト』におけるメシアン使いを想起させる場面もある。ヴェンダースも3Dで撮影したという、SANAA設計のローザンヌ・ロレックス・ラーニングセンターを大胆にロケーションとして使う贅沢なセンスは、ピレネー山脈の麓で育ったというラリユー兄弟が捉える雪山の雄大な景観と見事に溶け合い、極上の映画空間を創出している。『運命のつくりかた』(02)で、破格のスケール感でひとりの男の人生の感動的な転生を描いたラリユー兄弟は、その雄大なスケール感はそのままに、ヒッチコックやシャブロルといったジャンル映画の名匠たちの作品に並ぶ、破格のジャンル映画を作り上げた。脚本・監督を手掛けた『パリ警視庁:未成年保護部隊』 (11/原題:Polisse)が、カンヌで審査員特別賞を受賞した女優マイウェンが演じる、アンナの抜群の存在感も素晴らしい。

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TIFF2013【コンペティション】
『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』(Love is the Perfect Crime / L'AMOUR EST UN CRIME PARFAIT)アルノー・ラリユー、ジャン=マリー・ラリユー
@六本木ヒルズ:スクリーン7
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