『歌う女たち』レハ・エルデム

上原輝樹
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監督特集上映(10)を行うなど、TIFFが押してきたトルコのレハ・エルデム監督の新作は、やっちまった感満載の謎の仕上がりであった。2009年の『コスモス』で黒々と漂わせていた終末感は、本作においては、地震予知で住民の退去勧告が発令された島という、具体的な舞台設定により可視化されている。その島では、伝染病が流行り、馬が死んでいき、人間も弱ってゆく。島の名士たちも全てが崩壊してゆく時間の流れの中でなす術もないが、そこで唯一生命を輝かせるのが"歌う女たち"だ。緑の豊かな森や動物描写など、エルデム監督ならではのイマジナリーな世界がそこには展開されているが、今作の場合、何か結びつくべきものが決定的に結びついていない、点描が全体として構成されることなく、バラバラのまま拡散して終わってしまったような印象を受ける。【ワールド・フォーカス】で上映された『Jin』を、タイミングが合わずに見ることが出来なかったのが無念。

TIFF2013【コンペティション】
『歌う女たち』(Singing Women / Sarki Söyleyen Kadinlar)レハ・エルデム
@六本木ヒルズ:アートスクリーン(P&I上映)
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