『老人ホームを飛び出して』TIFF2012 アジアの風 - 中東パノラマ

親盛ちかよ
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それぞれ問題を抱えた老人達が、周囲の反対を押し切ってテレビの仮装大会に出演するために天津のテレビ局を目指しバスの旅に出る。後半にすすむにつれ、みんなの結束が固まり問題が解決されていくポジティブで明るいストーリー展開を、ベテラン俳優人が情感たっぷりに演じている。かねてより中国にはシニアの味のある役者が多いという印象をもっていたが、本作を観てその思いを新たにした。

このような博愛主義の精神と、笑いを力にする物語を中国映画に観ることは、このご時世にあって特に意義深く感じられる。親と子の関係を重視する儒教の国でありながら、昨今のジェネレーションギャップに苦しみ、老人施設では、人としての生き甲斐や尊厳以上に、介護をする側の責任リスクを軽減するような引き算の介護がなされているという設定である。

この施設の責任者である孫世代の女性がいう、母親と接する時間を全て合計すると、もう何ヶ月もない現実に怖くなる、という言葉はリアリティがあった。時間に追われる現代人であれば誰しもの心を過る悩み。

この映画において、救いは、創造と笑いにある。仮装大会への出場を通して、目標に向かって団結しクリエイティブな出し物を考える充実感、ただの体操ではなく目的をもった身体の鍛錬、自分自身が充実し前向きに振る舞うことで改善されていく人間関係など、取り戻せたものの多さに満足感を味合わせてくれる終盤。暖かい気持ちにさせてくれる映画である。

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