『KOTOKO』フィルメックス2011 特別招待作品

浅井 学
20111130_01.jpgCoccoのライブパフォーマンスやPVに映し出された姿を見て、女優として映画を撮りたいと願った監督やプロデューサーは多かったのではないだろうか。それほど彼女の内包する純粋性と狂気、少女と母、バレリーナのしなやかさと飢餓的な痩躯、その秒単位で入れ替わる多面性は魅力的に思える。塚本晋也監督も長年、女優Coccoに恋いこがれてきたという。「昨年、7年介護した母が亡くなった。Coccoはそれから間もなく私の前に現れた」とまるで"運命の女"と出会ったかのように語っている。今回、彼女のライブに密着し、インタビューを繰り返し日常の言葉にも耳を傾け、その内面を描くシナリオを作り上げた。
幼い子どもを一人で育てる母、KOTOKOは、過剰な愛情と強迫観念によって我が子が何者かによって襲われるのではないか、殺されるのではないか、あるいはこの自らの手で...。悪夢と幻視によって壊れかけた時、自分を愛する男(塚本晋也)に出会い、幸福な明日を夢見るのだが...。それにしても、主人公KOTOKOの設定である、シングルマザー、育児ノイローゼ、自傷、精神疾患、サディスティックな性格などは、ややスキャンダラス気味に伝わってくるCocco像そのもので、それを本人が"演じる"という摩訶不思議さ。血と笑いと狂気と爆音、鬱積から炸裂へ向かう塚本ワールドをBGMにして、吹っ切るかのように女優Coccoがスクリーン上でぶちまける。

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