『トリシュナ』 TIFF2011 コンペティション

上原輝樹
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コンスタントに作品を発表し続けるマイケル・ウィンターボトム監督の新作『トリシュナ』は、『ミラル』で人生を切り開いていくポジティブな女性像が記憶に新しいフリーダ・ピントが、今度は、貧富の差が激しく、生まれついた境遇から抜け出すのが難しい社会風土の中で翻弄される悲劇的なヒロイン、トリシュナを演じている。トーマス・ハーディの「テス」を、19世紀産業革命に揺れるイギリスから、21世紀の新興国インドに翻案するという狙いは、インド最大のめくるめく大都市ムンバイや地方の瀟酒なリゾートホテルの景観を大スクリーンに映し出すという点で大いに効果を発揮しており、もっとインドを映した映像を観てみたいという気にさせるが、素晴らしい作曲家梅林茂の楽曲が『花様年華』そのまんまのイメージに聴こえてしまったことと、「カーマ・スートラ」が古きインドの呪いの書のように扱われてしまっているところが残念。フリーダ・ピントはとても良く、これからの活躍が楽しみ。

2011年10月26日
★★☆

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