『より良き人生』 TIFF2011 コンペティション

上原輝樹
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今までは"人物"にフォーカスをして描いてきたが、今回は"社会的なテーマ"に光をあてた、自分のキャリアは新たな段階に進んだと思う、と監督自らが語った自信作『より良き人生』は、もはや21世紀において多様化した映画フォーマットの中では、贅沢な部類に入る、35ミリ・フィルム、シネマスコープサイズによる、堂々たる活劇に仕上がっており、前作『リグレット(原題)』で高まった期待に充分応える出来映えとなっている。主演をフランスの人気俳優ギョーム・カネ、その相棒のような子供役を演技初挑戦のスリマーヌ・ケタビが好演、母親役をジャック・オディアール『アン・プロフィット』のエンディング・シーンに登場したレイラ・ベクティが演じている。日仏学院におけるモーリス・ガレル追悼上映の記憶が新しいルイ・ガレルの母親、ブリジット・シーも迫力のある演技で存在感を見せている。"より良き人生"を歩むためには、"闘う"しかない、と当たり前の如く明快に考える、アグレッシュブな自由主義が眩しく見える。逞しい存在感を放つセドリック・カーン監督の新作。

2011年10月25日
★★★★

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