『最強のふたり』 TIFF2011 コンペティション

上原輝樹
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パラグライダーの事故に遭遇し、墜落して半身不随になったパリに住む裕福なブルジョア男性の実話を基に、監督・脚本家のコンビ、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュが作り上げた、パリにおける象徴的な二つの文化的階級(ブルジョアと移民)のユートピア的共生を描いたコメディである本作は、かなりフランクと言うべき人種と身体障害に関するブラックジョークと、あからさまに戯画化された両者のコントラストの激しさ、そして、ご都合主義的なストーリー展開で観るものを唖然とさせる。しかし、元はと言えば実話であるという担保が、観客に、潜在的な差別意識とは何かということについて考える契機を与えてくれる(かもしれない)。それぞれの階級のアイデンティティの表出としての、クラッシック音楽とソウル・ミュージックを対立、衝突させるところに計算通りのユーモアが生まれているものの、ジョークがフレンチ・ノワール過ぎるせいか、声を出して笑うことが憚れることしばしば。

2011年10月20日(内覧試写)
★★★

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