『羅針盤は死者の手に』 TIFF2011 コンペティション

上原輝樹
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メキシコから国境を越えて、兄が住んでいるというシカゴを目指す少年が、道中で様々な人と出会い、一緒に旅をすることになる。不安げな"密入国"の旅を始めた一座は案の定、国境警備隊に捕まりそうになるが、一瞬の隙を突いて、少年が駆け出し、人っ子一人いない砂漠の果てへと躍動感豊かに走り出す、という序盤の展開が良い。国境地帯の砂漠の風景も迫力があって苛烈なまでに美しく、登場人物たちが体験することになる砂埃と渇きが観るものにもひしひしと伝わってくる。とりわけ、主人公の少年の顔つきや表情がとても良いのだが、道行くほどに、意外と少なくない登場人物たちが旅の一座に加わっていき、登場人物が増えるに従って、映画の濃度は薄まっていく。やがて、一座の旅が停滞し始める頃には、映画自体の停滞感も目に見えて明らかになっていく。

2011年10月18日(内覧試写)
★★

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