『別世界からの民族たち』 TIFF2011 コンペティション

上原輝樹
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移民問題が深刻化する欧州、中でも、右派のベルルスコーニ政権を擁するイタリアだからこそ生まれたと言えそうな、"ある日突然、移民が全ていなくなってしまったら"というSF的発想が具現化してしまった世界を描いたブラック・ユーモアに満ちたコメディ。なのだが、残念ながらその発想の面白さに具体的な内容がついていけない。みのもんたと石原慎太郎を合体したような"キャラ"のTV界の大物が主人公のひとりとして登場し、"移民などは全て津波にさらわれて流されてしまえ!"とTVで暴論を吐くと、その次の日から、家の使用人や、工場の労働者、町の清掃員など、社会インフラを底辺で支える"移民"たちが、忽然とその姿を消してしまう。映画は、なぜそのような事態が起きたのかということには一切触れず、そういう事態になるとどんな事が起こるのか、という日常をトレンディドラマのように小じんまりと描くばかり。"コメディ"であることを殊更強調するかのようなモンド系BGMが映画全編に渡ってべったりと垂れ流されるところも興を削ぐ。

2011年10月17日(内覧試写)
★★

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