『キツツキと雨』 TIFF2011 コンペティション
岐阜の山間地帯を舞台に、林業に従事するベテランの"きこり"とその地をゾンビ映画のロケーション撮影のために訪れた映画制作班の交流の悲喜こもごもを、ユーモア豊かに活写、現場で生まれる世代間を超えたり、超えなかったりするイマドキの人間関係を正面から捉え、それに呼応して展開する親子の心の交流までを鮮やかに描き切っている。何といっても、主演の役所広司が素晴らしいのだが、自ら監督した作品の評価がイマイチだった小栗旬が禊を遂げるかのような役回りで出演しているところも皮肉が効いていて面白い。特筆すべきは、撮影を手掛けた月永雄太のキャメラを通して、青山真治監督の『東京公園』にも通じる2011年の日本映画が獲得した透明感が本作でも鮮やかにスクリーンに投影されているように見えるところ。そして、奇しくも『東京公園』と同じく、劇中にゾンビ映画を召還する沖田監督の"映画"への愛は、篠崎誠監督の『死ね死ねシネマ!』や J・J・エイブラムスの『スーパー8』で吐露された"映画"を撮ってしまう事の"取り返しのつかなさ"へのオマージュのようにも見えて興味深い。
2011年10月17日(内覧試写)
★★★☆
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