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1. 『ひとつの歌』は、サン・ラーが、やり終わったっていう意識が立ち上ったところまで |
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OIT:樋口さんは、最初にこの映画をご覧になった時どういう風に思われましたか? 樋口:もう2年前くらいなので、すっかり忘れてますけど(笑)、さっきの枡野さん幽霊だみたいな感じで、誰も生きていなくて死の匂いが張り付いてるっていう印象が強かったですね。だから何て言うんだろう、そこにない場所を2人がどんどんバイクに乗って走ってくっていう、写ってるのは現実の風景なんだけど、実際に2人がいる場所っていうか、こっち側で見えてくる場所っていうのが実際にあるのかないのか分からない、どこにあるのかも、いつの時代かも分からない場所を2人が生きてるっていうようなイメージですね。大雑把なんですが。具体的な事は、何か日記に書いてあるんだよね?何て書いたんだっけ?
杉田:竹やぶのさらさらしてるシーンで、もうあの世とこの世がどうのこうのみたいな。あと、サン・ラーと例えてましたね。
樋口:サン・ラーと例えてた?……えっとね、さっきのカット割りの話とも関わってくるんだけど、サン・ラーが演奏している時に一つのフレーズをどこで止めるかという話をしてるんです。どうするかというと、やり終わったっていう意識が立ち上ったところでしか止めないっていう、それまではやり続けるっていうんですよ。その時間の流れに『ひとつの歌』のあり方はよく似ているっていうふうに多分思ったんだと思う。カット割りがほとんどないからなんだろうとは思うけど、一つのシーンが、例えば本当に幽霊が映ってるとして幽霊が現れてから消えるまでを全部映してるっていうことですね。次へのステップとしてそれがあるんじゃなくて、そこにその幽霊がいたっていう証拠を、そしてそこにいて何をしてたかっていう魂の軌跡みたいなものを、それが立ち現れるところから消えて行くところまでおい続けたんだと思います。元はといえば、ウェンダースが西部劇で自分が好きな西部劇と駄目だと思う西部劇の違いの一つとして、牛を渡らせる時に川をこっちからこっちまで、入るところから出るところまでを、その川を渡るのがいかに大変かっていうのを全部見せる西部劇にやっぱり自分は心躍らされるみたいなことを書いていて、まあそういう時間によく似ている、だからそれが幽霊になっただけなので、ってことは思いました。
杉田:うちの母がお世話になってるお寺の人とかにDVDを回したんですよね、そしたら凄い好評なんですよ(笑)。普段、映画なんか見てないお坊さん達、なんか凄い感心してるらしくて。
OIT:サン・ラーと樋口さんに言われてどうですか?
杉田:サン・ラーは聞いたことないです。あるのかもしれないですけど、音楽はあんまり、あんまりっていうか全然知らないんで。
樋口:多分その音楽的にっていうよりも時間の流れが似てるっていう。
OIT:意識みたいな。
樋口:そうですね、まあ、だからサン・ラーも自分は地球人じゃないって(笑)。
OIT:宇宙から来たって言ってます。
樋口:どっかそういう時間とか空間は全然違うものが紛れ込んでるっていうのが見えてきたんじゃないかな。
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『ひとつの歌』 10月13日(土)から渋谷・ユーロスペースにて3週間限定レイトショー! 監督・脚本:杉田協士 音楽:柳下美恵 撮影:飯岡幸子 音響:黄永昌 編集・助監督:大川景子 制作:高橋幸 出演:金子岳憲、石坂友里、枡野浩一、天光眞弓、塩見三省 ©2012年『ひとつの歌』製作委員会 2011年/日本/100分/カラー/HDCAM/スタンダード/モノラル 配給:boid 『ひとつの歌』 オフィシャルサイト http://www.boid-newcinema.com/ hitotsunouta/ インタヴュー【PART1】 |
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